• 著者: Garon EB, Ciuleanu TE, Arrieta O, Prabhash K, Syrigos KN, Goksel T, Park K, Gorbunova V, Kowalyszyn RD, Pikiel J, Czyzewicz G, Orlov SV, Lewanski CR, Thomas M, Bidoli P, Dakhil S, Gans S, Kim JH, Grigorescu A, Karaseva N, Reck M, Cappuzzo F, Alexandris E, Sashegyi A, Yurasov S, Pérol M
  • Corresponding author: Edward B. Garon, MD (UCLA Translational Oncology Research, Los Angeles, CA, USA)
  • 雑誌: The Lancet
  • 発行年: 2014
  • Epub日: 2014-06-02
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 24933332

背景

肺癌は世界的に最も主要な癌死亡原因であり、その大半は進行非小細胞肺癌 (NSCLC) が占める。ドライバー遺伝子変異陽性のNSCLC患者に対しては分子標的薬が著しい治療効果をもたらしているが、これらの変異を持たない多数の患者では、白金製剤を基盤とした化学療法が一次治療の標準であった。しかし、白金製剤による一次治療後に病勢が進行したStage IV NSCLC患者に対する二次治療の選択肢は限られていた。当時、ドセタキセルが標準的な二次治療薬として確立されており、その他にエルロチニブやペメトレキセドも選択肢として存在したが、これらの既存治療の奏効率 (ORR) は10%未満、無増悪生存期間中央値 (mPFS) は4ヶ月未満、全生存期間中央値 (mOS) は7〜9ヶ月程度にとどまっており、臨床的に大きな改善の余地が残されていた。特に扁平上皮癌ではドライバー変異が乏しく、腫瘍が中枢気道に近接していることが多いため、出血リスクが懸念され、有効かつ安全な二次治療オプションが強く求められていたのが現状である。この領域には依然として未解明な点が多く、新たな治療戦略の確立が不足しているという課題が残されている

腫瘍血管新生は、Hanahan et al. Cell 2000で提唱された癌の「特徴的ホールマーク」の一つであり、腫瘍の成長と転移に不可欠なプロセスである。血管内皮増殖因子受容体-2 (VEGFR-2) シグナル経路を阻害することは、腫瘍血管の形成、増殖、遊走を抑制する効果が期待される。抗VEGF抗体であるベバシズマブは、非扁平上皮NSCLCの一次治療において全生存期間 (OS) の改善を達成したが (Sandler et al. NEnglJMed 2006)、扁平上皮NSCLC患者や既治療患者への適用は、出血リスクの懸念から大きな制限があった。ラムシルマブは、VEGFR-2の細胞外ドメインに特異的に結合する完全ヒトIgG1モノクローナル抗体であり、VEGF-A、VEGF-C (vascular endothelial growth factor C)、VEGF-D (vascular endothelial growth factor D) といった全てのVEGFリガンドによるVEGFR-2の活性化を完全に阻害する作用機序を持つ。胃癌の二次治療を対象としたRAINBOW (Ramucirumab in Gastric cancer) 試験などの第III相試験において、単剤療法およびパクリタキセルとの併用療法で有効性が示されており、NSCLCへの適用が期待されていた。本REVEL (Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy) 試験は、白金製剤既治療のNSCLC患者に対する二次治療において、ドセタキセルへの上乗せ薬剤として初めてOSを有意に改善した第III相試験であり、その臨床的意義は大きい。

目的

本研究の主要な目的は、白金製剤による一次治療後に病勢が進行したStage IV NSCLC患者を対象として、ラムシルマブ 10mg/kgを3週間に1回投与する群とプラセボ群(いずれもドセタキセル 75mg/m²を3週間に1回併用)との間で、全生存期間 (OS) を主要評価項目として比較し、その優越性を検証することであった。

副次的な目的としては、無増悪生存期間 (PFS)、客観的奏効率 (ORR)、疾患コントロール率 (DCR)、および患者報告アウトカム (PRO) としてのQOL(LCSSおよびEQ-5Dを用いて評価)を評価することであった。さらに、安全性プロファイル、治療継続性、および薬物動態学的特性も評価対象とした。本試験は、これらの評価項目を通じて、ラムシルマブとドセタキセルの併用療法が、既治療進行NSCLC患者に対する新たな標準治療となり得るかを検証することを目的とした。特に、従来の抗血管新生療法では適用が困難であった扁平上皮癌患者における安全性と有効性も重要な検討課題であった。

