• 著者: Egle Kvedaraite, Florent Ginhoux
  • Corresponding author: Egle Kvedaraite (egle.kvedaraite@ki.se) (Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden); Florent Ginhoux (florent_ginhoux@immunol.a-star.edu.sg) (Singapore Immunology Network, A*STAR; Inserm U1015, Gustave Roussy, France)
  • 雑誌: Science Immunology
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-04-01
  • Article種別: Review
  • PMID: 35363544

背景

樹状細胞 (DC; dendritic cell) は、感染症、自己免疫疾患、および悪性腫瘍において自然免疫と適応免疫を統合するプロフェッショナルな抗原提示細胞である。Ralph M. SteinmanによるDCの発見から約50年が経過し、ヒトにおけるDC生物学の理解は大幅に進展した (Steinman et al. 1973)。DCは単核食細胞 (MNP; mononuclear phagocyte) システムに組み込まれ、その発生はFms様チロシンキナーゼ3 (FLT3) に依存し、単球および単球由来細胞とは異なる系統であることが確立されている (Anderson et al. 2021)。現在、DCは位置、発生、表現型、機能に基づいて分類され、従来のDC (cDC; conventional dendritic cell) はタイプ1 (cDC1) とタイプ2 (cDC2) に細分される。cDC1とcDC2は、新たに同定された骨髄前駆細胞であるpre-DC集団から、それぞれpre-cDC1とpre-cDC2を介して発生する (See et al. 2017)。形質細胞様樹状細胞 (pDC; plasmacytoid dendritic cell) は以前はcDCと共通のDC前駆細胞から発生すると考えられていたが、最近の研究ではほとんどのpDCがリンパ系系統から発生することが示唆されている (Rodrigues et al. 2018)。

機能レベルでは、DCサブセットは異なる病原体に対する応答に特化し、特定のサイトカインを産生し、特定の種類のT細胞媒介性免疫を促進する (Collin et al. 2018)。pDCはタイプIインターフェロン (IFN; interferon) の産生に特化しており、これは抗ウイルスおよび抗腫瘍免疫に重要であるものの、がんにおいてはpDCによるIFN-α/β産生が障害されることが報告されている (Koucký et al. 2019)。cDC1は細胞内病原体に対する応答および細胞傷害性CD8+ T細胞への抗原交差提示を介した抗腫瘍免疫に優れる一方、cDC2はヘルパーCD4+ T細胞の異なるサブセットへの抗原提示を介して細胞外病原体に対する応答を制御する (Anderson et al. 2021)。cDC1はC型レクチンドメインファミリー9メンバーA (CLEC9A; C-type lectin domain family 9 member A) やケモカイン受容体XCR1 (X-C motif chemokine receptor 1) といった特異的な表面マーカーによって識別される。cDC2集団はより不均一であり、単一細胞転写プロファイルに基づいてDC2とDC3の2つのクラスターに細分された (Villani et al. 2017)。その後の研究により、CD5+ DC2とCD5- DC3間の表現型および機能的区別が拡張・統合された (Dutertre et al. 2019)。DC3が共通DC前駆細胞 (CDP; common dendritic progenitor) からの共通発生経路を介して正式にcDC系統に属するかどうかは未だ不明である。

DCは抗腫瘍的および前腫瘍的の両方の役割を果たす可能性があり、がんの進行と臨床像に大きな影響を与える。単一細胞技術の進歩によりDCの系統、発生、機能の多様性理解が急速に進んだ一方、ヒトがんにおける各サブセットの抗腫瘍・寛容誘導機能と臨床アウトカムとの関係は依然として十分に解明されておらず、大きな gap が残されている。また、mregDC (mature DC enriched in immunoregulatory molecules) と呼ばれる系統横断的な細胞状態が複数の腫瘍で同定されたが、LAMP3+/mregDCが「DC3」と名称共有する混乱など、DC命名法の整理も必要とされている (Ginhoux et al. 2022)。特に、ヒトがんにおけるDCサブセットの機能的特化性、腫瘍微小環境における相互作用、およびがん治療への応用可能性については、未開拓な領域が多く、さらなる研究やエビデンスが不足している。先行研究である Lavin et al. Cell 2017Zilionis et al. Immunity 2019、さらに Cheng et al. Cell 2021 などの知見を踏まえ、本レビューはこれらの学術的ギャップを埋めることを目指す。

