- 著者: Yaru Tian, Xiaoyang Zhai, Anqin Han, Hui Zhu, Jinming Yu
- Corresponding author: Hui Zhu (drzhuh@126.com); Jinming Yu (sdyujinming@163.com) (Department of Radiation Oncology, Shandong Cancer Hospital and Institute, Shandong First Medical University, Jinan, China)
- 雑誌: Journal of Hematology & Oncology
- 発行年: 2019
- Epub日: 2019-06-24
- Article種別: Review
- PMID: 31253167
背景
肺癌は世界的に最も死亡数の多い悪性腫瘍であり、2018年の統計では新規罹患数が210万例、死亡数が180万例に達している Bray et al. CACancerJClin 2018。小細胞肺癌 (SCLC: small cell lung cancer) は肺癌全体の約14%を占める神経内分泌腫瘍であり、極めて増殖速度が速く、早期から遠隔転移を来しやすい高悪性度の疾患である。SCLC患者の約98%に喫煙歴があり、タバコに含まれる多数の化学物質によるDNA損傷を背景として、腫瘍突然変異負荷 (TMB: tumor mutational burden) が1メガベースあたり8.62塩基と、他の固形がんと比較して非常に高い遺伝子変異量を示すことが知られている Alexandrov et al. Nature 2013。初回治療としてのプラチナ製剤併用化学療法に対する奏効率 (ORR: objective response rate) は70%以上と高感受性を示すものの、ほぼ全例で早期に再発し、2年生存率は5%未満と極めて予後不良である。二次治療として承認されているトポテカンの奏効率は、感受性再発で約25%、耐性再発では10%未満に留まり、過去30年間にわたり予後を劇的に改善する新規治療法が不足していた。近年、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB: immune checkpoint blockade) は非小細胞肺癌 (NSCLC: non-small cell lung cancer) において劇的な生存期間の延長をもたらし、治療体系を大きく変革した Brahmer et al. NEnglJMed 2015 Borghaei et al. NEnglJMed 2015 Herbst et al. Lancet 2016。理論的には、高いTMBを有し多数のネオアンチゲンを提示し得るSCLCはICBの格好の標的となるはずであるが、実臨床における単剤ICBの効果は極めて限定的であり、NSCLCとの間で治療効果に大きな乖離が存在する。この乖離を生み出す詳細な免疫学的機序や、SCLC特異的な免疫逃避機構については未だ不明な点が多く、効果的な治療戦略を確立するための体系的な知見が不足しているという課題が存在する。本総説は、SCLCにおける免疫不全状態と免疫逃避機構を多角的に分析し、治療効果改善のための戦略を提示するものである。
目的
本総説の目的は、SCLCにおけるICBの臨床効果がNSCLCと比較して著しく劣る原因となっている、腫瘍微小環境 (TME: tumor microenvironment) における多様な免疫逃避機構を包括的に明らかにすることである。具体的には、(1) 腫瘍細胞および間質細胞におけるPD-L1 (programmed death-ligand 1) の低発現、(2) 主要組織適合遺伝子複合体 (MHC: major histocompatibility complex) クラスIおよびクラスII分子のダウンレギュレーションによる抗原提示能の低下、(3) 腫瘍細胞が分泌するIL-15や細胞表面のCD47、Fas/FasL経路を介した能動的な免疫抑制、(4) 自家分泌および傍分泌因子による腫瘍増殖の自立化と免疫細胞との相互作用の減弱、という4つの主要な免疫回避機序を体系的に整理する。さらに、これらの免疫学的特徴を踏まえ、SCLCにおけるICBの治療成績を向上させるための具体的なアプローチとして、化学放射線療法の先行による免疫原性の向上、抗血管新生療法との併用による微小環境の正常化、およびTMBとPD-L1発現を組み合わせた複合バイオマーカーによる精密な患者選択ストラテジーを提案し、今後の臨床開発の方向性を示すことを目指す。
結果
