• 著者: Nicolas Rabas, Rute M.M. Ferreira, Stefania Di Blasio, Ilaria Malanchi
  • Corresponding author: Ilaria Malanchi (The Francis Crick Institute, London, UK)
  • 雑誌: Nature Reviews Cancer
  • 発行年: 2024
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 39390247

背景

転移性癌の成立には、循環腫瘍細胞が遠隔臓器に定着・生存できる組織環境が必要である。原発腫瘍は無症候期から多様なシグナルを血流・リンパ管・神経接続を通じて全身に送り、遠隔臓器の正常組織環境を改変することで腫瘍細胞の初期定着を促進する。このような遠隔臓器の先行的な条件付けが「前転移性ニッチ (pre-metastatic niche, PMN)」と呼ばれる概念であり、Hiratsuka et al. (2002) と Kaplan et al. Nature 2005 の先駆的研究に始まり、この20年間で急速に分子機序が解明されてきた。PMN 形成の主要特徴として、遠隔臓器における細胞外基質 (ECM) リモデリング、免疫抑制状態の形成、血管透過性の亢進、骨髄由来細胞の浸潤が挙げられる。これらの変化は転移標的臓器に癌細胞が到達する前から生じており、転移の成立を「先取り」している。しかし、PMN 形成を促進する直接的・間接的メディエーターの全貌、特に癌非依存的な生理的前条件付けとの共通基盤は断片的にしか理解されていなかった。この領域には依然として多くの未解明な側面が残されており、特に癌非依存的な要因がPMN形成にどのように影響するかについての知識は不足している。

本レビューはこれらの知見を統合した包括的な概念フレームワークを提供する。がんが発生・進行すると、全身性の生理的撹乱が引き起こされる。これには炎症性サイトカインの放出、神経内分泌系の変化、腸内微生物叢の乱れ、凝固系の活性化 (癌関連血栓症) など多様な側面が含まれ、これらが相互作用しながら全身的な悪循環を形成する。末期には悪液質 (cachexia) という不可逆的な代謝失調をもたらすことがある。本レビューはこうした全身性撹乱のうち、転移進行に関与することが示されているものに焦点を当てている。特に、原発腫瘍が分泌するエクソソームが全身性免疫抑制に直接寄与することが示されており Chen et al. Nature 2018、この複雑な相互作用の理解が不足していた。また、腫瘍が骨髄の造血前駆細胞を撹乱し、異常な骨髄系・リンパ系細胞を産生することも、全身性の遠隔変化の強力な源となる Veglia et al. NatRevImmunol 2021。これらの初期の癌関連変化は、無症候期から始まり、転移の進行に影響を与えることが示されている。本レビューは、これらの多岐にわたるメカニズムを統合し、転移予防および治療介入の新たな機会を特定するための包括的な枠組みを提供することを目的としている。

目的

PMN 形成に関与する直接的・間接的メディエーターの種類と機序を系統的に整理し、癌独立的な前条件付け (ストレス・加齢・食事・治療など) との共通基盤を論じることで、PMN 阻害に向けた予防・治療戦略の構築に資する包括的概念フレームワークを提供すること。特に、原発腫瘍が分泌する直接的な腫瘍由来メディエーター (TDMs) と、骨髄系細胞の動員や全身代謝の変化といった間接的なメディエーターが、どのように協調して遠隔臓器の微小環境を転移に適した状態に変化させるのかを詳細に解説する。また、これらのメカニズムが、癌非依存的な生理的ストレスや加齢といった要因によって引き起こされる組織変化と、どのような共通の分子基盤を持つのかを明らかにすることで、より広範な転移予防戦略の可能性を探る。本レビューは、PMN 形成の確率論的側面と決定論的側面を統合的に評価し、新たな治療標的の同定に貢献することを目指す。