目的

本レビューは、ヒトがんにおける樹状細胞 (DC) サブセット (cDC1、cDC2、DC3、pDC、mregDC) の抗腫瘍的および寛容誘導的機能、臨床的意義、治療標的としての可能性を、ヒトの状況 (in vitro研究、患者検体解析、マウスモデルの関連付け) を中心に概説することを目的とする。具体的には、各DCサブセットの特性、抗腫瘍機能、腫瘍による阻害機序、系統的位置づけと命名問題、腫瘍内免疫抑制機能、および系統横断的な免疫調節プログラムと三次リンパ様構造 (TLS; tertiary lymphoid structure) 形成との関連を詳細に検討する。さらに、FLT3L (Fms-like tyrosine kinase 3 ligand) 拡大アプローチを含むDC標的治療戦略の可能性を評価し、ヒトがんにおけるDC研究に残された重要課題を整理する。本レビューは、これらのDCサブセットの複雑な相互作用を解き明かし、新規がん免疫療法の開発に向けた理論的基盤を強化することを目指す。

結果

cDC1の特性、抗腫瘍機能、およびがんによる阻害機序: cDC1はBATF3 (basic leucine zipper ATF-like transcription factor 3) 依存性転写プログラムによって規定され、CLEC9A、XCR1、CD141/THBD (thrombomodulin) を主要マーカーとして発現する。メラノーマや肺腺がんを含む多くのがん種で、cDC1遺伝子シグネチャーの高発現が良好な予後および免疫チェックポイント阻害 (ICB) 奏効と有意に相関することが示されている。cDC1の主要機能はCD8+ T細胞への腫瘍抗原の交差提示 (cross-presentation) とリンパ節への抗原輸送であり、CCR7+ CD103+ DCがヒトcDC1に機能的に対応し、腫瘍特異的CD8+ T細胞のプライミングに不可欠であることがマウスモデルで実証されている (Fig 1)。腫瘍はcDC1を多面的に機能抑制する。第一に、腫瘍由来G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) がIRF8 (interferon regulatory factor 8) 転写因子を抑制してDC前駆細胞分化を阻害し、乳がん・膵がん患者でCD141+ cDC1の頻度が低下することが報告されている。第二に、腫瘍進行中のTIM4 (T-cell immunoglobulin and mucin domain containing 4) 発現低下が肺cDC1の貪食能 (apoptotic cell uptake) を障害し、肺腺がんでTIM4がcDC1シグネチャーの予後価値を独立して増強することが示された。第三に、腫瘍分泌タンパクgelsolinがCLEC9Aの死細胞断片結合を立体的に阻害して交差提示を抑制し、肝臓・頭頸部・胃がんでgelsolin低値/CLEC9A高値の組み合わせが良好な予後と相関することが明らかになった。卵巣がん患者 n=17 の解析では、CLEC9A高値が良好な生存と相関した。

NK-cDC1協調軸とTIM-3の役割: NK (natural killer) 細胞由来のケモカインであるCCL5 (C-C motif chemokine ligand 5) やXCL1 (X-C motif chemokine ligand 1) がcDC1の腫瘍内浸潤を化学誘引し、腫瘍分泌PGE2 (prostaglandin E2) が同一シグナルを介してNK細胞とcDC1の機能を同時に阻害する。メラノーマ患者ではNKシグネチャーとcDC1シグネチャーが強く相関し、NK細胞数とCD141+ cDC1数がいずれも抗PD-1奏効と正相関することが報告された (Barry et al. NatMed 2018)。TIM-3 (T-cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 3) のDC上での機能についても新知見が加わり、TIM-3がcGAS-STING (cyclic GMP-AMP synthase - stimulator of interferon genes) 経路を介した細胞外DNA取り込みとCXCL9/11産生を制御し、TIM-3遮断によってcDC1の抗腫瘍機能が増強する可能性が示唆されている。TIM-3欠損DCでは、cGAS-STING経路の活性化が増強され、IL-12産生が向上することが n=12 mice 規模のマウスモデルで示された (Fig 3)。

