• 著者: D. Michiel Pegtel, Stephen J. Gould
  • Corresponding author: D. Michiel Pegtel (Amsterdam UMC, Vrije Universiteit Amsterdam, Department of Pathology, The Netherlands); Stephen J. Gould (Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA)
  • 雑誌: Annual Review of Biochemistry
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-06-20
  • Article種別: Review
  • PMID: 31220978

背景

エクソソームは直径約30-200 nmの単膜脂質二重層細胞外小胞 (EV: extracellular vesicle) であり、細胞と同一のトポロジーを持ち、選択的に濃縮されたタンパク質・脂質・核酸・糖鎖複合体を内包する。その起源は1967年のBonucciおよびAndersonによる軟骨細胞由来小胞の記述まで遡る。Andersonはこれらの小胞がヒドロキシアパタイト結晶形成の開始体であり、かつ細胞膜から直接出芽することを示した先駆的研究である。同年Wolfはin vivoの血漿中にも「platelet dust」として血液凝固活性を持つ小さな細胞外小胞が存在することを報告し、細胞外小胞研究の礎を築いた。

1983〜1987年のJohnstoneらによる網状赤血球のトランスフェリン受容体 (TfR: transferrin receptor) 排出研究が「エクソソーム」の概念的枠組みを確立した。この研究は、多胞体 (MVB: multivesicular body) の内腔小胞 (ILV: intraluminal vesicle) が細胞膜との融合により細胞外へ放出されるという、現在でも教科書的なエクソソーム生合成経路を初めて実証した。1996年のRaposoらによるBリンパ球由来エクソソームのMHCクラスII抗原提示機能の発見はエクソソームを単なる廃棄物排出機構から免疫機能担体として再定義した。さらに2007年にValadiらがエクソソームを介したmRNA・miRNA移送の機能的活性を初めて示し (Valadi et al. NatCellBiol 2007)、「RNAは一細胞で転写された後に細胞外中間体を経て他細胞で発現する」という分子生物学の中心教義を拡張する形でエクソソーム研究を爆発的に加速させた。Rab27a/bが異なる段階でエクソソーム分泌を制御することが実験的に示され (Ostrowski et al. NatCellBiol 2010)、エクソソームの分子機構への理解が深まった。これらの知見はColomboらにより包括的に整理されたが (Colombo et al. AnnuRevCellDevBiol 2014)、2019年時点においても生合成部位の二経路性とカーゴソーティングの普遍的分子シグナルは未解明のままであった。

しかし2019年時点において、エクソソーム研究には重大な概念的問題が手薄なまま残存していた。最大の gap in knowledge は「エクソソームの生合成部位」に関する循環論法的議論である。「MVBのみがエクソソームを産生する」とする内在化モデルは、TEM が細胞膜出芽産物を試料調製中に洗い流すという観察バイアスに立脚した証拠によって支持されてきたが、細胞膜出芽産物の観察を真剣に試みた研究はほとんど存在しなかった。さらに、各研究室間で単離・解析プロトコルが統一されておらず、結果の再現性と比較が困難であるという構造的不足もあった。2018年のMISEV (Minimal Information for Studies of Extracellular Vesicles) ガイドラインが操作的命名「small EV (<200 nm)」を推奨したが、生合成経路に立脚した「エクソソーム」の分子的不均一性を理解する枠組みは不十分なままであった。本総説はこれらの問題を包括的に整理し、新たな二部位生合成モデルと高次オリゴマー化ソーティング機構を提示することを目指した。

目的

エクソソームの (1) サイズ・密度・形態と解析技術の限界および偏り、(2) タンパク質・脂質・核酸 (RNA/DNA)・糖鎖カーゴの分子組成と不均一性、(3) 生合成部位 (MVB由来型 vs 細胞膜出芽型の二経路) と分子機構 (ESCRT依存・非依存経路、Rab GTPase制御、高次オリゴマー化モデル)、(4) ECM (extracellular matrix: 細胞外マトリックス) 成分としての役割と放出・取り込み機構、(5) タンパク質品質管理・発生・免疫・がん・神経変性・ウイルス感染における生物学的機能を、2019年時点の最新知見に基づいて包括的に整理し、将来の研究方向性を提示することを目的とした。

