- 著者: Xinyu Zhang, Zhuo Yu, Yaping Xu, Yencheng Chao, Qin Hu, Chun Li, Maosong Ye, Xiuli Zhu, Liang Cui, Jing Bai, Yuhua Gong, Yanfang Guan, Min Zhou, Jian’an Huang, Hua Zhang, Tao Ren, Qian Shen, Kai Wang, Yingyong Hou, Xuefeng Xia, Xingxiang Pu, David P. Carbone, Xin Zhang
- Corresponding author: Xingxiang Pu (Hunan Cancer Hospital/Central South University); David P. Carbone (Ohio State University); Xin Zhang (Zhongshan Hospital, Fudan University)
- 雑誌: British Journal of Cancer
- 発行年: 2022
- Epub日: 2022-03-01
- Article種別: Original Article
- PMID: 36253524
背景
非小細胞肺癌 (NSCLC) は、世界的に罹患率および死亡率の高い疾患であり、その治療戦略は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の登場により大きく変革された。特に、上皮成長因子受容体 (EGFR) 変異陽性NSCLCに対するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) は、従来の化学療法と比較して患者の生存期間と生活の質を著しく改善することが示されている Lynch et al. NEnglJMed 2004、Rosell et al. LancetOncol 2012。また、EML4-ALK融合遺伝子などのドライバー遺伝子変異の同定も、治療選択において不可欠な要素となっている Soda et al. Nature 2007。
しかし、これらの分子標的治療薬の恩恵を受ける患者を特定するためには、腫瘍組織を用いた遺伝子検査が必須である。気管支鏡生検で得られる組織量は、NSCLC患者の30-50%で分子検査に不十分であることが報告されており、診断の遅延や治療機会の損失につながる可能性がある。さらに、組織生検は侵襲的であり、特に末梢性肺病変ではサンプリングバイアスにより腫瘍細胞の採取が困難な場合がある。このような組織採取の限界は、分子診断のニーズが高まる中で、代替となる迅速かつ非侵襲的な検査源の必要性を浮き彫りにしている。
血漿循環腫瘍DNA (ctDNA) は、腫瘍細胞のアポトーシスや壊死、あるいは生細胞からの能動的な放出によって血中に放出されるDNA断片であり、リキッドバイオプシーの有望な手段として注目されてきた Bettegowda et al. SciTranslMed 2014、Diehl et al. NatMed 2008。しかし、早期肺癌や腫瘍量の少ない症例では、血漿中の腫瘍由来ctDNA分率が極めて微量であり、PCR法で感度約66%、次世代シーケンス (NGS) 法で約79%と、感度低下が問題となっていた Newman et al. NatMed 2014、Merker et al. JClinOncol 2018。この感度の限界は、特に早期診断や小病変の分子プロファイリングにおいて、血漿ctDNAの臨床的有用性を制限する要因となっている。
気管支洗浄液 (BWF) は、気管支鏡検査時に通常採取される体液であり、腫瘍病変に直接接触するため、血漿よりも高濃度の腫瘍由来cfDNAが含まれる可能性がある。従来のBWF沈渣 (BWF_Pre) を用いた細胞診の陽性率は約50%程度にとどまり、形態学的診断には限界があった。しかし、BWFの上清 (BWF_Sup) に含まれるcfDNAは、腫瘍近傍の気道腔から直接放出されるため、腫瘍のゲノム情報をより効率的に反映する可能性が示唆されている。これまでの小規模な研究ではBWF ctDNAの有用性が示されているものの、組織生検、BWF_Pre、血漿cfDNAを網羅的に比較し、BWF_Sup cfDNAのNGSによる包括的ゲノムプロファイリングにおける優位性を大規模な前向き多施設研究で評価した報告は不足していた。特に、組織採取が困難な症例や細胞診陰性例におけるBWF_Sup cfDNAの診断的価値は未解明な点が残されていた。
目的
