• 著者: Simona Carnio, Silvia Novello, Teresa Mele, Matteo Giaj Levra, Giorgio Vittorio Scagliotti
  • Corresponding author: Giorgio Vittorio Scagliotti (Department of Oncology, University of Torino, S. Luigi Hospital, Orbassano, Torino, Italy)
  • 雑誌: Seminars in Oncology
  • 発行年: 2014
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 24565582

背景

肺がんは世界のがん関連死亡の約30%を占め、NSCLC (non-small cell lung cancer) はその80%以上を構成する。診断時に局所進行または転移性で発見される患者が多く、stage IV NSCLCの5年生存率は約1%にとどまり、治療目標は生存延長と症状緩和である。これまで複数の大規模第III相試験において白金製剤ベースの2剤併用が標準一次治療として確立されてきたが (Schiller et al. NEnglJMed 2002)、第3世代レジメン間の比較ではORR・PFS・OSに有意差が認められず、治療選択の根拠が組織型・分子背景に乏しい状況が続いていた。

この閉塞を打開したのが組織型 (扁平上皮対非扁平上皮) と分子異常に基づく層別化戦略の台頭であった。Pemetrexedが非扁平上皮で有効かつ扁平上皮で劣ること、bevacizumabが扁平上皮では致死性喀血リスクのため禁忌となることが証明され、組織亜型同定の臨床的重要性が明確化された (Sandler et al. NEnglJMed 2006)。さらにEGFR活性化変異を持つ患者ではEGFR-TKI (tyrosine kinase inhibitor) が化学療法よりも著明な奏効と生存延長をもたらすことがIPASS試験を皮切りに複数の第III相試験で証明された (Mok et al. NEnglJMed 2009)。ALK融合遺伝子 (anaplastic lymphoma kinase) を有する患者に対してはcrizotinibが高い奏効率を示し、分子標的治療の適応拡大が進んだ (Kwak et al. NEnglJMed 2010)。

しかし2014年時点において、(1) 扁平上皮NSCLCに特化した承認分子標的薬が存在しないという gap in knowledge、(2) 高齢者・PS (performance status) 不良例の最適治療エビデンスが手薄であること、(3) 維持療法・二次・三次治療を組み合わせた逐次戦略の最適順序が明確でないことが不足していた。本総説はこれらの課題に対して利用可能なエビデンスを統合し、stage IV NSCLC患者の生存延長のための合理的な治療アルゴリズムを提示することを目的とした。

目的

Stage IV NSCLCの一次・二次・三次治療および維持治療・高齢者治療について、組織型・分子異常・PS・併存症を基準とする治療選択、予測バイオマーカー、逐次治療戦略を体系的にレビューし、生存延長のための合理的治療アプローチを論じる。

結果

一次治療:組織型に応じた細胞傷害性化学療法の選択:白金製剤ベースの2剤併用化学療法がstage IV NSCLCのPS 0-1良好例における一次治療標準である。cisplatinはcarboplatinに対してORRが全体的に優れ、第3世代製剤使用の非扁平上皮サブグループで死亡HR 1.12 (95% CI 1.01-1.23) とcarboplatin比でcisplatinが優る。組織型依存性が明確になった転機はn=1,725の大規模第III相試験で、cisplatin+pemetrexed (CP) vs cisplatin+gemcitabine (CG) を比較したところ、非扁平上皮でCP優越 (OS HR 0.81、p=0.005)、扁平上皮ではCGが優越 (OS 10.8 vs 9.4ヶ月、HR 1.23、p=0.05;PFS 5.5 vs 4.4ヶ月、HR 1.36、p<0.05) であった。この組織型依存性の分子基盤はthymidylate synthase (TS) の発現差であり、腺癌では低発現・扁平上皮癌では高発現であることがpemetrexedの組織選択性を説明する (Table 1)。nab-paclitaxel+carboplatin vs standard paclitaxel+carboplatin (sb-PC) の第III相試験ではORR 33% vs 25% (p=0.005) でnab-PCが有意に優れ、特に扁平上皮での活性が高く、神経障害・好中球減少・関節筋肉痛の頻度が低減した。triplet (3剤) 追加のメタアナリシスではORR上昇はPFS・OS改善に繋がらないことが示されており、2剤標準が維持された。

