• 著者: Garon EB, Hellmann MD, Rizvi NA, Carcereny E, Leighl NB, Ahn MJ, Peters S, Soto Parra HJ, Naidoo J, Gubens MA, Awad MM, Ramalingam SS, Yang JCH, Aguilar E, Novello S, Chul Cho B, Laurie SA, Coupez C, Chen AC, Gandhi L
  • Corresponding author: Edward B. Garon, MD, MS (David Geffen School of Medicine, University of California, Los Angeles, CA, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2019
  • Epub日: 2019-06-02
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31154919

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) 患者の予後は歴史的に不良であり、米国における遠隔転移を有するNSCLC患者の5年生存率は2008年から2014年の期間で5.5%に過ぎなかった (Noone et al. 2018)。近年、免疫チェックポイント阻害薬、特にPD-1/PD-L1経路を標的とする薬剤の導入により、NSCLC治療は大きな進歩を遂げた。Pembrolizumab (抗PD-1 IgG4モノクローナル抗体) は、PD-1受容体とPD-L1/PD-L2リガンドとの相互作用を阻害することで、腫瘍に対する免疫応答を促進する薬剤である。

PembrolizumabのNSCLCにおける最初の臨床評価は、Phase Ib試験であるKEYNOTE-001で実施され、PD-L1発現量と相関する抗腫瘍活性が示された (Garon et al. NEnglJMed 2015)。この結果に基づき、PD-L1腫瘍比例スコア (TPS) 50%以上の患者を対象としたKEYNOTE-024試験 (Reck et al. NEnglJMed 2016)や、PD-L1 TPS 1%以上の患者を対象としたKEYNOTE-010試験 (Herbst et al. Lancet 2016)などの後続のランダム化比較試験で、pembrolizumabの優越性が示され、承認へと繋がった。また、pembrolizumabとプラチナ併用化学療法の組み合わせも、KEYNOTE-189 (Gandhi et al. NEnglJMed 2018)やKEYNOTE-407 (Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018)試験で標準治療として確立されている。

しかし、これらの試験の追跡期間は比較的短く、抗PD-1療法によるNSCLC患者の長期生存、特に5年を超える生存がどの程度達成可能であるかは未解明な点が多かった。従来の化学療法における進行NSCLCの5年OS率が1%から5%程度であることを考慮すると、免疫チェックポイント阻害薬がこの長期生存率をどれほど改善できるかは重要な課題であった。KEYNOTE-001試験は、進行NSCLC患者を対象にpembrolizumabを最初に評価したPhase I試験であり、最も長期の追跡データを提供できる唯一の試験として位置づけられた。この長期追跡データは、免疫療法がNSCLC治療のパラダイムを根本的に変え得るかどうかの決定的なエビデンスとなり得る。特に、治療歴の有無やPD-L1発現量に応じた長期生存成績の評価は、個別化医療の推進において極めて重要である。これまでの報告では、免疫関連有害事象 (irAE) の長期安全性プロファイルに関する情報も不足しており、長期投与における新たな遅発性毒性の有無も確認する必要があった。

目的

本研究の目的は、Phase Ib KEYNOTE-001試験の進行NSCLCコホート (n=550) におけるpembrolizumab単剤療法の5年全生存期間 (OS) データを報告することである。具体的には、治療歴の有無 (治療歴なし vs 前治療歴あり) およびPD-L1発現量 (TPS 50%以上、1-49%、1%未満) 別に長期生存成績を評価する。さらに、2年以上pembrolizumab治療を継続した患者 (long-term responders) の5年OS成績を記述し、治療中止後の持続的な効果の可能性を検討する。加えて、長期追跡におけるpembrolizumabの安全性プロファイルを評価し、新たな遅発性毒性の有無を確認することも目的とした。本研究は、進行NSCLC患者におけるpembrolizumab単剤療法の長期的な有効性と安全性を包括的に評価し、個別化治療戦略の最適化に資するエビデンスを提供することを目指す。

結果

患者背景と治療期間: 2012年5月9日から2014年7月13日の間に、合計550名の患者が登録された (治療歴なし群 n=101、前治療歴あり群 n=449)。データカットオフ日である2018年11月5日時点での追跡期間中央値は60.6ヶ月 (範囲 51.8〜77.9ヶ月) であった。治療期間中央値は3.3ヶ月 (範囲 1日〜75.9ヶ月) であった。解析時点で100名の患者が生存しており、治療歴なし群の14名 (14%) と前治療歴あり群の46名 (10%) の合計60名が2年以上のpembrolizumab治療を継続した。

5年OS (主要長期エンドポイント): 全体で450名 (82%) の患者が死亡した。治療歴なし群のOS中央値は22.3ヶ月 (95% CI 17.1〜32.3ヶ月) であり、5年OS率は23.2% (95% CI 16.4〜31.0%) であった (Figure 1A)。前治療歴あり群のOS中央値は10.5ヶ月 (95% CI 8.6〜13.2ヶ月) であり、5年OS率は15.5% (95% CI 12.0〜19.3%) であった (Figure 1B)。治療歴なし群における5年OS率23.2%は、従来の化学療法の歴史的5年OS率 (1〜5%) と比較して顕著に高い成績を示した。