SCLCとNSCLCにおけるICB臨床試験成績の乖離: 臨床試験において、NSCLCでは単剤および併用療法において劇的な生存期間の延長が示されているのに対し、SCLCにおけるICBの効果は極めて限定的である (Table 1)。NSCLCの一次治療において、pembrolizumabと化学療法の併用療法を検証したKEYNOTE-189試験では、主要エンドポイントであるOSにおいて、併用群が化学療法単独群に対して有意な延長を示し、HR 0.49 (95% CI 0.38-0.64, p<0.001) であった Gandhi et al. NEnglJMed 2018。また、同試験のサブグループ解析において、PD-L1発現率が1%未満の患者群においても、OSの有意な改善が認められ、HR 0.59 (95% CI 0.38-0.92, p=0.02) であった。これに対し、進展型小細胞肺癌 (ED-SCLC: extensive-stage small cell lung cancer) の一次治療を対象としたIMpower133試験では、atezolizumabと化学療法の併用により、OSは12.3 months vs 10.3 monthsと有意に延長したものの、HR 0.70 (95% CI 0.54-0.91, p=0.007) と、NSCLCほどの劇的な効果は得られていない。さらに、SCLCの二次治療における単剤ICBの成績を検証したCheckMate 331試験では、nivolumab群のOSは7.5 months vs 化学療法群 (トポテカンまたはアムルビシン) 8.4 monthsであり、HR 0.86 (95% CI 0.72-1.04, p=0.11) と、化学療法に対する優越性を示すことができなかった。
SCLC腫瘍細胞におけるPD-L1発現の著明な低さ: SCLCにおけるICBの治療効果が限定的である最大の要因の一つとして、腫瘍細胞におけるPD-L1発現率の低さが挙げられる (Table 3)。NSCLCにおいては、腫瘍細胞におけるPD-L1発現率は50%から70%と高頻度であるのに対し、SCLCにおける発現率は多くの研究で2%から18%と極めて低いことが報告されている。例えば、Yasudaらの研究では、39例のSCLC生検組織のうち、PD-L1陽性 (カットオフ値1%) を示したのはわずか2.5% (n=1) であった。一方で、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL: tumor-infiltrating lymphocyte) や腫瘍浸潤マクロファージ (TIM: tumor-infiltrating macrophage) などの腫瘍浸潤免疫細胞 (TIC: tumor-infiltrating immune cell) におけるPD-L1発現率は40%から56%と比較的高く維持されている。Gadgeelらの研究では、腫瘍細胞でのPD-L1陽性率が10%であったのに対し、間質細胞では40%が陽性であった。このことから、SCLCにおいては腫瘍細胞自身によるPD-L1を介した適応性免疫耐性 (adaptive immune resistance) よりも、間質細胞による免疫抑制環境の構築が優位である可能性が示唆される。
MHCクラスIおよびクラスII分子のダウンレギュレーション: SCLC細胞は、抗原提示に不可欠なMHCクラスI分子の発現を著しく低下させており、これがCD8+ T細胞による腫瘍認識を阻害する強力な免疫逃避機構となっている。Doyleらの先駆的研究によれば、SCLC細胞株の多くでMHCクラスI分子のmRNAおよびタンパク質の発現がほぼ完全に消失していることが確認されている。さらに、SCLC細胞では、MHCクラスII分子の発現を誘導する転写共役因子であるcIITA (class II transactivator) の発現が、IFNγ (interferon-gamma) による刺激下であっても欠如している。Yazawaらの報告では、cIITAのプロモーター領域の活性不全により、SCLC細胞におけるMHCクラスII分子の発現が完全に消失しており、これがCD4+ T細胞への抗原提示能の低下を招いている。これらの知見は、SCLCが高度な「免疫学的に冷たい腫瘍 (cold tumor)」であり、T細胞の浸潤や活性化が起こりにくい微小環境を有していることを裏付けている。
