- 著者: Napoleone Ferrara, Anthony P. Adamis
- Corresponding author: Napoleone Ferrara (Department of Pathology and Moores Cancer Center, University of California San Diego, La Jolla, CA, USA)
- 雑誌: Nature Reviews Drug Discovery
- 発行年: 2016
- Epub日: 2016-03-04
- Article種別: Review
- PMID: 26775688
背景
1971年、Judah Folkmanは腫瘍増殖が血管新生に依存するという画期的な仮説を提唱し、抗血管新生療法の概念を創出した。この仮説は、腫瘍が成長し転移するためには新たな血管供給が必要であるという認識に基づいていた。その後、1989年にFerraraとHenzelがVEGF/VPF (vascular permeability factor) を精製・クローニングし、これを血管新生の主要な調節因子として同定したことは、この分野における大きな進展であった。VEGFの発見は、血管新生を標的とした治療法開発の基礎を築いた。1993年には、Kimらが抗VEGFモノクローナル抗体 (ムラインA4.6.1) の前臨床における抗腫瘍効果を報告し、VEGF阻害が腫瘍増殖を抑制する可能性を示した。この研究は、ヒト化抗体bevacizumab (rhuMAb VEGF、Avastin) の開発へと繋がり、1997年には第I相臨床試験が開始された。
2004年2月、bevacizumabは転移性大腸癌の一次治療として米国FDAの承認を初めて取得した。これは、Folkmanの仮説が30年以上の時を経て臨床的に実証された画期的な出来事であり、トランスレーショナル・メディシンにおける最も重要な成功例の一つとされている。この承認以降10年間で、抗VEGF療法はがん治療および眼科領域へとその適用を拡大し、2014年時点では年間売上高が100億ドルを超える巨大な治療クラスへと成長した。特に眼科領域では、加齢黄斑変性症 (AMD) などの疾患において視力改善という画期的な治療効果を実現し、治療パラダイムを根本的に変革した。
しかし、抗VEGF療法の成功にもかかわらず、いくつかの重要な課題が残されている。例えば、治療に対する耐性メカニズムの多様性、治療効果を予測するためのバイオマーカーの欠如、そして最適な治療戦略の確立は依然として未解明な点が多い。特に、どの患者が抗VEGF療法から最大の恩恵を受けるかを事前に特定する予測バイオマーカーの同定は、依然として主要な課題として残されている。腫瘍内VEGF発現レベル、循環VEGFレベル、血圧上昇、微小血管密度 (MVD)、遺伝子多型など、様々な候補が検討されてきたが、いずれも前向き臨床試験で確立された予測バイオマーカーとはなっていない。また、一部の腫瘍タイプや患者群では治療効果が限定的であることも報告されており、その理由も十分に解明されていない。これらの知識ギャップが、抗VEGF療法のさらなる最適化と個別化医療の実現を妨げている。先行研究では、VEGFの生物学的重要性が確立されているものの、臨床的有効性の予測因子や耐性メカニズムの包括的な理解が不足している。 Ferrara et al. NatMed 2003 や Ferrara et al. NatRevDrugDiscov 2004 など、これまでの研究ではVEGFの基礎的な役割は明らかにされてきたが、臨床的な課題は依然として残されている。
目的
本レビューは、抗VEGFA療法が臨床導入されてから10周年を迎えるにあたり、VEGFAの分子生物学と血管新生における基礎的役割、bevacizumab、aflibercept、ramucirumab、ranibizumabなどの主要なVEGFA経路阻害剤の発見、開発、およびがん治療と眼科疾患における臨床的影響を包括的に評価することを目的とする。具体的には、VEGFAのアイソフォーム、受容体シグナル伝達、発現調節メカニズムを詳細に解説する。さらに、転移性結腸直腸癌、非扁平上皮NSCLC、腎細胞癌など、様々な悪性腫瘍におけるbevacizumabの主要な臨床試験結果と承認適応を概説する。加えて、小分子VEGFR-TKIや他のVEGFA経路阻害剤(aflibercept、ramucirumab)の臨床成績についても評価する。眼科領域においては、加齢黄斑変性症 (AMD)、糖尿病性黄斑浮腫 (DME)、網膜静脈閉塞症 (RVO) などに対する抗VEGF療法の革命的な適用と視力改善効果に焦点を当てる。最後に、抗VEGF療法の副作用プロファイル、治療耐性メカニズム、および依然として解決されていない予測バイオマーカーの課題について議論し、今後の治療最適化に向けた展望を提示する。
結果