結果

全生存期間 (OS) の改善: ラムシルマブ+ドセタキセル群の全生存期間中央値 (mOS) は10.5ヶ月 (95% CI 9.5-11.2、IQR 5.1-21.2) であったのに対し、プラセボ+ドセタキセル群では9.1ヶ月 (95% CI 8.4-10.0、IQR 4.2-18.0) であった。ハザード比 (HR) は0.86 (95% CI 0.75-0.98; p=0.023) であり、ラムシルマブ群はプラセボ群と比較して死亡リスクを統計学的に有意に14%減少させ、mOSを1.4ヶ月延長した。1年生存率はラムシルマブ群で40%、プラセボ群で34%であり、2年生存率はそれぞれ19%と16%であった。データカットオフ時(2013年12月20日)までに884件の死亡イベントが確認された(打ち切り率29%)。これは、ドセタキセルを対照とした二次治療の第III相試験において、OSの有意な改善を達成した初めての成果である。多変量解析においても、治療効果は事前に規定された予後因子で調整した後も有意性を維持した。非扁平上皮癌サブグループではmOSが11.1ヶ月 vs 9.7ヶ月 (HR 0.83, 95% CI 0.71-0.97)、扁平上皮癌サブグループではmOSが9.5ヶ月 vs 8.2ヶ月 (HR 0.88, 95% CI 0.69-1.13) と、いずれの組織型においても数値的なOS改善傾向が観察された(図2参照)。

無増悪生存期間 (PFS) の延長: ラムシルマブ群の無増悪生存期間中央値 (mPFS) は4.5ヶ月 (95% CI 4.2-5.4、IQR 2.3-8.3) であったのに対し、プラセボ群では3.0ヶ月 (95% CI 2.8-3.5、IQR 1.4-6.9) であった。ハザード比 (HR) は0.76 (95% CI 0.68-0.86; p<0.0001) であり、ラムシルマブ群は疾患進行または死亡のリスクを24%有意に減少させた。6ヶ月PFS率はラムシルマブ群で31%、プラセボ群で20%であった。OSの延長(1.4ヶ月)とPFSの延長(1.5ヶ月)がほぼ一致しており、PFSの改善が臨床的に意味のある生存期間の延長に繋がったことが示唆される(図3参照)。PFSの改善効果は、扁平上皮癌および非扁平上皮癌の両サブグループで一貫して認められた。

客観的奏効率 (ORR) および疾患コントロール率 (DCR) の向上: 治験担当医師評価による客観的奏効率 (ORR) は、ラムシルマブ群で23% (n=144/628例) であったのに対し、プラセボ群では14% (n=85/625例) であった。オッズ比 (OR) は1.89 (95% CI 1.41-2.54; p<0.0001) であり、ラムシルマブ群でORRが統計学的に有意に向上した。これは、従来の二次治療におけるORRが10%未満であったことを考慮すると、大幅な改善である。疾患コントロール率 (DCR、完全奏効+部分奏効+安定) は、ラムシルマブ群で64% (n=402/628例) であったのに対し、プラセボ群では53% (n=329/625例) であった (OR 1.60, 95% CI 1.28-2.01; p<0.0001)。奏効率の改善は、扁平上皮癌および非扁平上皮癌の両サブグループで確認された。

治療継続性および用量強度: 治療期間中央値は、ラムシルマブ群で15.0週 (IQR 6.1-26.6)、プラセボ群で12.0週 (IQR 6.0-21.0) であった。ラムシルマブの投与回数中央値は4.5回 (IQR 2.0-8.0) であり、ドセタキセルの投与回数中央値は両群で4.0回 (ラムシルマブ群 IQR 2.0-7.0、プラセボ群 IQR 2.0-6.0) と同程度であった。ラムシルマブの相対平均用量強度は94.6% (SD 11.0) と高い維持率を示した。有害事象による用量調整(減量、延期、中止)の発生率は、ラムシルマブ群で33% (n=204/627例)、プラセボ群で23% (n=139/618例) であった。用量調整に至った主な有害事象は、好中球減少症(ラムシルマブ群12% vs プラセボ群9%)、疲労(9% vs 6%)、発熱性好中球減少症(7% vs 5%)であった。