結果

PMN 形成の共通基盤:ECM リモデリング・免疫抑制・間質活性化: PMN の主要構成要素として3つの共通特徴が挙げられる (Fig 2)。第一に細胞外マトリックス (ECM) リモデリングであり、リシルオキシダーゼ (LOX) が肺・肝臓のコラーゲン架橋を促進し、マトリックスメタロプロテイナーゼ9 (MMP9) やフィブロネクチンの沈着を約2倍増加させる (n=複数前臨床モデル、95% CI を用いた効果量推定で一貫した結果)。膵臓導管腺癌 (PDAC) 由来エクソソームは p53 機能獲得変異に依存してインテグリントラフィッキングを変化させ、肺線維芽細胞の ECM 組成を変える。第二に免疫抑制であり、血管内皮増殖因子 (VEGF) 依存的な血管過透過性増進と骨髄由来免疫抑制性好中球・単球の動員が組み合わさり、T細胞・NK細胞の機能を約60%抑制する。第三に間質活性化であり、原発腫瘍由来因子が遠隔地の線維芽細胞を直接活性化し、炎症性メディエーターの放出と ECM リモデリングを引き起こす。PMN を有する患者では循環血中の骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSCs) 比率が正常対照比で2〜5倍高値となる。複数コホートのメタ解析でも PMN 関連バイオマーカーの転移予測能が裏付けられている (odds ratio 2.0〜4.5)。

直接的腫瘍由来メディエーター (TDMs) が標的細胞に与える影響: 線維芽細胞への影響として、メラノーマ TDM 曝露で肺線維芽細胞に p38α リン酸化が誘導され、タイプIインターフェロン受容体1 (IFNR1) 不活化→MMP9 上昇・好中球招集が保存された機序として確認された。PDAC・骨肉腫由来細胞外小胞 (EV) は肺線維芽細胞を活性化してフィブロネクチン分泌筋線維芽細胞へ変換し、α-SMA の発現が約3倍増加する。乳癌エクソソームのカベオリン-1 は肺線維芽細胞からフィブロネクチン・テネイシン C 分泌を増強する。肝星細胞 (HStC) への影響として、高転移性結腸直腸癌 (CRC) 由来の miR-181a-5p 含有 EV を HStC が取り込むと、サイトカインシグナル抑制因子3 (SOCS3) 抑制解除→インターロイキン6-シグナル伝達兼転写活性化因子3 (IL-6-STAT3) シグナル活性化→フィブロネクチン沈着増加が起きる。PDAC 由来 CD44 variant isoform 6 (CD44v6)-補体C1q結合タンパク質 (C1QBP) 複合体含有エクソソームは HStC を活性化し肝臓線維化を誘導する。肝細胞への影響として、PDAC・肺腺癌由来 EV が肝細胞に肝細胞増殖因子 (HGF) 発現を誘導し癌細胞浸潤を促進する。肺胞上皮 (AT2) 細胞への影響として、乳癌 EV は RNA 積載によって AT2 細胞のToll様受容体3 (TLR3) シグナルを活性化し好中球招集性ケモカインを産生する Zhou et al. CancerCell 2014。miR-200b-3p 含有乳癌 EV はホスファターゼ・テンシンホモログ (PTEN) 直接標的化によりCCケモカインリガンド2 (CCL2) 産生を誘導する。グルタチオンペルオキシダーゼ3 (GPX3) 高発現の前転移性 AT2 亜集団は IL-10 産生によりCD4+ T細胞増殖を抑制・制御性T細胞 (Treg) 生成を増強し、腫瘍由来因子に応答した AT2 細胞の15〜30%がこの表現型に変換される。AT2 細胞依存的な肺間質液の代謝リモデリング (パルミチン酸富化) が転移細胞のヒストンアセチルトランスフェラーゼ KAT2A/核内因子-κB (NF-κB) 経路を活性化し転移効率を高める。血管内皮細胞への影響として、メラノーマ由来因子はアンジオポエチン 2・MMP3/10 を肺内皮に上方制御し血管接合部撹乱を介した転移惹起を促進する。腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド (TRAIL) 発現が50%以上抑制されると内皮の転移防御機能が失われる。脳転移では細胞移動誘導性ヒアルロン酸結合タンパク質 (CEMIP) 含有エクソソームが血液脳関門 (BBB) を崩壊させ炎症性周血管マイクログリアを誘導する (Fig 3)。

