• 著者: Atkins MB, Hodi FS, Thompson JA, McDermott DF, Hwu WJ, Lawrence DP, Dawson NA, Wong DJ, Bhatia S, James M, Jain L, Robey S, Shu X, Homet Moreno B, Perini RF, Choueiri TK, Ribas A
  • Corresponding author: Atkins MB (Georgetown-Lombardi Comprehensive Cancer Center)
  • 雑誌: Clinical Cancer Research
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-01-22
  • Article種別: Original Article (Phase Ib clinical trial)
  • PMID: 29358500

背景

免疫チェックポイント阻害薬(ICB)は、進行悪性腫瘍の治療に革命をもたらし、複数の癌種で生存期間の延長を示している。特に黒色腫においては、2011年にCTLA-4阻害薬であるイピリムマブが承認され、その後2014年にはPD-1阻害薬であるペムブロリズマブとニボルマブが承認された。Hodi et al. NEnglJMed 2010Robert et al. NEnglJMed 2011Robert et al. NEnglJMed 2015。第III相KEYNOTE-006試験では、ペムブロリズマブがイピリムマブと比較して有意な生存改善を示し、PD-1阻害薬が進行黒色腫の標準治療としての地位を確立した。腎細胞癌(RCC)においても、PD-1阻害薬であるニボルマブがエベロリムスに対する生存改善を示し、承認を取得している。Motzer et al. NEnglJMed 2015

しかしながら、単剤でのICB治療では依然として多くの患者が奏効せず、より効果的な複合免疫活性化戦略の開発が喫緊の課題として認識されていた。CTLA-4とPD-1の二重遮断は、それぞれ異なる免疫活性化フェーズを標的とすることで、相加的または相乗的な効果が期待されていた。CTLA-4はT細胞のプライミング段階における抗原提示を調節し、PD-1は腫瘍局所でのエフェクターT細胞の機能を回復させる役割を担う。マウス黒色腫モデルを用いた研究では、CTLA-4とPD-1の二重遮断が腫瘍浸潤CD4⁺およびCD8⁺エフェクターT細胞の維持と相乗的な腫瘍拒絶反応を誘導することが示されている。ニボルマブとイピリムマブの併用療法(全量)は黒色腫において高い有効性を示したが、グレード3/4の治療関連有害事象(TRAE)発生率が55〜59%と高く、忍容性の改善が求められていた。Larkin et al. NEnglJMed 2015Wolchok et al. NEnglJMed 2017

一方、インターフェロンα(IFNα)は、抗血管新生作用、免疫調節作用、アポトーシス促進作用を持つ多面的なサイトカインであり、高リスク黒色腫の術後補助療法やRCCの治療に用いられてきた。マウス大腸癌モデルにおける研究では、IFNα処理が腫瘍浸潤リンパ球におけるPD-1発現を増加させることが観察されており、IFNαと抗PD-1療法の併用による相乗的な免疫活性化が期待された。しかし、これらの併用療法の安全性プロファイルと最適な用量については、まだ未解明な点が多かった。特に、ペムブロリズマブと低用量イピリムマブの併用、あるいはペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの併用における毒性プロファイルと初期有効性に関するデータは不足していた。

このような背景から、KEYNOTE-029試験は、ペムブロリズマブと減量イピリムマブ、およびペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bという2つの併用療法を並行して第Ib相で評価し、それぞれの毒性プロファイルと初期有効性を検討する目的で計画された。本研究は、進行悪性腫瘍に対する新たな免疫療法併用戦略の確立に向けた重要な一歩となる。

目的

本第Ib相KEYNOTE-029試験の目的は、進行黒色腫または既治療の腎細胞癌(RCC)患者において、以下の2つの併用療法の安全性、忍容性、および初期抗腫瘍活性を評価することである。

  1. ペムブロリズマブとイピリムマブの併用: ペムブロリズマブ 2 mg/kgを3週間ごと(Q3W)に投与し、イピリムマブ 1 mg/kgをQ3Wで4回投与するレジメンの安全性、忍容性、および初期抗腫瘍活性を評価する。特に、用量制限毒性(DLT)の発生率に基づいて忍容性を判断する。
  2. ペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの併用: ペムブロリズマブ 2 mg/kg Q3WとPEG-IFNα-2bを週1回皮下投与するレジメンの最大耐量(MTD)を決定する。

