• 著者: H. Jillian Pegram, Terence J. Purdon, Dayenne G. van Leeuwen, Kevin J. Curran, Sergio A. Giralt, John N. Barker, Renier J. Brentjens
  • Corresponding author: Renier J. Brentjens (Memorial Sloan Kettering Cancer Center)
  • 雑誌: Leukemia
  • 発行年: 2015
  • Epub日: 2014-07-24
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 25005243

背景

B細胞急性リンパ性白血病 (B-ALL: B-cell acute lymphoblastic leukemia) 患者に対する同種造血幹細胞移植は標準治療であるが、適切なHLA適合ドナーが得られない場合、代替治療として臍帯血移植 (UCBT: umbilical cord blood transplantation) が広く用いられる。しかし、UCBT後の白血病再発は依然として主要な治療失敗の原因であり、Marks et al. (2014) の報告では、第1または第2完全寛解期にUCBTを施行した成人B-ALL患者116名における3年再発率は22%に達していた。特に、移植時に微小残存病変が存在する患者や、低強度前処置を受けた患者では再発リスクが著しく上昇するため、抗白血病効果をさらに増強するアプローチが求められている。

腫瘍特異的なキメラ抗原受容体 (CAR: chimeric antigen receptor) を発現するように遺伝子改変されたT細胞は、主要組織適合性複合体 (MHC) 非依存的に腫瘍を認識して排除する強力なツールである。CD19特異的CAR-T細胞は、in vitroおよび複数のマウスモデルにおいて有効な抗腫瘍応答を誘導することが示されている (Brentjens et al. 2007, Wang et al. 2010)。さらに、臨床試験においても、CD19陽性B細胞性悪性腫瘍患者に対するCD19特異的CAR-T細胞の投与は、極めて顕著な抗腫瘍効果を示すことが報告されている (Brentjens et al. Blood 2011Kalos et al. SciTranslMed 2011Kochenderfer et al. Blood 2012Brentjens et al. SciTranslMed 2013)。同種移植後の再発に対しても、ドナー由来のCD19特異的CAR-T細胞の養子移入が、移植片対宿主病 (GVHD) を誘発することなく持続的な寛解をもたらすことが実証されている (Kochenderfer et al. 2013)。

UCBT後の患者においても、移植片対白血病 (GVL: graft-versus-leukemia) 効果をさらに増強するためにドナー由来CAR-T細胞の養子移入は魅力的な選択肢である。しかし、1単位の臍帯血 (UCB: umbilical cord blood) から回収できるT細胞数は極めて限られており、かつ細胞傷害性T細胞のex vivoでの拡大培養能力が限定的であるため、このアプローチの臨床応用は技術的に極めて困難であった。これまでのUCB T細胞のex vivo拡大研究では、培養過程でエフェクターメモリー表現型への分化が進み、体内持続性に優れたセントラルメモリー表現型が維持できないという課題が存在した (Okas et al. 2010)。インターロイキン-12 (IL-12) は抗腫瘍免疫を増強する強力な免疫活性化サイトカインであり、CAR-T細胞にIL-12分泌能を付与することで抗腫瘍効果が劇的に向上することが報告されているが (Pegram et al. Blood 2012)、UCB由来T細胞を臨床的に十分な細胞数まで拡大し、かつ抗腫瘍効果を最大化するような遺伝子改変を施すための最適な培養条件や改変戦略は未解明であった。このように、UCB由来T細胞のポテンシャルを最大限に引き出すための最適なサイトカインシグナル制御技術や、遺伝子導入プロトコルに関する知見が不足していた。

目的

本研究の目的は、以下の3点を検証することである。 (1) 臨床応用に十分な細胞数を得るために、臍帯血 (UCB) 由来T細胞を効率的に拡大培養できる最適な外因性サイトカインの組み合わせを同定すること。 (2) CD19特異的CAR (1928z; CD28共刺激ドメインおよびCD3ζ活性化ドメイン含有) と、免疫活性化サイトカインであるIL-12遺伝子を共発現するCAR UCB T細胞 (1928z/IL-12) を作製し、そのin vitroにおける表現型、増殖能、サイトカイン産生能、および細胞傷害活性を詳細に評価すること。 (3) B細胞急性リンパ性白血病 (B-ALL) を模したSCID-Beige (severe combined immunodeficiency-beige) マウスモデルを用いて、IL-12分泌型CAR UCB T細胞が、CAR単独発現T細胞と比較して、in vivoにおいて優れた腫瘍抑制効果および生存期間延長効果を発揮するかを実証すること。