本研究は、放射線学的に肺結節が疑われる患者およびTKI治療後に進行したNSCLC患者を対象に、気管支洗浄液上清 (BWF_Sup) cfDNAの包括的ゲノムプロファイリングにおける有用性を評価することを目的とした。具体的には、1,021遺伝子パネルNGSを用いて、BWF_Sup cfDNAのゲノムプロファイリング能、良悪性鑑別能、腫瘍ドライバー変異 (TDM) 検出率、および腫瘍変異負荷 (TMB) 評価精度を、気管支洗浄液沈殿物 (BWF_Pre) DNA、ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 組織DNA、および血漿cfDNAと比較検討する。特に、組織生検で診断が確定できない症例や細胞診陰性例におけるBWF_Sup cfDNAの診断補助としての役割を明らかにすることを目的とした。
結果
患者特性と診断結果: 本研究には合計81例の患者が前向きに登録された。平均年齢は62.5歳 (範囲35-84歳) で、男性が66.7% (54/81)、非喫煙者が64.2% (52/81) を占めた。腫瘍径が30 mmを超える症例は72.8% (59/81) であり、病変部位は中枢型が79.0% (64/81) であった。組織学的診断では、腺癌が54例 (66.7%)、扁平上皮癌が8例 (9.9%) であり、最終的に67例が悪性 (TKI未治療62例、TKI治療後進行5例)、14例が良性と診断された。気管支鏡生検による悪性診断率は68% (55/81) であった。BWF_Preの細胞診陽性率は58.2% (39/67) であった。
BWF_Sup cfDNAの量と質: BWF_Sup cfDNAの濃度中央値は162.2 ng/mlであり、早期NSCLC患者の血漿cfDNA濃度中央値6.7 ng/ml (p=0.0023) および進行NSCLC患者の血漿cfDNA濃度中央値28.3 ng/ml (p<0.0001) をいずれも有意に上回った (Supplementary Fig. S1A)。BWF_Sup cfDNAのフラグメントサイズ分布は主に約167 bpに集中しており、血漿サンプルで検出される約166 bpと類似していた (Supplementary Fig. S1B)。これは、腫瘍細胞のアポトーシスや壊死に由来するcfDNAと一致する。非悪性患者のBWF_Sup cfDNA濃度中央値は健康な個人の血漿cfDNA濃度よりも有意に高かった (p=0.0012)。
アレル頻度 (AF) とゲノム情報量: 67例の悪性患者において、FFPE、BWF_Sup、BWF_Preサンプルでそれぞれ483、519、379個のSNVs/Indels/SVsが検出された (Fig. 2a)。BWF_Supのアレル頻度 (AF) 中央値は9.8%であり、FFPE組織の7.3% (p=0.046) より有意に高く、BWF_PreのAF中央値は両者より有意に低かった (いずれもp<0.001) (Fig. 2b)。AF>10%の変異の割合もBWF_SupがFFPEおよびBWF_Preを上回り (Supplementary Fig. S2)、BWF_Supにゲノム情報が濃縮されていることが示唆された。腫瘍純度の中央値はBWF_Preで3.7%、BWF_Supで11.0%、FFPEで10.1%であり、BWF_SupはFFPEと同等の腫瘍由来成分を含んでいた (Supplementary Table S6)。
腫瘍変異負荷 (TMB) とコピー数変異 (CNV) 評価: TMB値はFFPEとBWF_Supで同等であり、BWF_Preより有意に高かった (FFPE vs BWF_Pre: p<0.001; BWF_Sup vs BWF_Pre: p<0.001) (Fig. 2c)。FFPEとBWF_SupのTMB間のSpearman相関係数はr=0.701 (p<0.001) と強い正相関を示し、FFPEとBWF_Pre間 (r=0.634, p<0.001) やBWF_SupとBWF_Pre間 (r=0.594, p<0.001) より高かった (Supplementary Fig. S3A)。また、CNV分率はFFPEとBWF_SupがいずれもBWF_Preより有意に高く (いずれもp<0.001)、BWF_SupはFFPEより高いCNV分率を示した (p=0.002) (Fig. 2d)。これは、FFPEにおける正常肺組織の混入の影響が考えられる。
良悪性鑑別能: 悪性67例と良性14例を比較したROC解析において、BWF_SupのTMBによる鑑別能はAUC 0.874であり、BWF_PreのAUC 0.733を上回った (Fig. 3a)。悪性患者では、BWF_Supの変異陽性率が97.0% (65/67) と最も高く、FFPEの94.0% (63/67)、BWF_Preの88.1% (59/67) と比較して優位性を示した。良性14例では、いずれの検体でも肺癌ドライバー変異は検出されなかった (Fig. 3d)。気管支鏡生検で悪性と確定診断された55例を除いた26例の「非確定」コホートのサブ解析でも、BWF_SupはFFPEやBWF_Preとは異なり、悪性・良性間でゲノム情報量の有意差を維持した (Supplementary Fig. S5)。BWF_Supにおけるドライバー変異検出の陽性適中値は100% (11/11)、陰性適中値は93.3% (14/15) であった。