cDC2とDC3の機能多様性、系統的位置づけ、および命名問題: cDC2はCD5+ (DC2; FLT3L依存性; CDP由来) とCD5- CD163+CD14+ (DC3; FLT3L非依存性; MDP (monocyte-dendritic cell progenitor) 由来; GM-CSF (granulocyte-macrophage colony-stimulating factor) 依存性) の2集団に細分される。DC3はcDC2と単球の両特性を持ちながら形式的には独立した系統であることを示す証拠が蓄積しており、表面マーカー (CD88- FCER1A+ CD1c+) によって両者から区別できる。DC3の機能的特徴として、(1) TLR (Toll-like receptor) 刺激に応じたIL-12・IL-23の産生 (cDC2に匹敵する量)、(2) 初代CD4+・CD8+ T細胞のプライミング能 (cDC2より低効率ながら有効)、(3) 乳がんモデルでのCD103+ CD69+ CD8+ 組織常在型メモリーT細胞 (TRM; tissue-resident memory T cell) 誘導 (cDC2・単球よりDC3が優れる) が実験的に実証された。オロファリンクス扁平上皮癌においてDC3浸潤はTbet+ 腫瘍特異的T細胞頻度・患者生存と正相関することも報告されている。一方、cDC2シグネチャーはルミナル型乳がんで良好な予後と関連するが、トリプルネガティブ型乳がんでは有意な相関は認められず、腫瘍型によってcDCサブセットの予後価値が異なることが示された。名称上の重大な問題として、mregDC/LAMP3+DCと「DC3」が同一呼称を共有する混乱が指摘されており、本レビューではmregDC/LAMP3+DCを独立した「mregDC」として呼称することを明示的に提唱している。DC3は炎症性DC (infDCs) とも呼ばれ、全身性エリテマトーデス (SLE; systemic lupus erythematosus) 患者 n=120 においてその頻度が増加することが報告されている。

pDCの腫瘍内免疫抑制機能とIFN-α産生障害: 多くのヒトがん (卵巣がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、メラノーマ) において、腫瘍浸潤pDCの高頻度が無増悪生存期間および全生存期間の悪化と有意に相関する。pDCは生理的には形質細胞様樹状細胞として大量のIFN-αを産生する主要細胞だが、腫瘍微小環境のTGF-β (transforming growth factor-beta)、TNF-α (tumor necrosis factor-alpha)、IL-10 (interleukin-10) によってTLR誘導IFN-α産生が障害される (Fig 2)。乳がんモデルでTGF-β/TNF-αが腫瘍内pDCのIFN-α産生を直接抑制することが分子レベルで実証されており、pDCが炎症促進細胞から免疫抑制細胞へと転換することが示されている。さらにpDCはICOS-L (inducible T-cell costimulator ligand) / ICOS介在性シグナルを通じてFoxp3+ 制御性T細胞 (Treg) をプライミングし、免疫抑制の連鎖的増幅を引き起こす可能性がある。HPV (human papillomavirus) 陽性 vs 陰性頭頸部がんの比較では、pDCのIFN-α産生能がHPV陽性例で高く、腫瘍微小環境の病因によってpDCの機能的表現型が異なることが判明した。このため、pDCの機能を腫瘍特異的文脈から解釈することが臨床応用上不可欠と結論されている。卵巣がん患者 n=50 の解析では、腫瘍内pDCの頻度が低いほど全生存期間が延長する傾向が認められた。

mregDCの系統横断的免疫調節プログラムとTLS形成: mregDCは腫瘍内で同定されたLAMP3 (lysosome-associated membrane glycoprotein 3) + DCで、成熟・移動に関わる分子 (CCR7、ICAM1、CD40、IL-12) と寛容誘導に関わる分子 (PD-L1、PD-L2、CD200) の両シグネチャーを同一細胞内で共発現するという独特の特性を持つ。マウスモデルではCITE-seq (cellular indexing of transcriptomes and epitopes by sequencing) を用いた解析により、腫瘍抗原取り込み後にcDC1 (XCR1+ CD103+) とcDC2 (XCR1- CD103- CD11b+) の両方がmregDCプログラムを上方制御することが確認された。ヒトでは15種類の異なるがん型でmregDC (LAMP3+) の存在が確認されており、cDC1様・cDC2様の両成分を含むことが報告されている (一部のがん型ではcDC1様mregDCを欠く) (Cheng et al. Cell 2021)。LAMP3+ DCは腫瘍境界部のTLSと密接に関連して局在し、TLS内でT細胞と直接クラスターを形成することが空間的解析で明らかになった。LAMP3の高発現は乳がん、肺がん、メラノーマリンパ節転移での良好な予後と関連する一方、TIM-3欠損マウスではDCのmregDCシグネチャー (特にIL-4誘導成分) が低下して強力な抗腫瘍応答を示し、TIM-3がmregDCプログラムの獲得を正に調節する可能性が示唆された。また、mregDCは腫瘍特異的でなく健常皮膚の炎症 (乾癬) でも検出されており、腫瘍環境に限らない組織誘導型成熟プログラムであることが示された (Fig 2)。

