• 著者: Mok TSK, Loong H
  • Corresponding author: Tony S. K. Mok (The Chinese University of Hong Kong, Hong Kong, China)
  • 雑誌: Lancet
  • 発行年: 2014
  • Epub日: 2014-06-02
  • Article種別: Commentary
  • PMID: 24933331

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) の治療において、プラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した患者に対する二次治療の選択肢は限られていた。血管新生は腫瘍の増殖と転移に不可欠なプロセスであり、これを標的とする抗血管新生薬はがん治療の有望なアプローチとして注目されてきた。特に、血管内皮増殖因子受容体-2 (VEGFR-2) は血管新生経路の主要なメディエーターであり、これを阻害する薬剤の開発が進められてきた。

過去には、一次治療としてベバシズマブ (bevacizumab) と化学療法の併用がNSCLC患者の生存期間を改善することが示されており、例えば Sandler et al. NEnglJMed 2006 のE4599試験では、パクリタキセル・カルボプラチン単独と比較して、ベバシズマブを追加することでOSが有意に改善された (HR 0.79)。しかし、二次治療における抗血管新生薬の有効性については、LUME-Lung 1試験 (Reck et al. LancetOncol 2014) でニンテダニブ (nintedanib) とドセタキセル (docetaxel) の併用が検討されたものの、全集団でのOS改善は統計的に有意ではなかった。

このような背景のもと、REVEL試験 (Garon et al. Lancet 2014) は、進行NSCLCの二次治療として、ドセタキセルにVEGFR-2モノクローナル抗体であるラミシルマブ (ramucirumab) を追加する治療法の有効性を評価する大規模な第III相臨床試験として実施された。本試験では、ドセタキセル単独療法と比較して、ラミシルマブとドセタキセルの併用療法が全生存期間 (OS) を統計的に有意に改善することが示された。具体的には、中央値OSが10.5ヶ月 vs 9.1ヶ月 (ハザード比 [HR] 0.86, 95%信頼区間 [CI] 0.75-0.98, p=0.024) であった。

しかし、このOSの絶対的な改善幅は1.4ヶ月と小さく、抗血管新生薬の恩恵を受ける患者を特定するための予測バイオマーカーが依然として未解明であるという課題が残されている。分子標的治療薬の時代においては、EGFR変異やALK転座などのドライバー遺伝子変異が同定された患者群に対しては、より大きな治療効果が期待できる薬剤が開発されており、例えばEGFR-TKIやALK阻害剤は、バイオマーカーによって選択された患者群において劇的な効果を示している (Lynch et al. NEnglJMed 2004, Soda et al. Nature 2007, Shaw et al. NEnglJMed 2013, Sequist et al. JClinOncol 2013)。このような背景から、抗血管新生薬のような広範な作用機序を持つ薬剤において、統計的有意性だけでなく、臨床的意義を評価する上で予測バイオマーカーの不在は大きな不足点として認識されている。本解説は、REVEL試験の結果が示す統計的有意性が、実際の臨床現場においてどの程度の意義を持つのか、そして予測バイオマーカーの重要性について批判的に論じることを目的としている。

目的

本解説の目的は、進行NSCLCの二次治療におけるラミシルマブとドセタキセルの併用療法を評価したREVEL試験の結果について、その統計的有意性と臨床的意義を批判的に評価することである。特に、全生存期間 (OS) の改善がハザード比 (HR) 0.86 (95% CI 0.75-0.98) および中央値OSの絶対差1.4ヶ月という結果であったことを踏まえ、この効果量が臨床的に意味のある改善を反映しているか否かを考察する。また、抗血管新生薬の有効性を予測するバイオマーカーが依然として同定されていない現状が、本治療法の臨床的有用性をどのように限定するかを論じ、将来的な治療戦略における予測バイオマーカー同定の重要性を強調することを目指す。さらに、EGFR変異陽性患者における後治療としてのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の使用が、REVEL試験のOS評価に与える潜在的なバイアスについても懸念を表明する。

