• 著者: West H, McCleod M, Hussein M, Morabito A, Rittmeyer A, Conter HJ, Kopp HG, Daniel D, McCune S, Mekhail T, Zer A, Reinmuth N, Sadiq A, Sandler A, Lin W, Lohmann TO, Archer V, Wang L, Kowanetz M, Cappuzzo F
  • Corresponding author: Federico Cappuzzo, MD (Department of Oncology and Hematology, AUSL Romagna, 48100 Ravenna, Italy)
  • 雑誌: Lancet Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-04-09
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31122901

背景

進行非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の初回治療において、プラチナ製剤ベースの化学療法が長らく標準治療とされてきた。しかし、これらの治療法では全生存期間(OS)が依然として低いという課題が残されていた。近年、免疫チェックポイント阻害薬、特にプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に対するモノクローナル抗体であるアテゾリズマブが、前治療歴のあるNSCLC患者においてOSを改善することが示され、その有効性が確立された(Fehrenbacher et al. Lancet 2016Rittmeyer et al. Lancet 2017)。さらに、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法は、腫瘍抗原の放出を介して抗腫瘍免疫を増強する可能性があり(Chen et al. Immunity 2013)、初回治療としての併用療法の有効性を示す複数の試験(IMpower110、IMpower150など)が同時進行で実施されていた。

パクリタキセルのアルブミン結合製剤であるnab-パクリタキセルは、従来のパクリタキセルで必要とされるクレモフォール(Cremophor EL)を溶媒として使用しないため、コルチコステロイドによる前投薬が不要であるという利点を持つ。このコルチコステロイド前処置の回避は、免疫療法との併用において、過剰なコルチコステロイドによる免疫抑制作用を回避し、免疫療法の効果を最大限に引き出す可能性が期待された。しかし、このnab-パクリタキセルとアテゾリズマブの併用療法が、未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者に対して、化学療法単独と比較してOSおよび無増悪生存期間(PFS)を改善するかどうかは未解明であった。本研究は、この知識のギャップを埋めることを目的として、アテゾリズマブとカルボプラチンおよびnab-パクリタキセルの併用療法を化学療法単独と比較する第III相試験としてIMpower130が設計された。

目的

未治療の転移性非扁平上皮NSCLC患者を対象に、アテゾリズマブとカルボプラチンおよびnab-パクリタキセル併用療法が、化学療法単独(カルボプラチンおよびnab-パクリタキセル)と比較して、主要評価項目であるPFSおよびOSを改善するかどうかを検証すること(IMpower130試験)。

結果

患者特性と追跡期間: 2015年4月16日から2017年2月13日までに724例の患者が無作為に割り付けられ、723例がITT集団に含まれた。ITT野生型集団は、アテゾリズマブ+化学療法群にn=451、化学療法単独群にn=228であった。ベースライン特性は両群間で概ねバランスが取れていた(Table 1)。ITT野生型集団における中央値追跡期間は、アテゾリズマブ+化学療法群で18.5ヶ月(四分位範囲 15.2-23.6)、化学療法単独群で19.2ヶ月(四分位範囲 15.4-23.0)であった。

無増悪生存期間(PFS)の改善: ITT野生型集団において、アテゾリズマブ+化学療法群のPFS中央値は7.0ヶ月(95% CI 6.2-7.3ヶ月)であり、化学療法単独群の5.5ヶ月(95% CI 4.4-5.9ヶ月)と比較して有意に延長した(HR 0.64, 95% CI 0.54-0.77, p<0.0001)(Figure 2A)。12ヶ月PFS率は、アテゾリズマブ+化学療法群で約38%であった。このPFSの利益は、PD-L1発現レベルに関わらず、多くのサブグループで一貫して観察された(Figure 5)。

全生存期間(OS)の改善: ITT野生型集団において、アテゾリズマブ+化学療法群のOS中央値は18.6ヶ月(95% CI 16.0-21.2ヶ月)であり、化学療法単独群の13.9ヶ月(95% CI 12.0-18.7ヶ月)と比較して有意な延長が認められた(HR 0.79, 95% CI 0.64-0.98, p=0.033)(Figure 2B)。OSの利益は、ほとんどのサブグループで一貫して観察されたが、肝転移を有する患者(HR 0.75, 95% CI 0.49-1.15)およびEGFRまたはALK遺伝子変異を有する患者ではOSの改善が限定的であった(Figure 4)。

