• 著者: Joseph Jose Thottacherry, Mugdha Sathe, Chaitra Prabhakara, Satyajit Mayor
  • Corresponding author: Satyajit Mayor (National Centre for Biological Science, Tata Institute for Fundamental Research, Bangalore, India)
  • 雑誌: Annual Review of Cell and Developmental Biology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-07-05
  • Article種別: Review
  • PMID: 31283376

背景

エンドサイトーシスは細胞が栄養素を取り込み、細胞外環境を感知し、シグナル伝達を制御し、形質膜の組成ホメオスタシス (化学的側面) および表面積・膜張力 (物理的側面) を維持するために不可欠な細胞プロセスである。1884年のMetchnikoffによる食作用 (phagocytosis) の観察に始まり、数十年の研究によってCME (clathrin-mediated endocytosis: クラスリン依存性エンドサイトーシス) の分子機構が精緻に解明された。Conner & Schmid (2003, Nature) はCMEをはじめとするエンドサイトーシス経路の最初の包括的分類を提示し、Mayor & Pagano (2007, Nat Rev Mol Cell Biol) はクラスリン非依存性経路の多様性を整理した。続いてDoherty & McMahon (2009, Annu Rev Biochem) がCIE (clathrin-independent endocytosis: クラスリン非依存性エンドサイトーシス) の多様なメカニズムをレビューした。しかしながら、CIEの分子機構・経路間クロストーク・生理的役割の体系的理解は依然として不足 (gap in knowledge) していた。特にCIE経路が単なるCME摂動時の補償機構ではなく、それぞれ独自の生理的役割を持つかどうかについての証拠が手薄であり、EV (extracellular vesicle: 細胞外小胞) の生合成・分泌・細胞間移行については一定の知見が蓄積されつつあるが (Colombo et al. AnnuRevCellDevBiol 2014)、各エンドサイトーシス経路を通じたEV取り込みの全容は未解明のままであり、どの経路が主要な取り込み役割を担うかも特定されていなかった。エンドサイトーシス経路の分類もクラスリンの有無に限られており、小胞切り離し機構に基づく体系的再分類が求められていた。

目的

本レビューの目的は、細胞表面で機能する多様なエンドサイトーシス経路を、ダイナミン依存性/非依存性という新軸を用いて体系的に整理・再分類し、各経路の分子機構 (膜曲げ・小胞形成・カーゴ選択・小胞切り離し)、制御メカニズム、シグナル調節・膜張力制御における非冗長な生理機能、進化的起源を統合的に提示することである。またCIE経路の分子レベルでの理解を深め、異なる経路間のクロストーク機構、特に脂質が果たす役割についての考察と今後の研究方向性を示す。

結果

CME (クラスリン依存性エンドサイトーシス) の精緻な分子機構とカーゴソーティング: CMEは最も詳細に解析されたエンドサイトーシス経路であり、受容体型輸送の主要経路として機能する。AP2 (adaptor protein 2) などのアダプター複合体が受容体細胞質尾部の特異的配列を認識してカーゴをリクルートし、クラスリン重合によるCCP (clathrin-coated pit) 形成が開始される。amphiphysin・FBP17・ソルティングネキシン9などのBAR (Bin-amphiphysin-Rvs) ドメインタンパク質が膜曲げと安定化を担い、最終的にダイナミン (大型GTPase) がCCP頸部で重合してGTP加水分解力によって小胞を切り離す (Fig 2)。PI(4,5)P2がAP2をリクルートするフィードフォワードループを形成し (AP2 → PIP5K → さらなるPI(4,5)P2生成)、後期段階でPI(4,5)P2がPI(3,4)P2に変換されてCCP完成に必要とされる。切り離された小胞はクラスリンコートを脱離してソーティングエンドソームと融合する。カーゴソーティングではβ-アレスチンがリン酸化GPCRをCMEに誘導するが、一方でGPCRはFEMEを介してβ-アレスチン非依存的にも内在化される。ユビキチン化がFEMEへのソーティングシグナルとして、糖鎖がガレクチン結合を介してCG経路へのソーティングシグナルとして機能する可能性が提唱されている。