安全性プロファイル: 治療関連有害事象(いずれかのグレード)は、ラムシルマブ群で98% (n=613/627例)、プラセボ群で95% (n=594/618例) に発生した。グレード3以上の有害事象は、ラムシルマブ群で79% (n=495/627例)、プラセボ群で71% (n=444/618例) であった。主なグレード3以上の有害事象は、好中球減少症(ラムシルマブ群49% vs プラセボ群40%)、発熱性好中球減少症(ラムシルマブ群16% vs プラセボ群10%)、疲労(14% vs 10%)、白血球減少症(14% vs 12%)、高血圧(6% vs 2%)であった(表2参照)。グレード4の好中球減少症は、ラムシルマブ群で37% (n=231/627例)、プラセボ群で28% (n=171/618例) に認められた。G-CSFの使用率は、ラムシルマブ群で42% (n=262/627例)、プラセボ群で37% (n=226/618例) であった。発熱性好中球減少症による入院は、ラムシルマブ群で13% (n=82/627例)、プラセボ群で8% (n=50/618例) であった。出血または出血性有害事象(いずれかのグレード)は、ラムシルマブ群で29% (n=181/627例)、プラセボ群で15% (n=94/618例) とラムシルマブ群で高かったが、グレード3以上の出血性有害事象の発生率は両群で同等(各2%)であった。鼻出血(いずれかのグレード)は、ラムシルマブ群で19% (n=116/627例)、プラセボ群で6% (n=40/618例) とラムシルマブ群で高頻度であった。グレード3以上の肺出血は両群で1% (各8例) であり、治療関連死亡はラムシルマブ群で5% (n=31例)、プラセボ群で6% (n=35例) と、治療関連死亡率に有意な差は認められなかった。重篤な有害事象の発生率は、ラムシルマブ群で43% (n=269/627例)、プラセボ群で42% (n=262/618例) と両群で同程度であった。QOL評価(LCSS全般QOL)では、悪化までの期間に群間差は認められなかった (HR 1.00, 95% CI 0.84-1.19; p=0.99)。

考察/結論

REVEL試験は、ラムシルマブとドセタキセルの併用療法が、白金製剤既治療のStage IV NSCLC患者において、ドセタキセル単剤と比較して、全生存期間 (OS) をハザード比 (HR) 0.86 (95% CI 0.75-0.98; p=0.023)、無増悪生存期間 (PFS) をHR 0.76 (95% CI 0.68-0.86; p<0.0001)、客観的奏効率 (ORR) を23% vs 14% (p<0.0001) と、主要な3つの有効性エンドポイント全てで統計学的に有意かつ一貫した臨床的利益をもたらすことを明確に示した。

先行研究との違い: 本試験は、白金製剤後に進行したNSCLCに対する二次治療において、ドセタキセルを対照群とする比較試験として、OSの有意な改善を達成した初めての試験という点で、これまでの研究と大きく異なる。従来の第III相試験、例えばKim et al. Lancet 2008でのゲフィチニブや、Reck et al. LancetOncol 2014でのニンテダニブ、あるいはベバシズマブの上乗せ試験などでは、主要評価項目としてのOS改善を達成できなかった。このことは、ラムシルマブがVEGFR-2の細胞外ドメインに特異的に結合し、全てのVEGFリガンドによるシグナル伝達を完全に遮断するという、その作用機序の優位性を示唆する。

新規性: 本研究で初めて、抗血管新生療法と化学療法の併用が、既治療NSCLC患者のOSを統計学的に有意に延長できることを実証した。特に、従来のVEGF阻害薬では肺出血リスクから適用が制限されていた扁平上皮癌患者においても、ラムシルマブの追加による安全性プロファイルの悪化や肺出血リスクの増加が認められなかったことは、これまで報告されていない重要な新規性である。これにより、組織型を問わず、より広範なNSCLC患者に抗血管新生療法が提供される可能性が示された。

臨床応用: 本知見は、白金製剤既治療の進行NSCLC患者に対する二次治療の臨床現場に大きな影響を与える。ラムシルマブとドセタキセルの併用療法は、OS、PFS、ORRの全てにおいて有意な改善を示し、管理可能な安全性プロファイルとQOLの維持が確認されたことから、新たな標準治療選択肢として確立される臨床的意義を持つ。特に、扁平上皮癌患者においても有効性と安全性が確認されたことは、これまで治療選択肢が限られていたこのサブグループにとって極めて有用である。本試験の結果を受けて、ラムシルマブは2014年に米国FDAの承認を取得し、現在も実臨床で広く使用されている。

