• 著者: M. Rojo de la Vega, E. Chapman, D.D. Zhang
  • Corresponding author: D.D. Zhang (University of Arizona, Tucson, AZ)
  • 雑誌: Cancer Cell
  • 発行年: 2018
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 29731393

背景

NRF2 (nuclear factor erythroid 2-related factor 2) は、細胞の抗酸化応答のマスターレギュレーターであり、抗酸化応答エレメント (ARE) を含む200以上の標的遺伝子の転写を制御する。NRF2は7つのNeh (NRF2-ECH homology) ドメインから構成されるcap’n’collar/leucine zipper (CNC-bZIP) 型転写因子であり、Neh2ドメインのDLG/ETGEモチーフを介してKEAP1と結合する。通常条件では、KEAP1-CUL3-RBX1 E3ユビキチンリガーゼ複合体によりユビキチン化・26Sプロテアソーム分解されてその量が低く保たれる。酸化ストレスや電気親和性物質刺激によりKEAP1の特にC151システイン残基が修飾されると、NRF2のユビキチン化が抑制され、核に移行してsmall MAFタンパクとヘテロ二量体を形成しAREを活性化する。

補助的なNRF2分解経路として、(1) β-TrCP-SKP1-CUL1-RBX1複合体 (GSK3βがNeh6ドメインのDSGISモチーフをリン酸化し、β-TrCPが認識する、KEAP1非依存的・酸化ストレス非感受性degronによる制御)、および (2) HRD1 (ERストレス誘導性、Neh4-5ドメインを介した分解) が存在する。非カノニカル経路として、オートファジー関連タンパクp62 (SQSTM1) がそのSTGEモチーフをリン酸化するとKEAP1と競合的に結合し、KEAP1をオートファゴソームへ隔離してNRF2を遊離させる。このp62によるKEAP1隔離は、オートファジーフラックスが阻害された場合にp62タンパク質レベルが増加することで生じ、NRF2の持続的活性化につながる (Komatsu et al. 2010)。

がんにおいては、NRF2またはKEAP1の体細胞変異、エピジェネティックなKEAP1サイレンシング、CUL3/RBX1の増幅欠失、癌遺伝子によるNRF2転写誘導、p62などによるKEAP1競合的結合などにより、NRF2が構成的に活性化されることが多数のがん種で報告されている (Jaramillo and Zhang 2013)。NRF2は当初、化学予防化合物の標的として研究され、発がん前段階でのその保護的役割は確立されている (Kensler et al. 2007)。しかし、過去10年間で蓄積されたエビデンスにより、「NRF2のダークサイド」としてのがん進行、転移、治療抵抗性促進機能が確立されてきた (Wang et al. 2008)。NRF2の機能は、細胞の種類や文脈によって腫瘍抑制的にも腫瘍促進的にも作用する二面性を持つことが示されており、その複雑な役割の全貌は未解明な部分が多い。特に、がんの各ホールマークにおけるNRF2の直接的・間接的な寄与を包括的に理解することは、NRF2を標的とした治療戦略を開発する上で不可欠であるが、この点に関する体系的な整理が不足している。これまでの研究では、特定のホールマークにおけるNRF2の役割に焦点が当てられることが多く、がんの進行全体におけるNRF2の多面的な機能については、包括的な視点からの議論が不足していた。

目的

本レビューの目的は、転写因子NRF2ががんの10のホールマーク (Hanahan et al. Cell 2011の分類: 持続的増殖シグナル・増殖抑制回避・アポトーシス回避・複製寿命無制限化・血管新生・浸潤と転移・代謝リプログラミング・免疫回避・腫瘍促進性炎症・ゲノム不安定性) それぞれに対して持つ役割 (腫瘍抑制的・腫瘍促進的の両面) を包括的にレビューし、NRF2の文脈依存的な機能とその治療標的としての可能性を整理することである。これにより、NRF2ががんの発生と進行において果たす多面的な役割を明確にし、将来的な治療戦略開発のための基盤情報を提供することを目指す。特に、NRF2の活性化ががん細胞の代謝再プログラミングや治療抵抗性、免疫回避にどのように寄与するかを詳細に分析し、その複雑なメカニズムを解明することに焦点を当てる。

