Article data
Randomized controlled trial of resection versus radiotherapy after induction chemotherapy in stage IIIA-N2 non-small-cell lung cancer
- 著者: van Meerbeeck JP, Kramer GWPM, Van Schil PEY, Legrand C, Smit EF, Schramel F, Tjan-Heijnen VC, Biesma B, Debruyne C, van Zandwijk N, Splinter TAW, Giaccone G (EORTC-Lung Cancer Group)
- Corresponding author: Jan P. van Meerbeeck, MD, PhD (Department of Respiratory Medicine, University Hospital Ghent, Ghent, Belgium)
- 雑誌: Journal of the National Cancer Institute
- 発行年: 2007
- Epub日: 2007-03-21
- Article種別: Original Article
- PMID: 17374834
背景
Stage IIIA-N2非小細胞肺癌 (NSCLC) は、縦隔リンパ節転移を伴う局所進行疾患であり、その病態は孤立したリンパ節微小浸潤から縦隔を巻き込む巨大浸潤まで多岐にわたる不均一なグループである。外科切除単独での5年生存率は7〜24%にとどまり、局所再発率も高く、長期生存は少数例に限られていた (Andre et al. 2000)。このため、より効果的な治療戦略が求められていた。
術前化学療法 (導入化学療法) は、複数の小規模なランダム化比較試験 (RCT) において、5年生存率を17〜36%まで改善し得ることが示されており (Rosell et al. 1994, Roth et al. 1994, Pass et al. 1992)、切除前の腫瘍縮小と微小転移の制御を目的として広く利用されてきた。一方、プラチナ系化学療法と胸部放射線療法 (RT) の組み合わせは、NSCLCMetaAnalyses et al. BMJ 1995のメタ解析で5年生存率15%を達成し、切除不能なStage IIIA疾患の標準治療とされていた。さらに、前向き試験では同時化学放射線療法で5年生存率20%が報告されており (Albain et al. 1995)、導入化学療法に奏効した後の最適な局所治療として、外科切除と放射線療法のいずれが優れているかは未解明のままであった。
「導入療法への奏効は切除可能性と生存の改善を示す」という仮説のもと、手術が放射線療法より優れるかどうかを検証する必要があった。特に、当時の臨床現場では、導入化学療法後に切除可能となった患者に対しては外科切除が積極的に選択される傾向があったが、その優位性を示す大規模なエビデンスは不足していた。本研究は、この臨床的ギャップを埋めることを目的として計画された。
目的
本研究の目的は、導入プラチナ系化学療法に奏効したStage IIIA-N2 NSCLC患者において、局所治療として外科切除と胸部放射線療法のいずれが全生存期間 (OS) を改善するかを、intention-to-treat (ITT) 解析で検証することであった。本研究は、欧州癌治療研究機構 (EORTC) 肺癌グループが実施した多施設無作為化比較試験 (EORTC 08941) として実施された。当初の仮説は「手術が放射線療法よりOSを有意に改善する」というものであった。副次評価項目として、無増悪生存期間 (PFS) および安全性プロファイルが設定された。
結果
主要エンドポイント: 全生存期間および無増悪生存期間の同等性: 332例が無作為割付され (切除群n=167、放射線療法群n=165)、中央値フォローアップ期間は放射線療法群で73ヶ月、手術群で67ヶ月であった。全生存期間 (OS) 中央値は、切除群で16.4ヶ月 (95% CI 13.3-19.0) であったのに対し、放射線療法群では17.5ヶ月 (95% CI 15.8-23.2) であり、ハザード比 (HR) は1.06 (95% CI 0.84-1.35, P=0.596) と両群間で統計学的に有意な差は認められなかった (Fig. 2)。5年OS率は切除群15.7%に対し放射線療法群14%であり、ここでも有意差はなかった。無増悪生存期間 (PFS) 中央値も、切除群9.0ヶ月 (95% CI 7.9-10.9) に対し放射線療法群11.3ヶ月 (95% CI 8.9-15.2) であり、HRは1.06 (95% CI 0.85-1.33, P=0.605) と両群で同等であった (Fig. 3)。これらの結果は、当初の仮説「手術が放射線療法より優れる」を棄却するものであった。