さらに、両コホートにおいて、ペムブロリズマブの薬物動態(PK)プロファイルおよび抗薬物抗体(ADA)の発生率を評価することも副次的な目的とした。これらの評価を通じて、各併用療法の臨床開発の継続または中止を判断するための重要なデータを得ることを目指した。

結果

コホート1(ペムブロリズマブ+イピリムマブ)の安全性: 2014年4月2日から11月18日までに、黒色腫患者12例とRCC患者10例の計22例がペムブロリズマブとイピリムマブの併用療法コホートに登録された。DLT評価対象の19例中6例(31.6%)が1件以上のDLTを経験した。DLTは全てグレード3であり、大腸炎(n=1)、Vogt-Koyanagi-Harada症候群(n=1)、ALT/AST上昇(n=2)、肝炎(n=1)、高脂肪酵素血症(n=1)が含まれた。データカットオフ時点で未解決のDLTは、グレード4のリパーゼ上昇1例のみであった。治療関連死は認められなかった。事前に規定されたDLT基準(18例中6例以下)を満たしたため、ペムブロリズマブ 2 mg/kg Q3Wとイピリムマブ 1 mg/kg Q3Wの4回投与レジメンは忍容可能と判断された。 全22例中13例(59%)でグレード3〜4の治療関連有害事象(TRAE)が発生した。2例以上に発生したグレード3〜4 TRAEは、大腸炎(4例; 18%)、リパーゼ上昇(4例; 18%)、ALT上昇(2例; 9%)、AST上昇(2例; 9%)であった(Table 2)。免疫関連有害事象は14例(64%)に計18件発生し、そのうちグレード3〜4は6件(大腸炎: 4件、高サイロキシン血症: 1件、肺臓炎: 1件)であった。これら6件のグレード3〜4免疫関連有害事象は全て最終的に解消し、ステロイドによる管理が可能であった(Table 3)。高用量ステロイド(プレドニゾン換算40 mg/日以上)は肺臓炎1件と大腸炎4件全てに使用された。低用量ステロイドは副腎不全1件と下垂体炎3件に使用された。

コホート1の有効性: 黒色腫患者12例における独立中央レビューによる客観的奏効率(ORR)は42%(95% CI: 15%-72%)であり、完全奏効(CR)1例、部分奏効(PR)4例が認められた。安定病変は4例、進行病変は2例であった。奏効持続期間の中央値は、黒色腫の奏効者5例で未到達であった(奏効持続期間の範囲: 14.8+〜27.2+ヵ月)。 RCC患者10例におけるORRは、中央レビューおよび担当医レビューともに30%(95% CI: 7%-65%)であり、CR 1例、PR 2例が認められた。RCC奏効者における奏効持続期間の中央値は24.0ヵ月(範囲: 9.3〜24.0ヵ月)であった。この忍容性プロファイルと初期有効性に基づき、黒色腫拡大コホートへの移行が承認された。その後の拡大コホート(n=153)では、ORR 61%、12ヵ月無増悪生存期間(PFS)69%、12ヵ月全生存期間(OS)89%という良好な成績が報告されている。

コホート2(ペムブロリズマブ+PEG-IFNα-2b)の安全性: 2014年4月15日から2015年8月17日までに、17例がペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの併用療法コホートに登録された。全17例がDLT評価対象となった。用量レベル2(PEG-IFNα-2b 2 μg/kg)では、3例中2例でDLTが発現した。具体的には、グレード3のAST上昇1例、グレード4のうつ病とグレード4の自殺企図1例であった。事前規定のルールに基づき、その後の患者は用量レベル1に登録された。用量レベル1(PEG-IFNα-2b 1 μg/kg)では、14例中2例でDLTが発現した。具体的には、グレード3のうつ病1例、グレード2の第3神経障害1例であった。DLT規定に基づき、ペムブロリズマブ 2 mg/kg Q3WとPEG-IFNα-2b 1 μg/kg/週がMTDと決定された。 全17例中10例(59%)でグレード3〜4のTRAEが認められた。3例以上に発現したTRAEは、疲労感(11例; 65%)、発熱(7例; 41%)、悪寒、下痢、悪心(各6例; 35%)であった。グレード3〜4のTRAEでは、うつ病が2例(12%)に認められた(Table 2)。免疫関連有害事象は4例(24%)に計8件発生し、グレード3〜4は肝炎のみ(1件; 6%)であった(Table 3)。PEG-IFNα-2bに関連する精神医学的AE(うつ病、自殺企図)が顕著であり、PEG-IFNα-2bの既知の毒性として神経精神症状が主要なDLTとなった。