血管新生阻害:bevacizumabの有効性と適応限界:Bevacizumab (抗VEGF (vascular endothelial growth factor) ヒト化モノクローナル抗体) は非扁平上皮NSCLC一次治療において2つの大規模第III相試験で評価された。ECOG 4599 (n=855、PS 0-1、非扁平上皮) でcarboplatin-paclitaxelへのbevacizumab追加によりOS中央値12.3 vs 10.3ヶ月 (HR 0.80、p=0.003)、PFS中央値6.2 vs 4.5ヶ月 (HR 0.66、p<0.001) の有意な改善が示され、腺癌サブグループではOS 14.2 vs 10.3ヶ月 (HR 0.69) とより大きな効果が確認された (Sandler et al. NEnglJMed 2006)。AVAiL試験 (n=1,050) ではcisplatin+gemcitabineへのbevacizumab追加で低用量7.5 mg/kg群でPFS HR 0.75 (p=0.0003)、高用量15 mg/kg群でHR 0.85 (p=0.04) のPFS延長が認められたがOS差はなかった。ORRはbevacizumab低用量37.8%、高用量30.6%、対照群21.6%で有意差が確認された。4試験のメタアナリシスではbevacizumabがOS HR 0.90 (p=0.03)、PFS HR 0.72 (p<0.001) を改善し、腺癌では他組織型より有意な上乗せ (p=0.02)、体重減少≤5%群で有意な利益が確認された。脳転移患者への安全性はPASSPORT (bevacizumab safety in brain metastases phase II trial) 試験 (n=115) の前向き評価でgrade≥2 CNS出血が0例と確認され、後向きの大規模検討 (ARIES (bevacizumab observational study)、SAiL、ATHENA (phase IV bevacizumab safety study)) でも同様に安全性が示された。ただし≥75歳ではbevacizumab関連有害事象 (grade≥3) が増加し、生存ベネフィットが認められず慎重投与が必要である。PointBreak試験ではpemetrexed+carboplatin+bevacizumab惰性療法 vs paclitaxel+carboplatin+bevacizumab惰性療法を比較しOS 12.6 vs 13.4ヶ月 (HR 1.00、p=0.949) で主要評価項目を達成せず、PFSのみ6.0 vs 5.6ヶ月 (HR 0.83、p=0.012) の差が得られた。多標的TKIのsorafenib (ESCAPE (Sorafenib plus chemotherapy phase III trial in NSCLC)、NExUS試験 (sorafenib in non-squamous NSCLC phase III trial)) やmotesanib (MONET1、n=1,090: PFS 5.6 vs 5.4ヶ月、HR 0.785;OS 13.0 vs 11.0ヶ月、HR 0.897) はいずれも一次治療でOS改善を示さず開発が限定された (Table 2)。

EGFR-TKI一次治療:変異選択的アプローチの確立:EGFR活性化変異陽性NSCLC患者においてgefitinib・erlotinib・afatinibが化学療法に対し一貫してPFSを改善した。8試験の結果が Table 1 にまとめられており、以下がその主要データである。IPASS試験 (n=1,217) のEGFR変異陽性サブセット (n=261) ではgefitinibがcarboplatin-paclitaxelに対しPFS HR 0.48、ORR 71% vs 47%を達成し (Mok et al. NEnglJMed 2009)、最終OS解析では18.6 vs 17.3ヶ月 (HR 0.91、p=0.11) で差がなく高い交叉投与率 (最大95%) が影響した。EGFR変異陰性患者におけるgefitinib一次治療はPFS HR 2.85と有害であり、遺伝子型検査による患者選別の必要性を強く示した。WJTOG3405試験 (全例EGFR変異陽性) ではgefitinib vs cisplatin+docetaxelでORR 62.1 vs 32.2% (p<0.0001)、PFS 9.2 vs 6.3ヶ月 (HR 0.49、95% CI 0.34-0.71) が示された。NEJ002試験 (全例EGFR変異陽性) ではgefitinib vs carboplatin+paclitaxelでORR 73.7 vs 30.7% (p<0.001)、PFS 10.8 vs 5.4ヶ月 (HR 0.30、95% CI 0.22-0.41) と最大のPFS改善が記録された。OPTIMAL試験ではerlotinib vs carboplatin+gemcitabineでORR 83.0 vs 36.0% (p<0.0001)、PFS 13.1 vs 4.6ヶ月 (HR 0.16、95% CI 0.10-0.26) と全試験中最小のHRが記録された。EURTAC試験 (欧州患者) ではerlotinibがPFS 9.7 vs 5.2ヶ月 (HR 0.37、95% CI 0.25-0.54)、ORR 63.6 vs 17.8% (p<0.0001) を達成し、白人でも同様の効果を確認した (Rosell et al. LancetOncol 2012)。第2世代不可逆的ErbBブロッカーのafatinibはLUX-Lung 3試験 (n=345) でafatinib vs cisplatin+pemetrexedを比較し、PFS 11.1 vs 6.9ヶ月 (HR 0.58、95% CI 0.43-0.78、p=0.0004)、ORR 56 vs 23% (p<0.001) を示した。LUX-Lung 6試験 (アジア人、n=364) ではafatinib vs gemcitabine+cisplatinでPFS 11.0 vs 5.6ヶ月 (HR 0.28、p<0.0001)、ORR 66.9 vs 23.0% (p<0.0001) と一致した。EGFR-TKI耐性機序としてはT790M変異 (約50%)、c-MET過剰発現 (15-20%)、exon 20 insertion (5%) が同定されており、次世代TKI (第3世代: CO-1686・AZD9291等) 開発の根拠となっている (Table 2)。EGFR TKIのCNS転移抑制効果も示唆されており (HR 0.56、95% CI 0.34-0.94)、今後の前向き検証が期待される。モノクローナル抗体cetuximabはFLEX (First-Line cetuximab plus chemotherapy phase III trial) 試験 (n=1,125) でOS 11.2 vs 10.1ヶ月 (HR 0.87、p=0.044)、ORR 36 vs 29% の有意差を示したが、PFS差 (4.8 vs 4.8ヶ月) はなく、EGFR高発現サブグループ (スコア≥200) でのみOS 12.0 vs 9.6ヶ月 (HR 0.73、p=0.011) のベネフィットが確認された (Table 3)。

