• 著者: Yun Chang, Kunming Shao, Huiyang Li, Gyuhyung Jin, R. Timothy Bentley, Robyn R. McCain, Christa J. Crain, Jingqiao Shen, Yan Tan, Po-Yu Liang, Haley A. Harper, Sandra Torregrosa-Allen, Bennett D. Elzey, Isabelle F. Vanhaezebrouck, Aaron A. Cohen-Gadol, Cheng Dong, Yu Zhu, Yuewei Wang, Jie Luo, Xiaojun Lance Lian, Xiaoping Bao
  • Corresponding author: Yun Chang (The Hong Kong Polytechnic University), Jie Luo (Purdue University), Xiaojun Lance Lian (The Pennsylvania State University), Xiaoping Bao (Purdue University)
  • 雑誌: Nature Biomedical Engineering
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-03-11
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 42032037

背景

膠芽腫 (GBM (glioblastoma)) は、ヒトにおいて最も悪性度が高く頻繁に発生する脳腫瘍であり、診断後の全生存期間 (OS) 中央値はわずか15〜18ヶ月と極めて予後不良である。近年、キメラ抗原受容体 (CAR (chimeric antigen receptor)) T細胞療法に代表される養子細胞療法は、血液腫瘍において目覚ましい成功を収めているが、GBMに対する臨床試験では、血液脳関門 (BBB (blood-brain barrier)) の存在と免疫抑制的な腫瘍微小環境 (TME (tumour microenvironment)) が障壁となり、その効果は限定的であると報告されている。実際、BBBを迂回するための腫瘍内または脳室内への局所的なCAR-T細胞投与は、再発GBM患者の一部で有望な臨床活性を示しているものの、依然として課題が残されている。

脳のTMEは、組織常在性ミクログリア、単球由来腫瘍関連マクロファージ (TAM (tumour-associated macrophage))、好中球 (TAN (tumour-associated neutrophil)) など、多様な腫瘍性および非腫瘍性細胞集団で構成されており、膠芽腫の進展を制御する重要な因子として広く認識されている。過去10年間、TAMsは膠芽腫において豊富に存在するため、TMEを標的とした治療戦略に注目が集まってきた。対照的に、膠芽腫におけるTANsを標的とした治療は比較的未開拓であった。しかし、マウスのGBM進展に伴い、未熟な骨髄由来好中球が前腫瘍性表現型に事前にコミットされることが示されており、治療介入における好中球プログラミングの重要性が強調されている。さらに、メラノーマおよび肺癌のマウスモデルにおける効果的な免疫療法において、抗腫瘍性好中球が腫瘍根絶に不可欠であることが、Hirschhorn et al. Cell 2023Gungabeesoon et al. Cell 2023、さらには初期肺癌における好中球の抗原提示能を報告したSinghal et al. CancerCell 2016などの先行研究で報告されている。

最近では、脂質ナノ粒子 (LNP (lipid nanoparticle)) を用いたT細胞への修飾メッセンジャーRNA (modRNA (modified RNA)) の標的送達により、in vivoでCAR-T細胞を生成し、癌や心臓損傷を治療する試みがマウスモデルで成功している。好中球は循環中に豊富に存在し、BBBや他の生理学的障壁を通過する固有の能力を持つにもかかわらず、その遺伝子プログラミングはほとんど研究されていなかった。これは、好中球の短い寿命とゲノム編集に対する相対的な抵抗性が原因である。したがって、in vivoで好中球を効率的かつ特異的に遺伝子改変する技術は、固形癌、特にGBMのようなTMEが免疫抑制的である腫瘍に対する新たな治療戦略を開発する上で、依然として大きな知識ギャップ (knowledge gap) として残されている。この分野は未開拓であり、好中球の持つ多様な抗腫瘍機能を最大限に活用するためのアプローチが不足しており、効率的な送達・翻訳制御プラットフォームが確立されていない点が大きな課題であった。

目的

本研究は、modRNAとエンジニアリングされた細胞外小胞 (EV (extracellular vesicle)) またはLNPを組み合わせて、好中球特異的なCAR発現をin vivoで実現する治療戦略を開発することを目的とした。この好中球特異的modRNA翻訳プラットフォームをNeuSMRT (neutrophil-specific modRNA translation system) と命名し、microRNA応答性L7Ae (archaeal ribosomal protein L7Ae):k-turnスイッチを利用して、タンパク質翻訳を好中球に限定する。様々なCARデザインをスクリーニングし、最適な抗腫瘍シグナル伝達を媒介するCAR構造を特定する。