導入化学療法の奏効と外科的治療の実績: 適格患者579例中、導入化学療法への奏効率は61% (95% CI 57-65%) であり、355例が奏効を示した。無作為割付に至らなかった奏効例38例の主な理由は、患者拒否 (n=14)、内科的手術不能 (n=15)、外科的切除不能 (n=5) などであった。切除群167例中154例 (92%) が実際に手術を受け、その内訳は完全切除50% (77例)、探索的開胸術14% (22例)、病理学的完全奏効 (pCR) 5% (8例) であった。病理学的縦隔ダウンステージング (ypN0-1) は42% (65例) で達成された。30日手術死亡率は全体で4%であり、術式別に見ると肺全摘後7% (右側9%、左側5%)、葉切除後0%と大きな差が認められた (Table 3)。全手術例中、肺全摘が47%と高率であった。術後放射線療法は切除群の62例 (40%) に追加実施された。
放射線療法群のプロトコール遵守と毒性: 放射線療法群165例中154例 (93%) が所定の照射コースを完了した。しかし、線量、分割数、治療期間の全項目に対する完全遵守率は55%にとどまり、45%の症例で何らかのプロトコール逸脱が認められた (Table 2)。急性Grade 3/4毒性は、食道炎が1%未満、肺臓炎が4%と比較的少なかった。晩期合併症として、肺線維症が7%、食道線維症が1%未満で認められ、1例が放射線肺臓炎により死亡した。導入化学療法開始から放射線療法終了までの全治療期間中央値は145日 (範囲 91-194日) であり、放射線療法が局所治療として完結できる低侵襲性を維持していた。
再発パターンと予後因子: 初回局所再発は放射線療法群で55%であったのに対し、切除群では32%と切除群で少なかった。しかし、遠隔再発は放射線療法群39%に対し切除群61%と切除群で多く、外科切除による局所制御の改善が遠隔再発の増加によって相殺される形となった (Table 4)。両群の全体的なOSが同等であった主因は、この再発パターンの対称的な相殺にあると考察された。多変量解析では、組織型のみが独立予後因子として同定され (非扁平上皮組織型で死亡リスクが高い)、治療の割付は独立予後因子とはならなかった。年齢、性別、ECOG PS、病期分類、前治療歴も独立予後因子として検出されなかった。
外科的サブグループの探索的解析: 手術を受けた154例の探索的解析では、葉切除または二葉切除 (n=58) を受けた患者のOS中央値は25.4ヶ月、5年OS率は27%であった。これに対し、肺全摘 (n=72) を受けた患者のOS中央値は13.4ヶ月、5年OS率は12%と著しく劣っていた (HR=0.59, 95% CI 0.40-0.87, P=0.009)。この結果は、術式の選択が予後に大きく影響することを示唆する (Table 5)。また、縦隔クリアランス (ypN0-1) を達成した患者 (n=64) はOS中央値22.7ヶ月、5年OS率29%であったのに対し、縦隔残存例 (ypN2, n=86) はOS中央値14.9ヶ月、5年OS率7%と顕著な差があった (P<0.001)。完全切除例 (断端陰性かつ最高位縦隔リンパ節陰性, n=77) はOS中央値24.1ヶ月に対し、不完全切除例 (n=76) はOS中央値12.1ヶ月であり (P<0.001)、切除の質が生存を規定する重要な因子であることが示された。なお、探索的開胸術施行例 (n=22) のOS中央値は6.8ヶ月ときわめて不良であった。
考察/結論
先行研究との違い: 本試験は、導入化学療法奏効後のStage IIIA-N2 NSCLCに対する手術と放射線療法を比較した最大規模のRCTとして、「切除が放射線療法より優れる」という当初の仮説を棄却した点で、これまでの小規模研究やメタ解析とは異なる重要な知見を提供した。特に、手術が放射線療法と比較して全生存期間を改善しないことを明確に示した点は、当時の臨床プラクティスに大きな影響を与えるものであった。この結果は、ほぼ同時期に発表された北米Intergroup試験0139 (同時化学放射線療法後の切除 vs 化学放射線療法継続、OS中央値23.6ヶ月 vs 22.2ヶ月で有意差なし) と一致する結論であり、導入療法後の切除が一般的に放射線療法を上回るとは言えないことを、2つの独立した大規模RCTが支持した。