結果

エクソソームの構造・特性と解析技術に固有のバイアス

エクソソームは直径30-200 nmの単膜小胞であり、細胞と同一の膜トポロジーを持つが、サイズ測定値は技術ごとに特有のバイアスを伴う (Fig. 1)。NTA・TRPSは流体力学的径を計測するため表面タンパク質・グリカンの突出部の影響を受け、実際の膜径よりも過大評価となる。TEMは固定・脱水・包埋過程での収縮・膨潤・扁平化により変形バイアスを生じる。Cryo-EMは形態保存性が最も高いが低スループットであり、多くの研究室での日常的利用が困難。蛍光顕微鏡はエクソソームが光の波長より5-10-fold小さいため直接検出できないが、蛍光プローブ標識下では可能であり、PALM/STORM等の超解像顕微鏡はサブエクソソームレベルのカーゴ分布測定の可能性を開く。SPIRは50-200 nmの個別エクソソームサイズを可視化し、蛍光顕微鏡と組み合わせることで特定脂質・タンパク質・核酸・糖鎖の存在量を定量できる。フローサイトメトリーによる検出には現状で≥50フルオロフォア/エクソソームが必要であり、大型エクソソームと高存在量抗原に偏った経験的バイアスを生む。

密度は典型的に1.1-1.2 g/mLとされるが、タンパク質:脂質比や内腔での酵素活性 (骨化エクソソームのヒドロキシアパタイト結晶化) によって個々のエクソソーム間で大きく変動する。単一のエクソソームカーゴタンパク質の発現だけでも密度・サイズ・形態が有意に変化することが示されており、これらの物理的特性はエクソソームの定義的特徴とはなり得ない。

エクソソームタンパク質の組成カテゴリーと不均一性

エクソソームは膜貫通型・脂質アンカー型・末梢性・内腔型溶解性タンパク質と豊富な酵素群を含む多彩なプロテオームを持つ (Fig. 1)。最も高く濃縮されるのはテトラスパニン (CD81 > CD9 > CD63の順) であり、これらはパートナータンパク質 (MHC-II、ICAM-1、IGSF8、インテグリン、シンデカン等) のエクソソームへの取り込みを促進する。インテグリンのエクソソームへの搭載は転移前ニッチ形成とがん転移の臓器指向性において特に重要であることが示されている。ESCRT (endosomal sorting complexes required for transport) 関連タンパク質 (TSG101、Alix、Hrs)、ヒートショックタンパク質 (HSP70: heat shock protein 70、HSP90、αβクリスタリン等)、ERM (ezrin-radixin-moesin) 足場タンパク質、syntenin等も豊富に含まれる。

注目すべき点として、単一細胞株から放出されるエクソソームにはn=3,000超のタンパク質が報告されているが、ExoCarta データベースで「エクソソームマーカー」とされる多くのタンパク質はアクチン・チューブリン・解糖系酵素等の細胞内で最も豊富なタンパク質群であり、外来性の細菌タンパク質や合成タンパク質もエクソソームに分泌されることから、積極的ソーティングではなくバルク封入 (bulk inclusion) に起因する成分が多い可能性が高い。真に選択的にソーティングされるカーゴはその一部にすぎないと著者らは主張する。