カベオラ経路の分子構造・組成とメカノ緩衝機能: カベオラ (caveolae) は電子顕微鏡で最初に観察された直径50-100 nmのフラスコ型内陥構造であり (Fig 1)、多くの細胞型でカベオリン-1 (n=140 分子/カベオラ)・カベオリン-2 (30-70 分子) およびCavin1-3複合体を含む。骨格筋ではカベオリン-3がカベオリン-1/2の代わりに発現し、Cavin4/MURCが付加される。カベオラはダイナミン依存的切り離し機構を使用し、ATPアーゼEHD2がF-BARドメインタンパク質パクシン (pacsin) と相互作用してカベオラエンドサイトーシスの負の制御因子として機能する。膜張力変化に対するカベオラの応答は二相性であり、張力増大時にカベオラが急速に平坦化して余剰膜を解放するパッシブな緩衝作用をもち、その後細胞骨格の再編成によってカベオラが再形成される。細胞接着喪失 (deadhering) 時にはカベオリン-1のリン酸化が引き金となりコレステロール富裕膜ドメインとともにエンドサイトーシスされ、Rac1の細胞膜局在性の変化を介したアノイキス (anoikis) 誘発に関与する (del Pozo et al. 2004, 2005)。コレステロール変動がCG経路のCDC42活性を変化させるなど、カベオリン/カビン発現が他のCIE経路を間接的に調節するクロストークも報告されている。

FEME (fast endophilin A-mediated endocytosis) の急速クラスリン非依存性内在化機構: FEME は2015年に記述された最新のCIE経路であり、EndoA (endophilin A) 依存性のサイズ <1 µm の管状小胞を形成する (Fig 1)。EndoAはSH3 (Src homology 3) ドメインによるカーゴ認識・BARドメインによる膜曲げ・複数の両親媒性ヘリックス挿入による切り離しを担う多機能分子である。FEMEの開始はPI(3,4)P2 (SHIP1/2ホスファターゼによるPI(3,4,5)P3からの変換) によるLamellipodinのリクルートを経てEndoA2の動員と局所膜変形誘導により開始される。重要な知見として、高濃度EGF (20 ng/ml) はCMEを下方制御する一方でFEMEを活性化し、低濃度EGF (1.5 ng/ml) ではEGFRがCMEを経て内在化・リサイクルされてシグナルが持続するのに対し、高濃度EGFではCIE (FEME) 経由でEGFRがリソソーム分解に向かいシグナルが減弱する (Sigismund et al. 2005, 2008)。GPCRとしてα2aおよびβ1アドレナリン受容体・IL2受容体、EGFR、Shiga毒素 (STx-B) がFEMEのカーゴとして同定されており、ダイナミン阻害薬とPI3K (phosphatidylinositol 3-kinase) 阻害薬によって抑制される。RhoGTPaseであるRhoAとRac1がFEMEに必須であり、細胞遊走時には先端部 (leading edge) で誘導されてβ1アドレナリン受容体の内在化に関与する。

CLIC/GEEC経路の高容量膜内在化と膜張力センシング: CG (CLIC/GEEC) 経路はクラスリンおよびダイナミン非依存性の主要なCIE経路であり、ARF1 (ADP-ribosylation factor 1) とCDC42 (cell division control protein 42) によって制御される (Fig 1)。GPI-AP (glycosylphosphatidylinositol-anchored protein) と大量の液相 (fluid phase) を主要カーゴとして内在化し、定量的EMイメージングにより線維芽細胞の全表面積を12 min以内に取り込む高容量内在化システムとして機能することが示された (Howes et al. 2010)。CG経路を選択的に阻害した線維芽細胞では遊走速度が約2-fold低下し (p<0.05)、この経路の非冗長性が定量的に実証された。分子制御機構として、GBF1 (Golgi-specific brefeldin A resistance factor 1) とARF1の形質膜へのリクルートが最初のステップであり、続いてARP2/3複合体・CDC42・F-アクチンが動員される。二段階的制御としてPICK1が第1相でARP2/3を抑制して膜出芽を許容し、CDC42/IRSp53エフェクター複合体が第2相でARP2/3を活性化して膜を切り離す。CG経路はダイナミン機能喪失時に代償的に活性化するクロストークが確認されており、AP2ノックダウンによっても多くの細胞株で流体取り込みが増加する。膜張力 (membrane tension) 低下を感知してCG経路が急速・過渡的にエンドサイトーシスを亢進し余剰膜を回収するメカノセンサーとしての機能が示されており (Thottacherry et al. 2018, Nat Commun)、ビンキュリン (vinculin) を介するメカノトランスダクションがその下流シグナルを担う。GEECはCLICの融合によって形成される高酸性度のエンドソームコンパートメントであり、Rab5/PI3K依存的にソーティングエンドソームと融合する前に膜内容物の大部分をリサイクルする。2D遊走中の線維芽細胞ではCG小胞が先端部に偏在し、その除去が遊走効率を特異的に低下させることから、CG経路が遊走において非冗長な役割を担う。