腫瘍ドライバー変異 (TDM) 検出率: 67例の悪性患者においてFFPEで検出された468変異のうち、BWF_Supで82.1% (384/468)、BWF_Preで71.6% (335/468) が追跡された (p=0.001)。少なくとも1つのTDMを有するBWF_Sup陽性率は95.2% (60/63) であり、BWF_Preの82.5% (52/63) より有意に高かった (χ2検定 p=0.023)。主なドライバー変異の検出率は、TP53 (FFPE 47.8%、BWF_Sup 46.3%、BWF_Pre 40.3%)、EGFR (3者ともほぼ同等、35.8%)、KRAS (全検体で16.4%) であった (Fig. 3d)。特に稀少な神経内分泌癌 (大細胞型3例、SCLC 1例) でのTP53/RB1変異検出率は、FFPEとBWF_Supで100% (4/4) であったのに対し、BWF_Preでは50% (2/4) であった (Supplementary Table S3)。EGFR変異 (L858R、e19del等) のBWF_Supによる追跡率は85.2% (23/27) であり、BWF_Preも85.2%と同等であったが、BWF_Supではさらに3例でFFPEでは検出されなかったEGFR変異 (e19delおよびオシメルチニブ耐性L718Q変異) を追加検出した (Supplementary Table S3)。遺伝子融合 (EML4-ALK、CD74-ROS1、KIF5B-RETの計6例) のBWF_Sup追跡率は83.3% (5/6) であり、BWF_Preの66.7% (4/6) を上回った (Supplementary Table S4)。
細胞診陰性例での優位性: 細胞診陰性にもかかわらず悪性と確定した28例において、BWF_SupでFFPEの82.4% (164/199)、BWF_PreでFFPEの62.3% (124/199) の変異が追跡された (p<0.001, Table 2)。ドライバー変異に限ると、BWF_Supの追跡率は87.5% (49/56) であり、BWF_Preの66.1% (37/56) と比較して有意に高かった (p=0.007, Table 2, Fig. 5a)。BWF_Supにおけるドライバー変異検出率は細胞診の陽性・陰性によらず同等であり、BWF_Supによるゲノム解析が細胞診に依存しない独立した診断情報を提供することが示された (Fig. 5b)。
腫瘍内不均一性とサブクローン情報: MATH値およびPyCloneアルゴリズムによるクラスター数のいずれにおいても、FFPEとBWF_SupはBWF_Preより有意に高い腫瘍内不均一性を示した (いずれもp<0.001) (Fig. 6a, b)。サブクローン変異の数はBWF_PreがFFPEとBWF_Supより有意に少なく (p<0.001)、BWF_SupはBWF_Preよりサブクローン追跡において優れていた (Fig. 6c)。全クローン変異の76.6% (141/184) が3検体で共有されたが、サブクローン変異の分布は分散しており、BWF_Supは79.8% (327/410) のサブクローン変異を独自に保有し、FFPE (72.0%) と同等であった (Fig. 6d)。これは、薬剤耐性関連変異の追跡に特に重要な所見である。
考察/結論
BWF_Supの生物学的優位性: 本研究は、気管支洗浄液上清 (BWF_Sup) cfDNAが、放射線学的に疑われる肺結節の診断および包括的ゲノムプロファイリングにおいて、組織生検や気管支洗浄液沈殿物 (BWF_Pre) DNAよりも優れていることを大規模な前向き多施設研究で初めて実証した。BWF_Supに腫瘍由来cfDNAが豊富に含まれる理由として、気管支鏡検査時に固定した誘導シースを介して腫瘍病変に直接生理食塩水を注入する採取法により、腫瘍近傍の細胞から放出されたcfDNAが血漿よりも高濃度で回収できることが挙げられる。cfDNAのフラグメントサイズが血漿と同等 (約167 bp) であることは、腫瘍細胞のアポトーシスや壊死という共通の起源を示唆する。また、BWF_SupはFFPEより高いAF中央値 (9.8% vs 7.3%) を示したが、これはFFPEの正常肺組織混入による希釈に対し、BWF_Supが腫瘍選択的にcfDNAを濃縮する効果を反映していると考えられる。この知見は、BWF_Supが腫瘍のゲノム情報を高感度かつ高精度に捉える能力を持つことを裏付けている。
