• 著者: Jorge Larios, Vincent Mercier, Aurélien Roux, Jean Gruenberg
  • Corresponding author: Jean Gruenberg (Department of Biochemistry, Université de Genève, Geneva, Switzerland); Aurélien Roux (Department of Biochemistry, Université de Genève, Geneva, Switzerland)
  • 雑誌: The Journal of cell biology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 32049272

背景

エンドサイトーシスされたシグナル受容体や細胞表面タンパク質は、初期エンドソームに到達した後、細胞膜への再利用、trans-Golgiネットワークへの輸送、またはリソソーム分解へと方向付けられる。リソソーム分解に向かうカーゴは、多胞体エンドソーム (multivesicular endosome; MVE) の内腔小胞 (intraluminal vesicle; ILV) に取り込まれ、ILVは後期エンドソーム・リソソームで分解される。しかし、ILVの一部はリソソーム分解を免れ、エンドソームが細胞膜と融合する際にエクソソームとして細胞外に分泌される。このILVの異なる運命(分解 vs. エクソソーム分泌)を規定する分子機序はほとんど未解明であった。

ILV形成には、ESCRT複合体 (ESCRT-0、-I、-II、-III) が必要であり、ESCRT-0、-I、-IIがユビキチン化カーゴを認識してソーティングし、ESCRT-IIIが膜変形とスカシオンを担うことが知られている。しかし、ESCRT非依存的なILV形成経路も提唱されており、特定の細胞型ではセラミドがESCRT非依存的なILV形成を媒介することが示されている (Trajkovic et al. Science 2008)。また、CD63もESCRT非依存的なILV形成に関与することが報告されている (vanNiel et al. DevCell 2011)。

ALIX (ALG-2 interacting protein X) は、BRO1ドメイン、V字型ドメイン、C末端のプロリンリッチ領域 (proline-rich region; PRR) で構成されるESCRT関連タンパク質である。PRRはオートインヒビトリードメインとしてBRO1ドメインと自己相互作用し、ALIXを閉じた自己抑制コンフォメーションに保つ。BRO1ドメインはCHMP4 (ESCRT-IIIの主要サブユニット) と結合し、また後期エンドソームに特異的に局在するリン脂質であるリゾビスホスファチジン酸 (lysobisphosphatidic acid; LBPA) とも相互作用する。ALIXはエクソソームの主要マーカータンパク質の一つでもあり (Thery et al. NatRevImmunol 2009; vanNiel et al. NatRevMolCellBiol 2018)、シンデカン-シンテニン-ALIXがエクソソーム生合成を制御することが示されている (Baietti et al. NatCellBiol 2012)。ALIXはHIV出芽、細胞質分裂、オートファジー、エクソソーム生合成など多様なESCRT依存プロセスに関与するが、後期エンドソームでのALIXの正確な機能的役割、特にLBPAとの相互作用を介したESCRT-III動員とエクソソームカーゴ選択における役割は不明であった。エクソソームのカーゴソーティングにおけるALIXの役割に関する知識には不足が残されていた。

目的

本研究の目的は、ALIXが後期エンドソームに特異的に局在するリン脂質LBPAへの結合を介してESCRT-IIIを後期エンドソームに選択的に動員し、標準的なESCRT-0/-I/-II依存経路とは独立した並列経路でテトラスパニン (CD9、CD63、CD81) をエクソソームへ選択的にソーティングするメカニズムをin vitroおよびin vivoで明らかにすることである。具体的には、PRR欠失により活性化されたALIX (ALIX ΔPRR) がLBPA陽性後期エンドソームに効率的に局在し、ESCRT-IIIサブユニットを動員する能力を評価する。さらに、このALIX-LBPA-ESCRT-III軸がテトラスパニンのエクソソーム分泌に与える影響と、そのユビキチン化依存性を詳細に解析し、エクソソームカーゴの選択的ソーティングにおけるALIXの新規な役割を解明することを目指した。