PD-L1発現量別の5年OS: PD-L1発現量とOSの間に明確な正の相関が認められた。治療歴なし群において、PD-L1 TPS 50%以上の患者 (n=42) のOS中央値は35.4ヶ月 (95% CI 20.3〜63.5ヶ月) であり、5年OS率は29.6%であった (Figure 1C)。PD-L1 TPS 1-49%の患者ではOS中央値19.5ヶ月 (95% CI 10.7〜26.3ヶ月)、5年OS率15.7%であった。PD-L1 TPS 1%未満の治療歴なし患者は数が少なすぎた (n=12) ため、OSの評価は困難であった。前治療歴あり群において、PD-L1 TPS 50%以上の患者 (n=71) のOS中央値は15.4ヶ月 (95% CI 10.6〜18.8ヶ月) であり、5年OS率は25.0%であった (Figure 1D)。PD-L1 TPS 1-49%の患者ではOS中央値8.5ヶ月 (95% CI 6.0〜12.6ヶ月)、5年OS率12.6%であった。PD-L1 TPS 1%未満の患者ではOS中央値8.6ヶ月 (95% CI 5.5〜10.6ヶ月)、5年OS率3.5%と低率であった。

客観的奏効割合 (ORR) と奏効持続期間 (DOR): 治療歴なし群のORRは41.6% (95% CI 31.9%〜51.8%) であり、前治療歴あり群のORRは22.9% (95% CI 19.1%〜27.1%) であった (Table 3)。治療歴なし群では3名 (3.0%)、前治療歴あり群では5名 (1.1%) が完全奏効 (CR) を達成した。奏効は治療開始後比較的早期に発現し、奏効を経験した145名中、105名 (72%) が3ヶ月以内、133名 (92%) が6ヶ月以内に奏効を達成した。奏効までの期間中央値は、治療歴なし群で2.1ヶ月 (範囲 1.7〜9.5ヶ月)、前治療歴あり群で2.1ヶ月 (範囲 1.6〜14.7ヶ月) であった。奏効を達成した患者におけるDOR中央値は、治療歴なし群で16.8ヶ月 (範囲 2.1+〜55.7+ヶ月)、前治療歴あり群で38.9ヶ月 (範囲 1.0+〜71.8+ヶ月) であり、持続的な奏効が確認された (Table 3)。

2年以上治療継続者 (long-term responders) の転帰: 2年以上pembrolizumab治療を継続した患者は、治療歴なし群で14名、前治療歴あり群で46名の合計60名であった。これらの患者における5年OS率は、治療歴なし群で78.6%、前治療歴あり群で75.8%という非常に高い成績を示した。2年以上治療を継続した患者のうち、治療歴なし群の14名中12名 (86%)、前治療歴あり群の46名中42名 (91%) が客観的奏効を経験していた。このサブグループにおけるDOR中央値は、治療歴なし群で52.0ヶ月 (範囲 10.2〜55.7+ヶ月) であり、前治療歴あり群では未到達であった (範囲 12.5〜71.8+ヶ月)。

安全性プロファイル: 治療関連有害事象 (AE) は550名中388名 (71%) に発生した。Grade 3〜5の治療関連AEは69名 (13%) に認められた。3年時点の解析以降、新たに発生したGrade 3〜5の治療関連AEは3件のみであり (高血圧、耐糖能異常、過敏症反応)、いずれもGrade 3で回復した。Grade 4または5の遅発性新規治療関連AEは認められなかった。治療関連の重篤なAEは50名 (9%) に発生し、31名 (6%) が治療中止に至った。治療関連死は2例 (0.4%) であり、間質性肺疾患と心肺停止がそれぞれ1例であった。免疫関連AEは92名 (17%) に発生し、最も一般的なものは甲状腺機能低下症 (9%)、肺炎 (5%)、甲状腺機能亢進症 (2%) であった。Grade 3〜5の免疫関連AEは21名 (4%) に発生し、肺炎 (n=12, 2%) が最も多かった。長期追跡において、新たな遅発性毒性シグナルは認められず、pembrolizumabの安全性プロファイルは長期にわたり許容可能であることが確認された (Figure 3)。

考察/結論

KEYNOTE-001試験の5年追跡結果は、進行NSCLC患者に対するpembrolizumab単剤療法が、治療歴の有無にかかわらず持続的な抗腫瘍活性と高い5年OS率をもたらすことを初めて示した。治療歴のない患者の5年OS率は23.2% (95% CI 16.4〜31.0%)、前治療歴のある患者では15.5% (95% CI 12.0〜19.3%) であった。これらの成績は、従来の化学療法の歴史的5年OS率 (1〜5%) と比較して顕著な改善であり、免疫療法が進行NSCLC患者の長期生存を可能にするというパラダイムシフトを明確に裏付けるものである。