先行研究との違い: 血漿ctDNAのNGSによる感度は約66-79%とされ、特に早期NSCLCや腫瘍量の少ない症例で低感度が問題となってきた。本研究でのBWF_Sup TDM検出率82.1%はこれを上回り、細胞診陰性例でも87.5%のドライバー変異追跡率を維持した点が注目される。これは、従来の血漿ctDNAの限界を克服し、より局所的なリキッドバイオプシー源としてのBWF_Supの優位性を示すものである。先行研究 (Zhang et al. 2021) ではEGFR変異のBWF_Sup感度が92.5%、組織生検感度77.5%と報告されており、本研究の知見と整合する。本研究でBWF_SupがFFPEよりも高いCNV分率を示したことは、FFPEにおける正常肺組織の混入による影響をBWF_Supが受けにくいことを示唆しており、これまで報告されていないBWF_Supの新規な優位性である。
新規性: 本研究で初めて、BWF_SupがFFPE組織と同等の腫瘍内不均一性およびサブクローン情報を提供し、BWF_Preより多くのサブクローン変異を検出できることを示した。これは、腫瘍細胞間のサンプリングバイアスを受けやすい組織生検と異なり、BWF_Supが液体として腫瘍局所を均一にサンプリングするという特性がこれを可能にする。特に、オシメルチニブ耐性EGFR-L718Q変異がFFPE陰性例でBWF_Supで検出されたことは、TKI耐性後の再生検への応用可能性を示す新規な発見である。
臨床応用: EGFR変異、KRAS変異、EML4-ALK融合等のドライバー遺伝子変異検出と、TMBや染色体不安定性の評価をBWF_Supで実施することで、組織採取量不足の補完、偽陰性率低減、免疫療法バイオマーカー評価が可能となる。特に気管支鏡検査時に通常廃棄されるBWFを活用する点で、既存の診断ワークフローへの組み込みが容易であり、臨床応用への障壁が低い。細胞診陰性にもかかわらず悪性と確定した症例において、BWF_SupがFFPEの82.4%の変異を追跡し、ドライバー変異に限ると87.5%の追跡率を示したことは、BWF_Supが細胞診に依存しない独立した高精度の分子情報を提供できることを意味し、診断確定が困難な症例における臨床的有用性が高い。
残された課題: 本研究の主要な限界として、血漿液体生検との直接的な対比データが不足していること、治療介入のアウトカムを評価していないこと、固定誘導シース使用による腫瘍内不均一性の影響が完全に除外できないことが挙げられる。また、検体処理 (遠心分離条件・保存方法) の標準化、より大規模なコホートでの前向き検証、末梢型小病変 (径<2 cm、超音波不可視) での有用性評価が今後の課題である。これらの課題を克服することで、BWF_Sup cfDNAの臨床現場での適用範囲がさらに拡大すると考えられる。
結論: BWF_Sup cfDNAは、血漿cfDNAやBWF_Preを超えるゲノムプロファイリング能を有し、肺癌の診断確定および包括的分子プロファイリングのための信頼性の高い液体生検検体である。特に組織採取量不足例や細胞診陰性例において、BWF_Supは独立した高精度の分子情報を提供でき、治療方針の決定に直結する有用なバイオマーカー源として確立された。
方法
患者と検体収集: 2018年1月から8月にかけて、中山病院 (Fudan大学) を含む複数の施設で、放射線学的に末梢性肺結節が疑われる76例と、TKI治療後に進行したNSCLC患者5例の計81例が前向きに登録された。全ての患者から、研究関連の手順を実施する前に書面によるインフォームドコンセントを取得した。本研究は中山病院倫理委員会 (No. B2018-027) の承認を得て実施された。全例で、超音波気管支鏡ガイドシース (EBUS-GS) 誘導下に気管支鏡生検を施行し、得られた組織はホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 処理後に病理診断およびゲノム解析に供された。生検後、ガイドシースは腫瘍病変に固定されたままにされ、この固定されたシースを介して生理食塩水 (20-40 ml) を病変部位に直接注入し、BWFを回収した。回収されたBWFは600×gで10分間遠心分離され、上清 (BWF_Sup) と細胞沈殿物 (BWF_Pre) に分画され、その後の分子解析または細胞診に保存された。気管支鏡検査と同日に10 mlの末梢血を採取し、2時間以内に処理された。1600×gで10分間遠心分離後、血漿を分離し、末梢血リンパ球 (PBL) を回収して生殖細胞系ゲノムDNAの抽出に用いた。BWF_Sup、BWF_Pre、PBLの各検体は、病理診断結果にかかわらず、直ちにDNA抽出とゲノムプロファイリングのために研究室に輸送された。
