- 著者: Kyoichi Kaira, Hisao Imai, Hiroshi Kagamu
- Corresponding author: Kyoichi Kaira (Department of Respiratory Medicine, Comprehensive Cancer Center, International Medical Center, Saitama Medical University, Hidaka, Saitama, Japan)
- 雑誌: Cancers
- 発行年: 2021
- Epub日: 2021-03-03
- Article種別: Review
- PMID: 33802298
背景
胸腺癌 (Thymic carcinoma; TC) は、前縦隔に発生する稀少な悪性腫瘍であり、その予後は不良である。早期発見されれば外科的切除が有効であるが、転移性または再発性のTCに対する確立された標準治療は未だ存在しない。組織学的には扁平上皮癌の特徴を示し、肺扁平上皮癌に類似する点が指摘されている。これまでの治療選択肢としては、platinum-based化学療法が主であり、ADOC (doxorubicin, cisplatin, vincristine, cyclophosphamide)、CODE (adriamycin, cisplatin, vincristine, etoposide)、carboplatin+amrubicin、carboplatin+paclitaxel、cisplatin+docetaxel、cisplatin+irinotecanなどが用いられてきた。Okuma et al. (2015) のシステマティックレビューおよびプール解析 (206例、10試験) では、anthracycline系の客観的奏効率 (ORR) が41.8%であったのに対し、非anthracycline系では40.9%と両者に有意差は認められなかった (p=0.91)。しかし、cisplatin系のORRは53.6%であり、carboplatin系の32.8%と比較して有意に優越していた (p=0.0029)。これらの化学療法は一定の奏効を示すものの、生存期間の延長に対する利益は限定的であり、化学療法後の標準治療は依然として未確立のままである。
近年、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) であるPD-1/PD-L1阻害薬 (nivolumab, pembrolizumab, atezolizumabなど) は、非小細胞肺癌 (NSCLC) において標準治療の一角を担うようになり、その治療効果は劇的である。例えば、Reck et al. NEnglJMed 2016 や Gandhi et al. NEnglJMed 2018、Socinski et al. NEnglJMed 2018、Carbone et al. NEnglJMed 2017 などの研究により、PD-1阻害薬単剤療法または化学療法との併用療法が一次治療として確立された。さらに、Garon et al. JClinOncol 2019 や Gettinger et al. JClinOncol 2018 の報告では、PD-1阻害薬治療後の5年生存率がメラノーマで34.2%、腎細胞癌で27.7%、NSCLCで15.6%に達し、長期生存者の存在が確認されている。
TCは扁平上皮癌様の組織所見を有し、PD-L1高発現を示すことが多いことから、ICI療法への転用が期待されてきた。しかし、TCにおけるICIの承認は未だ達成されていない。これは、TCが稀少疾患であることに加え、胸腺由来の免疫寛容破綻 (自己免疫素因) がICI治療における特異な免疫関連有害事象 (irAE) の発生リスクを高める可能性があり、治療開発には慎重なアプローチが求められるためである。特に、Kondo et al. AnnThoracSurg 2003 の報告でも示されているように、胸腺腫瘍は自己免疫疾患との関連が深く、ICI導入によるirAEの懸念は大きい。したがって、TCに対するICIの有効性と安全性を詳細に評価し、治療戦略を確立することが喫緊の課題として残されている。これまでの研究では、TCにおけるICIの有効性に関するデータが不足しており、特に大規模な前向き試験の報告は限られているため、その臨床的意義は未解明な部分が多い。
目的
本レビューの目的は、進行胸腺癌 (TC) に対するPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法の臨床的有効性と安全性を包括的に評価することである。具体的には、以下の4点に焦点を当てる。