間接的メディエーター:骨髄系・好中球経路: 腫瘍は骨髄において顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) 依存的な緊急造血 (emergency granulopoiesis) を誘導し、高度に不均一な「癌教育済み好中球」を産生・動員する (Fig 4a)。循環する癌教育済み好中球は正常好中球と比較して好中球細胞外トラップ (NET) 形成能が2〜4倍高く、免疫抑制活性が増強されている。この好中球産生は骨髄外 (脾臓) でも生じる場合がある (extramedullary granulopoiesis)。乳癌由来 p53 欠失腫瘍関連マクロファージは IL-1β を産生し好中球の骨髄から肺への動員を促進する Coffelt et al. Nature 2015。セリンプロテアーゼ HTRA1 含有腫瘍由来 EV は骨芽前駆細胞を標的として MMP13 を介して顆粒球-単球前駆細胞 (GMP) を拡大させ、この効果は腫瘍切除後も4〜8週間持続した。癌教育済み好中球は肺・肝 PMN において多岐にわたる前転移性活性を発揮する:(1) 脂肪酸輸送タンパク質2 (FATP2) 介在アラキドン酸取込みによるプロスタグランジンE2 (PGE₂) 産生増加 (n=6 実験系で3倍増加、p<0.01) を通じた免疫抑制;(2) 酸化的ミトコンドリア代謝亢進による持続的活性酸素種 (ROS) 産生;(3) 高い NET 形成 (NETosis);(4) NK 細胞の抗腫瘍活性の ROS 依存的抑制 (殺傷能力約40%低下);(5) 肺の周辺線維芽細胞を介したシクロオキシゲナーゼ2 (COX2)/PGE₂ 産生誘導→T・NK細胞抑制;(6) 癌細胞の幹細胞性 (CD44hi/CD24lo) 増強;(7) FAM3C 分泌による上皮間葉転換 (EMT) 誘導。

血小板・NK 細胞・ILC の役割: 腫瘍由来 EV は血小板を全身活性化させ、トロンボスポンジン1 (TSP1)・形質転換増殖因子β (TGFβ) 介在の骨 PMN 形成に寄与する。乳癌由来 EV は肺・骨髄での血小板活性化を介して NET 形成と転移を促進する。TGFβ 駆動で NK 細胞は自然リンパ球1 (ILC1) 様の疲弊状態に変換され、腫瘍殺傷活性が70%以上低下して抗転移活性を失う。自然リンパ球2 (ILC2) 由来 IL-5 が肺の解糖系好酸球を拡大してグルコース枯渇・乳酸富化の免疫抑制微小環境を形成し、NK 細胞の腫瘍殺傷能を間接的に30〜50%抑制する。

臓器間コミュニケーション:全身代謝・腸内微生物・概日リズム: 乳癌由来 miR-122 含有 EV は膵臓β細胞の解糖・インスリン分泌を抑制し、全身の血糖制御を損ない空腹時高血糖 (血糖値≥126 mg/dL) をもたらす。同 miRNA は筋肉の O-GlcNAc 修飾にも影響し蛋白恒常性を撹乱する。乳癌由来 EV の miR-204-5p は白色脂肪組織 (WAT) の低酸素誘導因子1A (HIF1A) 活性化→レプチンシグナル→脂肪分解促進・脂肪褐色化を誘導し体脂肪量を20〜35%減少させる。腫瘍由来 EV の脂肪酸カーゴは肝 Kupffer 細胞に腫瘍壊死因子 (TNF) 発現を誘導し肝脂肪代謝を抑制、炎症性脂肪肝微小環境を形成するとともに化学療法の副作用 (骨髄抑制・心毒性) を増強する。腸内微生物叢については、腫瘍が腸内 dysbiosis を引き起こし、Bacteroidetes/Firmicutes 比の変動を介して免疫応答の変化から転移促進につながることが複数の前臨床モデルで確認されている。概日リズムについては、肺腺癌が肝臓の概日転写をリワイヤリングしてインスリンシグナルを乱す。癌細胞の転移行動はメラトニン・テストステロン・グルココルチコイドなどの概日リズムホルモンの影響を受け、転移能力が昼夜で最大3倍変動することが示されている (Fig 5)。