結果

REVEL試験の主要結果と統計的有意性: REVEL試験では、進行NSCLCの二次治療としてラミシルマブとドセタキセルの併用療法が、ドセタキセル単独療法と比較して、全生存期間 (OS) を統計的に有意に改善した。具体的には、ラミシルマブ併用群のOS中央値は10.5ヶ月、ドセタキセル単独群は9.1ヶ月であり、ハザード比 (HR) は0.86 (95% CI 0.75-0.98, p=0.023) であった。この結果は、主要評価項目であるOSにおいて統計的有意性を達成したことを示している。無増悪生存期間 (PFS) もラミシルマブ併用群で有意に改善され、中央値4.5ヶ月 vs 3.0ヶ月 (HR 0.76, 95% CI 0.68-0.86, p<0.0001) であった。また、奏効率 (ORR) も23% vs 14% (p<0.0001) と、ラミシルマブ併用群で有意に高かった。これらの数値は、ラミシルマブがドセタキセルに上乗せ効果をもたらすことを示唆しているが、OSの絶対的な改善幅は1.4ヶ月にとどまり、HR 0.86という効果量は、分子標的薬で期待されるような劇的な改善とは言い難い。

他の抗血管新生薬試験との比較: 本解説では、REVEL試験の結果を他の主要な抗血管新生薬の臨床試験と比較した (Table 1)。一次治療におけるベバシズマブと化学療法の併用を評価したE4599試験では、OSのHRが0.79、中央値OSの改善が2ヶ月であった。一方、二次治療におけるニンテダニブとドセタキセルの併用を評価したLUME-Lung 1試験では、全集団でのOSは統計的に有意な改善を示さなかった (HR 0.94, 95% CI 0.83-1.05, p=0.2720)。しかし、LUME-Lung 1試験の腺癌サブグループ、特に一次治療後9ヶ月以内に病勢進行した患者群では、OSのHRが0.75 (95% CI 0.60-0.92, p=0.0073) となり、3ヶ月のOS改善が認められた。REVEL試験は、全組織型を対象とし、全体集団で一貫したOS改善のシグナルを示した点でLUME-Lung 1試験よりも優位性があるが、その効果量はE4599試験やLUME-Lung 1試験の特定のサブグループと比較して限定的である。REVEL試験の参加者の60%以上が65歳未満であり、全例がECOGパフォーマンスステータス0または1であったことから、比較的予後良好な患者集団であった可能性も指摘された。

予測バイオマーカー不在の問題: REVEL試験には、治療効果を予測する事前設定されたバイオマーカーが存在しなかった。ベバシズマブの場合、非扁平上皮がんや低出血リスクといった患者選択基準が実質的なバイオマーカーとして機能しているが、ラミシルマブは扁平上皮がんを含む全組織型に投与された。血管新生はがん特異的な現象ではないため、VEGF-A、VEGFR-1、E-セレクチン、PlGF、ICAM-1などの一般的な血管新生関連バイオマーカーは、がん治療における予測因子として特異性に欠ける可能性がある。REVEL試験では、患者の血漿およびアーカイブされた腫瘍検体から潜在的なバイオマーカーを評価する探索的解析が実施されたが、本解説執筆時点ではその詳細な方法論や結果は公表されていなかった。予測バイオマーカーが同定されないままでは、ラミシルマブの恩恵を受けない患者にも毒性や経済的負担を課すことになり、治療の最適化が困難である。

EGFR-TKI後治療によるOS評価への潜在的バイアス: REVEL試験のOS評価には、後治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) が使用されたことによる潜在的なバイアスが存在する可能性が指摘された。試験治療後にEGFR-TKIが投与された患者は、ラミシルマブ+ドセタキセル群でn=118、プラセボ+ドセタキセル群でn=133であった。しかし、これらの患者におけるEGFR変異ステータスは35%未満の患者でしか判明していなかった。EGFR変異陽性患者でEGFR-TKIが投与された正確な人数は不明であり、両治療群間でEGFR変異陽性患者の数やEGFR-TKI曝露のバランスが保証されていない。EGFR変異陽性患者はEGFR-TKIによって劇的なOS延長を示すことが知られているため、後治療におけるEGFR-TKIのわずかな不均衡が、OS評価に統計的に有意なバイアスをもたらす可能性が懸念される。

考察/結論

本解説は、REVEL試験が進行NSCLCの二次治療においてラミシルマブとドセタキセルの併用療法が全生存期間 (OS) を統計的に有意に改善したことを認めつつも、その臨床的意義については懐疑的な見解を示した。