コホート2の有効性: 黒色腫患者5例におけるORR(中央レビューおよび担当医レビュー双方)は20%(PR 1例、奏効持続期間5.5ヵ月)であった。RCC患者12例におけるORRは17%(PR 2例、両例とも用量レベル1)であった。用量レベル2のRCC患者3例には奏効は認められなかった。 この奏効率は、単剤ペムブロリズマブで期待される奏効率を下回る可能性があり、毒性プロファイル(グレード3〜4 TRAE 59%、精神科的DLT)と照合した結果、ペムブロリズマブとPEG-IFNα-2b併用の開発中止が決定された。

薬物動態と免疫原性: ペムブロリズマブとイピリムマブ、およびペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの双方のコホートにおいて、ペムブロリズマブの観察血清濃度は、進行黒色腫および非小細胞肺癌(NSCLC)患者2,993例を含む大規模なペムブロリズマブ単剤PKモデルの90%予測区間内に収まった(Figure 3)。イピリムマブまたはPEG-IFNα-2bとの併用投与は、ペムブロリズマブの薬物動態に臨床的に意義のある影響を与えなかった。抗薬物抗体(ADA)陽性率は、ペムブロリズマブ+イピリムマブコホートで6%(18例中1例)、ペムブロリズマブ+PEG-IFNα-2bコホートで12%(17例中2例)であった。これは、単剤ペムブロリズマブ解析における約1.7%と比較して高い傾向にあった。

考察/結論

先行研究との違い: 本試験は、先行するニボルマブとイピリムマブ(全量)の併用療法(CheckMate-067試験)と異なり、ペムブロリズマブと低用量イピリムマブの併用レジメンの忍容性と有効性を評価した。CheckMate-067試験におけるグレード3〜4のTRAE発生率が55〜59%であったのに対し、本試験のペムブロリズマブとイピリムマブ併用コホートでは59%と同程度であったが、その後のKEYNOTE-029拡大コホート(n=153)では45%に低下した。これは、より大きなサンプルサイズ、前治療歴の少ない集団、および黒色腫患者に限定されたことが反映されたと考えられる。この結果は、従来の全量イピリムマブ併用レジメンと比較して、減量イピリムマブ併用レジメンがより優れた忍容性プロファイルを持つ可能性を示唆する点で、これまでと異なる知見である。

新規性: 本研究で初めて、ペムブロリズマブ 2 mg/kg Q3Wとイピリムマブ 1 mg/kg Q3Wの併用レジメンが、進行黒色腫およびRCCにおいて忍容性があり、かつ有望な抗腫瘍活性を示すことを新規に同定した。特に、黒色腫拡大コホートにおける12ヵ月PFS 69%および12ヵ月OS 89%という良好な成績は、ニボルマブとイピリムマブの全量併用療法(CheckMate-067: 約50%および72%)と少なくとも同等以上の有効性と優れた忍容性を有する可能性を示唆する。これは、PD-1とCTLA-4の二重遮断が、CTLA-4阻害による広範な免疫活性化とPD-1阻害による腫瘍局所のエフェクター機能回復を組み合わせることで、相乗的な抗腫瘍免疫を誘導するというモデルを支持する。

臨床応用: ペムブロリズマブとイピリムマブ(pembro 2 mg/kg + ipi 1 mg/kg)の組み合わせは、その後のKEYNOTE-029拡大コホート(未治療黒色腫)で有望な成績を示し、臨床応用への道を開いた。この知見は、進行黒色腫およびRCC患者に対する新たな治療選択肢を提供する可能性があり、臨床現場での患者アウトカム改善に貢献しうる。また、異なる用量設定(ペムブロリズマブ 200 mg Q3W + イピリムマブ 50 mg Q6W または 100 mg Q12W)での評価も進められており、最適なレジメンの確立が期待される。

残された課題: ペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの併用については、前臨床での相乗効果の期待とは対照的に、臨床では毒性(特に精神神経毒性)が顕著であり、有効性は限定的であったため、開発中止が決定された。ORR 17〜20%は、単剤ペムブロリズマブで期待される奏効率(黒色腫で約33〜40%、RCCで約20〜25%)と同等か低い可能性があり、PEG-IFNα-2bの追加による有効性増強は認められなかった。これは、本研究の患者の大多数がRCC(75〜71%)であったこと、および黒色腫の方がIFNα応答性が高い可能性が考えられる。今後の検討課題として、pembrolizumabとipilimumab 1 mg/kgの併用と、ニボルマブとイピリムマブ 3 mg/kgの併用を直接比較するランダム化試験データの蓄積が残されている。また、RCCにおけるペムブロリズマブとイピリムマブの有効性(KEYNOTE-427試験など)のさらなる評価、PD-L1発現、腫瘍変異負荷(TMB)、腸内マイクロバイオームなどの予測バイオマーカーによる患者選択、およびLAG-3、TIM-3、TIGITなどの次世代チェックポイント標的との組み合わせ探索も、今後の研究方向性として挙げられる。本試験は、免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせ開発において重要な用量最適化の方向性を提示した先駆的な試験として位置付けられる。