新規性: 本研究で初めて、導入化学療法に奏効したStage IIIA-N2 NSCLC患者全体において、外科切除が放射線療法と比較してOSまたはPFSを改善しないことを大規模なRCTで実証した。また、外科的サブグループ解析において、縦隔クリアランス達成例や完全切除例では長期生存が期待できる患者サブセットが存在する可能性を新規に示唆した。
臨床応用: 本知見は、導入化学療法に奏効したStage IIIA-N2 NSCLC患者に対する治療選択において、放射線療法が低侵襲かつ同等の生存成績をもたらすため、推奨される局所治療選択肢であることを示唆する。しかし、外科的サブグループの探索的解析では、縦隔クリアランス (ypN0-1) を達成した群の5年OS率29%が放射線療法全体の14%を大幅に上回り、完全切除例のOS中央値24.1ヶ月が不完全切除例の12.1ヶ月を有意に上回った。このことは、Stage IIIA-N2でも導入療法後に縦隔クリアランスを達成し、完全切除が期待できる患者サブセットでは手術が生存利益をもたらす可能性を示唆する。したがって、術前のFDG-PET、気管支鏡内超音波 (EBUS)、再縦隔鏡による精密な縦隔再病期分類が、手術適応患者の選別に不可欠であることを本結果は強調し、個別化医療の進展に向けた重要な臨床的含意を持つ。
残された課題: 本試験の限界として、8年間の長期登録期間中にステージングモダリティ (CT、PET、縦隔鏡) や治療標準が変化した可能性が挙げられる。また、肺全摘率が47%と高く、外科侵襲を過大評価した可能性、放射線療法のプロトコール遵守率が55%にとどまった点、同時化学放射線療法の比較腕がなかった点、および放射線療法の線量が現代の定位体幹部放射線療法 (SBRT) 水準より低かった可能性も考慮されるべきである。今後の検討課題として、導入療法後に縦隔クリアランスが確認された患者サブセットにおける手術と放射線療法の比較を目的とした、適切にデザインされた前向き試験が必要である。EORTC-LCGはこのような研究を検討している。
方法
本研究は、多施設共同のランダム化比較第III相試験 (RCT) (ClinicalTrials.gov登録番号: NCT00002623) として実施された。EORTC-Lung Cancer Group (EORTC-LCG) 加盟41施設において、1994年12月から2002年12月にかけて、組織学的または細胞学的に証明されたStage IIIA-N2 NSCLC患者を登録した (適格患者n=579)。適格基準には、18歳以上、WHOパフォーマンスステータス0-2、肺線維症の証拠がないこと、および局所の多分野チームによる集学的治療への適格性が含まれた。導入化学療法は、3サイクルのプラチナ系 (シスプラチン80 mg/m²以上またはカルボプラチンAUC5以上) ベースレジメンを実施した。
導入化学療法後、CT評価で奏効 (完全奏効、部分奏効、またはminor奏効) を示した患者のみを、外科切除群 (n=167) または放射線療法群 (n=165) に無作為割付した。層別化因子は、奏効種別、組織型、および施設であった。放射線療法は、原発巣および浸潤縦隔に60〜62.5 Gy、非浸潤縦隔に40〜46 Gyを30〜32分割で照射した。3D治療計画と肺組織補正が必須とされた。外科切除は標準化された規格で実施され、完全切除は「断端陰性かつ最高位縦隔リンパ節腫瘍陰性」と定義された。術後放射線療法は、不完全切除例に対して56 Gyが推奨された。
主要エンドポイントはITT解析によるOSであった。放射線療法群の5年OS率15%に対し、手術群で25%への改善を検出するよう試験が設計された。この検出には両側5%の有意水準と80%の検出力で292イベントが必要とされた。試験は、当初予定より少ない患者数 (n=332) で早期に終了されたが、統計家のアドバイスにより、主要エンドポイントの死亡イベント数 (279) が必要数に近かったため、検出力に大きな影響はないと判断された。後方視的検出力は約75%であった。統計解析には、Kaplan-Meier法による生存曲線推定と、両側ログランク検定 (log-rank test) が用いられた。多変量解析にはCox比例ハザードモデルが適用された。