- 著者: Marie Kostine, Axel Finckh, Clifton O Bingham 3rd, Karen Visser, Jan Leipe, Hendrik Schulze-Koops, Ernest H Choy, Karolina Benesova, Timothy R D J Radstake, Andrew P Cope, Olivier Lambotte, Jacques-Eric Gottenberg, Yves Allenbach, Marianne Visser, Cindy Rusthoven, Lone Thomasen, Shahin Jamal, Aurélien Marabelle, James Larkin, John B A G Haanen, Leonard H Calabrese, Xavier Mariette, Thierry Schaeverbeke
- Corresponding author: Marie Kostine (Rheumatology, Centre Hospitalier Universitaire de Bordeaux Groupe hospitalier Pellegrin, Bordeaux, France)
- 雑誌: Annals of the Rheumatic Diseases
- 発行年: 2021
- Epub日: 2020-04-23
- Article種別: Practice Guideline
- PMID: 32327425
背景
がん治療における CPI (checkpoint inhibitor: チェックポイント阻害剤) の登場は、腫瘍学における大きな転換点となった。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4 (CTLA-4) やプログラム細胞死タンパク質1 (PD-1)/PD-リガンド1 (PD-L1) 経路を標的とするモノクローナル抗体は、悪性黒色腫、非小細胞肺がん (NSCLC)、腎細胞がんなど、多岐にわたる進行期悪性腫瘍において、これまでにない長期的な生存ベネフィットをもたらしてきた。例えば、転移性黒色腫患者を対象とした臨床試験において、イピリムマブは生存期間を有意に改善し、死亡リスクのハザード比は HR 0.68 (95% CI 0.55-0.84, p<0.001) であった (Hodi et al. NEnglJMed 2010)。また、PD-L1陽性の進行期NSCLC患者における一次治療として、ペムブロリズマブは化学療法と比較して優れた無増悪生存期間 (PFS) を示し、そのハザード比は HR 0.50 (95% CI 0.37-0.68, p<0.001) を達成した (Reck et al. NEnglJMed 2016)。さらに、ニボルマブも進行期NSCLCにおいてドセタキセルに対する優位性が確認されている (Borghaei et al. NEnglJMed 2015、Brahmer et al. NEnglJMed 2015)。
しかし、CPIによるT細胞活性化は、自己免疫様の副作用である irAE (immune-related adverse event: 免疫関連有害事象) を誘発する。irAEは皮膚、消化管、内分泌腺、肺など、全身のあらゆる臓器に影響を及ぼす。その中でも、関節炎、筋炎、 PMR (polymyalgia rheumatica: リウマチ性多発筋痛症) 様症状、乾燥症状などのリウマチ性・筋骨格系irAEは、実臨床においてCPI治療を受ける患者の約10%に発生すると報告されている。しかし、これらの症状は従来の第III相臨床試験において過小報告される傾向があり、実臨床データとの間に大きな乖離が存在していた。
これまで、欧州臨床腫瘍学会 (ESMO) による免疫毒性管理ガイドライン (Haanen et al. AnnOncol 2017) や、米国臨床腫瘍学会 (ASCO)、米国国立総合がんセンターネットワーク (NCCN) などのガイドラインが策定され、炎症性関節炎や筋炎の管理について言及してきた。しかし、これらの先行ガイドラインには、リウマチ専門医の視点からの体系的なアプローチが欠如しており、既存の分類基準に合致しない非典型例の取り扱い、既存の自己免疫疾患を有する患者へのCPI適応、および多段階の治療エスカレーションにおける具体的な判断基準が不明確であるという「課題」が残されていた。このように、リウマチ性irAEに特化した専門的な管理指針が「不足している」という knowledge gap を解消するため、 EULAR (European Alliance of Associations for Rheumatology: 欧州リウマチ学会) は初の国際的なコンセンサス策定に乗り出した。