方法

試験デザインと参加者: 本研究は、国際多施設共同オープンラベル第Ib相試験(KEYNOTE-029; ClinicalTrials.gov, NCT02089685)の用量設定部分として実施された。米国国内の7つの学術医療センターから患者が登録された。本試験は、ペムブロリズマブとイピリムマブの併用療法コホートと、ペムブロリズマブとPEG-IFNα-2bの併用療法コホートの2つの独立したコホートで構成された。

適格基準: 18歳以上の患者が対象とされた。組織学的に確認された進行性または転移性黒色腫(前治療の回数は問わない)または、主に淡明細胞型組織像のRCC(1ライン以上の前治療歴があること)を有する患者が組み入れられた。ECOGパフォーマンスステータスは0または1とされた。RECIST v1.1に基づき1つ以上の測定可能病変を有することが必須であった。Eisenhauer et al. EurJCancer 2009。IFNα、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CD137、または抗CTLA-4抗体の前治療歴がある患者は除外された。全身性ステロイドを必要とする活動性の自己免疫疾患、活動性の非感染性肺炎、または制御されていない甲状腺機能障害や糖尿病の患者も除外された。ブドウ膜黒色腫、眼球黒色腫、活動性脳転移、または軟膜転移の患者は除外されたが、治療済みで安定した脳転移を有する患者は適格とされた。全ての患者は治験実施計画書およびその修正案、GCPガイドライン、ヘルシンキ宣言に従い、書面によるインフォームドコンセントを提供した。

治療レジメン:

  • コホート1(ペムブロリズマブ+イピリムマブ): 患者はペムブロリズマブ 2 mg/kgを3週間ごと(Q3W)に30分かけて静脈内投与(最長2年間)し、イピリムマブ 1 mg/kgをQ3Wで90分かけて静脈内投与を4回受けた。DLT評価対象の18例中6例以下がDLTを経験した場合に忍容性があると判断する安全性ランインデザインが採用された。このコホートには黒色腫患者12例とRCC患者10例の計22例が登録された。
  • コホート2(ペムブロリズマブ+PEG-IFNα-2b): 患者はペムブロリズマブ 2 mg/kg Q3W(最長2年間)とPEG-IFNα-2bを週1回皮下投与で受けた。用量レベル1はPEG-IFNα-2b 1 μg/kg、用量レベル2は2 μg/kgと設定された。修正毒性確率区間法(modified toxicity probability interval method)に基づくDLT評価が行われ、各用量レベルで最大14例が登録された。このコホートには黒色腫患者5例とRCC患者12例の計17例が登録された。 治療は、病勢進行、忍容できない毒性、患者の同意撤回、または治験責任医師の判断により中止された。有害事象(AE)によりペムブロリズマブを永続的に中止した患者は、全ての治験薬を中止する必要があった。一方、イピリムマブまたはPEG-IFNα-2bをAEにより永続的に中止した患者は、AEがグレード0または1に回復した後、ペムブロリズマブを再開することが可能であった。

評価項目:

  • 主要評価項目: サイクル1(最初の6週間)におけるDLT率に基づくペムブロリズマブ+イピリムマブの忍容性、およびペムブロリズマブ+PEG-IFNα-2bのMTD決定。また、全治療期間中の有害事象の発生率も評価された。
  • 副次評価項目: RECIST v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)および奏効持続期間。
  • 探索的評価項目: ペムブロリズマブの薬物動態(PK)および抗薬物抗体(ADA)の発生率。

統計解析: ペムブロリズマブ+イピリムマブコホートでは、DLT評価可能患者18例中6例以下がDLTを経験した場合に忍容性があると判断された。ペムブロリズマブ+PEG-IFNα-2bコホートでは、修正毒性確率区間法に基づき、目標DLT率を30%として用量設定が行われた。各用量レベルで最大14例が評価された。SASバージョン9.3が全ての統計解析に用いられた。