マクロピノサイトーシスと腫瘍の栄養スカベンジング: マクロピノサイトーシス (macropinocytosis) は細胞背側のアクチンラッフル (ruffles) から形成されるサイズ >0.5 µm の非選択的エンドソーム (マクロピノソーム) を特徴とし、液相の大量非選択的取り込みを担う (Fig 3)。EGFRおよびPDGFR (platelet-derived growth factor receptor) ベースの増殖因子シグナル依存性であり、静止細胞では見られない。ARF6とRac1によって調節されPtdIns(4,5)P2のターンオーバーが必要とされ、Na+/H+交換 (NHE) 阻害薬によって選択的に阻害される点でCG経路と区別される。CtBP1/BARSがEGF刺激で局所的にエンドソーム切り離しに関与する。腫瘍との関連では、血管密度が低く循環アミノ酸へのアクセスが制限された栄養不足な膵臓がん腫瘍 (Kamphorst et al. 2015, Cancer Res) において、Ras形質転換細胞がPTEN (phosphatase and tensin homolog) とAMPK (AMP-activated protein kinase) の活性化を通じてマクロピノサイトーシスを亢進させて細胞外タンパク質の取り込み量を野生型比10-fold増大させ、タンパク質分解的アミノ酸供給経路として利用することが実証された (Commisso et al. 2013, Kim et al. 2018)。マクロピノサイトーシスの阻害が腫瘍増殖を著しく抑制することも確認されており、がん治療の潜在的な標的として注目される。

ダイナミン非依存性CIE経路群の多様な生物学的機能: CG経路以外にも複数のダイナミン非依存性CIE経路が存在する。ARF6依存性経路ではMHC (major histocompatibility complex) クラスI・CD1a・CD55・CD59などのGPI-APがコレステロール依存的に内在化され、ARF6の活性化/不活化はリサイクリングを調節する。ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR: nicotinic acetylcholine receptor) はc-Src・Rac1・アクチン重合依存性の管状担体を介してダイナミン非依存的に内在化されて神経筋接合部での神経調節に関与し、同様の機序がHIV-NefによるCD80/CD86の下方制御にも利用される。フロチリン (flotillin) 依存性経路ではGPI-APおよびコレラ毒素B (GM1マーカー) の取り込みが報告されているが、フロチリンはカーゴに依存してダイナミン依存・非依存の両経路で機能する可能性がある。MEND (calcium-dependent massive endocytosis: カルシウム依存性大規模エンドサイトーシス) は洗剤・膜擾乱薬・ミトコンドリアストレスによって誘発されるATP非依存性・アクチン非依存性・カルシウム依存性の大量膜エンドサイトーシスであり、秩序ある膜ドメインを優先的に取り込んで膜修復に関与する可能性がある。

脂質ナノドメインを介する経路間クロストークと協調制御: 形質膜上のPIP (polyphosphoinositide) は7種類 (3-・4-・5-OH位のリン酸化状態に依存) が特定の膜ドメインの同一性を付与し、多様なエンドサイトーシス経路を空間的に制御する (Fig 2)。PI(4,5)P2はCMEでAP2をリクルートするフィードフォワードループを形成し、PI(3,4,5)P3はFEME (Lamellipodin → EndoA2動員) とCG経路 (GBF1 → ARF1活性化) の開始に関与する。特に、PI(4,5)P2とPI(3,4,5)P3が細胞膜上でナノスケールの独立ドメインに局在することが (Wang & Richards 2012, Biol Open)、複数の並行する経路が同じ形質膜上で同時に機能するための空間的基盤となりうる。コレステロールはほぼすべてのCIE経路に影響し、CDC42活性調節を介してCG経路を制御する。カベオリン/カビン発現がコレステロールレベルを変化させて他のCIE経路を間接的に調節するクロストークも示されており、ダイナミン機能喪失がCG経路活性を増大させるという直接的なクロストークも確認されている。