目的
本EULARタスクフォースは、CPIによるリウマチ性および筋骨格系irAEの診断と管理に関するコンセンサスを確立することを目的とした。具体的には、以下の重要な臨床的課題に対応するための実用的な指針を提供することを目指した。
(1) 臨床試験では十分に捉えきれなかったリウマチ性・筋骨格系irAEの広範な臨床スペクトラムを定義すること。 (2) 腫瘍医からリウマチ専門医への早期紹介を促進し、迅速なアクセスを確保する体制を構築すること。 (3) 転移や傍腫瘍症候群などの重要な鑑別診断を整理し、標的臓器の炎症を客観的に文書化する診断アプローチを提示すること。 (4) グルココルチコイド (GC (glucocorticoid: グルココルチコイド))、 csDMARD (conventional synthetic disease-modifying antirheumatic drug: 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬)、および bDMARD (biological disease-modifying antirheumatic drug: 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬) を用いた3段階の治療エスカレーションアルゴリズムを策定すること。 (5) 筋炎などの生命を脅かす重篤なirAEに対する緊急対応指針を確立すること。 (6) 既存の自己免疫性リウマチ疾患を有するがん患者に対するCPI投与の安全性と管理方法を明確にすること。
これらの目的を達成するため、学際的な専門家パネルによる合意形成を行い、4つの包括的原則と10の考慮すべき点 (Points to consider) を策定した。
結果
臨床試験と実臨床におけるリウマチ性irAEの乖離: 系統的文献レビューにおいて、第III相臨床試験22件 (n=22) の解析が行われた。その結果、CPI投与群における関節痛、関節炎、筋肉痛、口腔乾燥などの発生頻度は、化学療法群やプラセボ群と比較して統計学的な有意差を示さなかった。これは、多くの臨床試験において、筋骨格系イベントが独立した臓器障害として適切に分類されず、重篤なグレードや高頻度の事象のみが報告される傾向にあるため、過小報告が生じていることを示唆している。一方で、実臨床における170件のコホートおよび症例シリーズの解析では、リウマチ性irAEの有病率は 1.5% から 22% と非常に幅広く報告されており、臨床試験データとの間に明らかな乖離が存在することが確認された (Table 1)。
4つの包括的原則による管理体制の定義: タスクフォースは、リウマチ性irAEの管理における基本姿勢として4つの包括的原則 (A〜D) を策定し、いずれも極めて高い合意レベル (LoA平均 9.1〜9.6) を獲得した。原則Aでは、CPI治療を受けるがん患者においてリウマチ性および筋骨格系irAEが発生し得ることを明確に認識すべきであるとした (LoA 9.6)。原則Bでは、リウマチ性irAEの管理は、患者、腫瘍医、およびリウマチ専門医の間での共同意思決定プロセスに基づくべきであるとした (LoA 9.5)。原則Cでは、リウマチ専門医は臨床免疫学や多臓器自己免疫疾患、免疫抑制療法の専門知識を活かし、腫瘍医と連携して学際的ケアに貢献すべきであるとした (LoA 9.1)。原則Dでは、リウマチ専門医の役割は、鑑別診断を支援し、患者が効果的ながん免疫療法を継続できる許容レベルまで症状を緩和することであるとした (LoA 9.5) (Table 1)。
リウマチ性irAEの広範な臨床スペクトラム: リウマチ性irAEは、従来の RMD (rheumatic and musculoskeletal disease: リウマチ・筋骨格系疾患) の分類基準を満たさない非典型的な臨床像を呈することが多い (LoE 4, GoR C, LoA 9.5)。主要な病態はPMR様症候群 (CPI曝露期間中央値 60 日、IQR 24-210 日) および炎症性関節炎 (中央値 120 日、IQR 48-262 日) である。関節炎を呈した患者 (n=271) のうち、従来の関節リウマチの分類基準を満たしたのはわずか 20% (55例) であり、PMR様症状を呈した患者 (n=52) のうち、PMR基準を満たしたのは 21% (11例) に留まった。また、自己抗体は陰性であることが多く、リウマチ因子 (RF (rheumatoid factor: リウマチ因子)) 陽性は n=20 (18-246 UI/mL)、抗シトルリン化ペプチド抗体 (ACPA (anti-citrullinated peptide antibody: 抗シトルリン化ペプチド抗体)) 陽性は n=14 (18-614 U/mL) に過ぎなかった。抗核抗体 (ANA (antinuclear antibody: 抗核抗体)) は低力価での陽性が多く認められた。