ALK阻害療法:crizotinib確立と次世代薬剤開発:EML4-ALK融合遺伝子はNSCLC腺癌の4-6%に検出され、若年・非喫煙・腺癌という臨床病理学的特徴と関連し、EGFR変異・KRAS変異との相互排他性が高い。Crizotinibは初期第I相試験 (PROFILE 1001) のALK陽性NSCLC拡張コホート (n=82) でORR 57% (46例部分奏効+1例完全奏効)、安定病変 (SD) 33%を達成し、追跡結果でORR 61%、中央値PFS 10ヶ月が確認された。大規模多施設第II相試験 (PROFILE 1005、n=347) でもORR 51%と一貫した。第III相PROFILE 1007試験でALK陽性NSCLC二次治療においてcrizotinibがpemetrexedまたはdocetaxelと比較し、PFS 7.7 vs 3.0ヶ月 (HR 0.49、p<0.0001)、ORR 65% vs 20% (p<0.0001) で主要評価項目を達成した。ただし中間OS解析では差がなく (HR 1.02、p=0.54)、高い交叉投与率が影響したと考えられる。次世代ALK阻害薬も開発段階にある。LDK378はcrizotinib既治療・未治療を含むALK陽性NSCLC患者 (n=88) でORR 79%、中央値PFS 8.6ヶ月 (95% CI 4.3-19.3)、CH5424802 (alectinib) はPhase I/II (n=46) でORR 93.5%の高い奏効率を示した。AP26113 (brigatinib) はPhase I/II (n=18) でORR 56%を示した (Table 4)。これら次世代薬剤はcrizotinib耐性例でも活性を維持しており、sequential use の戦略が期待される。またALK陽性NSCLCではTS発現が低く (83%の症例で低TS、p=0.039)、pemetrexedへの高感受性が示されており、化学療法選択にも意義を持つ可能性がある。