結果

NRF2制御機構とがん関連変異の多様性: がん細胞でのNRF2構成的活性化の機序は多岐にわたる。NRF2体細胞変異 (主にDLG/ETGEモチーフを標的とする機能獲得型) は肺扁平上皮癌・頭頸部扁平上皮癌で高頻度 (各々約20%) であり、KEAP1変異 (機能喪失型) は肺腺癌の約20%で認められる (n=500例超の公開ゲノムデータベースに基づく)。CUL3/RBX1の欠失・KEAP1のエピジェネティックサイレンシング・p62蓄積によるKEAP1隔離も追加の機序として重要である。KRAS G12D・BRAF V619E・MYCなどの古典的癌遺伝子はNRF2遺伝子プロモーターのTPA応答エレメント (TRE) を介してNRF2転写を直接誘導し、癌遺伝子とNRF2の連携によって腫瘍形成が促進される。PI3K-AKT経路はGSK3βを阻害することでβ-TrCP依存的NRF2分解を抑制し、PTEN欠損腫瘍では両シグナルの協調活性化により増殖性と腫瘍形成能が高まることが示されている (Figure 2)。

持続的増殖シグナルと治療抵抗性へのNRF2の寄与: Keap1ノックアウト細胞はwild-type細胞より増殖が速く、Nrf2ノックアウト細胞は増殖が遅い。NRF2はセリン/グリシン生合成経路遺伝子 (PHGDH・PSAT1・PSPH・SHMT1/2) をATF4を介して制御し、タンパク質合成と細胞増殖を支援する (DeNicola et al. NatGenet 2015)。また、NRF2依存的なADAM10の還元状態維持を通じてEGFシェディングおよびERBB2/EGFRシグナルのautocrine維持に寄与することが膵臓オルガノイド研究で示されている (Chio et al. 2016)。高NRF2発現は胚性幹細胞・誘導多能性幹細胞・がん幹細胞 (CSC) でも観察される。CRISPR-Cas9スクリーニングにより、KEAP1 KO細胞は多様なRTK/MAPK阻害薬に対して一貫して耐性を示すことが示された。KEAP1 KO細胞はNRF2依存的なレドックスホメオスタシス維持によって生存するため、NRF2ノックダウンによって阻害薬感受性が約2-fold回復した。肺腺癌でEGFR-TKIが増殖を抑制できないことも、NRF2の恒常的活性化に起因する可能性が示唆されており、KEAP1変異細胞株ではIC50が野生型と比較して約5〜10倍上昇することが報告されている (Yamadori et al. 2012)。

アポトーシス回避とフェロトーシス抑制: NRF2はBCL-2・BCL-xLの発現誘導、ミトコンドリアからのシトクロムc放出抑制、カスパーゼ3/7活性化抑制 (シスプラチン・エトポシド処理時) を通じてアポトーシスを直接抑制する。ROSはASK→p38 MAPK/JNK活性化を経てアポトーシスカスケードを開始するが、NRF2はこれを拮抗する。さらに、NRF2活性化が鉄依存性脂質過酸化細胞死 (ferroptosis) をMT-1G・FTL1/FTH1・GPX4・xCT・GCLC・GCLMの発現誘導を介して抑制することが示されており、抗ferroptosis機能はがん細胞の生存に重要な新規メカニズムである (Sun et al. 2016)。NRF2の構成的活性化は、MT-1G、フェリチン (FTL1, FTH1)、フェロポーチンなどの発現を制御することで、遊離鉄の蓄積を防ぎ、フェロトーシスを抑制する (Figure 4)。