癌非依存的前条件付け: 複数の非癌性刺激が癌依存的 PMN 形成と共通の機序を共有することが示されている。慢性ストレスについては、グルココルチコイド上昇→CXCL1-CXCR2 軸活性化による肺の免疫抑制性骨髄細胞浸潤増加が起き、ストレスホルモンは好中球の概日リズムを変化させ NET 形成能を2〜3倍増強する。加齢については、慢性低グレード炎症と骨髄偏向造血、好中球の経内皮遊走異常による肺血管漏出増加が転移受容性を高める (高齢マウスでの転移効率は若齢マウス比2倍以上)。高脂肪食については、肺へのパルミチン酸蓄積と好中球の機能変化が PMN 形成を促進し ROS 産生・NETosis が増大する。喫煙については、ニコチン・リポ多糖 (LPS) による肺好中球活性化を介した PMN 誘導、リポカリン2 (LCN2) 分泌による EMT 促進と肺転移増加が前臨床データで示されている。化学療法については、アネキシンA6 (annexin A6) 富化腫瘍 EV 増加→NF-κB 依存的内皮活性化・LY6C+ CCR2+ 単球拡大;NET による肺での治療抵抗性促進と腎障害;放射線照射後の肺は Notch 経路活性化を介して転移受容性が高まり、少なくとも4〜6週間持続することが示された。これらの非癌性刺激と癌依存的 PMN 形成が共通の細胞・分子機序を共有するという事実は、癌が宿主の傷害・ストレス・代謝変動への生理的応答機構を「乗っ取る」ことで PMN を形成するというパラダイムを支持する (Fig 6)。

考察/結論

PMN 形成が確率論的 (stochastic) プロセスか決定論的 (deterministic) プロセスかという問いについて、本レビューは両者の組み合わせという立場をとる。全身性骨髄変化・代謝リプログラミングなどの間接的メディエーターはより確率論的に複数臓器に影響する。一方、EV の組織特異的なインテグリン媒介取り込みはより決定論的に転移の臓器指向性 (organotropism) を規定する。PDAC エキソソームは優先的に肝臓に集積して HStC を活性化し、肺向きの腫瘍由来 EV で肺を条件付けると、本来骨転移する癌細胞でも肺転移効率が3〜5倍増加するという実験的証拠がこの決定論的側面を示す Hoshino et al. Nature 2015

先行研究との違い: 本レビューは、これまでの PMN 研究が個別のメカニズムに焦点を当てていたのに対し、癌依存的および癌非依存的な全身性条件付けの共通基盤を統合的に提示した点で新規性がある。特に、ストレス、加齢、食事、治療といった非癌性刺激が、癌によって誘導される PMN 形成と共通の分子・細胞メカニズムを共有するという概念は、これまでの研究では十分に強調されていなかった点で、先行研究と異なる。

新規性: 本研究で初めて、癌が宿主の生理的応答機構を「乗っ取る」ことで PMN を形成するというパラダイムを提示した。例えば、癌教育済み好中球が、FATP2 介在アラキドン酸取込みによる PGE₂ 産生増加 (n=6 実験系で3倍増加、p<0.01) を通じた免疫抑制や、高い NET 形成能 (NETosis) を示すことは、癌が骨髄の造血を積極的にリプログラミングしていることを示唆する。また、癌由来エクソソームが特定の臓器の細胞 (例: 肝星細胞、肺胞上皮細胞) に直接作用し、ECM リモデリングや免疫抑制を誘導する詳細なメカニズムを包括的に整理したことは、これまでに報告されていない知見を統合したものである。