(1) 3つの主要な前向き第II相試験のデータを基に、PD-1/PD-L1阻害薬単剤療法における客観的奏効率 (ORR)、病勢コントロール率 (DCR)、無増悪生存期間 (PFS) 中央値、全生存期間 (OS) 中央値といった有効性指標、および免疫関連有害事象 (irAE) の発生頻度と種類を定量的に分析し、その治療効果をベンチマークとして提示する。
(2) PD-L1発現がPD-1/PD-L1阻害薬単剤療法の奏効予測因子として機能する可能性を評価するため、各試験におけるPD-L1発現と治療効果の関連性に関するサブグループ解析の結果を詳細に検討する。
(3) 実臨床におけるPD-1/PD-L1阻害薬の使用経験を補完するため、複数の症例報告から得られた治療効果、irAE、および長期生存に関するシグナルを抽出し、その臨床的意義を考察する。
(4) 胸腺癌に対する免疫療法の今後の治療開発の方向性を提示する。特に、チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) との併用療法や、IL-15スーパーアゴニスト (SC-C101) などの新規免疫調節薬との組み合わせなど、現在進行中の臨床試験の概要を概説し、将来的な治療戦略の可能性を探る。
結果
文献選択の概要: MEDLINE/PubMedを用いた検索により、最終的に15報の論文が本レビューの分析対象として包含された。これらは、前向き第II相試験3件、原著論文4件、症例報告6件、その他2件に分類される。3つの主要な前向き第II相試験は、韓国 (Cho et al.)、米国 (Giaccone et al.)、日本 (Katsuya et al.) でそれぞれ独立して実施されており、各試験の患者背景 (人種、前治療内容、放射線療法歴など) には大きな差異が認められた (Table 1)。
Pembrolizumab第II相試験 (Cho et al.、韓国): 難治性または再発性の胸腺上皮腫瘍33例 (TC 26例、胸腺腫7例) を対象とした本試験では、TC群26例の主要解析結果として、ORR 19.2%、DCR 73.1%、PFS中央値6.1ヶ月、OS中央値14.5ヶ月が報告された。全例が韓国人 (アジア人) であった。TC患者の46.2%が縦隔原発巣への放射線治療歴を有し、34.6%が根治的手術歴を有していた。また、42.3%の患者が化学療法後の初回免疫療法としてpembrolizumabを投与された。 irAEsとしては、Grade 1-2の甲状腺炎3.8%、掻痒11.5%、皮疹7.7%が認められた。Grade 3-4のirAEsでは、肝炎7.7%、重症筋無力症 (Myasthenia gravis; MG) 7.7%、亜急性ミオクローヌス3.8%が発生した。TC患者においてもMGが7.7%と高頻度で発生したことは、胸腺由来の免疫寛容破綻がTCでも残存することを示唆する。胸腺腫群ではORR 28.6%、DCR 100%と、TC群よりも良好な成績であった。 PD-L1発現解析は24例で実施され、高発現 (TPS≥50%) が14例 (58.3%) に認められた。高発現群14例中5例 (35.7%) が部分奏効 (PR) を達成したのに対し、低発現群10例では奏効例が0%であり、PD-L1高発現と奏効の間に有意な相関が示された (p=0.034)。PD-L1発現とirAE発生頻度の間に相関は認められず、PD-L1 mRNA発現とタンパク発現の間には有意な相関が確認された。
Pembrolizumab第II相試験 (Giaccone et al.、米国): TC患者40例を対象とした本試験 (追跡期間中央値20ヶ月) では、組織型は扁平上皮癌が48%を占めた。人種構成はアジア人10%、白人82%、その他8%であった。放射線治療歴は58%、胸腺切除術歴は52%の患者に認められた。ORRは22.5% (完全奏効CR 1例、PR 8例)、病勢安定 (SD) 21例 (53%)、病勢進行 (PD) 10例 (25%) であった。pseudoprogressionは認められなかった。DCRは75.0%であり、PFS中央値4.2ヶ月、OS中央値24.9ヶ月、1年PFS率29%、1年OS率71%であった。 重篤なirAE (Grade 3/4) としては、AST上昇およびALT上昇がそれぞれ13%と最多であった。合計6例 (15%) の患者で1種類以上の重篤なirAEが発生した。特に、多発筋炎と心筋炎の合併が2例 (5%) に認められ、高用量ステロイド療法を要した。これは他のがん種での発生率 (<1%) と比較して顕著に高い頻度である。Myalgia/myositisは8%に発生した。 PD-L1サブ解析は37例で評価され、高発現 (TPS≥50%) は10例 (25%) に認められた。この高発現群の10例中6例 (60%) でCR/PRが達成され (p=0.005)、低発現群27例中23例でPDであった。Post-hoc解析では、PD-L1高発現群のPFS中央値が24ヶ月であったのに対し、低発現群では2.9ヶ月と顕著な差が認められた。OSについても、高発現群では未到達であったのに対し、低発現群では15.5ヶ月であった。さらに、40例中5例が2年間の治療を完遂し、そのうち4例は追跡時点で4年以上治療を継続していたことから、長期奏効の可能性が示唆された。
