• 著者: Yu Sung Kim, Eun Kyung Cho, Hyun Sun Woo, Junshik Hong, Hee Kyung Ahn, Inkeun Park, Dong Bok Shin, Jae Hoon Kim, Kyung Hee Lee
  • Corresponding author: Eun Kyung Cho (Division of Hematology-Oncology, Department of Internal Medicine, Gachon University Gil Medical Center, Incheon, Republic of Korea)
  • 雑誌: Lung Cancer
  • 発行年: 2010
  • Epub日: 2010-06-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 20096475

背景

肺がんは世界で最も一般的ながんであり、非小細胞肺癌 (NSCLC) は癌関連死亡の主要な原因である Hanna et al. JClinOncol 2004。NSCLCは全肺癌症例の少なくとも80%を占め、ほとんどの患者(約65-80%)は局所進行性または転移性疾患と診断され、根治的切除の対象とならない。プラチナベースの併用化学療法は、進行NSCLC患者において、最良の支持療法と比較して生存率のわずかながら有意な改善を示してきた。しかし、進行NSCLC患者の多くは最終的に病勢進行を経験するため、一次治療のプラチナベース化学療法後に30-40%の患者が二次治療を受ける。二次治療として、単剤のドセタキセル、ペメトレキセド、エルロチニブ、ゲフィチニブが活性を示すことが報告されており、ドセタキセルはプラチナ既治療NSCLC患者の二次治療におけるゴールドスタンダードとされてきた Shepherd et al. JClinOncol 2000Fossella et al. JClinOncol 2000

ペメトレキセドは、チミジル酸シンターゼの強力な阻害剤である新規の多標的葉酸代謝拮抗薬である。進行NSCLCの二次治療におけるドセタキセルとペメトレキセドを比較した大規模な第III相試験では、ペメトレキセドの非劣性が示された Hanna et al. JClinOncol 2004。特に、ペメトレキセドは骨髄抑制が有意に少なく、有害事象や発熱性好中球減少症も少なかった。プラチナ既治療進行NSCLCの二次治療では、ドセタキセル、ペメトレキセド、エルロチニブ (Shepherd et al. NEnglJMed 2005)、ゲフィチニブ (Kim et al. Lancet 2008)が標準治療とされており、奏効率 (ORR) は7-9%、全生存期間 (OS) 中央値は6.7-8.3ヶ月と、効果は限定的であった。ペメトレキセド単剤は非扁平上皮NSCLCで特に有効であり(非扁平上皮ではドセタキセルと同等以上、扁平上皮ではドセタキセルに劣る)、毒性プロファイルも良好であった。

一方、シスプラチンはメタアナリシスにおいてカルボプラチンよりもわずかに高い奏効率と長い生存期間を示すものの Ardizzoni et al. JNatlCancerInst 2007、カルボプラチンは忍容性が高く投与が簡便であるため、緩和療法ではしばしば選択される。ペメトレキセドとカルボプラチンは前臨床モデルで相乗効果を示すことが報告されている。ペメトレキセドとカルボプラチンの併用療法は、進行NSCLCの一次治療における第II相試験で奏効率24%、1年生存率56%を示し、忍容可能な毒性プロファイルであった。しかし、プラチナ既治療患者に対する二次・三次治療としてのサルベージ療法における有効性・安全性は前向き試験で未検証であり、この点に知識のギャップが残されていた。プラチナ再導入(re-challenge)は、プラチナフリー間隔 (PFI) が3-6ヶ月以上の場合に奏効率向上の可能性が示唆されてきたが、最適なレジメンは未確立である。本研究は、プラチナ既治療進行NSCLC患者に対するペメトレキセドとカルボプラチンの併用サルベージ療法の有効性を評価することを目的とした。

目的

本研究の主要目的は、プラチナ既治療(1回以上のプラチナベース化学療法後に病勢進行を経験した)の進行非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者に対する、ペメトレキセドとカルボプラチン併用サルベージ化学療法の奏効率 (ORR) を評価することである。副次目的として、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、および安全性プロファイルを評価する。本試験は、Simonの2段階デザインに基づいて、真のORRが5%であるという帰無仮説に対し、真のORRが少なくとも25%であるという対立仮説を、有意水準0.05、検出力90%で検証することを目指した。これにより、プラチナ既治療NSCLC患者における新たな治療選択肢としての本レジメンの臨床的有用性を確立することを目指す。