客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR): ITT野生型集団において、確認されたORRはアテゾリズマブ+化学療法群で49.2%(95% CI 44.5-54.0、n=220/447)、化学療法単独群で31.9%(95% CI 25.8-38.4、n=72/226)と、アテゾリズマブ併用群で有意に高かった(p<0.001)。完全奏効(CR)はアテゾリズマブ+化学療法群で11例(2%)、化学療法単独群で3例(1%)に認められた。部分奏効(PR)はそれぞれ209例(47%)と69例(31%)であった。奏効期間中央値(mDOR)は、アテゾリズマブ+化学療法群で8.4ヶ月(95% CI 6.9-11.8ヶ月)、化学療法単独群で6.1ヶ月(95% CI 5.5-7.9ヶ月)であった。

PD-L1発現別解析: PD-L1高発現(TC3またはIC3)集団では、PFSのHRが0.44(95% CI 0.29-0.66)と最大の利益が観察された。PD-L1低発現(TC1/2またはIC1/2)集団ではHR 0.62(95% CI 0.46-0.84)、PD-L1陰性(TC0およびIC0)集団ではHR 0.81(95% CI 0.63-1.04)であった。OSのHRは、PD-L1高発現集団で0.70(95% CI 0.45-1.08)、PD-L1低発現集団で0.81(95% CI 0.56-1.17)、PD-L1陰性集団で0.84(95% CI 0.62-1.14)であり、PD-L1発現レベルに関わらず一貫したOS利益の傾向が示された。

安全性プロファイル: グレード3または4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ+化学療法群で81%(n=381/473)、化学療法単独群で71%(n=164/232)に発生した(Table 2)。最も頻繁に報告されたグレード3または4の治療関連有害事象は、好中球減少症(アテゾリズマブ+化学療法群32% vs 化学療法単独群28%)、貧血(29% vs 20%)、好中球数減少(12% vs 8%)であった。治療関連の重篤な有害事象は、アテゾリズマブ+化学療法群で24%(n=112/473)、化学療法単独群で13%(n=30/232)に報告された。治療関連死は、アテゾリズマブ+化学療法群で8例(2%)、化学療法単独群で1例(<1%)に発生した。アテゾリズマブ+化学療法群における治療関連死の原因は、肺炎(2例)、死亡(1例)、敗血症性ショック(1例)、心筋梗塞(1例)、心停止(1例)、心室頻拍(1例)、肝硬変(1例)であった。免疫関連有害事象は、アテゾリズマブ+化学療法群の45%(n=213/473)に報告され、その大部分はグレード1または2であった。最も一般的な免疫関連有害事象は、皮疹(24%)、甲状腺機能低下症(15%)、肝炎(10%)であった。治療中止に至った患者の割合は、アテゾリズマブ+化学療法群で26%(n=125/473)、化学療法単独群で22%(n=51/232)であった。

考察/結論

IMpower130第III相試験は、未治療の転移性非扁平上皮NSCLC(EGFR/ALK野生型)患者において、アテゾリズマブとカルボプラチンおよびnab-パクリタキセル併用療法が、化学療法単独と比較して、PFS中央値(7.0ヶ月 vs 5.5ヶ月、HR 0.64, 95% CI 0.54-0.77, p<0.0001)およびOS中央値(18.6ヶ月 vs 13.9ヶ月、HR 0.79, 95% CI 0.64-0.98, p=0.033)を有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを明確に示した。この結果は、転移性非扁平上皮NSCLCの初回治療におけるアテゾリズマブとプラチナ製剤ベース化学療法の併用療法の有効性を強く支持するものである。

先行研究との違い: 本研究は、nab-パクリタキセルを化学療法バックボーンとして採用した点で、他のアテゾリズマブ併用化学療法試験(例: Socinski et al. NEnglJMed 2018のIMpower150試験)と異なる。nab-パクリタキセルはコルチコステロイド前投薬が不要であるため、ステロイドによる免疫抑制を回避できる可能性があり、免疫チェックポイント阻害薬との相乗効果が期待された。この点は、従来のパクリタキセルを使用するレジメンとは対照的である。また、化学療法単独群の約60%の患者が病勢進行後に免疫療法にクロスオーバーしたにもかかわらず、OSの有意な改善が認められたことは、アテゾリズマブ併用療法の強力な効果を示唆する。