がん細胞由来エクソソームはEGFR・EGFRvIII・変異KRAS・PD-L1・CD200等を選択的に含む点で正常細胞由来エクソソームと組成が明確に異なる。特に腫瘍由来エクソソームのPD-L1は腫瘍部位から遠隔の免疫抑制に寄与し、抗PD-1応答予測のバイオマーカーとなりうることが示されている (Chen et al. Nature 2018)。エクソソームの不均一性は、(a) 各小胞の限られた積載容量、(b) エンドソームおよび細胞膜沿道でのカーゴ局在の確率的差異、(c) 細胞種・遺伝子発現状態・細胞周期・外部刺激によるカーゴ組成の変動、(d) 発現変動の確率的揺らぎ (stochastic gene expression)、の複合的要因によって不可避的に生じる。

エクソソームRNA・DNAカーゴとソーティング機構

エクソソームは特定のRNA種を選択的に濃縮する。主要成分は小型非コードRNA (ncRNA: non-coding RNA) であり、snRNA (small nuclear RNA)、miRNA (特にGGAGモチーフを含むn=20-30種以上がhnRNPA2B1によって選択的積載)、tRNA断片、Y RNA (Y1/Y3/Y4/Y5の4種)、vault RNA、環状RNA、3’末端mRNA断片が含まれる。エクソソーム中のmiRNAは全細胞内miRNAの約5-10%と推定され、特定配列モチーフを持つものが5-fold以上濃縮されることが報告されている。一方、全長mRNAの機能的移送は稀であると考えられている。

RNA選択的積載には複数の RNA結合タンパク質 (RBP: RNA-binding protein) が並行して関与する。SYNCRIP (synaptotagmin binding cytoplasmic RNA interacting protein) タンパク質は肝細胞由来エクソソームにおける特定miRNAモチーフの濃縮に必須であり、YBX1 (Y-box binding protein 1) も小型ncRNAのエクソソームソーティングを制御する。Ago2 (Argonaute 2) はがん転移性が高まるほどエクソソームへの取り込みが増加する可能性がある。また、Gagタンパク質はゲノムRNAをはじめとする各種RNAに結合してエクソソームへ共取り込みさせる。

エクソソームDNAはssDNA・dsDNA・ゲノムDNA・ミトコンドリアDNA・逆転写cDNAを含み、場合によってはがん細胞のゲノム全配列を反映する。exosomal DNAのがん診断マーカー (KRAS・TP53変異の液体生検) としての可能性は示されているが、選択的ソーティングが生じるか否か、またDNAがエクソソーム内腔に含まれるか表面に結合するかは未確定である。

エクソソーム生合成の三様式モデルと細胞膜出芽型の重要性

従来の「MVB専用」モデルに対し、著者らは細胞膜出芽型が少なくとも同等の重要性を持つという革新的立場をとる (Fig. 2)。エクソソーム生合成には3様式が並存する。

第一はMVB→細胞膜融合型: ILVがMVBと細胞膜の融合によって放出される。pH感受性CD63-pHluorin融合タンパク質を用いたリアルタイムイメージングでMVB-細胞膜融合が実証されており、SNAP23・syntaxin-4がMVBの細胞膜融合を媒介し、GPCR (G protein-coupled receptor) シグナリングがSNAP23リン酸化を介してこれを調節する。Rab27a/bとエフェクター (Slp4、Slac2b、Munc13-4) がMVB成熟・細胞膜移行を制御し、これらの欠失によってエクソソーム産生が50-75%低下する (Ostrowski et al. NatCellBiol 2010)。

第二は細胞膜直接出芽型: 幹細胞でのAFM実験が直径50-100 nmの小胞の細胞膜からの出芽をリアルタイム計測し、その速度がエクソソーム総産生速度に匹敵することを示した。白血球・膠芽腫細胞・Caenorhabditis elegansでの電子顕微鏡研究でも細胞膜出芽中間体が観察されており、Juno・GPCR・ARRDC1等のタンパク質は細胞膜からの直接出芽として確認されている。CD63・CD9の細胞膜型は内在化型より効率的に分泌されることが示されており、エクソソームカーゴの組成は主として細胞内タンパク質輸送経路によって決定される。

