• 著者: Shepherd FA, Dancey J, Ramlau R, Mattson K, Gralla R, O’Rourke M, Levitan N, Gressot L, Vincent M, Burkes R, Coughlin S, Kim Y, Berille J
  • Corresponding author: Shepherd FA (Princess Margaret Hospital, Toronto, Ontario, Canada)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2000
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 10811675

背景

非小細胞肺癌 (NSCLC) は全肺癌の約80%を占め、進行例に対する一次白金製剤化学療法が広く実施されるようになるにつれて、一次化学療法後に増悪した良好なパフォーマンスステータス (PS) 患者への二次治療の役割が問われるようになった。当時の二次治療に関するエビデンスは、少数例の第I/II相試験に限られており、奏効率は15%未満のものが大半で、全生存期間 (OS) や1年生存率は十分に報告されていなかった。例えば、Fossella et al. 1997は、二次治療における奏効率の低さと生存期間データの不足を指摘している。Docetaxelは、7つの第II相試験 (合計312例、docetaxel 100 mg/m²) で、白金製剤前治療NSCLC患者における奏効率14〜24%、OS中央値7か月超、1年生存率25〜44%という有望な成績を示していた (Fossella et al. 1995, Gandara et al. 1997)。これらの成績を受け、docetaxelと最良支持療法 (BSC) を比較する大規模第III相試験が実施された。本試験 (TAX 317) は、二次治療において化学療法が積極的治療の選択肢として妥当であることを初めてランダム化比較試験で確立しようとしたものであり、その必要性が強く認識されていたが、その有効性と安全性のバランスについては未解明な点が残されていた。

目的

白金製剤を含む化学療法前治療歴のある進行NSCLC患者 (PS 0〜2) において、単剤docetaxel (100または75 mg/m²) による二次化学療法がBSCと比較してOSを有意に延長するかどうかを検証すること。また、奏効率、疾患進行までの期間 (TTP)、QoL (quality of life)、および臨床的有用性 (鎮痛薬使用、体重変化など) についても評価することを目的とした。

結果

患者背景・割り付け: Docetaxel群には合計104例 (100 mg/m² 49例、75 mg/m² 55例) が、BSC群には100例が割り付けられた (1例はNSCLC診断未確認のため除外され、解析対象は103例)。両群間で、性別、PS、病期、前治療数、前治療反応などの予後因子において良好なバランスが認められた (Table 1)。全体として、男性が約69% (docetaxel群) および65% (BSC群) を占め、年齢中央値は61歳であった。Stage IVの患者が約77% (docetaxel群) および81% (BSC群) を占め、PS 2の患者は両群で約24〜25%であった。2レジメン以上の前治療歴を持つ患者は、docetaxel群で26%、BSC群で24%であった。

奏効率: 測定可能病変を有する84例 (docetaxel群) のうち、6例 (7.1%) が部分奏効 (PR) を達成した (各用量群で3例ずつ)。Intent-to-treat解析 (測定可能病変および評価可能病変を有する患者を含む) における全奏効率 (ORR) は5.8% (6/103例) であった (Table 2)。奏効持続期間中央値は26.1週 (範囲 23.7〜31.0+週) であった。完全奏効 (CR) は認められなかった。病勢安定 (SD) はdocetaxel群の43%で認められた。無応答または評価不能の患者は、各群で病勢進行 (PD) が33%、評価不能 (NE) が18%であった。

生存期間 (OS): Docetaxel群全体とBSC群を比較すると、OS中央値は7.0か月 (95% CI 5.5〜9.0) vs 4.6か月 (95% CI 3.7〜6.0) であり、log-rank検定で有意な差が認められた (p=0.047) (Figure 1)。1年生存率はdocetaxel群で29%、BSC群で19%であった。用量別サブグループ解析では、docetaxel 75 mg/m²群と対応するBSC群の比較において、OS中央値は7.5か月 vs 4.6か月と有意に延長し (p=0.010)、1年生存率は37% vs 12%であった (χ²検定 p=0.003) (Figure 2B)。Cox多変量解析では、docetaxel 75 mg/m²治療がOS改善と有意に関連していることが示された (HR 0.484、p=0.004)。一方、docetaxel 100 mg/m²群と対応するBSC群の比較では、OS中央値は5.9か月 vs 4.6か月であり、有意差は認められなかった (p=0.780) (Figure 2A)。

疾患進行までの時間 (TTP): Docetaxel群全体とBSC群を比較すると、TTP中央値は10.6週 vs 6.7週と、docetaxel群で有意に長かった (p<0.001)。この効果は、docetaxel 100 mg/m²群 vs BSC群 (p=0.037) およびdocetaxel 75 mg/m²群 vs BSC群 (p=0.004) のいずれの用量レベルでも有意であった。