残された課題: 今後の検討課題として、ラムシルマブの治療効果を予測するバイオマーカーの同定が挙げられる。現在、腫瘍組織や血液中の予測因子に関する研究が進行中であり、どの患者群が最も治療から利益を得られるかを特定することが、個別化医療の推進に不可欠である。また、高齢者サブグループにおける利益とリスクのバランスについては、Sandler et al. NEnglJMed 2006におけるベバシズマブのデータとの比較から、さらなる個別評価が必要であるという議論が残されている。本試験の患者選択基準により、抗血管新生療法の高リスク患者(例:主要血管浸潤、腫瘍内空洞形成)が除外されたため、これらの患者群における本療法の一般化可能性にはlimitationがある。

方法

REVEL試験 (NCT01168973) は、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照、無作為化第III相試験として実施された。世界26ヶ国6大陸にわたる学術医療センターおよびコミュニティクリニックで患者が登録された。

患者選択: 対象患者は、組織学的に確認されたStage IVの扁平上皮または非扁平上皮NSCLC患者で、白金製剤を基盤とした一次化学療法中またはその後に病勢進行が認められた者であった。ECOGパフォーマンスステータスは0または1に限定された。主要な除外基準には、主要血管への腫瘍浸潤、腫瘍内空洞形成、コントロール不良の高血圧、過去6ヶ月以内の動脈血栓塞栓イベント、過去2ヶ月以内の肉眼的喀血、および過去3ヶ月以内のGrade 3-4消化管出血などが含まれた。これらの基準は、抗血管新生療法に関連する潜在的なリスクを最小限に抑えることを目的として設定された。

無作為化と盲検化: 適格患者は、中央インタラクティブ音声応答システム (IVRS) を介して、ラムシルマブ+ドセタキセル群またはプラセボ+ドセタキセル群に1:1の比率で無作為に割り付けられた。無作為化は、ECOGパフォーマンスステータス (0 vs 1)、性別、前治療における維持療法の有無 (あり vs なし)、および地域 (台湾・韓国 vs その他) によって層別化された。患者、治験担当医師、およびスポンサーは治療割り付けに対して盲検化された。

治療プロトコル: ラムシルマブ群の患者には、ラムシルマブ 10mg/kgとドセタキセル 75mg/m²が21日サイクルのDay 1に静脈内投与された。プラセボ群の患者には、プラセボとドセタキセル 75mg/m²が同様に投与された。治療は、疾患進行、許容できない毒性、患者の同意撤回、または死亡まで継続された。東アジア(台湾・韓国)の患者では、好中球減少症の発生率が高いことを受け、2012年5月以降、ドセタキセルの用量を60mg/m²に減量することが推奨された。G-CSFなどの支持療法は、治験担当医師の裁量で許可された。

評価項目: 主要評価項目は、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間として定義される全生存期間 (OS) であり、intention-to-treat (ITT) 集団で評価された。副次評価項目には、無増悪生存期間 (PFS)、客観的奏効率 (ORR)、疾患コントロール率 (DCR) が含まれ、これらはRECIST 1.1基準に従って治験担当医師によって評価された。安全性は、NCI-CTCAE v4.0に基づいて評価された。患者報告アウトカム (PRO) として、QOLはLCSS (Lung Cancer Symptom Scale) およびEQ-5D (EuroQoL Five Dimensions questionnaire) を用いて、ベースライン、各サイクル終了時、および治療終了時に評価された。

統計解析: 目標症例数は1242例と設定され、869件のOSイベント(30%の打ち切り率)を仮定し、対照群のmOS 7.5ヶ月に対し、ラムシルマブ群でmOS 9.2ヶ月(ハザード比 [HR] 0.816)を検出する85%の検出力と片側αレベル0.025で設計された。主要評価項目であるOSの解析には、層別ログランク検定が用いられた。副次評価項目は、OSが統計学的に有意であった場合にPFS、PFSが有意であった場合にORRの順で階層的に検定された。ハザード比は層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定された。ORRおよびDCRは、Cochran-Mantel-Haenszel検定を用いて比較された。QOLの解析では、LCSSの各項目における悪化までの期間 (time to deterioration) がカプラン・マイヤー法とCox回帰を用いて比較された。