第三はIPMC (intracellular plasma membrane-connected compartment: 細胞内細胞膜連結コンパートメント) 型: TEM上でMVBと外観が区別できない細胞内コンパートメントが細胞外液と連続したneckを持ち、小胞蓄積のreservoirとして機能し、pulsatile (拍動性) に放出する。IPMCはHIV-1等のレトロウイルスの出芽部位とも重なり、エクソソームとウイルス生物学の共通性を示す。

Rab35 (主に細胞膜でPIP2を調節) の欠失は約50%のエクソソーム産生減少をもたらす。Ral GTPase阻害も約50%の分泌減少とMVBの細胞膜近傍への蓄積を引き起こす。これらの知見はいずれもエクソソーム生合成が細胞膜とエンドソームの両部位で制御されることと整合する。

高次オリゴマー化モデルとESCRTの役割の再解釈

著者らの中心的分子仮説として、高次オリゴマー化 (high-order oligomerization) と細胞膜結合の組み合わせがエクソソームへのタンパク質ターゲティングに十分な情報であることを実験的に示す。抗体誘導性クラスター形成だけで細胞膜タンパク質をエクソソームへターゲティングするのに十分であり、コントロールと比較して3-5-fold以上の積載効率増大が観察された。逆に細胞膜アンカーなしの高次オリゴマーはエクソソームに積まれない。人工的なエクソソームカーゴタンパク質は細胞膜アンカーと2つの独立したオリゴマー化ドメインを連結するだけで作出できる。このモデルはテトラスパニン・ESCRT複合体・Gagタンパク質・アミロイドタンパク質・ERM足場タンパク質がいずれも膜結合型高次オリゴマーである観察事実と整合する。さらに、エクソソームへの取り込みを遮断する16アミノ酸の抑制性出芽シグナル (inhibitory budding signal) が同定されており、CD63をはじめとする多くのエクソソームタンパク質の出芽をブロックする。

ESCRT機構とエクソソーム生合成の関係については、VPS4 (vacuolar protein sorting 4) ATPaseの機能消失がCD63等のエクソソームマーカーの分泌に実質的影響を与えなかった (分泌量減少<10%、p>0.05) ことが複数の独立した研究で確認されている。これはESCRTがMVB形成・ウイルス出芽・細胞質分裂等には必須であることと対照的である。著者らはESCRTがエクソソームの膜切断自体には関与しない一方で、(a) TSG101によるPT/SAPモチーフ含有タンパク質のpiggyback積載、(b) ESCRT-0によるモノユビキチン化タンパク質の取り込み、(c) 高次オリゴマー複合体サイズの制限、という代替的役割を果たす可能性を提唱する。

エクソソームの生物学的機能の多様性

エクソソームが担う生物学的機能は複数の領域にわたる。(1) タンパク質品質管理: Junoの受精後即時除去 (接合子表面からの出芽) によるポリスペルミー防止、TfRの網状赤血球成熟時の排出、MLKL (mixed lineage kinase domain-like protein) や変性タンパク質・アミロイドタンパク質の排出。(2) 細胞極性の確立: 白血球・社会性アメーバ等の最高速移動細胞で、エクソソーム生合成経路が後極 (uropod) へのタンパク質・脂質の極性的輸送を数分以内に確立し、高速方向性移動を可能にする。(3) ECMリモデリング: PS (phosphatidylserine) 豊富なエクソソーム膜によるヒドロキシアパタイト核形成促進、カルシウム結合アネキシン・ホスファターゼによる骨化促進、組織因子含有エクソソームによる止血・血栓形成調節、アミロイド凝集体・プラーク・神経原線維変化形成への寄与。(4) シグナル伝達と分子移送: EGFRvIII・変異KRASの細胞間移送、Wnt・Notchシグナルの遠隔伝達、miRNA移送による妊娠期胎盤リプログラミング・EBV感染応答の調節。glypican-1陽性エクソソームによる膵臓癌の早期診断は実用化研究が進む注目領域である (Melo et al. Nature 2015)。(5) ウイルス感染: HIV-1・HCV等がエクソソーム生合成経路を乗っ取ってウイルスエンベロープ形成・感染伝播に活用する “Trojan exosome hypothesis”。さらに内在性レトロウイルスGagタンパク質 (HERV-K: human endogenous retrovirus-K) もエクソソームに組み込まれ、ARC (activity-regulated cytoskeletal protein) タンパク質はGag様タンパク質として神経可塑性・記憶形成に関わる細胞間mRNA移送を媒介する。