結果

患者背景: 2007年3月から2009年2月までに、適格基準を満たした合計32例の患者が本研究に登録され、全例が評価可能であった (Table 1)。患者の年齢中央値は62.5歳 (範囲 36-75歳) であった。男性が29例 (90.6%) と大多数を占め、Stage IVの患者が28例 (87.5%) であった。組織型は扁平上皮癌が17例 (53.1%)、腺癌が11例 (34.4%)、分類不能が4例 (12.5%) であった。ECOG PS 1の患者が25例 (78.1%) であり、PS 0が3例 (9.4%)、PS 2が4例 (12.5%) であった。前治療ラインは、1次治療として本レジメンを受けた患者が29例 (90.6%)、2次治療として受けた患者が3例 (9.4%) であった。全患者が治療期間中ビタミン補助療法を受けた。

治療経過と用量強度: 登録された患者は合計108サイクル (中央値 2.5サイクル、範囲 1-6サイクル) の化学療法を受けた。9例 (28.1%) が全6サイクルの化学療法を完了した。4例 (12.5%) で用量減量が必要となり、5例 (15.6%) で投与遅延が発生した。投与遅延のほとんどはグレード3または4の有害事象によるものであった。23例の患者が化学療法を中止した理由として、病勢進行が20例、グレード4の発熱性好中球減少症が2例、同意撤回が1例であった。ペメトレキセドとカルボプラチンの平均用量強度はそれぞれ0.96と0.97であった (Table 2)。

奏効率 (ORR): 31例が奏効評価の対象であった(1例は初回サイクル完了後に同意撤回)。全患者集団における腫瘍奏効は、完全奏効 (CR) が1例 (3.1%)、部分奏効 (PR) が5例 (15.6%) であった。これにより、全奏効率 (ORR) は18.8% (95% CI: 2.7-11.4) であった (Table 3)。奏効期間の中央値は4.4ヶ月であった。安定疾患 (SD) は9例 (28.1%) に認められ、病勢コントロール率 (DCR) は46.9%であった。Simonの2段階デザインの第1段階では、9例中1例の奏効が認められたため、試験は継続された。

組織型別奏効および生存期間: 奏効を示した患者のうち、腺癌が4例、扁平上皮癌が2例であった。腺癌患者は扁平上皮癌患者よりも良好な奏効を示したが (36.4% vs 11.8%)、統計的に有意な差は認められなかった (p=0.156)。解析時点での追跡期間中央値は9.4ヶ月であり、7例の患者が生存していた。全32例の患者において、無増悪生存期間 (PFS) 中央値は2.3ヶ月 (95% CI: 0.5-4.1) であった (Figure 1)。全生存期間 (OS) 中央値は9.4ヶ月 (95% CI: 2.3-16.5) であり、1年生存率は46%であった (Figure 2)。腺癌患者のOS中央値は13.6ヶ月、扁平上皮癌患者のOS中央値は9.37ヶ月であった (p=0.50)。脳転移を有する2例の患者のうち、1例はPRを達成し、もう1例はPDを示したが、それぞれの生存期間は15.9ヶ月と13.6ヶ月であった。本レジメンを3次治療として受けた3例の患者のうち、1例がPRを示した。

安全性プロファイル: 少なくとも1サイクル以上の化学療法を受けた全32例の患者が毒性評価の対象となった (Table 5)。グレード3または4の血液毒性は7例 (21.9%) に認められた。内訳は、貧血1例 (3.1%)、好中球減少6例 (18.8%)、血小板減少6例 (18.8%) であった。グレード4の発熱性好中球減少症を伴う感染症が2例に発生した。非血液毒性は一般的に軽度であり、用量制限となることは稀であった。グレード3の非血液毒性は4例 (12.5%) に認められ、内訳は、無力症3例 (9.4%)、食欲不振2例 (6.3%)、口内炎1例 (3.1%) であった。グレード1-2の末梢神経障害は13例 (40.6%) に発現した。治療関連死は認められなかった。