先行研究との違い: これまでの抗血管新生薬の臨床試験、特にLUME-Lung 1試験では、全集団でのOS改善は認められなかった。REVEL試験は全組織型を対象とした全集団で統計的有意なOS改善を示した点で、LUME-Lung 1試験とは異なる結果であった。しかし、そのOS改善幅は1.4ヶ月 (HR 0.86, 95% CI 0.75-0.98) と小さく、一次治療におけるベバシズマブのE4599試験 (OS改善2ヶ月, HR 0.79) と比較しても効果量は限定的である。

新規性: 本研究で初めて、VEGFR-2を特異的に標的とするラミシルマブが、ドセタキセルとの併用により、進行NSCLCの二次治療において全集団のOSを統計的に有意に改善する可能性が示された。これは、抗血管新生薬が二次治療においても一定の役割を果たすことを示唆する新規な知見である。

臨床応用: 本知見は、進行NSCLCの二次治療における新たな選択肢を提供する可能性を秘めている。しかし、OSの絶対的な延長が1.4ヶ月にとどまること、および抗血管新生薬の有効性を予測するバイオマーカーが依然として同定されていないことが、その臨床的意義を限定する。予測バイオマーカーなしに全てのNSCLC患者にラミシルマブを投与した場合、治療恩恵を受けない患者に不必要な毒性や経済的負担を課すことになる。臨床現場での最適な治療選択のためには、治療効果を最大限に引き出す患者サブセットを特定することが不可欠である。

残された課題: 今後の検討課題として、ラミシルマブの有効性を予測するバイオマーカーの同定が最も重要である。VEGFR-2の発現レベルやVEGF-Aの血清レベルなど、複数の候補が挙げられるが、これらを前向きに検証し、治療選択に活用できる堅牢なバイオマーカーを確立する必要がある。また、REVEL試験におけるEGFR変異陽性患者の後治療としてのEGFR-TKIの使用がOS評価に与える潜在的なバイアスについても、詳細なサブグループ解析や追加データによる検証が残された課題である。これらの課題が解決されない限り、抗血管新生薬の二次治療における役割は確立されず、その臨床的有用性は限定的なものにとどまるだろう。

方法

本論文は、Garon et al. Lancet 2014 によって報告されたREVEL試験の結果に対する解説 (Commentary) であるため、独自の患者コホートや実験的手法を用いた研究は実施していない。本解説では、REVEL試験の主要な結果、特に全生存期間 (OS)、無増悪生存期間 (PFS)、奏効率 (ORR) のデータを詳細に分析し、その統計的有意性と臨床的意義を評価した。

REVEL試験の結果は、同時期に報告された他の大規模な抗血管新生薬の臨床試験、特に一次治療におけるベバシズマブと化学療法の併用を評価したE4599試験 (Sandler et al. NEnglJMed 2006) および二次治療におけるニンテダニブとドセタキセルの併用を評価したLUME-Lung 1試験 (Reck et al. LancetOncol 2014) と比較検討された。これらの比較は、各試験のハザード比 (HR)、中央値OSの改善幅、および患者選択基準の違いに焦点を当てて行われた。

また、抗血管新生薬の有効性を予測するバイオマーカーの探索に関する既存の知見についても言及された。VEGF-A、VEGFR-1、E-セレクチン、PlGF、ICAM-1などの候補バイオマーカーが挙げられたが、これらがいずれも臨床的に有用な予測因子として確立されていない現状が指摘された。REVEL試験自体が潜在的なバイオマーカーを評価する探索的解析を含んでいたものの、本解説執筆時点ではその詳細な結果が未公表であったため、その点についても言及している。

さらに、後治療としてのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の使用が、REVEL試験のOS評価に与える潜在的な影響についても考察された。REVEL試験では、試験治療後にEGFR-TKIが使用された患者が両群に存在し、EGFR変異ステータスが不明な患者が多いという問題があった。この不均衡がOS評価にバイアスをもたらす可能性について議論された。本解説は、これらの比較分析と考察を通じて、REVEL試験の臨床的意義を多角的に評価し、今後の抗血管新生療法における課題と方向性を提示した。