結果

IL-12およびIL-15の併用によるUCB T細胞の劇的な拡大とセントラルメモリー表現型の維持: CD3/CD28ビーズで活性化したUCB T細胞を異なるサイトカイン条件下で12日間培養した結果、IL-15を含むすべての培養条件 (IL-15単独、IL-12+IL-15、IL-15+IL-7、IL-15+IL-2) において120-fold以上の細胞拡大が達成された (Figure 1)。特に、IL-12とIL-15を組み合わせた培養条件では、12日間で平均150-fold以上の極めて高い拡大倍率を記録した (n=7 donors, p<0.05)。このIL-12+IL-15培養群は、CD4:CD8比を約1:1に維持しつつ (Figure 2a)、他のサイトカイン条件と比較して、セントラルメモリーマーカーであるCCR7およびCD62Lの発現率が有意に高かった (p<0.05) (Figure 2b)。さらに、共刺激分子CD28の発現も高度に維持されており (Figure 2c)、CD4+およびCD8+ T細胞の両サブセットにおいて、細胞傷害活性に必須のGranzyme Bの発現が有意に上昇していた (p<0.05) (Figure 2d)。一方で、免疫チェックポイント分子であるPD-1やCTLA-4の発現増強は認められず、細胞の疲弊は誘導されていないことが確認された (Figure 2e, f)。また、CD3/CD28による再刺激後のIFN-γ産生能は、IL-12+IL-15培養群において最も高値を示した (p<0.05) (Figure 3)。

UCB T細胞へのCARおよびIL-12遺伝子の高効率な導入とエフェクター分子の増強: IL-12+IL-15条件下で拡大したUCB T細胞に対し、γレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行った。7回の独立した実験 (n=7 replicates) における平均遺伝子導入率は、1928z CAR T細胞で67.24% (±9.90%)、1928z/IL-12 CAR T細胞で47.7% (±6.72%) であり、臨床応用に十分な導入効率が得られた (Figure 4b)。1928z/IL-12 UCB T細胞は、IL-12を共発現しない1928z UCB T細胞と比較して、高いCD62L発現と低いCD25発現を維持していたが、CCR7発現レベルは同等であった (Figure 4c)。さらに、1928z/IL-12 UCB T細胞では、CAR単独群と比較して、細胞傷害性エフェクタータンパク質であるPerforinおよびGranzyme Bの発現が有意に増強されていた (Figure 4d)。

In Vitroにおける優れた抗腫瘍活性、増殖能、およびサイトカイン産生能: 標的腫瘍細胞 (Nalm6およびRaji) との24時間共培養 (n=3 replicates) において、1928z/IL-12 UCB T細胞は、1928z単独群と比較して極めて高レベルのIL-12p70を分泌し、それに伴いIFN-γの産生量も有意に増加した (p<0.05) (Figure 5a)。一方で、IL-2の分泌量は1928z/IL-12群において有意に低下していた (p<0.05) (Figure 5a)。Nalm6細胞との共培養における増殖能を膜染色色素の希釈法で評価したところ、1928z/IL-12 UCB T細胞は1928z単独群よりも顕著に高い増殖活性を示した (Figure 5b)。さらに、4時間の51Cr放出アッセイにおいて、1928z/IL-12 UCB T細胞は、RajiおよびNalm6腫瘍細胞に対して、1928z単独群よりも有意に高い特異的細胞傷害活性を発揮した (p<0.05) (Figure 5c)。

白血病担持マウスモデルにおける劇的な生存期間延長効果: SCID-Beigeマウスを用いたNalm6全身性白血病モデル (n=8 mice/群) において、5×10^6個の1928z/IL-12 UCB T細胞を単回静脈内投与した治療群は、1928z単独投与群、対照CAR (4H1128z) 群、対照CAR/IL-12 (4H1128z/IL-12) 群、および無治療群と比較して、腫瘍の増殖を強力に抑制し、生存期間を有意に延長した (log-rank p<0.05) (Figure 6a, b)。1928z/IL-12群における生存期間中央値は他のすべての群と比較して極めて長く、ハザード比 (HR) は0.35 (95% CI 0.18-0.68, p<0.01) であった。外因性IL-12を含むサイトカインで前培養した1928z UCB T細胞を投与した群ではこのような強力な腫瘍抑制効果が得られなかったことから、in vivoでの持続的な抗腫瘍効果の発揮には、遺伝子導入による持続的なオートクリン/パラクリンIL-12分泌が不可欠であることが示された。

考察/結論

先行研究との違い: 従来のUCB由来T細胞の拡大プロトコルでは、OKT3抗体とIL-2を用いた刺激により約39-foldの拡大に留まるか、あるいはCD3/CD28ビーズを用いて拡大倍率を向上させた場合でも、CCR7の消失を伴うエフェクターメモリー表現型への分化が進行してしまう点が課題であった (Okas et al. 2010)。これに対し、本研究で確立したIL-12およびIL-15を組み合わせた培養プロトコルは、12日間で150-fold以上の劇的な細胞拡大を達成しつつ、CCR7およびCD62L陽性のセントラルメモリー表現型と、Granzyme B高発現のエフェクター表現型を高度に共発現するユニークな細胞集団を誘導できる点で、これまでの報告と大きく異なり、極めて優れている。

新規性: 本研究は、IL-12とIL-15のシグナル制御により、UCB由来T細胞においてセントラルメモリー特性と強力な細胞傷害活性を両立した高機能なT細胞集団を効率的に製造できることを初めて実証した。また、CD19特異的CARに加えてIL-12分泌能を付与した1928z/IL-12 UCB T細胞が、in vitroおよびin vivoにおいてCAR単独群を凌駕する抗腫瘍効果を発揮することを新規に示した。特に、外因性IL-12による前処理のみでは不十分であり、トランスジーンを介した持続的な内因性IL-12分泌が、アグレッシブな白血病モデルにおける生存期間の劇的な延長に必須であるという知見は、次世代CAR-T細胞の設計における重要なマイルストーンである。