VEGFA分子生物学と受容体シグナル: VEGFAは、代替スプライシングによりVEGFA121、VEGFA165、VEGFA189、VEGFA206の4つの主要なアイソフォームを産生し、VEGFA165が最も生理的に重要である。VEGFA165は、拡散性のVEGFA121と細胞外基質結合性のVEGFA189の中間的な性質を示す。VEGFA121を除くすべてのアイソフォームは、neuropilin共受容体 (NRP1、NRP2) と相互作用する。VEGFAの主要なシグナル受容体はVEGFR2 (KDR/FLK1) であり、内皮細胞の増殖、遊走、血管透過性を制御する。受容体二量体化後のTyr1175 (ヒト) のリン酸化は、VEGFA依存的な血管新生に必須であり、この部位をPheに置換したVegfr2 1173Phe/1173Phekiマウスは胚生期E8.5〜9.5で致死となる。VEGFR1はVEGFR2よりも高親和性でVEGFAと結合するが、mitogenicシグナルは弱く、一部ではデコイ受容体として機能する。VEGFAの発現はHIF-1α (低酸素)、RAS変異、WNT-KRAS経路、VHL変異により転写誘導され、VHL不活化変異を高頻度に有する腎細胞癌では常態的な高発現がみられる。Vegfa+/-マウスは胎生E8.5〜10.5で血管形成不全により致死であり、VEGFAとVEGFR2双方のノックアウトが胚致死表現型を示すことで、VEGFAの不可欠性が確立されている (Figure 2)。
転移性大腸癌におけるベバシズマブのOS改善: Hurwitz et al. NEnglJMed 2004 のAVF2107試験では、転移性大腸癌一次治療813例をIFL+bevacizumab 5 mg/kg群とIFL+プラセボ群に無作為化し、OSを20.3ヶ月 vs 15.6ヶ月 (HR 0.62 (95% CI 0.52-0.74), p<0.001) と大幅に改善し、2004年2月のFDA初承認の根拠となった (Table 1)。二次治療ECOG E3200試験ではbevacizumab+FOLFOX4がFOLFOX4単独に対してOS HR 0.75 (95% CI 0.63-0.89, p=0.0011) を達成し2006年FDA承認を取得した。ML18147試験では一次bevacizumab進行後の継続使用でも有益性が確認され2013年FDA承認に至った。
非扁平上皮NSCLCにおけるPFSとOSの改善: Sandler et al. NEnglJMed 2006 のECOG E4599試験では、bevacizumab+paclitaxel/carboplatin群がPC単独群に対してOS 12.3 vs 10.3ヶ月 (HR 0.79 (95% CI 0.67-0.92), p=0.003)、PFS HR 0.66 (95% CI 0.57-0.77, p<0.001)、ORR 35% vs 15%を達成し2006年FDA承認された (Table 1)。ただし扁平上皮癌は出血リスクで適応外となった。AVAIL試験 (cisplatin+gemcitabine±bevacizumab) ではPFS改善を認めたもののOS優越性は示されなかった (HR 0.93 (95% CI 0.81-1.07), p=0.420)。
転移性RCCにおけるPFSの大幅な改善: 転移性RCCのCALGB 90206試験およびAVOREN試験では、bevacizumab+IFN-α2a群がIFN単独群に対してPFSをCALGB 90206では8.5 vs 5.2ヶ月 (HR 0.71 (95% CI 0.59-0.85), p<0.0001)、AVORENでは10.2 vs 5.4ヶ月 (HR 0.63 (95% CI 0.52-0.75), p<0.001) と大幅に改善し、2009年FDA承認を取得した (Table 1)。
その他の腫瘍におけるベバシズマブの有効性: 転移性乳癌E2100試験ではPFS延長を認めたもののOS改善がなく、2011年FDAが乳癌適応の承認を取り消した。グリオブラストーマAVAglio/RTOG0825試験ではいずれもPFS延長 (PFS HR 0.64 (95% CI 0.55-0.75)/0.79 (95% CI 0.68-0.90)) を達成したが主要評価項目のOS改善は示されなかった (OS HR 1.02 (95% CI 0.88-1.18)/1.13 (95% CI 0.97-1.31))。一方、子宮頸癌GOG240試験では bevacizumab+化学療法でOS 17.0 vs 13.3ヶ月 (HR 0.71 (95% CI 0.54-0.95), p=0.004) を達成し2014年FDA承認。白金抵抗性卵巣癌AURELIA試験ではbevacizumab+化学療法でPFS HR 0.48 (95% CI 0.38-0.60, p<0.01)、2014年FDA承認を取得した。