二次・三次治療と維持療法:逐次戦略の構築:一次治療後はほぼ全患者で病勢進行が生じ、良好PSを維持する患者では二次治療が生存延長に寄与する。二次治療の標準単剤はdocetaxel、pemetrexed (非扁平上皮)、erlotinibである。Docetaxelはpivotal第III相試験 (TAX 317) で支持療法比較においてOS 7.5 vs 4.6ヶ月 (p=0.047) を示し、TAX 320でも3週間投与と週1回投与のOS同等性が確認された。Pemetrexed二次治療は非扁平上皮でdocetaxelと同等有効性かつ毒性軽減 (非扁平上皮OS 9.3 vs 8.0ヶ月、p≤0.048)、扁平上皮ではdocetaxelが優れた (OS 7.4 vs 6.2ヶ月、p<0.018)。Erlotinibは化学療法不応患者の二次・三次治療でBR.21試験においてORR 8.9%、SD 36%、PFS 2.2 vs 1.8ヶ月 (HR 0.61、p=0.001)、OS 6.7 vs 4.7ヶ月 (HR 0.70、p=0.001) とプラセボに対し有意な改善を示した (Shepherd et al. NEnglJMed 2005)。重要な知見として、EGFR野生型患者ではEGFR-TKIが化学療法より劣ることが蓄積した。DELTA試験 (erlotinib vs docetaxel、EGFR野生型: PFS HR 1.45、95% CI 1.09-1.94)、TAILOR試験 (erlotinib vs docetaxel、EGFR野生型: PFS HR 1.45) が一貫してEGFR-TKIの不適切適用を示した (Table 5・Table 6)。三次治療では erlotinib とcrizotinib (ALK陽性例) のみが承認薬として位置づけられる。維持療法についてはpemetrexedによるcontinuation maintenance (PARAMOUNT試験: PFS HR 0.62、OS HR 0.78) とerlotinibによる switch maintenance (SATURN試験: PFS HR 0.71) が非扁平上皮において延長効果を示した。これらの結果は、一次治療奏効後に維持療法を開始し、増悪時に二次・三次治療を逐次使用するという治療戦略の臨床実装を支持するものである。

免疫療法:2014年時点での初期シグナル:免疫チェックポイント阻害薬の概念が台頭し始めた2014年時点では、nivolumab (抗PD-1抗体) の第I相試験でNSCLC (n=122) に対するORR 16% (非扁平上皮15%、扁平上皮19%)、OS中央値9.6ヶ月 (95% CI 7.4-13.7) が報告されており、扁平上皮を含む全組織型での奏効が確認された (Table 7)。腫瘍のPD-L1 (programmed death-ligand 1) 発現が奏効と関連し、PD-L1陽性患者のORRは36%、陰性患者では0%であった。抗PD-L1抗体MPDL3280A (atezolizumab) の第I相試験 (n=37) ではORR 24%が得られ、PD-L1陽性4/4 (100%)、陰性4/26 (15%) と選択性が示唆された。これらはいずれも第I相の探索データであり、標準治療への位置づけはまだ確立していないが、組織型横断的な活性と持続的奏効の可能性を示す重要なシグナルであった。

高齢者・PS不良例における治療戦略:70-79歳の高齢者に対してはこれまで単剤 (vinorelbine、gemcitabine) が標準とされてきたが、フランス多施設第III相試験IFCT-0501 (n=451) でcarboplatin (AUC 6 day1)+weekly paclitaxel (90 mg/m2 days 1,8,15) vs 単剤 (vinorelbineまたはgemcitabine) を比較し、ORR 27% vs 10% (p<0.0001)、PFS中央値6.0 vs 2.8ヶ月 (p<0.0001)、OS中央値10.3 vs 6.2ヶ月 (HR 0.64、p<0.001) と白金製剤doubletの有意な優越性が示された。70-74歳のPS良好・併存症少例にはcarboplatin+weekly paclitaxelが推奨され、nab-paclitaxelサブセット解析でも≥70歳でOS 19.9 vs 10.4ヶ月 (p=0.009) の有意差が示された。一方≥75歳ではgrade≥3有害事象が増加し、bevacizumab追加のOS改善が認められないため、毒性への注意が必要である。PS 2患者については、carboplatin+pemetrexed vs pemetrexed単剤の第III相試験でORR 24 vs 10.5% (p=0.029)、中央値PFS 5.9 vs 3.0ヶ月 (HR 0.46、p<0.001)、中央値OS 9.1 vs 5.6ヶ月 (HR 0.57、p<0.001) とdoubletの優越性が確認されており、適切に選択されたPS 2患者ではdoublet化学療法が選択肢となりうる。

考察/結論

本総説が示したstage IV NSCLC治療体系化の核心は、「組織型×分子異常×患者背景」の多層的治療個別化の概念確立にある。これまでの研究では白金製剤doubletが組織型を問わず画一的に適用されていたが、pemetrexed・bevacizumabの組織型依存性が明確化された点は既報から大きく前進した部分であり、臨床的含意は「扁平上皮と非扁平上皮は別疾患として治療する」という現在の標準に直結している。分子標的治療においては、EGFR変異陽性例へのEGFR-TKI一次投与でPFS HR 0.16-0.58という化学療法対比の圧倒的な改善が複数の独立した第III相試験で再現されており、これまで報告されていなかった規模での分子選択的治療の生存延長効果が新規な知見であった。とりわけOPTIMAL試験のHR 0.16という数値は、遺伝子検査による患者選択が「分類医療」から「精密医療」への転換を意味することを端的に示している。