Nivolumab第II相試験 (Katsuya et al.、PRIMER study、日本): 切除不能または再発TC患者15例を対象とした本試験 (追跡期間中央値14.1ヶ月) では、組織型は扁平上皮癌が13例を占めた。放射線治療歴は73.3% (最多)、手術歴は20%の患者に認められた。主要評価項目であるORRは0%であり、主要エンドポイントは未達成であった。DCRは73.3% (SD 11例、PD 4例) であり、PFS中央値3.8ヶ月、OS中央値14.1ヶ月、1年PFS率9%、1年OS率60%であった。扁平上皮癌サブグループ (13例) では、PFS中央値3.8ヶ月、OS中央値14.1ヶ月であった。放射線治療歴のある7例のサブグループでは、PFS中央値3.8ヶ月、OS中央値12.7ヶ月であった。ORRが0%であったことは、Cho et al.およびGiaccone et al.の試験との大きな差異であり、人種 (全例日本人)、放射線治療歴の高頻度 (73.3%)、前治療内容などが奏効に影響した可能性が考えられる。irAEとしては、Grade 3肝酵素上昇が1例、Grade 2副腎不全が1例 (入院を要した) に認められた。
Nivolumab探索的研究 (Ak et al.): 切除不能または再発の胸腺上皮腫瘍46例 (胸腺腫32例、TC 14例) に対するnivolumab投与経験が報告された。このうちTC患者4例が対象とされた。患者背景は、TC 1が60歳男性、前治療3線、PD-L1 60%;TC 2が26歳男性、前治療1線、PD-L1 100%;TC 3が67歳女性、前治療1線、PD-L1 100%;TC 4が73歳女性、前治療1線、PD-L1 50%であった。TC 2とTC 4でPRが達成され (PFS各2.0ヶ月、5.8ヶ月)、TC 1はSD (PFS 3.2ヶ月) であった。TC 3はGrade 4の失読症および運動神経障害という重篤なirAEにより、nivolumab 1サイクル後に中止された。PRを達成した2例はいずれもPD-L1発現が50%以上であり、高PD-L1発現と奏効の相関を支持する結果であった。
症例報告のエビデンス: 5グループの症例シリーズおよび症例報告が包含された (Table 3)。
- Jin et al. (2症例): 症例1は2nd lineでnivolumab単剤投与後 (40サイクル、SD)、5th lineでnivolumab+nab-paclitaxel併用によりPRを達成し、38ヶ月継続された。nivolumab開始からのOSは3年以上であった。症例2は2nd lineでpembrolizumab単剤投与 (2サイクル、PD) 後、3rd lineでpembrolizumab+anlotinib併用 (16サイクル、SD) を経て、4th lineでpembrolizumab+gemcitabine併用によりPRを達成した。pembrolizumabおよびその併用療法の総期間は23ヶ月であった。
- Uchida et al. (4症例): nivolumabを2nd-3rd lineで投与された4症例のうち、Case 1-3がPRを達成した (2nd lineでの2症例はいずれも4〜5サイクル後にPR)。Case 4はSDであった。
- Yang et al. (1症例): 4th lineのnivolumabでPRを達成した。
- Cafaro et al. (1症例): 心機能障害を合併した重度前治療例に4th lineのpembrolizumabが投与され、18サイクルSDを維持した。
- Isshiki et al. (1症例): 高PD-L1発現TCに対して、carboplatin+nab-paclitaxel 3サイクル後の2nd line pembrolizumabでPRを達成した。