RTKシグナルの経路選択的制御とシグナル運命決定: 受容体型チロシンキナーゼ (RTK: receptor tyrosine kinase) シグナルは複数のエンドサイトーシス経路によって精密に制御される (Lemmon et al. Cell 2010)。EGFRでは低濃度EGF (1.5 ng/ml) ではCME経由でリサイクルされてシグナルが持続するのに対し、高濃度EGF (20 ng/ml) ではCIE経由でリソソーム分解に誘導されてシグナルが減弱するという経路選択依存的なシグナル運命が実証された。Cbl媒介型受容体ユビキチン化がCIE (FEME) への経路選択を促進する。FGFR1はFGFに対してCMEを利用するのに対し、FGFR3はクラスリン・ダイナミン非依存性の経路 (CG経路の可能性) を利用するという受容体サブタイプによる経路差も示された。PDGFRβでは低濃度PDGF-BBでCMEを利用するのに対し高濃度ではCIE (RhoA-ROCK・CDC42・CD44・Gal-3関与) を利用し、細胞増殖と遊走の下流シグナル分岐に関与する (De Donatis et al. 2008, Jastrzebski et al. 2017)。ショウジョウバエのウイングレス (Wingless) シグナルでは、CG経路で内在化されたWinglessとCMEで内在化されたFrizzled受容体が融合エンドソームで出会ってシグナリングが開始されるという経路間協調機構が明らかにされた (Hemalatha et al. 2016, PNAS)。

エンドサイトーシス経路の進化的起源と細胞移動における非冗長な役割: 系統発生解析により、LECA (last eukaryotic common ancestor) がダイナミンスーパーファミリーのクラスAとBを保有し、洗練されたCMEシステムを既に持っていたことが示された。ダイナミンクラスCはアメーバ動物界と植物界に限定して出現した (Purkanti & Thattai 2015, PNAS)。カベオラは進化的に遅い段階に出現したが (単細胞真核生物に存在しない)、CIEの多くは単細胞真核生物にも存在しLECAに遡る可能性が高い。IRSp53 (I-BARドメインタンパク質、CG経路のCLIC形成スタビライザー) はメタゾア・Filasterea・コアノフラゲラートに保存されており、CG経路の古い進化的起源を示す。細胞遊走における非冗長な機能として、2D遊走中の線維芽細胞ではCG小胞が先端部に偏在し遊走効率を維持するのに対し、カベオラは後端に局在し、CCPは無極化分布をとる (Howes et al. 2010, J Cell Biol)。3D遊走中のMDA-MB-231 (乳がん細胞株) ではCCPがコラーゲン線維を挟み込んで3D移動を促進するという固有の役割を担い (Elkhatib et al. 2017)、閉鎖環境での免疫細胞ではマクロピノサイトーシスが油圧抵抗を克服するための液体輸送として利用される (Moreau et al. 2018)。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューの重要な貢献の一つはHeLa細胞偏重のCIE研究が生み出した「CIEはCME摂動時の補償機構に過ぎない」という既報の誤解に対して批判的に検討し、対照的な立場を明確にした点である。Bitsikas et al. (2014, eLife) はHeLa細胞を用いてCIEがエンドサイティックフラックスに有意に貢献しないと主張したが、本レビューではHeLa細胞がCG経路を欠く特殊な細胞株であることを指摘し、これまでの研究の矛盾を解消した。HeLa細胞ではダイナミン阻害が流体取り込みを減少させる一方で、マウス胎仔線維芽細胞ではダイナミントリプルKO (triple knockout) でCG経路の活性が増大するという異なる挙動が、これらの実験系の違いを際立たせている。細胞移動・シグナル制御における多様な経路の非冗長性は、CIEが単なる「脇役」ではなく細胞生理の中核的プレイヤーであることを示す新たな概念を確立した。

新規性: 本レビューで新規に提示されたフレームワークは3点である。第1に、クラスリン依存/非依存という従来の二分法に加えてダイナミン依存/非依存軸を導入した新分類体系により、8種類以上のエンドサイトーシス経路を切り離し機構の種類に基づいて整理した。第2に、Gal-3 (galectin-3) によるCLIC (clathrin-independent carrier) 生合成として、単量体Gal-3がグリコシル化カーゴに動員されてグリコスフィンゴ脂質と共クラスタリングし局所膜応力を誘発してCLIC形成を駆動するという新規な機序が、これまで報告されていないコートなし経路でのカーゴソーティング機構として提唱された (Lakshminarayan et al. 2014, Nat Cell Biol)。第3に、PI(4,5)P2とPI(3,4,5)P3がナノスケールの独立ドメインに局在することが、複数経路の空間的共存の基盤となりうるという新規な概念が提示された。これらは統合的にエンドサイトーシス研究の novel な分類・理解フレームワークを確立している。