臨床応用: 本研究の成果は、UCBT後の白血病再発に苦しむ患者に対するドナー由来CAR-T細胞療法の臨床応用を強力に後押しする。1単位のUCBユニットのわずか5%から10%の細胞を用いるだけで、本プロトコルにより150-fold以上に拡大できるため、UCBT自体の生着に必要な造血幹細胞数を損なうことなく、治療に十分な用量のCAR-T細胞製品を安定的に製造することが可能である。UCB由来T細胞はナイーブな性質を持ち、同種抗原に対する反応性が低いため、養子移入後のGVHD発症リスクを最小限に抑えつつ、強力なGvL効果を付加できるという臨床的メリットは極めて大きい。

残された課題: 今後の検討課題として、臨床応用における安全性の担保が挙げられる。IL-12は強力なサイトカインであるため、過剰な全身性分泌による毒性や、遺伝子導入T細胞の悪性形質転換リスクについて慎重な評価が必要である。TCRレパートリーの正常なポリクローナリティが維持されているかをTCRβ鎖遺伝子免疫シーケンシング等で確認する必要がある。さらに、万が一の重篤な毒性発現時に備え、DiStasi et al. NEnglJMed 2011が提唱した誘導型カスパーゼ9 (iCasp9) などの自殺遺伝子システムを本CAR/IL-12構築物に組み込むことで、安全性をさらに高めるアプローチが今後の重要な研究方向性である。

方法

本研究は基礎研究であり、臨床試験登録番号 (NCT) は存在しない。

1. 臍帯血由来T細胞の単離と拡大培養

公的バンクの細胞数基準を満たさない新鮮なUCBユニットから、密度勾配遠心法 (Accu-prep) により単核球細胞を分離した。T細胞の単離、活性化、および拡大には、Dynabeads ClinExVivo CD3/CD28磁気ビーズを用いた。活性化したUCB T細胞を、100 IU/mLの遺伝子組み換えヒトIL-2存在下で、外因性サイトカインとしてIL-12、IL-15、IL-7 (各10 ng/mL) を様々な組み合わせで添加し、12日間培養した。Trypan blue染色を用いて生存細胞数を計測し、fold expansion (拡大倍率) を算出して最適な培養条件を決定した。

2. レトロウイルスベクターによる遺伝子導入

最適化された培養条件 (IL-12 + IL-15) で拡大したUCB T細胞に対し、CD19特異的CAR (1928z) またはIL-12共発現CAR (1928z/IL-12) をコードするγレトロウイルスベクターを導入した。対照群として、卵巣がん抗原MUC-16を標的とするCAR (4H1128z) およびIL-12共発現対照CAR (4H1128z/IL-12) を用いた。レトロネクチンコートプレート上で3回のスピンキュレーションを行うことで遺伝子導入を完了した。

3. フローサイトメトリーによる表現型解析

遺伝子導入後のCAR発現率は、ヤギ抗マウスPE抗体を用いて検出した。T細胞の分化段階および機能分子の発現を評価するため、CD4、CD8、CD62L、CCR7、CD45RA、CD28、CD25、Granzyme B、Perforin、PD-1、CTLA-4に対する特異的抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーで解析した。

4. In Vitro機能評価

遺伝子改変UCB T細胞を、標的腫瘍細胞であるRaji (バーキットリンパ腫細胞株) またはNalm6 (pre-B-cell ALL細胞株) と1:1の割合で24時間共培養した。上清中のIL-12p70、IFN-γ、IL-2の産生量をLuminexアッセイにより定量した。T細胞の増殖能は、膜染色色素 (CellVue Claret) の希釈度をフローサイトメトリーで測定することで評価した。細胞傷害活性は、51Crで標識したRajiおよびNalm6細胞を標的とし、様々なエフェクター:ターゲット (E:T) 比で4時間共培養した後の51Cr放出量を測定することで算出した。

5. In Vivo抗腫瘍効果の検証

6-8週齢の雌性SCID-Beigeマウスに対し、GFPおよびファイアフライルシフェラーゼを発現するNalm6細胞 (Nalm6-eGFP-FFluc) を1×10^6個静脈内投与して全身性白血病モデルを確立した。腫瘍接種の翌日、5×10^6個のCAR陽性UCB T細胞を単回静脈内投与した。腫瘍の生体内進展は、D-Luciferin (150 mg/kg) を腹腔内投与した10分後に、生物発光イメージングシステム (Xenogen IVIS) を用いて評価した。

6. 統計解析

生存データの比較にはlog-rank検定を用いた。フローサイトメトリーデータおよびサイトカイン分泌量の比較には、非媒介統計解析であるMann-Whitney U testを用いた。すべての解析はPrism 5.0ソフトウェアを用いて実施した。