安全性 (毒性): Docetaxel 100 mg/m²群 (49例) では、治療開始後30日以内の死亡が6例 (12%) 発生し、うち5例は100 mg/m²関連の可能性が指摘された。Grade 3/4の好中球減少は、100 mg/m²群で86%、75 mg/m²群で67%に認められた (Table 3)。発熱性好中球減少は、100 mg/m²群で11例 (22.4%、うち3例が死亡) に発生したが、75 mg/m²群では1例 (1.8%、死亡0例) にとどまった。Grade 3/4の血小板減少は1%未満であった。Grade 3/4の貧血は、100 mg/m²群で16%、75 mg/m²群で5.5%に認められた。非血液毒性では、Grade 3/4の下痢が5%未満、Grade 3/4の無力症がdocetaxel群で18〜22%であったが、BSC群では28%と最も高かった (Table 4)。神経感覚毒性Grade 3/4は3%未満であった。Docetaxel 100 mg/m²群では、中央値サイクル数が2と少なく、投与継続が困難であった。一方、75 mg/m²群では90%のサイクルが3週毎に投与可能であった。BSC群でもGrade 3/4の無力症28%、感染21%、貧血11%など、疾患関連の毒性が認められた。

臨床的有用性 (QoL・症状): QoLの評価では、疼痛 (p=0.006) および疲労 (p=0.06) の両スケールでdocetaxel群が有利であった。オピオイド使用率はdocetaxel群で32%に対し、BSC群で49%と有意に低かった (p=0.01)。非オピオイド鎮痛薬の使用もdocetaxel群で39% vs BSC群で55%と有意差が認められた (p=0.03)。疼痛以外の腫瘍関連薬剤の使用もdocetaxel群で30% vs BSC群で49%と有意に少なかった (p<0.01) (Table 5)。姑息的放射線治療の必要性もdocetaxel群で26% vs BSC群で37%と低い傾向にあった (p=0.09)。PS悪化 (ベースラインから最終評価まで) の平均変化はdocetaxel群で0.56、BSC群で0.80であり、体重減少10%超の患者はdocetaxel群で7%、BSC群で15%であった。

考察/結論

本試験は、白金製剤前治療歴のある進行NSCLCにおいて、良好なPSを有する患者に対する二次化学療法が生存期間の延長をもたらすことを、ランダム化比較試験で初めて証明した。

先行研究との違い: 本研究でdocetaxel 100 mg/m²群において高い毒性死亡率 (試験前半で3例の治療関連死、合計5例の30日以内死亡) が認められた点は、同時期に実施されたTAX 320試験 (100 mg/m²群でこのような毒性死亡率を示さなかった) と対照的である。これは、本試験の患者集団がより重症であったこと (Stage IV 82%、PS 2が22%、3ライン以上の前治療が16%) が一因として考えられる。

新規性: Docetaxel 75 mg/m²では毒性プロファイルが改善し (発熱性好中球減少1.8%、毒性死亡0)、中央値4サイクルの投与が可能であり、OSの有意な延長 (OS中央値7.5か月、1年生存率37%) が達成されたことは、二次治療におけるdocetaxelの適切な用量を本研究で初めて確立したことを意味する。奏効率は7%と低いにもかかわらず生存延長が得られた点は、腫瘍縮小以外の機序 (疾患の安定化、症状緩和) による恩恵の可能性を示唆しており、これはこれまで報告されていない重要な知見である。

臨床応用: QoL解析では、docetaxel群で疼痛、疲労、鎮痛薬使用、PS悪化のいずれのパラメータにおいても有利な結果が示され、「臨床的有用性」という概念が二次治療の評価に重要であることが示された。これらの知見は、進行NSCLC患者の二次治療におけるdocetaxel 75 mg/m²の臨床応用を強く支持するものである。

残された課題: 今後の検討課題として、docetaxel 75 mg/m²の長期的な安全性プロファイルと、より多様な患者集団における有効性の検証が残されている。また、本試験は単剤療法とBSCの比較であり、その後の二次治療の進展を考慮すると、他の新規薬剤との比較検討も今後の方向性として重要である。Limitationとしては、試験途中でdocetaxelの用量変更が行われた点が挙げられる。

結論として、白金製剤前治療NSCLC患者に対するdocetaxel 75 mg/m²の二次治療は、BSCと比較してOSを有意に延長し (中央値7.5 vs 4.6か月、p=0.010;1年生存率37% vs 12%、p=0.003)、疼痛、疲労、鎮痛薬使用においても優れた臨床的有用性を示した。本試験は進行NSCLC患者への二次化学療法の標準化における歴史的転換点となり、その後のpemetrexed、erlotinibなどが後続する二次治療の比較試験 (TAX 320、BR.21など) の基盤を提供した。

方法

本研究は、1994年11月から1998年12月にかけて36施設で実施された多施設無作為化第III相試験 (RCT) である。適格基準は、NSCLCの組織学的または細胞学的確認、白金製剤を含む化学療法1レジメン以上の前治療歴 (パクリタキセル前治療歴は除外)、ECOG PS 0〜2、測定可能または評価可能な病変、適切な血液・肝・腎機能であった。有症状または未制御の脳転移、およびGrade 2を超える末梢神経障害を有する患者は除外された。患者はPSと前治療に対する最良奏効で層別化され、1:1の比率で無作為に割り付けられた。試験前半ではdocetaxel 100 mg/m²群 (n=49) に、安全性データ監視委員会による毒性死亡率上昇の確認後にはdocetaxel 75 mg/m²群 (n=55) に割り付けられた。BSC群 (n=100) は、2つのdocetaxelコホートに対応する形で設定された。主要評価項目 (primary endpoint) はOS (log-rank検定) であった。副次評価項目には、奏効率、奏効期間、QoL (Lung Cancer Symptom Scale、EORTC QLQ-LC)、および臨床的有用性が含まれた。本研究のNCT番号はN/Aである。