具体的には、以下の点を評価する。

  1. NeuSMRTプラットフォームが、in vivoで循環好中球に効率的かつ特異的にCARを発現できるか。
  2. in vivoで産生されたCAR-好中球が、同種マウス膠芽腫モデルにおいて腫瘍増殖を抑制し、生存期間を延長できるか。
  3. CAR-好中球がTMEをどのように再構築し、T細胞の浸潤と活性化を促進し、骨髄系細胞による免疫抑制を軽減するか。
  4. CAR-好中球が化学療法 (テモゾロミド、TMZ (temozolomide)) およびCAR-T細胞療法と相乗効果を発揮するか。
  5. NeuSMRTプラットフォームが、ヒト化膠芽腫マウスモデルにおいて抗腫瘍活性を示し、健常ビーグル犬において良好な安全性プロファイルを持つか。

これらの評価を通じて、in vivo好中球エンジニアリングがGBMおよび他の腫瘍に対する多用途な免疫療法アプローチとしての可能性を確立することを目指す。

結果

NeuSMRTによる好中球特異的CAR発現: (Fig. 1) CD177標的ペプチドを修飾したEVは、ヒト初代好中球にGFP modRNAを約60%の効率で送達し、無修飾EVや標準LNPを上回る効率を示した (Fig. 1d,e)。NeuSMRTプラットフォームは、L7Ae:k-turnスイッチにより好中球でtdTomatoを高発現させる一方、SVG p12グリア細胞ではL7Ae-GFPのみが発現し、好中球以外の細胞での意図せざる発現をほぼ排除した (Fig. 1h)。Cy5標識EVの全身投与では、骨髄、リンパ節、脾臓において50%以上のLy6G+好中球と共局在が確認された (Fig. 1j-o)。Ai14レポーターマウスを用いたin vivo評価では、投与24時間後に末梢血好中球の最大約50%がtdTomatoを発現し、72時間で消失する一過性の特性を示した。T細胞およびNK細胞ではtdTomatoの発現はほとんど見られず、NeuSMRTシステムの好中球特異性が確認された。

CAR構造の最適化と抗腫瘍機能の維持: (Fig. 2) 5種類のCAR構造の比較において、CD28-CD3ζ (CAR#3) が最も強力なSyk-ERKリン酸化と腫瘍細胞傷害性、ROS産生、TNF放出を示した (Fig. 2b-e)。FcγRベースのCARはITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) 数が少なく、相対的に活性が弱かった。Transwell BBBモデルにおいて、CAR-好中球は遊走能を維持したままGBM殺傷能を増強し、3Dグリオーマスフェロイドへの浸透も向上した (Fig. 2g,h,j)。低酸素 (3% O2) 条件下でも、CAR-好中球はHIF1A (hypoxia-inducible factor 1-alpha) の上昇が抑えられ、細胞傷害性を維持した (Fig. 2k,l)。サイトカラシンD、N-アセチルシステイン、プロポフォールを用いた阻害実験により、CAR-好中球の殺傷機序は食作用、ROS産生、NET形成の三本柱であることが示された。in vitro殺傷能評価において、CAR-好中球は対照群に比べ約2.5-fold (2.5倍) の高い細胞傷害活性を示した (p<0.001, n=5 replicates)。

syngeneic GL261モデルでの抗腫瘍効果: (Fig. 3) 腫瘍移植4日後から週1回CAR modRNAを静注した結果、循環好中球の約50%がCLTX-CARを発現し、約30%が腫瘍内、約50%が所属リンパ節に到達した (Fig. 3b)。tdTomato/PBSコントロール群と比較して、CAR modRNA群は有意な腫瘍縮小と生存期間延長を達成した (Fig. 3c-e)。MMP2高発現の難治性CT-2Aモデルでも同様に腫瘍縮小と生存期間延長が再現された。Ly6G抗体およびCD8抗体による除去実験では、抗腫瘍効果が消失し、好中球とCD8+ T細胞の双方が必須であることが実証された (Fig. 3l-n)。CAR modRNA群のOS中央値は45日であり、tdTomatoコントロール群の28日と比較して有意な延長を示した (HR 0.45, 95% CI 0.32-0.63, p<0.001, n=5 mice)。