後続治療: 27例 (84.4%) の患者が、チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI)、細胞傷害性化学療法、放射線療法を含む後続治療を受けた。TKIによる治療を受けた患者は18例 (56.3%) で、そのうち10例がエルロチニブ、8例がゲフィチニブであった。化学療法を受けた患者は7例 (21.9%) で、ドセタキセル2例、ゲムシタビン2例、イリノテカン2例、ビノレルビン1例であった。2例の患者は胸椎および気管に対する緩和的放射線療法を受けた。TKI治療を受けた18例のうち、2例はその後ゲムシタビンとイリノテカンによる化学療法を受けた。

考察/結論

本研究は、プラチナ既治療進行NSCLC患者に対するペメトレキセドとカルボプラチン併用サルベージ療法の有効性と安全性を前向きに評価した第II相試験である。本レジメンは、ORR 18.8%、OS中央値9.4ヶ月という結果を示し、毒性プロファイルは良好であった。これらの結果は、本レジメンがプラチナ既治療進行NSCLC患者において活性があり、忍容性が高いことを示唆している。

先行研究との違い: ペメトレキセド単剤療法は、第II相および第III相試験で二次治療として評価されており、ORRは4.5%から11.2%、TTP中央値は2.0-3.4ヶ月、OS中央値は約8ヶ月であった。これに対し、本研究で観察されたORR 18.8% (95% CI: 2.7-11.4) は、単剤ペメトレキセド (Hanna et al. JClinOncol 2004)やドセタキセル (Shepherd et al. JClinOncol 2000, Fossella et al. JClinOncol 2000)の二次治療における奏効率を上回る結果であった。また、Smit et al. JClinOncol 2009によるランダム化第II相試験の併用療法群と比較しても、本研究の奏効率は同等であった。これらの結果は、ペメトレキセドにカルボプラチンを追加することが、プラチナ既治療NSCLC患者のサルベージ療法において重要な役割を果たす可能性を示唆している。ただし、本研究のTTP中央値2.3ヶ月は、Smit et al. JClinOncol 2009の併用療法群の4.2ヶ月と比較してやや短い結果であり、患者背景の違い、特に女性患者の割合の少なさ (9.4%) や、プラチナフリー間隔 (PFI) が6ヶ月未満の患者の多さ (81.2%) が影響した可能性が考えられる。

新規性: 本研究は、プラチナ既治療進行NSCLC患者に対するペメトレキセドとカルボプラチンの併用サルベージ療法を前向きに評価した数少ない試験の一つであり、その有効性と安全性のプロファイルを明らかにした点で新規性がある。特に、組織型別解析では、腺癌患者でORR 36.4%と高く、扁平上皮癌患者で11.8%と対照的であり、ペメトレキセドの非扁平上皮特異的な有効性が再確認された。これはScagliotti et al. JClinOncol 2008の一次治療における知見と一致する。また、脳転移を有する患者2例のうち1例で部分奏効が認められ、生存期間も15.9ヶ月と13.6ヶ月であったことは、これまで報告されていない興味深い所見である。

臨床応用: 本レジメンのORR 18.8% (95% CI: 2.7-11.4) は、二次治療単剤療法と比較して良好であり、DCR 46.9%、OS中央値9.4ヶ月も歴史的対照より優れていた。安全性プロファイルも、グレード3/4の血液毒性(好中球減少18.8%、血小板減少18.8%)が管理可能であり、治療関連死がゼロであったことから、プラチナベース併用療法としては良好である。このことは、特に腺癌のNSCLC患者でプラチナフリー間隔 (PFI) が3ヶ月以上の場合、ペメトレキセドとカルボプラチンのサルベージ療法が、単剤のペメトレキセドやドセタキセルよりも高い奏効率を期待できる選択肢となることを示唆しており、臨床的意義は大きい。

残された課題: 本研究にはいくつかの限界がある。第一に、単群の小規模試験 (n=32) であるため、結果の一般化には注意が必要である。第二に、Simonの2段階デザインの第1段階でORR目標が境界域であったこと、第三に、扁平上皮癌の症例数が少ない (n=6) ため、このサブタイプに対する結論を導くことは困難である。第四に、バイオマーカー解析が実施されていないため、治療効果を予測する因子は不明である。第五に、本試験は免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) 時代以前に実施されたものであり、現代の治療シーケンスにおける本レジメンの位置付けは限定的である。現在では、一次治療でICIと化学療法が使用された後のサルベージ療法、またはICI不耐性例での選択肢として参考になる可能性がある。今後の検討課題として、より大規模なランダム化比較試験による検証、バイオマーカーの同定、およびICI治療後の最適なサルベージ化学療法の確立が挙げられる。