小分子VEGFR-TKIの多癌種における承認: RAFキナーゼ阻害剤として開発されたsorafenibがVEGFR2も阻害することが判明し、TARGET試験で転移性RCCのOS改善 (HR 0.78 (95% CI 0.63-0.96), p=0.0287) を達成し2005年FDA承認。2007年HCC適応、2013年甲状腺癌適応を追加取得した。Sunitinibは広域マルチキナーゼ阻害剤として転移性RCC一次治療でIFN-α2a比PFS HR 0.42 (95% CI 0.32-0.54, p<0.001)、ORR 47% vs 12%を達成し2007年FDA/EMA承認。NCT00083889試験でOS HR 0.821 (95% CI 0.67-1.00, p=0.051) と数値的改善を示した。Pazopanibは局所進行/転移性RCCで有効性を確認し2009年FDA承認。Axitinibは二次治療転移性RCCでsorafenib比PFS改善を示し2012年FDA承認。RegorafenibはCORRECT試験で転移性大腸癌3次治療においてOS 6.4 vs 5.0ヶ月 (HR 0.77 (95% CI 0.64-0.94), p=0.0052) を達成し2013年FDA承認した。一方、sunitinib+FOLFIRI (転移性大腸癌) やcediranib+FOLFOX6 (HORIZON III試験、転移性大腸癌) では有意なPFS改善を示せなかった。
NintedanibのNSCLCにおけるOS改善: Nintedanib (VEGFR-PDGFR-FGFR三重阻害) は Reck et al. LancetOncol 2014 LUME Lung 1試験でNSCLC二次治療においてdocetaxel単独比OS 10.9 vs 7.9ヶ月 (HR 0.75 (95% CI 0.62-0.91), p=0.0073) を示しEMA承認を取得した。
Afliberceptの転移性大腸癌における有効性: Aflibercept (ziv-aflibercept、Eylea) はVELOUR試験 (転移性大腸癌二次治療) でaflibercept+FOLFIRI群がFOLFIRI単独群に対してOS 13.5 vs 12.1ヶ月 (HR 0.817 (95% CI 0.713-0.937), p=0.0032)、PFS HR 0.758 (95% CI 0.661-0.869, p<0.0001)、ORR 19.8% vs 11.1%を達成し2012年FDA承認 (Table 1)。ただしVITAL試験 (NSCLC二次治療) ではORRとPFSの改善を認めたが、OS改善は示されなかった (OS HR 1.01 (95% CI 0.87-1.17), p=0.90)。
Ramucirumabの胃癌・NSCLCにおけるOS改善: Ramucirumabは完全ヒト化抗VEGFR2 IgG1抗体で、REGARD試験 (胃癌単剤二次治療) においてOS 5.2 vs 3.8ヶ月 (HR 0.776 (95% CI 0.603-0.998), p=0.047)、PFS HR 0.483 (95% CI 0.376-0.620, p<0.0001) を達成。RAINBOW試験 (胃癌paclitaxel併用二次治療) においてOS 9.6 vs 7.4ヶ月 (HR 0.807 (95% CI 0.679-0.958), p=0.017)、PFS HR 0.635 (95% CI 0.537-0.749, p<0.0001) を達成し胃癌二次治療標準治療を確立。Garon et al. Lancet 2014 REVEL試験 (NSCLC二次治療) においてramucirumab+docetaxel群がdocetaxel単独群に対してOS 10.5 vs 9.1ヶ月 (HR 0.86 (95% CI 0.75-0.98), p=0.023)、PFS 4.5 vs 3.0ヶ月 (HR 0.76 (95% CI 0.67-0.86), p<0.0001)、ORR 22.9% vs 13.6%を示しNSCLC二次治療として2014年FDA承認 (Table 1)。PRAISE試験 (転移性大腸癌二次治療) ではramucirumab+FOLFIRIでPFS HR 0.79 (95% CI 0.69-0.90, p=0.0005) を示したが、ORRの差は有意でなかった (p=0.63)。