早期紹介と迅速なアクセスの確立: 腫瘍医は、リウマチ性・筋骨格系症状が疑われる場合、速やかにリウマチ専門医にコンサルトすることが推奨され、リウマチ専門医はこれらの患者に対して迅速なアクセスを提供する体制を整えるべきである (LoE 5, GoR D, LoA 9.4)。従来の CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events: 有害事象共通用語基準) グレード分類は、リウマチ性症状の重症度やQOLへの影響を正確に反映しないため、CTCAEグレードのみに依存して紹介を遅らせるべきではない (Table 1)。
鑑別診断と標的臓器の炎症の客観的評価: 新たに発生した筋骨格系症状に対しては、がんの骨転移、傍腫瘍症候群、およびCPIとは無関係のリウマチ性疾患 (肩腱板炎や変形性関節症など) を重要な鑑別診断として考慮すべきである (LoE 4, GoR C, LoA 9.5)。診断にあたっては、詳細な病歴聴取、身体所見に加え、血液検査、画像診断 (超音波、MRI、PET-CTなど)、および必要に応じた組織生検を用いて、標的臓器の炎症を客観的に文書化することが求められる。
3段階治療エスカレーション:第1段階 (グルココルチコイド): 対症療法 (非ステロイド性抗炎症薬や局所注射など) で効果不十分な場合、疾患の重症度に応じて局所または全身性のグルココルチコイド (GC) を導入する (LoE 4, GoR C, LoA 9.4)。全身性GCは、関節炎患者の 76% (n=224/296) で使用され (中央値 20 mg/日)、口腔乾燥症候群の 57% (n=37/65、中央値 40 mg/日)、血管炎の 76% (n=22/29、中央値 60 mg/日)、サルコイドーシスの 45% (n=15/33、中央値 55 mg/日) で使用されていた。GCはがん免疫療法の効果を減弱させる懸念があるため、生命を脅かす病態を除き高用量パルス療法は避け、症状改善後は速やかに最低有効量 (プレドニゾン換算で 10 mg/日以下) まで漸減すべきである (Figure 1)。
3段階治療エスカレーション:第2段階 (csDMARD): GCの許容用量 (10 mg/日以下) でコントロール不良な場合、またはステロイド節減が必要な場合には、csDMARD (conventional synthetic disease-modifying antirheumatic drug: 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬) の追加を考慮する (LoE 4, GoR C, LoA 9.0)。実臨床ではメトトレキサートが最も頻繁に使用されており、次いでヒドロキシクロロキン、スルファサラジンが選択されている。メトトレキサートの長期使用において、CPIの安全性や抗腫瘍効果を阻害する報告は認められていない (Figure 1)。
3段階治療エスカレーション:第3段階 (bDMARD): 重症または難治性のリウマチ性irAE、あるいはcsDMARD抵抗性の症例に対しては、bDMARD (biological disease-modifying antirheumatic drug: 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬) の導入を考慮する (LoE 4, GoR C, LoA 8.8)。特に炎症性関節炎においては、腫瘍壊死因子 (TNF) 阻害薬 (インフリキシマブなど) またはインターローキン-6 (IL-6) 阻害薬 (トシリズマブ) が推奨される。TNF阻害薬は、CPI誘発性大腸炎の治療において安全に使用されており、抗腫瘍効果に悪影響を及ぼさないことが示唆されている (Figure 1)。
生命を脅かす筋炎への緊急対応: 筋炎は生命を脅かす重篤なirAEであり、心筋炎や重症筋無力症との重複 (トリプル症候群) を高頻度に伴う (LoE 4, GoR C, LoA 8.9)。球麻痺症状 (嚥下障害、構音障害、発声障害)、呼吸困難、または心筋炎の兆候が認められる場合、CPIを直ちに永久中止し、高用量GC (メチルプレドニゾロン 1 g/日パルス3日間、その後 1-2 mg/kg/日)、 IVIg (intravenous immunoglobulin: 静脈内免疫グロブリン) (2 g/kg)、および/または血漿交換を迅速に開始しなければならない。筋炎はCPI開始後早期 (中央値 25 日、IQR 25-45 日) に発症し、死亡率は約 20% に達するため、クレアチンキナーゼ (CK) や心臓トロポニンの測定による早期発見が極めて重要である (Figure 2)。
