• 著者: Zhou C, Kim SW, Reungwetwattana T, Zhou J, Zhang Y, He J, Yang JJ, Cheng Y, Lee SH, Liu Y, Liu X, Liu J, Liang H, Chen L, Liang Y, Lu Y, Xu T, Mok T
  • Corresponding author: Zhou C (Shanghai Pulmonary Hospital, Tongji University, Shanghai, China); Mok T (Chinese University of Hong Kong)
  • 雑誌: Lancet Respiratory Medicine
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-03-25
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 30981696

背景

ALK陽性非小細胞肺癌(NSCLC)は、NSCLC患者の約5%に発生し、アジア人患者でも同様の発生率が報告されている。クリゾチニブはALK陽性NSCLCの1次治療として化学療法と比較して有効性を示したが(Solomon et al. NEnglJMed 2014)、治療開始後12ヶ月以内に抵抗性が生じ、病勢進行に至ることが多かった(Katayama et al. SciTranslMed 2012Doebele et al. ClinCancerRes 2012)。第2世代ALK阻害剤であるアレクチニブは、クリゾチニブ耐性変異に対しても活性を有することが報告されている(Gainor et al. CancerDiscov 2016)。

国際共同第III相ALEX試験(Peters et al. NEnglJMed 2017)では、未治療ALK陽性NSCLC患者においてアレクチニブ(600 mg 1日2回)がクリゾチニブと比較してPFSを優位に延長することが示された(HR 0.47)。また、日本人患者を対象としたJ-ALEX試験(Hida et al. Lancet 2017)でも、アレクチニブ(300 mg 1日2回)がクリゾチニブに対し優れたPFSを示した(HR 0.34)。しかし、ALEX試験は国際コホートであり、J-ALEX試験は日本人集団に限定され、アレクチニブの用量も異なっていた。アジア人集団はALK陽性NSCLCの割合が比較的高いことや、薬物動態や感受性に違いがある可能性が指摘されており、アジア人集団におけるアレクチニブ600 mg 1日2回用量の有効性と安全性を検証する必要があった。この点において、ALEX試験の結果をアジア人集団で確認し、その一貫性を示すデータが不足しており、アジア人特有の薬物動態や治療効果に関する詳細な知見を得るための課題が残されていた。

目的

アジア人の未治療ALK陽性進行NSCLC患者を対象に、1次治療としてのアレクチニブ600 mg 1日2回投与とクリゾチニブ250 mg 1日2回投与の有効性(主要評価項目である治験責任医師評価による無増悪生存期間 [PFS])および安全性プロファイルを比較すること。副次評価項目として、独立評価委員会(IRC)評価によるPFS、中枢神経系(CNS)進行までの期間、CNS客観的奏効率(ORR)、全身ORR、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、および安全性を評価する。本研究は、国際共同ALEX試験で示されたPFSのベネフィットがアジア人集団においても一貫していることを検証することを目的とした。

結果

患者背景と追跡期間: 2016年8月3日から2017年5月16日までに187名の患者が無作為に割り付けられ、アレクチニブ群に125名、クリゾチニブ群に62名が割り付けられた。ベースラインの患者特性は両群間で類似していた(Table 1)。アレクチニブ群の追跡期間中央値は16.2ヶ月(IQR 13.7-17.6)、クリゾチニブ群は15.0ヶ月(IQR 12.5-17.3)であった。データカットオフ時(2018年5月31日)までに、クリゾチニブ群の38名(61%)が治療を中止したのに対し、アレクチニブ群では30名(24%)であった。主な中止理由は病勢進行であった(クリゾチニブ群48% vs アレクチニブ群16%)。

無増悪生存期間(PFS): 治験責任医師評価によるPFS中央値は、アレクチニブ群で未到達(NE、95% CI 20.3-NE)であったのに対し、クリゾチニブ群では11.1ヶ月(95% CI 9.1-13.0)であった(HR 0.22、95% CI 0.13-0.38、p<0.0001)。これはアレクチニブがクリゾチニブと比較して病勢進行または死亡のリスクを78%減少させたことを示す。IRC評価によるPFS中央値もアレクチニブ群でNE(95% CI 16.7-NE) vs クリゾチニブ群10.7ヶ月(95% CI 7.4-NE)であり、HR 0.37(95% CI 0.22-0.61、p<0.0001)と、アレクチニブの優越性が確認された(Figure 2)。サブグループ解析においても、ほとんどの患者サブグループでアレクチニブの優越性が一貫して認められた。

CNS進行リスクとCNS客観的奏効率: アレクチニブはCNS進行のリスクを著明に減少させた。CNS進行までの期間(先行する全身病変進行のないCNS進行または死亡)のハザード比は0.14(95% CI 0.06-0.30、p<0.0001)であり、アレクチニブ群でCNS進行リスクが86%低下したことを示唆する(Table 3)。IRC評価による6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月時点でのCNS進行累積発生率は、クリゾチニブ群でそれぞれ16.6%、35.5%、37.5%であったのに対し、アレクチニブ群では4.0%、7.3%、13.7%と大幅に低かった(Figure 3)。ベースラインに測定可能または非測定可能なCNS病変を有する患者におけるCNS客観的奏効率は、アレクチニブ群で73%(95% CI 57-85%)であったのに対し、クリゾチニブ群では22%(95% CI 8-44%)であった(Table 4)。これはアレクチニブがCNS転移の予防および治療において優れた効果を持つことを示している。