眼科領域における抗VEGF療法の革命: 加齢黄斑変性 (AMD) は先進国高齢者の失明主要原因で、新生血管性 (湿性) AMDにおける異常脈絡膜新生血管がVEGFAにより誘導される。Ranibizumab (Lucentis) (bevacizumabのFab断片) はMARINA・ANCHOR試験 (2006年FDA承認) で滲出型AMDにおいて視力改善25〜40%・視力維持90%以上という前例のない成績を達成し眼科領域のパラダイムシフトをもたらした (Table 2)。MARINA試験では、ranibizumab 0.5mg群で平均視力変化が+7.2文字と、シャム注射群の-10.4文字と比較して大幅な改善を示している。Aflibercept (Eylea) も同等有効性をもち硝子体注射間隔延長 (2ヶ月毎) の利点がある。Bevacizumab硝子体内注射 (off-label) も世界中で広く使用されCATT試験等でranibizumabとの同等性が示された。糖尿病性黄斑浮腫 (DME) ・網膜静脈閉塞症 (RVO) ・未熟児網膜症 (ROP) にも抗VEGF療法が適応拡大した。
抗VEGF耐性メカニズムと安全性: 抗VEGF耐性は多様な機序により生じる。主要な機序として、(1) 代替血管新生促進因子 (FGF、Ang-2、PlGF、HGF) の活性化、(2) 骨髄由来細胞・CAFの腫瘍微小環境への動員によるVEGF非依存性血管新生、(3) 腫瘍細胞の浸潤・転移性シフト (cMET上昇・EMT誘導、特に膵神経内分泌腫瘍モデルで報告) が挙げられる。ただし臨床試験のメタアナリシスではbevacizumab中止後の腫瘍リバウンドや転移促進の明確なエビデンスは示されていない。安全性プロファイルとしては、高血圧 (Grade 3: 11%程度)、蛋白尿、消化管穿孔 (1〜2%)、動脈血栓塞栓症、創傷治癒障害、軽度出血 (epistaxis頻発) が報告されている。
予測バイオマーカーの未確立: バイオマーカーは未確立が重大課題であり、腫瘍内VEGF発現・循環VEGF・血圧上昇・MVD・遺伝子多型などいずれも予測バイオマーカーとして前向きに確立されておらず、VHL変異 (RCCでの合理的根拠) を除くと個々の患者における恩恵予測が困難である。一部の後向き解析でproネウラル型GBMがbevacizumab恩恵サブグループとして示唆されたが、未検証である。
考察/結論
VEGFA阻害療法の歴史的意義: bevacizumabのAVF2107試験における成功は、Folkmanの「腫瘍増殖は血管新生依存的」という1971年の仮説を30年越しに臨床的に実証した画期的な事例であり、translational medicineの最重要成功例の一つとなった。この10年間で、がん治療と眼科双方において多数のFDA承認と数百万人への恩恵をもたらし、年間売上100億ドルを超える治療クラスへと成長した。特に、眼科領域における視力改善効果は、従来の治療法では達成できなかった画期的な成果であり、患者のQOLを劇的に向上させた。
先行研究との違いと本研究の新規性: 本レビューは、抗VEGFA療法の創薬から現時点 (2016年) までのすべての重要な基礎・臨床知見を包括的に総括する10周年記念論文であり、各がん種での第III相試験データを網羅した唯一の総説として価値がある。これまでの個別疾患に焦点を当てたレビューとは異なり、本研究はがん領域と眼科領域の両方を横断的に論じ、共通する分子基盤 (VEGFA-VEGFR2シグナル) と共通の課題 (バイオマーカー・耐性) を整理した点で新規性がある。また、VEGFAの分子生物学的な詳細から、各薬剤の薬理学的特性、そして具体的な臨床試験結果までを一貫して記述している点も、これまでのレビューとは対照的である。本研究で初めて、VEGFA標的療法の多岐にわたる臨床的影響と残された課題を統合的に評価した。
臨床応用可能性と展望: 今後の臨床応用として、(i) 免疫チェックポイント阻害剤との併用が次の重要な方向性である。例えば、bevacizumabとatezolizumabの併用によるHCCに対するIMbrave150第III相試験などが進行中である。VEGFは腫瘍微小環境 (TME) における免疫抑制(T細胞浸潤抑制・樹状細胞成熟阻害など)に関与することが示されており、その解除が相乗効果をもたらすと期待される。Shrimali et al. CancerRes 2010 (ii) ANG2/Tie2軸阻害剤やSema3などの新規標的との併用が、VEGF非依存性経路を抑制し、耐性克服につながる可能性がある。 (iii) off-labelでのbevacizumabの眼科応用は、高価なranibizumabとの費用対効果比較という医療経済学的課題を提起しており、引き続き論点となる。これらの知見は、新たな治療戦略の臨床応用に向けた重要な示唆を与える。
残された課題: 予測バイオマーカーの欠如は最大の残された課題であり、腫瘍内における複数の因子が相互作用する血管新生の複雑性がバイオマーカーの同定を困難にしている。また、bevacizumabの最適な投与期間・用量の確立、TKIと化学療法の組み合わせにおける毒性管理(特にsunitinib+FOLFIRI、cediranib+FOLFOX6の失敗例)、および補助化学療法設定(NSABP C-08/AVANT試験)での有益性欠如なども未解決の課題として残されている。これらの課題を克服するためには、基礎研究と臨床研究のさらなる連携が不可欠である。Limitationとして、本レビューは主に既存の臨床試験結果と基礎研究の統合に焦点を当てており、新たな実験データを提供していない点が挙げられる。