SCLC細胞が分泌するIL-15を介した能動的免疫抑制: SCLC細胞は、単に抗原提示能を低下させるだけでなく、免疫抑制性因子を能動的に分泌することで宿主の免疫系を抑制している。Wangらの研究によると、SCLC細胞株はIL-15 (interleukin-15) を恒常的に分泌しており、これが局所および全身の免疫逃避に寄与している。具体的には、SCLC由来のIL-15は、エフェクターT細胞であるCD4+ T細胞の増殖を抑制する一方で、免疫抑制能を持つTreg (regulatory T) 細胞の誘導および増殖を強力にサポートする。SCLC患者の腫瘍浸潤組織において、FOXP3陽性Treg細胞の割合が高い患者群では、生存期間が有意に短縮することが示されており、IL-15を介したTreg細胞の誘導が予後不良因子として機能していることが明らかになっている。
CD47過剰発現によるマクロファージ貪食能の回避: SCLC細胞の表面には、マクロファージに対する「私を食べないで (don’t eat me)」シグナルとして機能するCD47分子が高度に発現している。CD47は、マクロファージ表面のSIRPα (signal regulatory protein alpha) と結合することで、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食活性を強力に抑制する。Weiskopfらの研究では、SCLC細胞株およびマウス異種移植モデルにおいて、抗CD47モノクローナル抗体を用いてこのシグナル経路を遮断したところ、マクロファージによるSCLC細胞の貪食作用が約3倍に増強され、腫瘍の増殖が有意に抑制されることが示された。このCD47/SIRPα経路の活性化は、SCLCにおける自然免疫系からの重要な逃避機序を構成している。
Fas/FasL経路の不均衡による細胞傷害性T細胞の排除: SCLC細胞は、アポトーシスを誘導するFas/FasL (Fas ligand) シグナル経路を悪用して、腫瘍を攻撃するT細胞を排除している。Viard-Leveugleらの研究によると、SCLC細胞ではデスレセプターであるFasの発現が著しく低下または消失している一方で、FasLの発現が91% (n=51/56) という極めて高い割合で上方制御されている。このFasの低下とFasLの上昇という不均衡により、SCLC細胞は自身のアポトーシスを回避する一方で、腫瘍内に浸潤してきたFas陽性の細胞傷害性T細胞 (CTL: cytotoxic T lymphocyte) に対し、傍分泌 (paracrine) 的にアポトーシスを誘導して殺傷する (paracrine killing)。これにより、腫瘍局所におけるエフェクターT細胞の排除が効率的に行われている。
自家分泌および傍分泌因子による腫瘍増殖の自立化: SCLCの生物学的特徴として、多様な増殖因子やケモカインの自家分泌 (autocrine) および傍分泌 (paracrine) ループが形成されていることが挙げられる。代表的な因子として、BN/GRP (bombesin/gastrin-releasing peptide) や、c-kit受容体のリガンドであるSCF (stem cell factor) があり、SCF/c-kit経路はSCLC症例の40%から70%において活性化している。これらの因子は腫瘍の自律的な増殖を強力に促進する。さらに、SCLC細胞は、LAK (lymphokine-activated killer) 細胞との接着に関与するICAM-1 (intercellular adhesion molecule-1) の発現を欠いており、これが免疫細胞による細胞傷害活性からの逃避につながっている。NSCLCが高レベルのIL-8を産生して好中球を誘引し免疫応答を修飾するのに対し、SCLCにおけるIL-8産生は低く、主に自家分泌的な増殖促進に利用されている。
TGFβ分泌を介した強力な局所免疫抑制: SCLC細胞は、多機能性サイトカインであるTGFβ (transforming growth factor-beta) を恒常的に分泌し、強力な免疫抑制微小環境を形成している。Fischerらの研究では、評価したSCLC細胞株の多くが活性型のTGFβ1を持続的に分泌しており、これがIL-2依存性のT細胞の増殖を強力に抑制することが示された。この抑制活性は、特異的な抗TGFβ1中和抗体を添加することで消失した。NSCLC細胞がTGFβ受容体II (TGFβ RII) を発現し、TGFβによる増殖抑制シグナルを受け取るのに対し、SCLC細胞は悪性転換の過程でTGFβ RIIの発現を消失させており、自身はTGFβによる増殖抑制を回避しながら、周囲の免疫細胞のみを一方的に抑制するという極めて巧妙なシステムを構築している。