結果

ALIX ΔPRRの後期エンドソーム局在とCHMP4B動員: PRR欠失により「開いた」活性化コンフォメーションをとるALIX ΔPRR-mCherryは、LBPA陽性後期エンドソームと高度に共局在し (Manders共局在係数約0.8)、初期エンドソームマーカーEEA1との共局在は最小であった (Fig 1C, D)。ALIX ΔPRR発現細胞では、GFP-CHMP4B陽性パンクタの数が顕著に増加し (untransfected cellsと比較して数倍)、ALIX ΔPRRとGFP-CHMP4Bが同一構造体に共局在することが示された (Fig 1E, F)。細胞分画でもlight membrane画分 (エンドソーム画分) へのCHMP4B増加が確認された (Fig 1G, H)。ALIX ΔPRRはLAMP1陽性後期エンドソームにGFP-CHMP4Bと共に局在し、CHMP4Bの後期エンドソームへの動員が示された (Fig 2A)。この結果は、ALIX ΔPRRが後期エンドソームへのCHMP4Bの効率的な動員を促進することを示している。

FRAP解析によるESCRT-IIIの動的会合: FRAP解析では、GFP-CHMP4BとALIX ΔPRR-mCherryのエンドソームへの会合が部分的かつ動的であり (fluorescence recoveryが観察された)、VPS4依存的なESCRT-IIIサブユニットのターンオーバーと整合するダイナミックな結合様式を示した (Fig 2D, E)。この動的な挙動は、ESCRT-IIIの重合と膜リモデリング活性がVPS4依存的なサブユニットのターンオーバーを伴うという既存の知見と一致する。FRAP実験はn=28 endosomesで実施された。

BRO1ドメイン変異によるESCRT-III動員の消失: ALIX ΔPRR-I212D (ESCRT-III結合不活化変異体) はGFP-CHMP4Bをエンドソームへ動員できず、ALIX ΔPRR-I212D自身も厳密に細胞質に分布した (Fig 4A, B)。ALIX ΔPRR-QQ (LBPA結合不活化変異体) も同様にCHMP4B動員能を完全に失った (Fig 4A, B)。これは、BRO1ドメインによるLBPA結合とESCRT-III結合の両方がALIX ΔPRRのエンドソーム会合とCHMP4B動員に不可欠であり、一方の相互作用が欠如するとALIXがエンドソーム膜から解離することを示唆する。p値はALIX ΔPRRと比較して両変異体でp<0.001であった。

多様なESCRT-IIIサブユニットの動員: ALIX ΔPRRはCHMP4Bのみならず、CHMP1A、CHMP1B、CHMP4A、CHMP3を後期エンドソームに動員した (Fig 3C-F)。VPS22 (ESCRT-IIコンポーネント) とVPS4Bもlight membrane画分に増加した。一方、CHMP6 (ESCRT-IIIヌクレエーター)、HRS (ESCRT-0)、TSG101 (ESCRT-I) は増加せず、ALIXによるESCRT-III動員がCHMP6非依存的かつESCRT-0/-I非依存的であることが示された (Fig 3E, F)。これは、ALIXがESCRT複合体の他のサブユニットとは独立してESCRT-IIIを動員する能力を持つことを示唆する。

in vitro再構成によるLBPA-ALIX-CHMP4B軸の確認: LBPAを含む支持二重膜上にALIX BRO1ドメインを先に吸着させると、Alexa Fluor 488-CHMP4Bが約5分のt1/2で迅速に結合した (Fig 4F, G)。LBPAを除いた条件やPSで置換した条件では、ALIX-BRO1存在下でもCHMP4Bはほとんど結合しなかった。ALIX-BRO1-I212DまたはALIX-BRO1-QQでは、LBPA含有膜でもCHMP4Bを動員できなかった (Fig 4I, J)。これらの結果は、LBPAとALIXの両者がCHMP4Bの膜への動員に必須であることをin vitroで完全に再構成した。CHMP4Bの結合強度はLBPAとALIX-BRO1が存在する場合に有意に高く (p<0.001)、n=20 lipid patchesで解析された。

ALIX依存ESCRT-III動員は他のESCRTタンパク質から独立: STAM1/2、TSG101、VPS22、CHMP3、CHMP6、HD-PTP、BROXの各タンパク質をsiRNAで枯渇させても、ALIX ΔPRRによるGFP-CHMP4Bのエンドソーム動員は阻害されなかった (Fig 5A, B)。この結果は、ALIXがESCRT-0/-I/-IIとは独立した並列経路としてESCRT-IIIを後期エンドソームに選択的に動員することを実証する。各siRNAによるノックダウン効率は5-10倍の減少を示した。