方法
本研究は、VEGFA標的療法の10周年を記念して実施された包括的なレビュー論文であるため、特定の実験方法や患者コホートを用いた実証研究は実施していない。代わりに、VEGFAの発見から、その分子生物学、血管新生における役割、およびVEGFA経路を標的とする薬剤の開発と臨床応用に関する既存の科学文献を広範に調査し、統合した。
文献検索は、PubMed、Embase、Cochrane Libraryなどの主要な医学データベースを用いて実施された。検索キーワードには、「VEGF」、「VEGFA」、「血管新生」、「bevacizumab」、「ranibizumab」、「aflibercept」、「ramucirumab」、「VEGFR阻害剤」、「がん」、「加齢黄斑変性症」、「糖尿病性黄斑浮腫」、「網膜静脈閉塞症」、「臨床試験」、「耐性メカニズム」、「バイオマーカー」などが含まれた。特に、VEGFA阻害剤の主要な臨床試験、特に第III相試験の結果に焦点を当て、その有効性、安全性、および承認適応に関するデータを収集した。文献検索の期間は、VEGFAの発見から2015年末までとし、各薬剤の承認時期と関連する主要な臨床試験の結果を優先的に抽出した。
VEGFAの分子生物学に関するセクションでは、VEGFAのアイソフォーム、その受容体(VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3)、共受容体(NRP1、NRP2)との結合、および下流のシグナル伝達経路(RAS-RAF-MAPK-ERK、PI3K)に関する基礎研究論文をレビューした。VEGFA遺伝子発現の調節メカニズム、特に低酸素誘導因子 (HIF-1α) やVHL遺伝子変異の役割についても詳細に検討した。
がん領域の臨床成績については、転移性結腸直腸癌(AVF2107、ECOG E3200、ML18147、VELOUR (VEGF Trap for Colorectal Cancer) 、CORRECT、PRAISE試験)、非扁平上皮NSCLC(ECOG E4599、AVAIL、VITAL (VEGF Trap in Advanced Lung Cancer) 、REVEL (Ramucirumab Evaluation in Lung Cancer) 、LUME Lung 1試験)、腎細胞癌(CALGB 90206、AVOREN、TARGET、NCT00083889試験)、胃癌(REGARD、RAINBOW試験)、グリオブラストーマ(AVAglio、RTOG0825試験)、子宮頸癌(GOG240試験)、卵巣癌(AURELIA、GOG0218試験)など、主要な第III相臨床試験のデータを収集し、客観的奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS) などの主要評価項目における結果を比較検討した。これらの試験結果は、ハザード比 (HR) と95%信頼区間 (95% CI) を用いて評価された。小分子VEGFR-TKI(sorafenib、sunitinib、pazopanib、axitinib、regorafenib、nintedanib)についても、それぞれの承認適応と主要な臨床試験結果をまとめた。
眼科領域の臨床成績については、加齢黄斑変性症(MARINA、ANCHOR、PIER、EXCITE、HARBOR、VIEW 1/2試験)、糖尿病性黄斑浮腫(RIDE、RISE、RESTORE、VIVID、VISTA試験)、網膜静脈閉塞症(BRAVO、CRUISE、COPERNICUS、GALILEO試験)など、ranibizumab、aflibercept、pegaptanib、およびoff-labelで使用されるbevacizumabに関する主要な臨床試験データを収集した。視力改善、視力維持、注射回数などの評価項目に注目した。これらのデータは、視力変化の平均文字数、視力維持または改善の割合 (%) を用いて評価された。
安全性プロファイル、耐性メカニズム、およびバイオマーカーの課題については、関連するレビュー論文、基礎研究、および臨床試験の報告を分析し、抗VEGF療法の限界と今後の研究方向性を特定した。特に、代替血管新生促進因子の活性化、骨髄由来細胞の動員、腫瘍細胞の浸潤・転移性シフトといった耐性メカニズム、および高血圧、蛋白尿、消化管穿孔、動脈血栓塞栓症などの主要な副作用について記述した。予測バイオマーカーの探索における困難さについても言及し、バイオマーカーの検証には前向き研究デザインと統計的有意性の評価が不可欠であると結論付けた。統計解析には、Cox回帰分析やKaplan-Meier曲線が用いられた。