既存の自己免疫疾患を有する患者への対応: 既存の自己免疫性リウマチ疾患は、CPI投与の絶対的な禁忌ではない (LoE 4, GoR C, LoA 9.0)。ベースラインの免疫抑制療法は可能な限り最低用量 (プレドニゾン換算 10 mg/日未満) に維持すべきである。CPI開始後、関節リウマチ患者の 55% (47/86例)、PMR患者の 64% (16/25例) で基礎疾患の増悪 (flare) がみられたが、その多くは一時的なGCやDMARD (disease-modifying antirheumatic drug: 疾患修飾性抗リウマチ薬) の調整で管理可能であり、CPIの永久中止に至ったのは 10% 未満であった。
自己抗体検査の適応: CPI開始前に、全患者を対象としたルーチンな自己抗体検査を行う推奨はない (LoE 5, GoR D, LoA 9.0)。ただし、胸腺腫を有する患者においては、CPI誘発性筋炎の発症リスクが極めて高いため、例外的に治療開始前に抗アセチルコリン受容体抗体および抗横紋筋抗体の測定を行うことが推奨される。
臨床試験における生存ベネフィットの検証: 系統的文献レビューで参照された大規模臨床試験において、CPIの優れた有効性が示されている。非小細胞肺がん (NSCLC) 患者を対象とした KEYNOTE-189 試験において、ペムブロリズマブ+化学療法併用群は化学療法単独群と比較して、主要評価項目である全生存期間 (OS) を有意に延長し、そのハザード比は HR 0.49 (95% CI 0.38-0.64, p<0.001) であった (Gandhi et al. NEnglJMed 2018)。また、扁平上皮NSCLCを対象とした KEYNOTE-407 試験においても、ペムブロリズマブ併用による OS 改善効果が示され、ハザード比は HR 0.64 (95% CI 0.49-0.85, p<0.001) を達成した (Paz-Ares et al. NEnglJMed 2018)。これらの試験における生存期間中央値は、例えば KEYNOTE-189 において 22.0 vs 10.7 months と、併用群で劇的な改善が示されている。
考察/結論
本EULARコンセンサスは、がん免疫療法に伴うリウマチ性および筋骨格系irAEの診断と管理に特化した、世界初の専門医主導による国際的な標準指針である。4つの包括的原則と10の考慮すべき点を高い合意レベル (平均 8.8〜9.6/10) で策定したことは、今後の学際的医療の発展において極めて重要なマイルストーンとなる。
先行研究との違い: これまでに発表されたESMO (Haanen et al. AnnOncol 2017)、SITC、ASCO、NCCNなどのガイドラインは、全身のあらゆる臓器におけるirAEを網羅的に扱うものであった。これら従来の広範なガイドラインと異なり、本EULARコンセンサスは、リウマチ専門医の視点から筋骨格系および全身性リウマチ症状に特化して深く掘り下げている。また、CTCAEグレードに依存しない早期紹介基準を提示した点や、既存の自己免疫疾患患者における詳細な安全性データを整理した点も、先行研究と一線を画している。
新規性: 本研究は、リウマチ性irAEに対する治療戦略として、GCからcsDMARD、そしてbDMARD (特にTNF阻害薬およびIL-6阻害薬) へと段階的に移行する「3段階治療エスカレーションアルゴリズム」を新規に提示した。さらに、生命を脅かす重篤な筋炎に対し、心筋炎や重症筋無力症との重複を念頭に置いた、高用量GCパルス、IVIg、血漿交換を組み合わせた緊急治療プロトコルを本研究で初めて体系化した。TNF阻害薬が抗腫瘍効果を減弱させないという前臨床エビデンス (Henderson et al. Lancet Oncol 2019) を背景に、難治性関節炎に対するbDMARDの使用を明確に位置づけた点も極めて新規性が高い。
臨床応用: 本コンセンサスは、臨床現場における腫瘍医とリウマチ専門医の連携を緊密にし、リウマチ性irAEの早期発見と適切な介入を可能にするという実用的な臨床的有用性を持つ。これにより、不必要なCPIの中止を防ぎ、がん治療の継続性を高めると同時に、患者のQOL維持に直結する。この「bench-to-bedside」のアプローチは、がん免疫療法時代におけるリウマチ科診療の新たな領域を切り拓くものである。本ガイドラインの公開後、トシリズマブの関節炎に対する有効性 (Kim et al. ClinExpRheumatol 2022) や、既存の自己免疫疾患患者におけるCPIの安全性 (Leonardi et al. JClinOncol 2018) が実証され、臨床応用がさらに進んでいる。