ユビキチン化カーゴの蓄積: ALIX ΔPRRを発現する細胞では、LAMP1陽性後期エンドソームにコンジュゲート型ユビキチン (ユビキチン化タンパク質) が顕著に蓄積した (Fig 6A, B)。この蓄積はALIX ΔPRR-I212DおよびALIX ΔPRR-QQでは観察されず、LBPA・ESCRT-III結合に依存することが示された (Fig 6C, D)。一方、EGFRのリソソーム分解速度、カテプシンDの成熟化、エンドソームpHはALIX ΔPRR発現の影響を受けなかった (Fig 7C, D, G-J)。これはALIX ΔPRRが後期エンドソームの一般的なトラフィックを阻害するのではなく、特定のカーゴサブセットの選択的な保持を引き起こすことを示す。ユビキチン強度はALIX ΔPRR発現細胞で有意に増加した (p<0.001)。

テトラスパニンのエクソソーム選択的分泌増加: ALIX ΔPRRを発現するHeLa cellsから調製したエクソソームでは、CD9、CD63、CD81の分泌量が対照 (GFP発現) と比較して顕著に増加した (CD9とCD63は約3-fold increase、CD81も有意に増加) (Fig 8A, B)。この増加はALIX ΔPRR-QQ変異体では観察されなかった (LBPA結合依存性、p<0.001)。逆にALIXをsiRNAで枯渇させると、CD9、CD63、CD81のエクソソーム分泌が選択的に減少した (Fig 8C, D)。CHMP6枯渇でも同様にCD9、CD63、CD81の分泌が減少した (Fig 8E, F)。一方、インテグリンα6/β3、flotillin-1はALIX ΔPRR発現やALIX枯渇の影響を受けず、シンテニンはALIX枯渇で減少した (Fig 8A-D)。テトラスパニンの増加は高度に選択的であることが確認された。

ユビキチン化に依存したテトラスパニンのexosomal sorting: CD9の細胞質側Lys残基をArgに置換した変異体 (CD9/3R) は、エクソソームへの取り込みが野生型CD9より有意に低下した (Fig 8G, H, p<0.05)。この低下はALIX ΔPRR過剰発現によって部分的にレスキューされた。この結果は、テトラスパニンのエクソソームへのソーティングがユビキチン化に依存することを示唆する。

後期エンドソームでのテトラスパニン含量変化: 自動蛍光顕微鏡の定量解析で、ALIX ΔPRR発現細胞ではエクソソーム分泌増加と同時に、LAMP1陽性後期エンドソーム内のCD63、CD81含量が有意に減少した (CD63は顕著、CD81は中程度) (Fig 9A, B)。EGFR、シンテニン、flotillin-1、calnexin、GM130の分布はALIX ΔPRR発現の影響を受けなかった。この知見は、ALIX ΔPRRが後期エンドソームでのテトラスパニン含有ILV形成を促進し、それらがエクソソームとして分泌されるという解釈と整合する。解析はn5,000 cellsで実施され、CD63とCD81の減少はp<0.001であった。

考察/結論

ALIX-LBPA-ESCRT-III軸の新規エクソソームソーティング経路としての確立: 本研究は、ALIXがLBPAへの結合を通じてESCRT-IIIを後期エンドソームに特異的に動員し、テトラスパニン (CD9、CD63、CD81) のエクソソームへの選択的ソーティングを制御するという新規経路を確立した。このALIX-ESCRT-III依存経路は、標準的なESCRT-0/-I/-II依存経路 (ユビキチン化カーゴのリソソーム分解) とは独立した並列経路として機能する。LBPAは後期エンドソームにのみ存在する特異的リン脂質であるため、LBPA-ALIX相互作用はこの経路の後期エンドソームへの空間的制約を担う。

先行研究との違い: Baietti et al. NatCellBiol 2012はシンデカン-シンテニン-ALIX軸によるエクソソーム生合成を示したが、本研究はそれとは異なるLBPA-ALIX結合に依存するテトラスパニン特異的な経路を同定した点で対照的である。シンテニンの分泌はALIX ΔPRR発現では変化せず (ALIX枯渇では低下)、テトラスパニン分泌経路とシンテニン分泌経路が部分的に異なることが示唆される。酵母ではBRO1 (ALIXホモログ) がESCRT-0と協調してSNF7 (CHMP4ホモログ) ポリマーをESCRT-I/-II非依存的に膜上でヌクレエートすることが報告されており (Tang et al., 2016)、本研究が哺乳類後期エンドソームで示した機構と類似する。