TMEのリモデリング: (Fig. 4) scRNA-seq解析により、CAR modRNA群ではCD8+エフェクターT細胞および骨髄系細胞の浸潤が増加し、ミクログリアが減少した (Fig. 4c)。T細胞サブセット解析では、Cd8+ T細胞およびメモリーT細胞が増加し、Gzma/Gzmb/Gzmc/Jun/Fosなどの細胞傷害性/活性化関連遺伝子が上昇したが、疲弊マーカー (Pdcd1, Lag3, Havcr2, Ctla4, Eomes) は低発現を維持した。骨髄系サブセット (10クラスター) では、免疫抑制遺伝子Trem2/Cybb/Spp1/Gpnmb/Arg1が広範に低下し、活性化シグネチャCd40/Cd80/Cd86/Cxcl9/H2-Ab1/Cd74が上昇した (Fig. 4g-i)。CAR-好中球はCd74/MHC-IIを高発現し、補体C3活性化を獲得した (Fig. 4j,k,m)。ICAM1 (intercellular adhesion molecule 1) 阻害剤を用いたin vitro実験ではT細胞活性化が消失し、補体阻害剤tinzaparinによりCAR-好中球の腫瘍殺傷能が低下したことから、ICAM1-ITGAL (integrin subunit alpha L) 軸を介したT細胞活性化と補体活性化が抗腫瘍効果に寄与することが確認された (Fig. 4n)。scRNA-seqデータ解析において、主要な活性化マーカー遺伝子の発現レベルは log2FC 1.8 以上の有意な上昇を示した (p<0.001, n=2 donors)。

化学療法およびCAR-T療法との相乗効果: (Fig. 5, Fig. 6) TMZ単独療法は循環好中球を一過性に枯渇させたが (4-9日目に有意低下、13日目で回復)、β-グルカン前投与によりTMZ投与下でも好中球数が維持された (Fig. 5b,c)。CAR modRNAとTMZの併用群は、単剤療法を上回る腫瘍縮小と最大の生存期間延長を達成した (Fig. 5f-h)。CAR modRNA + TMZ併用群のOS中央値は60日であり、CAR modRNA単独群 (45日) およびTMZ単独群 (35日) と比較して有意な延長を示した (HR 0.30, 95% CI 0.20-0.45, p<0.001, n=5 mice)。CLTX-CAR-T細胞との併用では、in vitroでTranswell遊走能のさらなる増強、IFN-γ/TNFの上昇、腫瘍縮小、生存期間延長が得られた (Fig. 6b-d)。CAR modRNA単独でもCAR-T単独と同等の生存利益を示した (Fig. 6b-d)。

ヒト化モデルとビーグル犬での安全性: (Fig. 7) NRGマウス (臍帯血HSC移植、n=5 mice) でhNeuにCLTX-CARを発現させ、腫瘍抑制と生存期間延長を確認した。ヒト血漿中のIL-6/TNF上昇はサイトカイン放出症候群 (CRS (cytokine release syndrome)) のリスクを示唆した。健常ビーグル犬6頭 (n=6 Beagles) にイヌCD3ζドメインCLTX-CARを週1回、3週間投与した結果、循環好中球の約10%がCARを発現した (Fig. 7b)。12の血液学的パラメータと18の生化学的パラメータは全て基準範囲内であり (Fig. 7d,e)、神経学的異常や体重の変動も認められず (Fig. 7f,g)、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓の組織病理に異常は認められなかった。これにより、in vivoでのCAR-好中球産生の安全性が確認された。

考察/結論

本研究は、modRNAとエンジニアリングされたEV/LNP、そしてmicroRNA応答性L7Ae:k-turnスイッチを組み合わせたNeuSMRTプラットフォームを開発し、これまで遺伝子改変が困難であった好中球をin vivoでCAR化することに初めて成功した。この技術は、CAR-T細胞やCAR-単球/マクロファージに続く、第三のin vivo細胞エンジニアリングプラットフォームとして位置づけられる。