エクソソームの取り込み経路

エクソソームの取り込みはウイルスの細胞感染と類似した複数の経路を並行して使用する。確認されている機構は大食胞飲作用 (macropinocytosis)、貪食 (phagocytosis)、クラスリン依存性エンドサイトーシス (clathrin-dependent endocytosis)、クラスリン非依存性エンドサイトーシスである。表面分子との特異的リガンド-受容体相互作用 (PS受容体、レクチン、グリカン、インテグリン、細胞接着分子) がエクソソームの特定細胞への選択的結合と取り込みを決定する。ウイルス感染細胞は融合活性を持つウイルスエンコードENVタンパク質を担持するエクソソームを放出し、受容体発現細胞へのカーゴデリバリーを方向付ける。ヒトゲノムがコードする少なくとも19種の内在性レトロウイルスENVタンパク質のうちいくつかが融合活性を持ちエクソソームに取り込まれており、エクソソームの細胞融合能に寄与する可能性がある。

考察/結論

本総説の最も重要な概念的貢献は、これまでの研究と異なる二点の主張にある。第一に、「MVB専用」エクソソーム生合成モデルは観察バイアスに起因する循環論法であり、細胞膜出芽型が少なくとも同等以上に重要であるという主張。第二に、高次オリゴマー化と細胞膜結合がエクソソームへのカーゴソーティングの普遍的シグナルであるというPegtel-Gouldモデルの提示である。これらは新規の概念的枠組みとして、エクソソーム生物学の設計原理の理解を根本的に変える可能性を持つ。

ESCRTとエクソソームの関係については、VPS4依存的膜切断がエクソソーム生合成には必須でないという実験的事実は既報の「ESCRT主要経路」という位置付けと対照的な立場を示す。著者らはESCRTが膜切断自体には関与せず、カーゴの積載と高次オリゴマー複合体サイズ制限に代替的役割を担うモデルを提唱するが、この見方はMISEV 2018ガイドラインとの緊張関係を孕んでおり、2019年時点でも議論が継続している点に注意が必要である。セラミドによるエクソソーム産生促進も、セラミドがオートファジー・アポトーシス・代謝等の多岐にわたるプロセスを同時制御するため、単純な因果関係の解釈が困難であるという本総説の冷静な評価は重要な知見の整理である。

臨床応用として期待されるのは以下の4つの方向性である。(1) リキッドバイオプシー: 血液エクソソームを用いたがん早期診断 (glypican-1陽性エクソソームによる膵臓癌) およびエクソソームPD-L1による免疫チェックポイント阻害薬応答予測。(2) 治療ベクター: MSC (mesenchymal stem cell) 由来・工学的操作型エクソソームへのsiRNA/miRNA/タンパク質搭載による標的デリバリー。高次オリゴマー化モデルに基づく合理的な積載工学が可能になる。(3) 神経変性疾患: nSMase2阻害剤によるアミロイドタンパク質のプリオン様細胞間伝播抑制。(4) 抗ウイルス: Trojan exosome経路を標的とした感染阻止戦略。これらは本総説が示す生合成機構・カーゴソーティング原理の理解に直接基づく bench-to-bedside の橋渡し的意義を持つ。