代謝リプログラミング (Warburg効果支援): NRF2はペントースリン酸経路 (G6PD・PGD・TKT・TALDO1) を正制御してNADPH産生を増強し、グルタチオン合成 (GCLC/GCLM・GS)、グルタミン分解 (GLS)、セリン/グリシン代謝、NADPH産生酵素 (ME1・IDH1) を制御する (Mitsuishi et al. CancerCell 2012)。PI3K-AKTとNRF2が協調してこれらの代謝遺伝子の完全誘導に必要であり、両経路の連携が代謝リプログラミングを加速する。特筆すべきは、NRF2が脂肪酸合成酵素 (FASN・ACC1・ACL・SCD1等) の発現をLXRα経路の抑制を介して負制御するという異例な側面を持つことである。KRAS駆動肺腫瘍でKEAP1/NRF2変異を有するものはグルタミン分解に依存し、glutaminase阻害剤CB-839への感受性が示唆された (Romero et al. NatMed 2017)。NRF2はまた、ミトコンドリアの脂肪酸酸化 (FAO) を刺激し、CPT遺伝子やCD36の発現を転写的に活性化することで、ATP、NADPH、FADH2の産生を促進する (Figure 5)。

浸潤・転移への関与: NRF2はN-cadherin・NOTCH1発現を制御してEMTを促進し、RhoA/ROCK経路・MMP2/MMP9の発現を介して細胞遊走・浸潤を促進する。Anchorage-independent growthにおけるanoikisへの抵抗性もNRF2依存的オステオポンチン (SPP1) 誘導を通じて獲得される。一方で、腫瘍微小環境 (骨髄由来免疫細胞・間質) のNRF2は転移抑制的に機能するという文脈依存性も示されており、骨髄特異的NRF2欠損マウス (n=12 mice) では肺転移が増加する (Satoh et al. 2010)。Keap1-kdマウスでは、高NRF2発現が肺転移数を減少させることが報告されている。

血管新生: NRF2ノックダウンは血管形成・腫瘍増殖を抑制し、HIF-1αタンパク量の低下とそれに伴うVEGF・PDGF・アンジオポエチンの発現低下が認められた。NRF2ターゲット遺伝子NQO1がHIF-1αと直接結合してその分解を防ぐという新たな機序も同定されている (Oh et al. 2016)。NRF2ノックダウンにより、異種移植モデルで血管形成が減少し、それに伴い腫瘍増殖が抑制された (Kim et al. 2011)。

複製老化回避: 線維芽細胞のNRF2は複製老化を遅延させ、プロテアソーム活性維持・ROS低減・核異常抑制を通じて細胞寿命を延長する。後期継代/老化線維芽細胞および間葉系幹細胞ではNRF2発現が初期継代・増殖性細胞より低下している。NRF2はMDM2誘導によるp53抑制を通じて老化回避的に機能する一方、p15 (Cdkn2a) ・p21 (Cdkn1a) の誘導により中等度酸化ストレス条件では細胞周期停止を介して老化促進的にも機能するという文脈依存性がある。ハッチンソン・ギルフォード早老症候群 (HGPS) では、変異ラミンAタンパク (progerin) がNRF2と結合して核内局在を阻害し転写活性を障害するが、NRF2の薬理的活性化によりROS低減・プロテアソームおよびオートファジー活性化・核異常抑制・細胞増殖誘導が得られた (Kubben et al. 2016)。

免疫回避と腫瘍促進性炎症: NRF2は免疫細胞の機能と腫瘍免疫制御において文脈依存的な二面性を持つ。宿主の免疫細胞 (マクロファージ・MDSC・NK細胞) ではNRF2活性化が抗腫瘍免疫を支持する。Nrf2ノックアウト骨髄由来マクロファージ (BMDM) はxCT・GCLMの発現低下によりシステイン・GSH量が低下し、CD8+T細胞の完全活性化に失敗した (Sha et al. 2015)。一方でNrf2欠損マウスはMDSC数が増加し、高ROS状態のMDSCがCD8+T細胞増殖を抑制して転移促進的環境を形成した (Satoh et al. 2010)。Keap1-kdマウスでは化学的発癌が減少し、これはNRF2依存的抗腫瘍免疫によるものと考えられた。NRF2はIL17DプロモーターのAREを介してIL-17D発現を正制御し、NK細胞の腫瘍への動員を促進して腫瘍拒絶を誘導する。逆に、腫瘍細胞のNRF2は抗炎症作用によりIL-6・TNFα・IL-1βの発現を抑制して免疫回避を助長する可能性もある。