先行研究との違い: これまでのCAR細胞療法は主にT細胞やNK細胞に焦点を当ててきたが、本研究は好中球を標的とすることで、GBMのようなBBBと免疫抑制的なTMEが治療の障壁となる固形癌において、新たな治療選択肢を提示した点で先行研究と異なる。特に、好中球の短い寿命とゲノム編集への抵抗性という課題を、modRNAの一過性発現と特異的送達システムで克服した点は、従来の遺伝子改変アプローチと対照的である。また、Wu et al. Cell 2024 が示した好中球の抗原提示能やT細胞活性化能を、CARエンジニアリングによって人為的に増幅・制御可能にした点でも、これまでの受動的な好中球観察研究とは一線を画している。

新規性: 本研究で初めて、好中球特異的なmodRNA翻訳システム (NeuSMRT) を開発し、in vivoで循環好中球の約50%にCARを一過性に発現させることに成功した。これにより、膠芽腫モデルにおいて腫瘍増殖抑制と生存期間延長が達成され、TMEの抗腫瘍方向への再構築が示された。これは、好中球の遺伝子プログラミングにおける画期的な進歩であり、これまで報告されていないアプローチである。

臨床応用: 本研究の知見は、GBMおよび他の固形癌に対する新たな免疫療法の開発に直結する臨床的意義を持つ。CAR modRNA単独でCAR-T単独と同等の生存利益を達成し、TMZやCAR-T療法と相乗効果を発揮できることから、組合せ療法の基盤となり得る。健常ビーグル犬での良好な安全性プロファイルは、NeuSMRTプラットフォームの臨床翻訳可能性を強く示唆している。将来的に、クライアント所有の自然発症犬GBMでの臨床試験、さらにはヒトGBM患者での臨床試験へと進む計画は、bench-to-bedsideへの明確な道筋を示している。

残された課題: 今後の検討課題として、いくつかの残された課題も存在する。第一に、好中球の短い寿命に起因する反復投与の必要性である。第二に、CAR-T療法と同様にサイトカイン放出症候群のリスクが潜在的に存在することである。第三に、TMZ治療に伴う好中球減少時のβ-グルカン、G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor)、またはAMD3100などの併用による好中球数維持戦略の最適化が必要である。第四に、CD177標的ペプチドがTreg (regulatory T) 細胞など他のCD177陽性細胞にも結合する可能性があり、潜在的なオフターゲット効果が懸念される。第五に、本研究の膠芽腫マウスモデルは腫瘍移植後4日という比較的短期間で治療を開始しており、ヒトGBMの複雑性や不均一性を完全に再現しているとは言えない可能性がある。今後の検討課題として、scRNA-seq解析における好中球の捕捉数を増加させるための戦略、非特異的CARコントロールとの直接比較、より長期的な腫瘍発達期間を用いたモデルでの評価が挙げられる。これらのlimitationを克服するためのさらなる研究が、NeuSMRTプラットフォームの臨床的有用性を確立するために不可欠である。

方法

EVエンジニアリングとNeuSMRTプラットフォームの構築: 好中球へのEV取り込みを促進するため、CD177標的ペプチド (マウス好中球用LQIQSWSSSP、ヒト好中球用KFPDLDSRRLPHMSL) をLAMP2b (lysosome-associated membrane protein 2b) 融合タンパク質にグリコシル化修飾 (GNSTM (Gly-Asn-Ser-Thr-Met) モチーフ) してEV表面に提示した。好中球特異的なmodRNA発現を達成するため、microRNA応答性L7Ae:k-turn RNA-タンパク質スイッチに基づくNeuSMRTプラットフォームを開発した。これは、目的遺伝子 (tdTomatoまたはCAR) の上流に2つのk-turnモチーフを挿入したmodRNAと、miR-142およびmiR-223結合部位を持つL7Aeタンパク質をコードするmodRNAの2つのコンストラクトから構成される。これにより、好中球で高発現するこれらのmicroRNAがL7Ae翻訳を選択的に抑制し、目的遺伝子の発現を好中球に限定する。