先行研究との違い: 本研究は、pembrolizumab単剤療法における最長期間の追跡データを提供し、これまでのランダム化比較試験 (Herbst et al. Lancet 2016, Reck et al. NEnglJMed 2016, Mok et al. Lancet 2019)では示されなかった5年という長期的な有効性データを提供した点で、これまでの報告と異なる。特に、PD-L1 TPS 50%以上の患者では、治療歴のない患者で29.6%、前治療歴のある患者で25.0%という高い5年OS率を達成しており、これは化学療法単独では達成不可能であった成績である。

新規性: 本研究で初めて、2年以上pembrolizumab治療を継続できた患者の約4分の3が5年生存を達成するという驚異的な結果が示された。治療中止後も生存が継続する患者の存在は、免疫記憶による治療後持続効果を強く示唆する新規の知見である。このことは、免疫チェックポイント阻害薬が単なる病勢コントロールに留まらず、一部の患者において疾患の長期的な寛解をもたらす可能性を示唆する。

臨床応用: 本知見は、進行NSCLC患者におけるpembrolizumabの長期的な臨床的有用性を強く支持する。特にPD-L1高発現患者における高い長期生存率は、PD-L1発現が治療選択の重要なバイオマーカーであることを改めて強調する。この結果は、PD-L1 TPS 50%以上を対象としたKEYNOTE-024試験 (Reck et al. NEnglJMed 2016)や、PD-L1発現量にかかわらず化学療法との併用療法を評価したKEYNOTE-189試験 (Gandhi et al. NEnglJMed 2018)などの後続Phase 3試験の設計根拠となった。長期安全性プロファイルも許容可能であり、新たな遅発性毒性がほとんど認められなかったことは、長期投与における臨床現場での安心材料となる。

残された課題: 本研究は単群のPhase I試験であるため、比較対照群がない点がlimitationとして挙げられる。そのため、pembrolizumabによる臨床的ベネフィットの絶対的な大きさを定量化することは困難である。また、PD-L1発現が低い患者における長期生存のメカニズムや、長期生存者をさらに特定するための探索的バイオマーカー (腫瘍変異負荷や腫瘍浸潤リンパ球の特性など) の同定は今後の検討課題である。EGFR変異陽性患者におけるpembrolizumabの有効性は低い傾向が示されており、これらの患者群に対する最適な治療戦略の確立も今後の研究方向性となる。

方法

本研究は、Phase Ib多コホート試験であるKEYNOTE-001 (NCT01295827) のNSCLCコホートにおける長期追跡解析である。対象患者は、局所進行性または転移性NSCLCと診断され、免疫関連奏効基準 (irRC) に基づく測定可能病変を有し、Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) パフォーマンスステータスが0または1であった。PD-L1発現評価のため、22C3抗体を用いた免疫組織化学 (IHC) 検査による腫瘍生検サンプルが必須とされた。

患者はpembrolizumab 2 mg/kgを3週間ごと、または10 mg/kgを2週間ごと、または3週間ごとに静脈内投与された。用量探索コホートと拡大コホートの有効性および毒性は類似していたため、治療歴なし群と前治療歴あり群で用量群をプールして解析した。治療は病勢進行、許容できない毒性、治験責任医師の判断、または患者の同意撤回まで継続された。2016年4月のプロトコル改訂後、全ての患者はpembrolizumab 200 mgを3週間ごとに投与するレジメンに切り替えられ、24ヶ月間の治療を完了し、部分奏効または安定病変を達成した患者は治療を中止することが可能となり、病勢進行/再発時に治療を再開できることとされた。

主要評価項目は客観的奏効割合 (ORR) であったが、本解析では副次評価項目であるOSと奏効期間 (DOR) に焦点を当てた。画像評価は最初の2年間は9週間ごと、3年目は16週間ごと、それ以降は6ヶ月ごとに実施された。奏効評価は、独立中央判定によるRECIST version 1.1 (Eisenhauer et al. EurJCancer 2009) (2016年4月まで) および治験責任医師評価によるirRC (Wolchok et al. ClinCancerRes 2009)に基づいて実施された。本解析では、治験責任医師評価によるirRCに基づく奏効が報告されている。

OSおよびDORはKaplan-Meier法を用いて推定された。追跡期間中央値は、全患者において無作為化/初回治療からデータカットオフまでの期間として算出された。PD-L1発現は、腫瘍細胞の膜染色のみを評価する臨床アッセイを用いて、TPS (Tumor Proportion Score) に基づいて層別化された。安全性評価は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) version 4.0を用いて実施された。統計解析には、ORRの95%信頼区間 (CI) の推定には二項正確法が用いられた。PD-L1発現量とOSの関連性については、探索的解析として評価された。