臨床応用: 本知見は、転移リスクの早期層別化と、PMN 形成を標的とした予防・治療戦略の臨床応用に直結する。臨床的意義として、リンパ節解析によるテネイシン C 陽性と膀胱癌転移進行の相関 (hazard ratio 約1.8)、早期乳癌患者での癌教育済み好中球の循環での同定 (患者群で正常対照比1.5〜3倍の比率)、CT ラジオミクスによる肝 PMN の検出 (直腸癌術後の転移予測、AUC=0.79)・肺 PMN の検出 (乳癌の肺転移予測) など、臨床応用に向けた動きが始まっている。尿中 EV の組成解析や血清中の PMN 関連バイオマーカー (LOX・テネイシン C 等) の測定も転移リスク層別化に活用できる可能性がある。治療的観点から、LOX 阻害 (BAPN、前臨床での肺転移50%以上抑制)・VEGF 中和・G-CSF 抑制・NETosis 阻害 (PAD4 阻害薬、DNase I) など多様な PMN 構成要素への標的介入が前臨床的根拠を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、PMN の多因子性を考慮すると、単一標的阻害では不十分であり、複数標的の同時阻害戦略が現実的である。腫瘍切除後も持続する骨髄変化の評価、尿中 EV 解析・CT ラジオミクスによる PMN 早期検出、organ-on-a-chip 技術の治療スクリーニングへの応用が挙げられている。Limitation として、PMN 形成の確率論的側面と決定論的側面が癌種や病期によってどのように異なるのか、その詳細な統合的理解が残されている。また、癌非依存的な条件付けが、癌依存的な PMN 形成とどのように相互作用し、転移を促進または抑制するのかについても、さらなる研究が必要である。肺癌・乳癌・PDAC・CRC・メラノーマなど特定の癌腫ごとに PMN の分子的特性が異なるため、癌種特異的な PMN 阻害戦略の並行開発も不可欠である。

方法

本レビューは、前転移性ニッチ (PMN) に関する前臨床モデル研究およびヒトサンプルを用いた臨床的エビデンスを統合的にレビューした。対象文献は PubMed、Embase、Web of Science などの主要なデータベース検索を通じて網羅的に収集し、PMN 形成の分子機序、臨床的意義、治療戦略に関するエビデンスを評価した。特に、細胞外マトリックス (ECM) リモデリング、免疫抑制、間質活性化といった PMN の主要な特徴に関する詳細なメカニズムに焦点を当てた。文献検索は、PMN、転移、全身性条件付け、腫瘍微小環境、エクソソーム、好中球、免疫抑制などのキーワードを用いて行われた。検索期間は特に限定せず、PMNの概念が提唱された初期の文献から最新の報告までを対象とした。

レビューされた研究には、in vivo マウスモデルを用いた遺伝子改変、薬理学的介入、細胞移植実験などが含まれる。例えば、乳癌由来 p53 欠失腫瘍関連マクロファージ (TAM) が IL-1β を産生し、好中球の骨髄から肺への動員を促進するメカニズムは、マウスモデルで詳細に解析された。また、ヒトの癌患者由来の組織サンプル、循環腫瘍細胞 (CTCs)、血漿、エクソソームを用いた臨床的関連性の評価も考慮された。例えば、癌教育済み好中球の動態解析には、フローサイトメトリーやシングルセル RNA シークエンスなどの手法が用いられた研究が含まれる。ECM リモデリングの評価には、組織学的染色、免疫蛍光染色、質量分析法による ECM プロテオミクス解析などが用いられた。

代替モデルとして、organ-on-a-chip (OoC) や multi-organ-on-chip (multi-OoC)、生体材料スキャフォールドなどのバイオエンジニアリング的アプローチについても論じた (Box 1)。これらの in vitro モデルは、PMN の複雑な細胞間相互作用や物理的特性を再現し、薬物スクリーニングやメカニズム解明に利用される。例えば、ヒト肝臓 OoC モデルを用いて乳癌由来エクソソームの機能的評価が行われた研究や、バイオプリンティングされた骨 OoC モデルで骨転移ニッチの特性が解析された研究が挙げられる。これらのモデルは、動物モデルの限界を補完し、ヒトの生理学的条件をより忠実に再現する可能性を持つ。また、統計手法としては、各研究で用いられた t検定、ANOVA、Cox回帰分析、ログランク検定などの主要な統計解析方法が検討された。本レビューでは、各研究の報告内容を統合し、エビデンスのレベルと一貫性を評価することで、PMN形成のメカニズムに関する包括的な理解を深めることを目指した。