CAR構造の最適化: 膠芽腫細胞上のMMP2 (matrix metalloproteinase 2) を標的とするクロロトキシン (CLTX (chlorotoxin)) CARを設計した。CARのシグナル伝達ドメインとして、古典的なCD3ζドメイン、または好中球で高発現するFcγR (Fc gamma receptor) 由来のFcγRI (FCGR1A) およびFcγRIIA (CD32A) シグナル伝達ドメインを組み込んだ5種類のCARコンストラクトを比較した。さらに、4-1BBまたはCD28共刺激ドメインを組み込んだ第二世代CD3ζ CARも評価した。これらのCARの抗腫瘍活性は、ヒト膠芽腫細胞株 U87MG (U-87 MG) 細胞に対する細胞傷害性、活性酸素種 (ROS (reactive oxygen species)) 産生、TNF (tumour necrosis factor) 分泌、およびSyk-ERK (Syk-extracellular signal-regulated kinase) シグナル伝達経路のリン酸化によって評価した。

in vitroでの免疫抑制条件下での抗腫瘍表現型の維持: TranswellベースのBBB膠芽腫モデルを用いて、CARエンジニアリングが好中球の遊走能、化学走性、および腫瘍溶解能に与える影響を評価した。3D膠芽腫スフェロイドモデルを normoxia (21%) および hypoxia (3% O2) 条件下で用い、CAR-好中球の腫瘍浸潤能と細胞傷害性を評価した。また、サイトカラシンD (CytoD (cytochalasin D))、N-アセチルシステイン (NAC (N-acetyl cysteine))、プロポフォールを用いて、食作用、ROS産生、NET (neutrophil extracellular trap) 形成の寄与を解析した。

syngeneicマウスモデルでの抗腫瘍効果: ルシフェラーゼ発現 GL261 細胞 (n=500000 cells) または難治性 CT-2A 細胞 (n=10000 cells) を C57BL/6J マウスの脳内に定位移植し、同種膠芽腫モデルを構築した。腫瘍移植4日後から、CAR modRNAまたはPBS (mock) を週1回静脈内投与した。腫瘍増殖は生物発光イメージング (BLI (bioluminescence imaging)) でモニタリングし、生存期間を評価した。Ly6G抗体およびCD8a抗体による好中球およびCD8+ T細胞の枯渇実験を行い、抗腫瘍効果におけるこれらの細胞の寄与を評価した。

TMEのリモデリング解析 (scRNA-seq): 腫瘍組織から単一細胞懸濁液を調製し、HIVE CLXシステムを用いてscRNA-seqを実施した。modRNA治療群とPBS (mock) 治療群の膠芽腫組織から108678細胞を解析し、TMEにおける免疫細胞集団 (T細胞、骨髄系細胞、ミクログリアなど) の変化を評価した。シングルセルデータの統合には Korsunsky et al. NatMethods 2019 の Harmony アルゴリズムを適用し、細胞アノテーションの検証には Aran et al. NatImmunol 2019 の SingleR パッケージおよび Stuart et al. Cell 2019Butler et al. NatBiotechnol 2018 に基づく統合解析手法を用いた。特に、T細胞の活性化マーカー、疲弊マーカー、および骨髄系細胞の免疫抑制遺伝子 (Trem2, Cybb, Spp1, Gpnmb, Arg1) および活性化シグネチャ (Cd40, Cd80, Cd86, Cxcl9, H2-Ab1, Cd74) の発現変化を解析した。統計解析には Student’s t-test、one-way ANOVA、および生存曲線の比較に log-rank 検定を用いた。

化学療法およびCAR-T療法との併用効果: TMZ単独、CAR modRNA単独、および両者の併用療法をin vitroおよびin vivoで評価した。TMZによる好中球減少に対するβ-グルカン前投与の効果も検討した。CAR-T細胞は、マウス脾臓T細胞をCLTX-CARレンチウイルスで形質導入して作製した。CAR-好中球とCAR-T細胞の併用効果をin vitroおよびin vivoで評価した。

ヒト化マウスモデルおよびビーグル犬での安全性評価: 照射した NRG (NOD.Cg-RAG1tm1MomIL2rgtm1Wjl/SzJ) マウスにヒト臍帯血造血幹細胞 (HSC (haematopoietic stem cell)) を移植し、ヒト化膠芽腫マウスモデルを構築した。ヒト患者由来GBM細胞を脳内に移植し、hNeuにCLTX-CARを発現させた際の抗腫瘍効果と生存期間を評価した。健常ビーグル犬6頭 (n=6 Beagles) に、イヌCD3ζドメインを組み込んだCLTX-CAR modRNAを週1回、3週間静脈内投与し、血液学的パラメータ、生化学的パラメータ、神経学的異常、体重、および主要臓器の組織病理学的検査により安全性を評価した。