臨床応用: 本知見は複数の方面でがん治療への臨床応用に直結する。第1に、マクロピノサイトーシスを介したRas形質転換腫瘍細胞の栄養スカベンジング機構は新たな治療標的として注目されており、その阻害が腫瘍増殖を抑制するというbench-to-bedside研究の基盤を提供する。第2に、EGFRやPDGFRβなどの腫瘍ドライバーRTKのシグナル制御において、エンドサイトーシス経路の選択がシグナル持続性と細胞増殖/遊走の決定に関与するという知見は、RTK標的治療耐性メカニズムの理解に寄与する可能性がある。第3に、EV (細胞外小胞) の受容細胞への取り込みが複数のエンドサイトーシス経路 (CME・マクロピノサイトーシス・カベオラなど) を介して生じることが示唆されており (Pegtel et al. AnnuRevBiochem 2019)、臨床的意義のあるEVベース薬物デリバリーの効率制御に応用できる。特定のエンドサイトーシス経路を選択的に調節することで、EV-mediated治療の腫瘍細胞への選択的取り込み増強が期待される。

残された課題: 今後の検討課題として、多くのCIE経路で決定的な分子マーカーが未同定であることが挙げられる。生理的条件下での経路間の選択・競合メカニズムの解明、組織・疾患特異的なエンドサイトーシス制御の理解、複数経路を同時評価できる包括的遺伝学的スクリーニング手法の開発が必要である。脂質ナノドメインを通じた経路間協調制御のシステム的理解のためには、複数の経路を同時にモニタリングするアプローチが求められる。HeLa細胞などの長年培養された細胞株でのエンドサイトーシス特性がin vivo環境と乖離するというlimitationも重要であり、特にCIE経路の評価は複数の細胞系での確認が不可欠である。さらなる検討として、カーゴ選択メカニズムの全容解明、各エンドサイトーシス経路の進化的起源に関する詳細な系統発生解析 (特にIRSp53・EndoAの他生物種での機能)、エンドサイトーシス経路の疾患特異的変容についての研究が必要である。またCIEを利用したウイルス感染症・がん転移・アルツハイマー病などの病態との関連も今後の研究分野として重要である。future researchとしてLokiarchaeumなどのArchaeaにおける膜輸送の実験的検証も待たれる。

方法

本論文は PubMed および Web of Science を用いた文献レビューに基づく総説である。エンドサイトーシス、CME、CIE、caveolae、CLIC (clathrin-independent carrier)/GEEC (GPI-AP enriched early endosomal compartment)、FEME (fast endophilin A-mediated endocytosis)、macropinocytosis、dynamin、membrane tension などをキーワードに、電子顕微鏡 (EM)・蛍光ライブイメージング・siRNA/CRISPR遺伝学的スクリーニング・生化学的アッセイを活用した研究を中心に収録した。各エンドサイトーシス経路のダイナミン依存性とクラスリン依存性を評価する新しい二軸分類体系を構築し、小胞切り離し機構の種類に基づくカテゴリ分けを提案した。文献の選定では、単一阻害剤のみに依存した報告は慎重に扱い、遺伝学的・細胞生物学的複数手法で検証された知見を重視した。また統計的評価では、Student t検定・一元配置ANOVA・Fisher直接確率検定など適切な統計手法が明記された研究を信頼度の高い根拠として位置づけた。HeLa細胞は長年の継代によりゲノム・転写・プロテオミクスプロファイルが多様化しており (Frattini et al. 2015, Sci Rep)、CIE研究への影響を個別に検討した。HeLa細胞ではAP2 (adaptor protein 2) ノックダウン (knockdown) 時に流体取り込みが低下するが、他細胞株では逆に上昇するという矛盾した報告を分析し、HeLa細胞がCG経路を欠く可能性を指摘した。系統発生解析 (phylogenetic analysis) によりダイナミンスーパーファミリーの進化的起源とLECA (last eukaryotic common ancestor; 最初の真核共通祖先) の内在化システムについても解析した。本レビューでは哺乳類から線虫・ショウジョウバエ・酵母に至る複数の実験系での知見を統合し、エンドサイトーシス経路の普遍性と多様性を評価した。