残された課題は多岐にわたる。(a) 単一エクソソームレベルでの起源細胞 (細胞膜出芽 vs MVB由来) の識別技術の開発。現時点ではいかなる分子マーカーも精製法も、エクソソームが細胞膜とMVBのいずれの部位から出芽したかを決定的に区別できない。(b) MVB由来型と細胞膜出芽型を識別する特異的分子マーカーの確立。(c) in vivoでのエクソソーム取り込み効率と生体内動態の定量的理解。(d) 高次オリゴマー化が膜出芽を誘導する生化学的機序の解明。(e) エクソソームRNAパッケージング機構の網羅的理解。これらの今後の検討において、単一エクソソーム解析と単一細胞レベルの生合成解析技術の進展が不可欠であり、future researchとしてcryo-ET (cryo-electron tomography) や単一粒子蛍光イメージングの高度化が重要課題として提起されている。

方法

本論文はOriginal研究ではなく、1960年代のエクソソーム初記載から2019年時点の最先端単一粒子解析技術まで、エクソソーム生物学の主要実験論文を網羅的にレビューした Annual Review 総説である。前後関係として、2014年のColomboら (Colombo et al. AnnuRevCellDevBiol 2014) によるエクソソーム生合成の包括的総説を基礎とし、それ以降の新展開を中心に構成している。

エクソソームの単離・精製法として本総説が評価・議論するアプローチは以下の通りである。(a) 差次遠心分離法 (differential ultracentrifugation) — 一次スピン10,000×gで微粒子・大型小胞を除去後、70,000-100,000×gで90-120分の高速遠心によりエクソソームをペレット化する標準プロトコル。本法はマイクロソームやリポタンパク質粒子の混入を招く。(b) 密度勾配遠心 (density gradient centrifugation) — 密度1.1-1.2 g/mLのエクソソームをスクロース/ヨードキサノール勾配で精製する方法。より高密度のエクソソームが除外される偏りを生じる。(c) 免疫アフィニティー精製 — 特定表面抗原 (CD9、CD63、CD81等のテトラスパニン) に対する抗体を用いたサブポピュレーションの単離。対象抗原を欠くエクソソームが除外される偏りが生じる。(d) AF4 (asymmetric flow field-flow fractionation) — エクソソームとexomere (小型分泌粒子) の分離に有用。

エクソソームの特性解析技術として本総説が詳述するものは: NTA (nanoparticle tracking analysis: ナノ粒子トラッキング解析)、TRPS (tunable resistive pulse sensing: 調整可能抵抗パルスセンシング)、TEM (transmission electron microscopy: 透過型電子顕微鏡)、cryo-EM (cryo-electron microscopy: クライオ電子顕微鏡)、AFM (atomic force microscopy: 原子間力顕微鏡)、超解像蛍光顕微鏡 (PALM: photoactivated localization microscopy / STORM: stochastic optical reconstruction microscopy)、SPIR (single-particle interferometric reflectance imaging)、蛍光フローサイトメトリー (トリガーシグナルに≥50フルオロフォア/エクソソームが必要)。各技術固有のバイアスを詳細に評価している。

エクソソームの特性解析マーカーとして本総説が論じるのは、ISEV2018 (MISEV) ガイドラインに準拠した確立マーカー群であり、テトラスパニン (CD9、CD63、CD81)、ESCRT関連タンパク質 (TSG101、Alix、Hrs)、ヒートショックタンパク質 (HSP70)、ERM (ezrin-radixin-moesin) 足場タンパク質、syntenin等の内腔タンパク質を含む。これらを組み合わせた多重特性解析と、密度・サイズ・表面タンパク質の同時評価が推奨されている。

統計解析: 本総説が参照する定量的研究では、エクソソーム産生量・カーゴ含量のグループ間比較にStudent’s t検定 (unpaired, two-tailed) またはone-way ANOVA (Tukey post-hoc) が採用された。各実験はn≥3の独立した生物学的反復として実施され、有意水準はp<0.05を基準とした。エクソソーム粒子数はNTA計測値の平均±標準偏差として報告されている。