新規性: 本研究で初めて、コルチコステロイド前投薬が不要な化学療法レジメンとPD-L1阻害薬の併用が、未治療非扁平上皮NSCLCにおいてOSとPFSの両方を改善することを実証した。特に、PD-L1発現レベルに関わらずPFSおよびOSの利益が観察されたことは、幅広い患者集団にこの治療法が適用可能であることを示唆する新規の知見である。PD-L1高発現患者ではPFSのHRが0.44と顕著な改善を示しており、PD-L1発現が低い患者や陰性患者においても一定の利益が認められたことは、治療戦略を策定する上で重要な情報となる。

臨床応用: 本試験の結果は、転移性非扁平上皮NSCLCの初回治療における新たな標準治療選択肢を提供するものであり、臨床的意義は大きい。特に、PD-L1発現が低い患者や陰性患者においても一定の利益が認められたことは、これらの患者群に対する治療戦略を策定する上で重要な情報となる。また、nab-パクリタキセルの使用により、コルチコステロイド前投薬を回避できる可能性は、免疫療法と化学療法の併用における免疫抑制の懸念を軽減し、患者の治療選択肢を広げることに貢献する。このレジメンは、NCCNやESMOのガイドラインにおいて、非扁平上皮NSCLCの初回治療オプションとして位置づけられるものと期待される。

残された課題: 本研究の限界として、肝転移を有する患者やEGFR/ALK遺伝子変異を有する患者ではOSの利益が限定的であった点が挙げられる。これらのサブグループにおける治療戦略の最適化は今後の検討課題である。特に、肝転移患者における免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であるメカニズムの解明や、血管新生阻害薬(例: ベバシズマブ)との併用が有効である可能性(IMpower150試験の結果など)を考慮した治療法の開発が求められる。また、グレード3/4の有害事象が81%と高頻度であったこと、治療関連死が8例報告されたことから、併用療法の毒性管理には引き続き注意が必要である。長期的な安全性プロファイルや、治療中止後の免疫関連有害事象の管理についても、さらなるデータ蓄積と研究が残された課題である。

方法

IMpower130は、国際多施設共同無作為化オープンラベル第III相試験(ClinicalTrials.gov登録番号:NCT02367781)として実施された。対象患者は、18歳以上の組織学的または細胞学的に確認されたステージIV非扁平上皮NSCLC、ECOGパフォーマンスステータス0または1、ステージIV疾患に対する前治療歴がない患者であった。EGFRまたはALK遺伝子変異を有する患者は、少なくとも1つのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療中または治療後に病勢進行を認めた場合に登録可能であった。患者はアテゾリズマブ+化学療法群と化学療法単独群に2:1の比率で無作為に割り付けられた。層別化因子は性別、ベースライン時の肝転移の有無、およびPD-L1腫瘍発現レベル(免疫組織化学法によるTC3および任意のIC vs TC0/1/2およびIC2/3 vs TC0/1/2およびIC0/1)であった。

治療レジメンは、アテゾリズマブ+化学療法群ではアテゾリズマブ1200mgを3週間ごとに静脈内投与、カルボプラチン(AUC 6 mg/mL/min)を3週間ごとに静脈内投与、nab-パクリタキセル100mg/m²を毎週静脈内投与し、これを4〜6サイクル実施後、アテゾリズマブ単独による維持療法を行った。化学療法単独群では、カルボプラチンとnab-パクリタキセルを同様のスケジュールで4〜6サイクル実施後、最善の支持療法またはペメトレキセド維持療法(治験責任医師の判断による)を行った。

主要評価項目は、EGFRおよびALK野生型(WT)集団における治験責任医師評価によるPFSおよびOSであった。副次評価項目には、ITT集団におけるPFSおよびOS、PD-L1発現レベル別のPFSおよびOS、客観的奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)などが含まれた。安全性評価は、少なくとも1回治験薬を投与されたすべての患者を対象とした。統計解析には、層別ログランク検定を用いてPFSおよびOSを比較し、層別Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。中央値PFSおよびOSはカプラン・マイヤー法を用いて推定された。データカットオフは2018年3月15日であり、中央値追跡期間は18.5〜19.2ヶ月であった。