TCにおけるPD-L1発現の臨床病理学的意義: TCにおけるPD-L1陽性率は、研究によって23%から92%と大きな幅があるものの、平均70%前後で高発現が一貫して示されており、胸腺腫 (平均23%) と比較して有意に高いことが報告されている (Katsuya et al.の報告ではp<0.001)。 しかし、予後への影響については各研究で矛盾する結果が示されている。Katsuya et al.、Wei et al.、Weissferdt et al.、Duan et al.らの4研究では、PD-L1発現と予後 (OS、PFS) の間に有意な相関は認められなかった。一方、Yokoyama et al.は低PD-L1発現が有意な予後不良因子であると報告し、Funaki et al.は高PD-L1発現が外科切除後のPFSおよびOSの悪化と有意に関連すると報告しており、互いに相反する結果となっている。Arbour et al.やPadda et al.の研究は、胸腺腫全体での高PD-L1発現傾向を確認した。 このような矛盾の背景には、(1) PD-L1抗体クローンの違い (22C3、28-8、E1L3Nなど)、(2) スコアリング基準の不統一 (TPS 50%カットオフ vs 1%カットオフなど)、(3) 各研究のサンプルサイズが小さく、稀少疾患特有の問題があることが挙げられる (Table 4)。治療予測バイオマーカーとしては、Cho et al.およびGiaccone et al.の両試験でPD-L1 TPS≥50%群における顕著な奏効率向上が確認されており、予後マーカーとしての一貫性はないものの、治療反応予測因子としての可能性は示唆される。
進行中の臨床試験: 現在、TCに対するICI単剤療法の第II相試験が3件進行中である。Atezolizumab単剤試験 (NCT04321330、34例) は、ORRを主要評価項目とし、PFS、OS、DOR、DCR、irAE、PD-L1およびTMB発現の分布を副次評価項目としている。Nivolumab単剤試験 (NCT03134118、55例、B3型胸腺腫を含む) は、6ヶ月PFS率を主要評価項目とし、PFS、OS、ORR、DCR、DORを副次評価項目としている。Avelumab単剤試験 (NCT03076554、55例) は、ORRと安全性を主要評価項目とし、免疫関連PFS、OS、DORを副次評価項目としている。 TKIとICIの併用療法に関する試験も複数進行中である。Pembrolizumab+sunitinib併用試験 (NCT03463460、40例) は、ORRを主要評価項目とし、安全性、PFS、OSを副次評価項目としている。探索的検討として、sunitinibが腫瘍および末梢血中のPD-L1発現、腫瘍浸潤リンパ球 (TILs) の増加、骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の減少に寄与するかどうかも評価される。CAVEATT試験 (avelumab+axitinib、33例、TC/B3型胸腺腫) は、ORRを主要評価項目としている。Nivolumab+vorolanib (VEGFR/PDGFR阻害薬) 併用試験 (NCT03583086、177例、前治療胸部腫瘍) は、安全性とORRを主要評価項目としている。Pembrolizumab±SC-C101 (IL-15スーパーアゴニスト融合タンパク) 併用試験 (NCT04234113、96例、前治療固形腫瘍) は、用量制限毒性 (DLT) と治療関連有害事象を主要評価項目としている。これらの進行中の臨床試験は、TC治療の将来的な展望を提供するものと期待される。
考察/結論
本総説は、進行胸腺癌 (TC) に対するPD-1阻害薬単剤療法の有効性として、ORR約20%、DCR約73%、PFS中央値約4ヶ月、OS中央値14-25ヶ月というベンチマーク数値を提示した。これらの成績は、CheckMate 017/057試験における前治療非小細胞肺癌 (NSCLC) に対するnivolumabの成績 (ORR 19-20%、OS 9-12ヶ月) と比較しても遜色なく、OSの面ではやや優れる可能性も示唆される。しかし、Katsuya et al.の試験 (ORR 0%) のみが他の2試験 (Cho et al. JClinOncol 2019、Giaccone et al. LancetOncol 2018) から大きく乖離しており、この差異は、放射線治療歴の高頻度 (73.3%)、人種差 (全例日本人)、病理サブタイプなどの患者背景が奏効に影響した可能性が考えられる。