化学放射線療法の先行による免疫原性の向上戦略: SCLCにおける免疫不全状態を克服するための戦略として、ICB開始前に化学療法や放射線療法を先行させることが提案されている。SCLCは初期治療に対する感受性が非常に高く、化学療法によって腫瘍量を劇的に減少させることができる。腫瘍量の減少は、腫瘍由来の免疫抑制因子の総量を低下させ、宿主の全身的な免疫機能を回復させる。さらに、放射線照射は、腫瘍細胞の免疫原性細胞死 (ICD: immunogenic cell death) を誘導し、腫瘍抗原の放出を促進するとともに、MHCクラスI分子の発現やPD-L1発現を局所的に誘導する。これにより、その後に投与するICBの効果を最大化するための「プライミング効果」が得られると考えられている。
抗血管新生療法との併用による相乗的微小環境正常化: 腫瘍血管の新生は、腫瘍微小環境における免疫抑制の主要な駆動因子である。VEGF (vascular endothelial growth factor) は、血管新生を促進するだけでなく、樹状細胞 (DC: dendritic cell) の成熟を阻害し、Treg細胞やMDSC (myeloid-derived suppressor cell) などの免疫抑制性細胞を腫瘍局所に誘導する。したがって、抗血管新生療法とICBの併用は、腫瘍血管を正常化してエフェクターT細胞の浸潤を促進するとともに、微小環境の免疫抑制を解除する相乗効果をもたらす。NSCLCにおいては、atezolizumab、bevacizumab、および化学療法の4剤併用療法 (IMpower150試験) がOSを有意に延長することが示されており、SCLCにおいてもanlotinibなどのマルチキナーゼ阻害薬とICBの併用療法が有望な戦略として臨床開発が進められている (Table 2)。
TMBとPD-L1を組み合わせた複合バイオマーカーの有用性: SCLCにおける最適なバイオマーカーの確立は急務である。SCLCではPD-L1単独での効果予測能は極めて限定的であるが、TMBは有望な指標として注目されている。CheckMate 032試験の探索的解析において、TMB高値 (high TMB) 群における奏効率は、nivolumab単剤で21.3%、nivolumab+ipilimumab併用療法で46.2%に達し、TMB低値/中値群 (単剤で4.8%から6.8%、併用で16.0%から22.2%) を大幅に上回った。さらに、TMB高値群における併用療法のOS中央値は22ヶ月に達し、歴史的な二次治療成績を大きく凌駕した。TMBとPD-L1発現量との間には相関関係が認められないことから、これら2つの独立したバイオマーカーを組み合わせた「複合バイオマーカー」を用いることで、ICBの恩恵を最も受けることができる患者集団をより高精度に選別できる可能性が示唆されている。
考察/結論
先行研究との違い: 本総説は、単にSCLCにおけるICBの臨床試験成績を羅列した従来の報告と異なり、SCLCとNSCLCの臨床効果の劇的な乖離に焦点を当て、その背景にある分子生物学的および免疫学的な差異を直接的に対比させて体系化した点において、これまでの総説と一線を画している。特に、高いTMBを有しながらもICBに不応であるというSCLCのパラドックスに対し、低PD-L1発現、MHCクラスI/II分子の欠損、能動的免疫抑制因子の分泌、および自家分泌シグナルによる増殖自立化という4つの多角的な免疫逃避機構を統合して説明したアプローチは、極めて独自性が高い。
新規性: 本総説は、SCLCにおける免疫逃避が単一の経路によるものではなく、自然免疫と獲得免疫の双方を標的とした複合的なネットワークによって構築されていることを本研究で初めて包括的に概念化した。特に、SCLC細胞が分泌するIL-15がTreg細胞を能動的に誘導するシステムや、Fas/FasL経路の不均衡を利用した細胞傷害性T細胞の排除、さらにはTGFβ受容体の欠失による自己増殖抑制の回避と周囲への免疫抑制の同時達成など、SCLCに特異的な「能動的免疫排除」のメカニズムを新規に整理した点は、学術的に極めて高い価値を有している。
臨床応用: 本総説が提示した免疫学的フレームワークは、今後のSCLC治療における臨床応用に直結する極めて重要な示唆を含んでいる。臨床的意義として、単剤ICBによる治療限界が示された現在、化学放射線療法の先行による「免疫学的プライミング」や、抗血管新生療法との併用による「微小環境の正常化」といった複合的治療ストラテジーの理論的基盤を提供する。さらに、PD-L1発現とTMBを組み合わせた複合バイオマーカーの導入は、実臨床における最適な患者選択を可能にし、無駄な治療の回避と医療経済的な効率化に貢献する。