ゲノム不安定性への関与: NRF2は非形質転換細胞でゲノム安定性を維持し発癌を予防するが、がん細胞では化学療法・放射線療法への抵抗性をもたらす。NRF2は8-oxodG (最も頻度の高い酸化的DNA損傷) の塩基除去修復酵素OGG1の発現を制御し、非相同末端結合 (NHEJ) 因子53BP1の発現誘導を通じて放射線誘導性染色体異常から細胞を保護する (Kim et al. 2012)。BRCA1はNRF2のNeh2ドメインと結合してKEAP1依存的分解を阻止し、抗酸化遺伝子の転写を活性化する。PALB2 (BRCA2相互作用タンパク) はKEAP1のETGEモチーフと結合してNRF2の核蓄積と転写活性を促進する。これらのDNA修復タンパクとNRF2の機能的連携は、ゲノム安定性維持の多層的機構を示す。NRF2活性化は直接的なDNA修復遺伝子 (RAD51・RAD52・XRCC2/3・53BP1・OGG1等のARE含有遺伝子) 発現調節に加え、ROS低減による酸化的DNA傷害・一本鎖/二本鎖断裂・糖修飾の間接的予防によっても作用する。一方でがん細胞の高NRF2発現はテモゾロミド+放射線治療への耐性をもたらすことがグリオブラストーマ細胞株および患者サンプルで示された (Cong et al. 2013)。

プロテオトキシックストレスとNRF2: NRF2はプロテアソーム・オートファジー・UPRを通じてタンパク質恒常性維持に寄与する。NRF2は20Sプロテアソームサブユニット (PSMA1・PSMA4・PSMA5・PSMB3・PSMB6・PSMB5) と19Sサブユニット (PSMC1・PSMC3・PSMD4・PSMD14) およびプロテアソーム成熟タンパクPOMPの発現を制御し、プロテアソーム活性を維持する。この機能によりNRF2高発現がん細胞はbortezomib等プロテアソーム阻害剤に対して内因性耐性を持つ。さらにプロテアソーム阻害はオートファジーを活性化し、p62の蓄積→KEAP1隔離→NRF2非カノニカル活性化という正のフィードバックループにより、がん細胞が持続的NRF2活性化による薬剤耐性を獲得する機構が明らかにされた (Li ets al. 2015)。HSF1とNRF2はともに酸化ストレス・電気親和性物質・4-HNE・15d-PGJ2・スルフォラファン等に応答し、HMOX1・HSP70・p62・ATF3を共通の標的として制御するという機能的オーバーラップも指摘されている。

考察/結論

NRF2の二面性とその臨床的意義: 本レビューは、NRF2が化学予防 (腫瘍抑制) と腫瘍促進の「二面性」を持つことを系統的に整理し、がんの全ホールマークにわたるNRF2の直接的・間接的役割を俯瞰した重要な総説である。この二面性の核心は、発がん前段階ではNRF2活性化が有益 (化学予防・DNA損傷防止・酸化傷害排除) だが、一旦がんが発症すると機能が逆転して悪性化・転移・治療抵抗性を促進するという時相依存的なモデルにある。KRAS G12D・BRAF V619E・MYCなど主要な癌遺伝子が直接NRF2転写を誘導するという知見は、NRF2をこれら癌遺伝子の重要なエフェクターとして位置づけ、その機能的連携の普遍性を示している。これは、これまでのがん研究におけるNRF2の役割に関する理解を深める上で新規な視点を提供する。

代謝脆弱性を標的とした治療戦略: 直接的なNRF2阻害薬の開発は困難であるが、NRF2の構成的活性化が生み出す代謝脆弱性を標的とする間接的アプローチが現実的な戦略として提案されている。グルタミン分解依存性 (KRAS/KEAP1変異肺腫瘍でCB-839感受性が期待される)、ペントースリン酸経路依存性、セリン合成依存性などが有望な間接的標的となる。KEAP1変異は肺腺癌の約20%・NRF2変異は肺扁平上皮癌および頭頸部扁平上皮癌で高頻度であり、これらの症例群に対して代謝阻害アプローチが有望な臨床応用となる可能性がある。