臨床応用の観点から、本総説は(1) EGFR変異検査を非扁平上皮NSCLCにおいて必須と位置づけ、(2) ALK融合遺伝子検査を若年・非喫煙・腺癌患者で推奨し、(3) 組織型に応じた化学療法選択 (非扁平上皮: CP、扁平上皮: CG/doublet)、(4) 維持療法・二次治療・三次治療の逐次使用を明確なアルゴリズムとして実臨床に実装可能な形で整理した点に臨床的意義がある。また早期緩和ケア統合 (Temel 2010の第III相試験で中央値2.7ヶ月の生存延長、p=0.02) についても言及しており、腫瘍治療との同時提供が生存にも寄与することを強調した。

残された課題として、(1) 扁平上皮NSCLCに対する承認分子標的薬が2014年時点で皆無であること、(2) bevacizumabの予測バイオマーカー (高血圧等の候補を含め) が未同定であること、(3) EGFR-TKI耐性獲得後の分子機序 (T790M) に対する次世代TKI (AZD9291、CO-1686) の開発が継続中であること、(4) 高齢者・低PS患者への最適治療エビデンスのさらなる集積が必要なこと、(5) 免疫チェックポイント阻害薬が第I相段階にとどまり予測バイオマーカーの確立が今後の検討課題であることが挙げられる。本総説の limitation として、2014年時点の知識に基づいているため、osimertinib (第3世代EGFR-TKI)、pembrolizumab・nivolumabの第III相試験での標準治療承認、alectinib一次治療、KRAS G12C阻害薬など、その後の重要なエビデンスは含まれていない点がある。しかし本総説が提示した「組織型×分子異常×患者背景」による治療個別化の枠組みは、現在の免疫療法時代においてもPD-L1発現・TMB (tumor mutational burden) を軸として継承されており、更なる検討により進化を続けている。

方法

本稿はnarrative review (叙述的総説) であり、前向き第III相無作為化比較試験、メタアナリシス、および前向き・後ろ向き観察研究のエビデンスを統合した。引用した主要試験には、一次化学療法に関するECOG (Eastern Cooperative Oncology Group) 4599 (n=855)、AVAiL (n=1,050)、PointBreak、PRONOUNCE (pemetrexed/carboplatin with or without cetuximab phase III trial)、IPASS (Iressa Pan-ASia Study, n=1,217)、WJTOG3405 (West Japan Thoracic Oncology Group trial, n=177 vs 172)、NEJ002、OPTIMAL (erlotinib vs carboplatin/gemcitabine phase III trial)、EURTAC (European erlotinib vs chemotherapy phase III trial)、LUX-Lung 3 (n=345)、LUX-Lung 6 (n=364)、ALKに関するPROFILE (crizotinib phase I/II/III clinical trial series) 1001/1005/1007 (n=347)、二次治療に関するDELTA (Docetaxel and Erlotinib Lung cancer Trial)、TAILOR (Tailored post-first-line erlotinib vs docetaxel trial)、TITAN (erlotinib vs docetaxel/pemetrexed phase III trial)、維持療法に関するPARAMOUNT (pemetrexed continuation maintenance phase III trial)、SATURN (Sequential Tarceva in Unresectable NSCLC, erlotinib switch maintenance trial)、高齢者治療に関するIFCT-0501 (Intergroupe Francophone de Cancérologie Thoracique elderly trial, n=451)、免疫療法に関するnivolumab第I相試験 (n=122) など多数が含まれる。主要評価項目としてPFS (progression-free survival)、OS (overall survival)、ORR (objective response rate) を採用した各試験のHR (hazard ratio)、95%信頼区間 (CI)、p値を中心に評価した。統計手法はlog-rank検定とCox比例ハザードモデルを各試験が採用した。組織型 (扁平/非扁平) および分子異常 (EGFR変異陽性/陰性、ALK融合陽性/陰性) による事前規定サブグループ解析の結果も参照した。主要試験データはPubMed / MEDLINEの文献検索に基づいて収集された。体系的文献検索のプロトコルは記載されていないが、Seminars in Oncologyに発表された治療アルゴリズムの概観として、各試験の患者背景・治療計画・有効性・安全性を批判的に検討した。