残された課題: 本総説が執筆された2019年以降、SCLCの治療体系は標準治療としてatezolizumabやdurvalumabの併用療法が定着するなど進歩を遂げているが、依然として多くの残された課題が存在する。第一に、ASCL1、NEUROD1、POU2F3、YAP1などの転写因子に基づくSCLCの分子サブタイプ分類と、それぞれのサブタイプにおける免疫微小環境(特にGayらが提唱したSCLC-I [immune-enriched] サブタイプなど)との関連性の解明が不十分である。第二に、SLFN11やSTING-cGAS経路といった、ICBやDNA損傷修復阻害薬の感受性を予測する新規バイオマーカーの臨床現場への実装が遅れている。第三に、DLL3を標的としたBiTE (bispecific T-cell engager) であるtarlatamabなどの次世代免疫療法の登場に伴い、これらと従来のICBとの最適な併用・順序ストラテジーの確立が求められている。今後の検討課題として、ctDNA (circulating tumor DNA) やラジオミクスを用いた非侵襲的な免疫プロファイリング技術の開発、および獲得耐性メカニズムの解明が不可欠であり、本総説が示した免疫学的基盤を基にしたさらなる臨床研究の進展が期待される。
さらに、SCLCにおける免疫逃避機構の解明において、腫瘍細胞の可塑性(神経内分泌形質から非神経内分泌形質への移行)が免疫微小環境に与える影響についても、今後の重要な研究方向性として挙げられる。非神経内分泌形質への移行に伴い、MHCクラスI分子の発現回復やPD-L1発現の上昇が認められるとの報告もあり、腫瘍の可塑性を制御することで「冷たい腫瘍」を「温ない腫瘍」へと変換する新規アプローチの臨床応用が期待される。これらの多角的なアプローチを統合することで、SCLC患者におけるICBの治療成績を飛躍的に向上させることが可能になると考えられる。
方法
本論文は、SCLCおよびNSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験成績、およびSCLCの免疫生物学的特徴に関する基礎研究を網羅的に収集・分析した総説である。文献検索は、主要な医学データベースである PubMed を用いて実施された。検索対象期間は主に2000年から2019年までとし、検索キーワードとして「small cell lung cancer」「SCLC」「immune checkpoint blockades」「PD-1」「PD-L1」「CTLA-4」「immune escape mechanisms」「tumor mutational burden」などを単独または組み合わせて使用した。臨床エビデンスの評価においては、SCLCを対象とした主要な第I相から第III相臨床試験 (CheckMate 032、CheckMate 331、CheckMate 451、IMpower133、KEYNOTE-028、KEYNOTE-158、CA184-156など) のデータを抽出した。これらの試験における客観的奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS: progression-free survival)、全生存期間 (OS: overall survival)、および治療関連有害事象 (TRAE: treatment-related adverse event) のデータを、NSCLCにおける代表的な臨床試験 (CheckMate 017、CheckMate 057、KEYNOTE-010、KEYNOTE-189、KEYNOTE-407、IMpower130、IMpower131、IMpower132、IMpower150など) の成績と直接的に比較分析した。各臨床試験における生存曲線の解析や治療効果の比較には、Kaplan-Meier 法による生存確率の推定、log-rank テストによる群間比較、および Cox regression (コックス比例ハザードモデル) に基づくハザード比 (HR) と95%信頼区間 (CI) の算出など、原著論文で用いられた統計手法の妥当性を検証した。基礎研究の統合においては、SCLC細胞株および患者生検組織を用いたPD-L1発現に関する13の独立した免疫組織化学染色 (IHC: immunohistochemistry) 研究のデータを集計し、腫瘍細胞 (TC: tumor cell) と腫瘍浸潤免疫細胞 (IC: immune cell) における発現率の違いを解析した。さらに、MHCクラスI/II分子の発現低下、IL-15やCD47、Fas/FasLを介した免疫抑制機構、およびBN/GRP、GCP-2、SCF、TGFβなどの自家分泌・傍分泌因子によるシグナル伝達経路に関する既報の分子生物学的知見を体系的に整理・統合した。