Ferroptosisとの相互作用という新たな展望: NRF2-ferroptosis軸の解明は今後の重要な研究課題である。GPX4・xCT・GCLC/GCLM等のNRF2標的遺伝子がferroptosisを制御することから、NRF2活性化腫瘍でferroptosis誘導薬への耐性が生じる可能性がある一方で、NRF2を抑制することでferroptosis感受性を高める戦略も考えられる。がん幹細胞 (CSC) においてNRF2がステムネス維持に関与し、免疫微小環境との複雑なクロストーク (腫瘍細胞NRF2は転移促進的、骨髄細胞NRF2は転移抑制的) をも持つことが、標的療法の設計をさらに複雑にしている。

残された課題: 今後の検討課題として、制御されたNRF2活性化と構成的活性化が誘導する標的遺伝子群の差異を完全に定義する必要がある。一部の標的遺伝子は基礎的なNRF2転写産物の一部であり、誘導されたNRF2転写産物とは異なることが示されているため、NRF2活性化の閾値が転写産物を変化させる可能性も考慮すべきである。また、CRISPR-Cas9システムなどの新しい技術を活用し、NRF2の転写産物全体を完全に定義し、多くの推定標的遺伝子を検証することが不可欠である。KEAP1非依存的なNRF2制御モードのがん予防および治療における寄与もさらに探求されるべきである。これらの課題の解決に向けた今後の研究の進展が期待される。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の方法論的アプローチは適用されない。広範な文献検索と既存の科学的知見の統合を通じて、NRF2の生物学的機能、その制御メカニズム、およびがんの各ホールマークにおける役割に関する包括的な分析を行った。具体的には、NRF2の遺伝子発現制御、タンパク質安定性、および様々なシグナル伝達経路とのクロストークに関する研究を収集し、その結果をがんの10のホールマークに照らして評価した。

文献検索は、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学・生物学データベースを用いて行われた。検索キーワードには、「NRF2」、「KEAP1」、「hallmarks of cancer」、「antioxidant response」、「metabolic reprogramming」、「therapy resistance」、「cancer progression」、「tumor suppression」などが含まれた。関連する原著論文、レビュー記事、総説が特定され、NRF2の腫瘍抑制的および腫瘍促進的役割に関するエビデンスが抽出された。検索対象期間はNRF2の発見から本レビュー発行年 (2018年) までとした。抽出された情報は、NRF2の制御機構(KEAP1依存的、β-TrCP依存的、HRD1依存的、非カノニカル経路)、およびがんにおけるNRF2の構成的活性化の多様な機序(体細胞変異、エピジェネティックサイレンシング、癌遺伝子による誘導など)に焦点を当てて整理された。その後、がんの各ホールマーク(持続的増殖シグナル、増殖抑制回避、アポトーシス抵抗性、複製寿命無制限化、血管新生、浸潤と転移、代謝リプログラミング、免疫回避、腫瘍促進性炎症、ゲノム不安定性)ごとに、NRF2が果たす役割について詳細な分析が行われた。各ホールマークにおいて、NRF2がどのように腫瘍抑制的または腫瘍促進的に機能するかのメカニズムが、関連する分子経路や標的遺伝子とともに記述された。

特に、NRF2が関与する代謝経路(ペントースリン酸経路、グルタチオン合成、セリン/グリシン代謝、グルタミン分解、脂肪酸代謝、ミトコンドリア機能)や、治療抵抗性(化学療法、放射線療法、分子標的薬)におけるNRF2の役割について、最新の知見が統合された。また、NRF2と免疫微小環境、ゲノム安定性、プロテオトキシックストレスとの相互作用についても検討された。本レビューは、既存の知見を統合し、NRF2の文脈依存的な役割を包括的に理解するための枠組みを提供することを目的としている。統計手法としては、各研究で用いられたp値や効果量 (例: fold change) が参照された。