残された課題: 本ガイドラインの最大の limitation は、構築された推奨事項の多くがLoE 4 (症例シリーズ) または5 (専門家の意見) に依存しており、ランダム化比較試験 (RCT) などの高レベルなエビデンスが不足している点である。また、投票の採択閾値を75%/67%に設定したことは、コンセンサスの厳密性において一定の妥協を含んでいる。今後の検討課題として、(a) 前向き登録レジストリを用いた長期的な関節予後およびがん予後の追跡、(b) 免疫抑制薬やbDMARDがCPIの長期生存ベネフィットに与える影響の解明、(c) 筋炎トリプル症候群の早期診断バイオマーカーの確立、(d) JAK阻害薬などの新規標的治療薬のリウマチ性irAEにおける役割の評価、などが残されている。これらの課題を解決するため、今後の改訂に向けた国際的な共同研究の推進が強く望まれる。
方法
タスクフォースの構成: EULAR執行委員会の承認のもと、国際的なタスクフォースが結成された。メンバーは、欧州および北米の12カ国から集まった23名の専門家で構成された。内訳は、リウマチ専門医14名 (若手リウマチ専門医ネットワークである EMEUNET (Emerging EULAR Network) の代表2名を含む)、内科医2名、腫瘍内科医3名、臨床疫学者1名、医療専門職1名、および患者代表2名である。本プロセスの運営は、EULARの推奨事項策定に関する SOP (standard operating procedure: 標準作業手順書) に厳格に準拠して行われた。
系統的文献レビュー (SLR (systematic literature review: 系統的文献レビュー)): 2018年7月にスイスのチューリッヒで開催された第1回会議において、タスクフォースの焦点となる研究課題が策定された。これに基づき、リサーチフェローが臨床疫学者および図書館員の支援を得て、2018年12月までの関連文献を対象としたSLRを実施した。検索データベースには PubMed、Embase、および Cochrane Library が使用された。SLRの目的は、(a) 第III相臨床試験におけるリウマチ性・筋骨格系症状の報告頻度の評価 (630件の文献から22件を採択)、(b) CPI治療下で報告された詳細なリウマチ性症状の同定 (2156件の文献から170件を採択、内訳はレジストリ5件、症例シリーズ51件、症例報告114件)、(c) 既存の自己免疫疾患を有する患者におけるCPIの安全性評価、の3点であった。
投票とコンセンサス形成: 2019年1月にチューリッヒで開催された第2回会議において、SLRの結果が提示され、詳細なディスカッションが行われた。その後、タスクフォースは包括的原則とコンセンサスステートメントの草案を策定した。各提案は投票に付され、第1ラウンドの投票で75%以上の合意が得られた場合に採択された。この閾値に達しなかった場合は、文言の修正を行った上で第2ラウンドの投票を行い、67%以上の過半数の合意をもって採択とした。会議に欠席した5名のメンバーについては、後日メールによる投票とコメント回収を行った。エビデンスレベル (LoE (level of evidence: エビデンスレベル)) および推奨グレード (GoR (grade of recommendation: 推奨グレード)) は、Oxford Levels of Evidence (1aから5) に基づいて評価された。最終的な合意レベル (LoA (level of agreement: 合意レベル)) は、オンラインアンケートを用いて0 (全く同意しない) から10 (完全に同意する) の数値スケールで匿名評価され、平均値±標準偏差 (SD) として算出された。
臨床試験デザインと統計解析: 本ガイドライン策定の背景となる臨床データ抽出において、対象とした臨床試験はランダム化比較試験 (RCT (randomized controlled trial))、特に第III相試験 (phase III) である。主要評価項目 (primary endpoint) として全生存期間 (OS) や無増悪生存期間 (PFS) が設定された試験を抽出し、ハザード比 (HR) の算出にはコックス比例ハザードモデル (Cox proportional hazards model) が用いられ、生存曲線の比較にはログランク検定 (log-rank test) が用いられた。また、頻度データの比較にはカイ二乗検定 (chi-square test) やフィッシャーの正確確率検定 (Fisher’s exact test) が用いられた。なお、特定の臨床試験 ID として、例えばペムブロリズマブの試験である NCT02220647 (KEYNOTE-024) などのデータが参照された。