方法

本試験は、韓国の2施設で実施された前向き単群第II相試験である。Simonの2段階デザインが採用され、30例の患者を登録することとした。脱落率を10%と仮定し、総登録患者数は33例と設定された。第1段階で9例中1例以上の奏効が認められた場合、試験は継続されることになっていた。対象患者は、18歳以上75歳未満、組織学的に確診されたStage IIIBまたはIVの非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者で、根治的切除が不適応、かつ1回以上のプラチナベース化学療法後に病勢進行を経験した者とした。主要な適格基準には、ECOG Performance Status (PS) 0-2、RECIST (Response Evaluation Criteria In Solid Tumors) に基づく測定可能病変の存在、および十分な臓器機能(白血球数 ≥ 4000/μL、好中球数 ≥ 1500/μL、血小板数 ≥ 100,000/μL、ヘモグロビン ≥ 9g/dL、血清クレアチニン < 1.5 mg/dLまたはクレアチニンクリアランス > 60 mL/min、ビリルビン < 1.5 mg/dLまたはAST/ALTが基準値の2倍未満)が含まれた。脳転移患者は、脳病変が完全に除去されている場合に限り適格とした。除外基準には、過去5年以内の他の悪性腫瘍(治癒した非黒色腫皮膚癌または子宮頸部上皮内癌を除く)、活動性の制御されていない感染症、重度の心疾患、制御不能な高血圧、活動性の胃潰瘍または十二指腸潰瘍、糖尿病、過去6ヶ月以内の心筋梗塞などが含まれた。

治療レジメンは、ペメトレキセド 500 mg/m² を10分間の静脈内投与、およびカルボプラチン AUC 5 mg/mL/min を30分間の静脈内投与とし、いずれも21日サイクルのDay 1に実施した。最大6サイクルまで投与し、病勢進行または許容できない毒性が認められない限り継続した。全患者に対し、ペメトレキセドの血液毒性軽減のため、葉酸 (1000 μg/日) を初回ペメトレキセド投与の約1週間前から経口投与し、最終投与後3週間まで継続した。ビタミンB12 (1000 μg) は初回ペメトレキセド投与の少なくとも1週間前に筋肉内注射し、治療期間中約9週間ごとに反復投与した。デキサメタゾン4 mgを各化学療法投与の前日、当日、翌日に1日2回経口投与した。制吐剤の標準予防投与も実施した。G-CSF (Granulocyte Colony Stimulating Factor) の投与は、好中球減少イベントの治療または前サイクルで好中球減少イベントを経験した患者の予防として許可された。

用量調整は、好中球数 < 500/μLかつ血小板数 ≥ 50,000/μLの場合、ペメトレキセドを75%に減量し、カルボプラチンをAUC 4に減量した。血小板数 < 50,000/μLの場合、ペメトレキセドを50%に減量し、カルボプラチンをAUC 3に減量した。グレード3または4の血小板減少症または好中球減少症が2回の減量後に再発した場合、患者は試験から除外された。次サイクルは好中球数 ≥ 1500/μLかつ血小板数 ≥ 100,000/μLに回復した場合にのみ開始された。治療は前サイクルのDay 1から最大42日間遅延可能とした。グレード3または4の非血液毒性の場合も、グレード1以下に回復するまで治療を遅延し、その後75%の用量(カルボプラチンはAUC 4)で再開した。クレアチニンクリアランスはCockcroft-Gault式を用いて各カルボプラチン投与前に評価し、45 mL/min未満の場合は、その値に戻るまで次サイクルを遅延した。

治療効果は、RECIST v1.0に基づき、2サイクルごとに胸部CTまたは測定可能病変の放射線学的評価により判定された。完全奏効 (CR) は全ての病変の消失、部分奏効 (PR) は標的病変の最長径の合計がベースラインから30%以上縮小、病勢進行 (PD) は新病変の出現または最小径の合計から20%以上増大と定義された。安定疾患 (SD) はPRまたはPDの基準を満たさない場合とした。毒性はNCI-CTC (National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria) v3.0に従って記録された。

統計解析にはSPSSソフトウェアバージョン11.0を使用した。主要評価項目であるORRはSimonの2段階デザインに基づいて評価された。無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) はKaplan-Meier法を用いて推定された。