全身客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR): 治験責任医師評価による全身ORRは、アレクチニブ群で91%(95% CI 84-96%)であったのに対し、クリゾチニブ群では77%(95% CI 65-87%)であった(層別解析p=0.0095)。アレクチニブ群の患者のほとんど(87%)が部分奏効を達成した(Table 2)。奏効期間中央値はアレクチニブ群でNE(95% CI 18.4-NE)であったのに対し、クリゾチニブ群では9.3ヶ月(95% CI 7.4-NE)であった(HR 0.22、95% CI 0.12-0.40、p<0.0001)。この結果は、アレクチニブが全身病変に対してもより深く、より持続的な奏効をもたらすことを示唆している。

全生存期間(OS)と安全性: 中間解析時点では、OSデータは未成熟であり、両群ともにOS中央値は未到達であった。死亡イベント数が少なかったため、OSに関する統計的有意差は認められなかった(HR 0.28、95% CI 0.12-0.68)。安全性プロファイルに関しては、アレクチニブ群はクリゾチニブ群と比較して、グレード3-5の有害事象の発生率が低かった(アレクチニブ群29% vs クリゾチニブ群48%)。重篤な有害事象もアレクチニブ群で少なかった(アレクチニブ群15% vs クリゾチニブ群26%)(Table 5)。クリゾチニブ群では間質性肺疾患による死亡が2例報告されたが、アレクチニブ群では治療関連死は認められなかった。

考察/結論

ALESIA試験は、アジア人未治療ALK陽性NSCLC患者において、アレクチニブ600 mg 1日2回投与がクリゾチニブと比較して、治験責任医師評価およびIRC評価の両方でPFSを著明に延長することを示した。この結果は、国際共同ALEX試験(Peters et al. NEnglJMed 2017)および日本人を対象としたJ-ALEX試験(Hida et al. Lancet 2017)で報告されたアレクチニブの優越性をアジア人集団で確認するものであった。

先行研究との違い: 本研究のPFSにおけるHR 0.22は、ALEX試験のHR 0.47やJ-ALEX試験のHR 0.34と比較してさらに低い値であり、アジア人集団におけるアレクチニブの治療効果がより顕著である可能性を示唆する。この差異は、アジア人患者におけるALK融合遺伝子のサブタイプ分布の違いや、アレクチニブに対する感受性の違いを反映している可能性がある。また、クリゾチニブ群のPFS中央値が本研究の11.1ヶ月に対し、PROFILE 1014試験(Solomon et al. NEnglJMed 2014)の10.9ヶ月と一致しており、クリゾチニブの有効性データの一貫性も確認された。

新規性: 本研究は、アジア人患者のみを対象にアレクチニブ600 mg 1日2回用量とクリゾチニブを比較した初の第III相無作為化試験である。これにより、アジア人集団におけるアレクチニブの有効性と安全性のプロファイルが、国際的なALEX試験の結果と一貫していることが本研究で初めて明確に示された。特に、CNS進行リスクのHR 0.14という極めて低い値は、アレクチニブのCNSに対する優れた効果を改めて強調するものであり、CNS転移の予防および治療におけるその価値を裏付ける。

臨床応用: 本試験の結果は、アジア諸国におけるALK陽性NSCLCの1次治療としてのアレクチニブの承認、特に中国での承認加速に大きく貢献した。CNS進行リスクの著明な低減は、脳転移のリスクが高いALK陽性NSCLC患者にとって極めて重要な臨床的意義を持つ。アレクチニブは、全身病変だけでなくCNS病変の制御においても優れた効果を発揮するため、アジア人患者に対する1次治療の標準治療としての地位を確立する強力な根拠となる。

残された課題: OSデータは中間解析時点では未成熟であり、長期的なOSの優位性を示すためにはさらなる追跡調査が必要である。また、本研究は非盲検試験であったため、治験責任医師評価によるPFSにはバイアスの可能性が完全に排除できないというlimitationがある。しかし、IRC評価によるPFSも同様の結果を示したため、このバイアスは軽微であると考えられる。今後の研究では、アレクチニブ治療後の耐性メカニズムや、その後の治療戦略に関する検討が残された課題である。

方法

本研究は、中国、韓国、タイの21施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相試験(ALESIA、NCT02838420)である。対象患者は、18歳以上のアジア人、組織学的または細胞学的に確認されたステージIIIBまたはIVのALK陽性NSCLC(Ventana免疫組織化学検査で確認)、ECOG PS 0-2、および測定可能病変(RECIST v1.1)を有する者とした。ALK阻害剤による前治療歴は認められなかった。無症候性CNS転移は許容された。

合計187例の患者が2:1の比率でアレクチニブ群(600 mg 1日2回、n=125)またはクリゾチニブ群(250 mg 1日2回、n=62)に無作為に割り付けられた。無作為化はECOG PS(0-1 vs 2)およびベースラインのCNS転移の有無で層別化された。治療は病勢進行、許容できない毒性、同意撤回、または死亡まで継続された。

主要評価項目は、治験責任医師評価によるPFSであった。副次評価項目には、IRC評価によるPFS、IRC評価によるCNS進行までの期間、IRC評価によるCNS客観的奏効率、治験責任医師評価による全身ORR、DOR、OS、および安全性が含まれた。腫瘍画像評価はベースライン時および病勢進行まで8週間ごとに実施され、RECIST v1.1に従って評価された。CNS進行は、新規CNS病変の出現または既存のCNS病変の進行と定義された。有害事象はNCI-CTCAE v4.0を用いて評価された。

統計解析では、Kaplan-Meier法を用いてPFS、OS、DORの中央値を推定し、層別Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定した。CNS進行までの期間の解析では、競合リスクを考慮した原因特異的ハザード関数に基づきHRが算出された。サンプルサイズは、ALEX試験におけるPFSのHR 0.65に基づき、少なくとも50%のリスク低減を維持することを目的として、183名の患者が必要と算出された。ALEX試験のHRが0.47と予想より良好であったため、本試験の主要解析はPFSイベントが少なくとも60件発生した時点で早期に実施された。