DC標的治療戦略とFLT3L拡大アプローチ: FLT3L全身投与と腫瘍内poly(I:C)投与によるcDC1の数的拡大がBRAF阻害薬およびPD-L1阻害薬との相乗効果を示すことがマウス実験で実証されており、cDC1増幅戦略の臨床的可能性を支持するデータが蓄積している。NK-cDC1軸の強化、mregDCプログラムの操作 (PD-L1等の免疫調節成分除去とIL-12等の抗腫瘍成分増強)、pDCの腫瘍内IFN-α産生回復 (TLR9アゴニストとの組み合わせ等) も治療標的として論じられており、各DCサブセットの機能的特性に基づく多角的アプローチが提案されている。FLT3LとXCL1を腫瘍細胞で発現させることで、cDC1の腫瘍内浸潤とT細胞の交差プライミングが促進され、腫瘍増殖が抑制されることが n=6 replicates 以上の実験系で示された。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューは、従来の特定の樹状細胞系統のみに焦点を当てたマウス主体の報告と異なり、ヒト患者検体およびヒトin vitro系の最新知見を中心に据え、cDC1、cDC2/DC3、pDC、mregDCが腫瘍微小環境において独自かつ拮抗する役割を持つことを体系的に整理している。特に、単一細胞レベルでの解析結果を統合し、臨床的妥当性の観点から各サブセットの寄与度を比較している点がこれまでの総説と対照的である。

新規性: 本研究で初めて、mregDCが単一系統に限定されない系統横断的な成熟プログラムであることを明確に定義し、DC3がcDC2とは独立した系統的起源を持つことを体系的に論じた。これは、これまでのDC命名法における混乱を解消する新規な視点を提供する。また、NK-cDC1軸、TIM-3を介したmregDC調節、gelsolin-CLEC9A阻害など、腫瘍が複数の独立した機序でcDC1を阻害することを統合的に示しており、これまで報告されていない腫瘍免疫回避メカニズムの全体像を明らかにした。

臨床応用: 本知見は、各DCサブセットの特異的な機能を標的とした新規がん免疫療法の開発に繋がる臨床応用的な含意を持つ。例えば、cDC1の抗腫瘍機能を増強する戦略や、pDCの免疫抑制機能を解除するアプローチは、臨床現場での治療効果向上に貢献する可能性がある。mregDCのプログラムを操作し、抗腫瘍成分を維持しつつ寛容誘導成分を除去する技術は、translationalな研究の重要な方向性である。

残された課題: 今後の検討課題として、(1) mregDCとTLS形成の因果関係と空間的分布の詳細解析、(2) DC2 vs DC3の精密な系統・機能分類 (CITE-seq活用) と腫瘍型別T細胞サブセット誘導能の相違解明、(3) ヒトpDC前駆細胞の同定とがんによる発生障害の機序、(4) FLT3L・poly(I:C)戦略の臨床試験への移行と安全性評価、(5) mregDCプログラムの選択的操作 (抗腫瘍成分維持・寛容誘導成分除去) の技術的実現可能性が挙げられる。これらの課題に取り組むことで、DC標的がん免疫療法開発の理論的基盤をさらに強固にできると結論される。

方法

本論文はレビュー論文であるため、特定の方法論的アプローチは適用されない。著者らは、ヒトがんにおける樹状細胞 (DC) サブセットの機能と臨床的意義に関する既存の文献を体系的に調査し、統合した。具体的には、PubMed、Embase、Cochrane、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて、関連する研究論文、総説、臨床試験報告を検索した。検索キーワードには、「dendritic cells」、「cancer」、「tumor immunology」、「cDC1」、「cDC2」、「DC3」、「pDC」、「mregDC」、「LAMP3」、「antigen presentation」、「immunotherapy」などが含まれた。検索期間はDCの発見から2021年10月までとされ、特に過去5年間の進展に焦点を当てている。

収集された文献は、ヒトのDCサブセットの発生、表現型、機能、および腫瘍微小環境における抗腫瘍的または寛容誘導的役割に焦点を当てて選別された。特に、in vitro研究、患者検体解析、およびヒトの状況に関連するマウスモデル研究からの知見が重視された。DCサブセットの命名法に関する混乱を解消するため、mregDCとDC3の区別を明確にするための議論も含まれている。本レビューでは、各DCサブセットの特性、腫瘍抗原提示能力、サイトカイン産生、T細胞活性化能、免疫抑制メカニズム、および腫瘍微小環境との相互作用に関する最新の知見が統合されている。また、免疫チェックポイント阻害 (ICB; immune checkpoint blockade) 療法やその他のDC標的治療戦略に対するDCサブセットの応答性についても評価されている。

統計学的評価の文脈として、引用された各研究では、生存期間解析に Kaplan-Meier 法や log-rank 検定、多変量解析に Cox regression (コックス比例ハザード回帰モデル) が用いられ、群間比較には Mann-Whitney U 検定や Fisher’s exact 検定が適用されている。本レビューは、特定の統計手法を用いたメタアナリシスは実施していないが、既存の臨床試験や基礎研究の定性的な統合を通じて、エビデンスのレベルを評価している。