DNA抽出: PBL DNAおよびBWF_Pre DNAはDNeasy Blood & Tissue Kit (Qiagen, Hilden, Germany) を用いて抽出された。cfDNAは1.5-3.0 mLのBWF_SupからQIAamp Circulating Nucleic Acid Kit (Qiagen, Hilden, Germany) を用いて分離された。FFPEサンプルからのゲノムDNAはMaxwell® RSC DNA FFPE Kit (Promega, Madison, WI, USA) を用いて抽出された。DNA濃度はQubit蛍光光度計とQubit dsDNA HS (High Sensitivity) Assay kit (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA) を用いて測定され、cfDNAのフラグメントサイズ分布はAgilent 2100 BioAnalyzerとDNA HS kit (Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA) を用いて評価された。
ターゲットキャプチャーと次世代シーケンス (NGS) 解析: ライブラリ構築前に、PBL、BWF_Pre、FFPEサンプルから抽出された各1 µgのゲノムDNAは、Covaris S2超音波破砕装置 (Covaris, Woburn, MA, USA) を用いて200-250 bpの断片に剪断された。BWF_Supからは80 ng DNAがライブラリ構築に用いられた。KAPA Library Preparation Kit (Kapa Biosystems, Wilmington, MA, USA) を用いて、PBL DNA、BWF_Pre DNA、FFPE DNA、BWF_Sup DNAからインデックス付きIllumina NGSライブラリが構築された。プローブは、12種類の固形腫瘍タイプで最も一般的なドライバー遺伝子の全領域をカバーするように設計され、検出感度を高めた。さらに、化学療法、分子標的薬、免疫療法の効果に関連するゲノム領域が追加された。最終的に、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer (COSMIC) およびTCGAに記録されている頻繁に変異する領域が含まれた。合計で、プローブはゲノムの1.6 Mbpをカバーした。Illumina HiSeq 3000装置 (Illumina, San Diego, CA, USA) を用いて、2×75 bpのペアエンドリードでDNAシーケンスが実施された。PBL DNA、FFPE DNA、BWF_Pre DNA、BWF_Sup DNAのデータ量はそれぞれ1、2、2、2 Gbに設定された。平均シーケンス深度はFFPEサンプルで1420 ± 402.4×、BWF_Preサンプルで1140 ± 341.4×、BWF_Supサンプルで1200 ± 1397.3×であった。
シーケンスデータ解析: ターミナルアダプター配列と低品質データを除去した後、残りのリードはBurrows-Wheel Aligner (0.7.12-r1039) を用いて参照ヒトゲノム (hg19) にマッピングされた。MuTect2 (3.4-46-gbc02625) を用いて体細胞の小さな挿入・欠失 (Indels) および一塩基多型 (SNVs) がコールされた。アレル頻度 (AF) 1%以上のIndelsおよびSNVsがFFPEおよびBWF_Preサンプルでプロファイリングされた。CONTRA (v2.0.8) を用いて体細胞コピー数変異 (CNVs) が同定された。遺伝子融合および構造変異 (SV) を検出するため、既報のSVに基づいてALK、ROS1、RET、NTRK1癌遺伝子の選択されたエクソンおよびイントロンをキャプチャーするベイトが設計された。自社開発アルゴリズムを用いて、スプリットリードおよび不一致リードペアからSVが同定された。全ての最終候補変異は、統合ゲノムビューアブラウザで手動で確認された。
腫瘍不均一性とクローン集団構造の決定: 各腫瘍の変異アレル腫瘍不均一性 (MATH) 値は、変異AFの中央絶対偏差 (MAD) と中央値から算出された。PyClone Roth et al. NatMethods 2014 を用いて、FFPE、BWF_Sup、BWF_Preサンプルの共同解析により、特定の癌患者のクローン集団構造が推測された。
統計解析: 腫瘍変異負荷 (TMB) の計算には、アレル頻度3%以上の非同義SNVおよびIndelが含まれた。IBM SPSS software 23 (IBM) およびGraphPad Prism 7 (GraphPad Software) を統計解析に用いた。連続変数は平均 (±標準偏差) で表され、Mann-Whitney U検定 (非対応) およびWilcoxon符号順位検定 (対応) を用いて比較された。カテゴリ変数はχ2検定またはFisherの直接確率検定を用いて比較された。2つの変数間の相関を評価するためにSpearman相関係数が用いられた。悪性腫瘍の診断における異なる検体の変異負荷の性能を特定するために、受信者動作特性 (ROC) 曲線が用いられた。全ての検定は両側であり、p<0.05を有意とみなした。