PD-L1高発現 (TPS≥50%) は、Cho et al. (p=0.034) およびGiaccone et al. (p=0.005) の両試験で一貫して奏効予測因子として機能することが示された。特にGiaccone et al.のpost-hoc解析では、PD-L1高発現群のPFS中央値が24ヶ月であったのに対し、低発現群では2.9ヶ月と顕著な差が認められ、OSも高発現群では未到達、低発現群では15.5ヶ月と大きな差が確認された。この結果は、PD-L1発現がTCにおけるICI治療の反応性を予測する上で重要なバイオマーカーとなる可能性を示唆する。しかし、TCでは70-80%の患者がPD-L1高発現であるため、この閾値のみでの患者選別効率は限定的である。より精度の高い患者層別化のためには、腫瘍変異負荷 (TMB)、AIRE発現、腫瘍免疫微小環境の構成要素など、他のバイオマーカーとの組み合わせが必要であると考えられる。
TCに特有のirAEとして、多発筋炎・心筋炎 (Giaccone et al.の試験で5%、他のがん種では<1%) や重症筋無力症 (Cho et al.の試験で7.7%) の高頻度発生が浮き彫りになった。これは、胸腺腫瘍が自己免疫疾患と関連が深いという背景を反映している可能性があり、ICI治療導入前のAChR (アセチルコリン受容体) 抗体・titin抗体スクリーニングや、治療中の心筋炎モニタリングの重要性が確認される。
今後の治療開発の方向性として、チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) とICIの併用療法が注目される。SunitinibやaxitinibなどのTKIは、骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の減少やPD-L1発現の増加、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) の増加を介してICIとの相乗効果をもたらす可能性が示唆されている。また、IL-15スーパーアゴニストなどの新規免疫調節薬との組み合わせも期待される。これらの併用療法は、現在複数の臨床試験で検討されており、TC患者の治療成績向上に貢献する可能性がある。PD-L1評価における抗体クローンやスコアリング基準の標準化は、残された課題である。本研究で初めて、TCにおけるICI単剤療法の有効性とirAEプロファイルを統合的に評価し、PD-L1発現の予測的意義を明確にしたことは新規性がある。これらの知見は、TCの臨床応用におけるICIの適切な使用と、今後の治療戦略の策定に臨床的意義をもたらす。
方法
本レビューでは、MEDLINEおよびPubMedデータベースを用いて、2018年3月から2020年11月までの期間に公開された英語文献を検索した。検索キーワードには、「thymic carcinoma」と「immunotherapy」、「immune checkpoint inhibitor」、「PD-1」、「nivolumab」、「pembrolizumab」、「atezolizumab」、「durvalumab」、「avelumab」などの組み合わせを用いた。初期検索では、合計12,044件の論文がヒットし、そのうち「thymic carcinoma」と「immunotherapy」の組み合わせで372件が抽出された。さらに詳細なキーワードの組み合わせにより、関連性の高い論文を絞り込んだ。
文献の選択基準は、胸腺癌と免疫チェックポイント阻害薬の関連性に関するレビュー、臨床研究、症例報告を含む全ての出版物とした。会議抄録や予備的な結果は除外した。除外基準としては、2×2分割表の構築に十分なデータがない場合、および同一患者集団に関する重複研究が挙げられる。最終的な包含決定は、論文の全文を精査した上で実施された。
最終的に、372件の初期抽出論文から、本レビューの分析対象として15件の論文が選択された。これらは、レビュー記事3件、原著論文4件、症例報告6件、その他2件に分類された。特に、PD-1阻害薬単剤療法に焦点を当てた3つの前向き第II相臨床試験 (Cho et al.、Giaccone et al.、Katsuya et al.) のデータが主要な分析対象となった。これらの試験は、それぞれ韓国、米国、日本で独立して実施されており、患者背景(人種、前治療内容、放射線療法歴など)に差異があるため、その結果の比較検討は重要である。また、nivolumabに関する探索的研究 (Ak et al.)、および5つの症例報告 (Jin et al.、Cafaro et al.、Uchida et al.、Yang et al.、Isshiki et al.) も分析対象に含めた。さらに、胸腺癌におけるPD-L1発現と予後の関連性を検証した複数の研究も整理し、PD-L1が奏効予測因子として機能する可能性を評価した。統計手法に関する具体的な記述は原論文にはないが、各試験ではORR、DCR、PFS、OSなどの主要評価項目が報告され、PD-L1発現と奏効の関連性についてはFisher’s exact testなどの統計解析が用いられていると推測される。