新規性: 本研究で初めて、ALIXがLBPAを介してESCRT-IIIを後期エンドソームに動員し、ESCRT-0/-I/-II非依存的なテトラスパニンのエクソソーム選択的分別経路を形成することをin vitroおよび生細胞実験で新規に示した。この経路は、エクソソームのカーゴソーティングにおけるALIXの新たな役割を明らかにするものである。

臨床応用: 本知見は、エクソソームのカーゴ組成を制御する分子メカニズムの理解を深めるものであり、特定のカーゴを豊富に含むエクソソームを標的とした診断や治療法の開発に繋がる臨床的意義を持つ。例えば、テトラスパニンを多く含むエクソソームが特定の疾患バイオマーカーとなる可能性や、疾患関連タンパク質をエクソソームに選択的にソーティングさせることで治療効果を高めるアプローチが考えられる。

残された課題: 今後の検討課題として、ALIX-ESCRT-III依存経路によって形成されるILVが、なぜリソソーム分解を免れて優先的にエクソソームとして分泌されるのかという分子機序は未解明である。LBPAを含む後期エンドソームサブドメインの動的制御機構、CHMP6依存ESCRT-IIIヌクレエーション経路とALIX依存経路の協調関係、テトラスパニン以外にこの経路によってソーティングされるカーゴの同定も重要な今後の課題である。また、ALIXのユビキチン結合能とテトラスパニンのユビキチン化がこの経路でどのように協調するのかも詳細な解析が必要である。

方法

細胞・コンストラクト: 主にHeLa細胞 (HeLa-MZおよびGFP-CHMP4B安定発現株) を使用した。mCherry標識ALIXコンストラクトとして、全長ALIX-mCherry、ALIX ΔPRR-mCherry (PRR欠失・活性化型)、ALIX ΔPRR-I212D-mCherry (BRO1ドメインESCRT-III結合不活化変異)、ALIX ΔPRR-QQ-mCherry (BRO1ドメインL104Q/F105Q LBPA結合不活化変異) を作製した。GFP標識ESCRT-IIIコンストラクトにはCHMP4B、CHMP1A-V5、CHMP1B-Flagを用いた。V5-CD9およびV5-CD9/3R (K4R, K8R, K11R) 変異体も作製した。

共焦点顕微鏡・細胞分画: LBPA、EEA1 (初期エンドソーム)、LAMP1 (後期エンドソーム/リソソーム) 抗体による免疫蛍光染色と共焦点顕微鏡解析を実施した。Manders共局在係数を用いて共局在を定量した。スクロース密度勾配浮上法による細胞分画を行い、postnuclear supernatant (PNS) およびlight membranes (LM) 画分のWestern blot解析を行った。

FRAP (蛍光回復後光退色) 解析: ノコダゾール処理下 (10 µM、2時間) でエンドソーム上のGFP-CHMP4BとALIX ΔPRR-mCherryのダイナミクスをFRAP解析により評価した。

in vitro支持二重膜再構成実験: 後期エンドソーム組成を模倣した脂質 (DOPC:DOPE:PI:LBPA = 4.99:2:1:2モル比) のGUVから支持二重膜を作製した。精製ALIX BRO1ドメインとAlexa Fluor 488標識CHMP4Bを逐次添加し、共焦点顕微鏡でCHMP4B結合をリアルタイム観察した。コントロールとしてLBPAなし、PS置換、変異体ALIX-BRO1を用いた。

siRNAノックダウン: STAM1/2 (ESCRT-0)、TSG101 (ESCRT-I)、VPS22 (ESCRT-II)、CHMP3/CHMP6 (ESCRT-III)、HD-PTP、BROX、ALIXの各タンパク質をsiRNAで枯渇させ、ALIX ΔPRRによるCHMP4B動員への影響を検証した。siRNAは3 nMの低濃度プールを使用し、ALIXには既報の単一siRNAを用いた。

エクソソーム調製・解析: Thery et al. CurrProtocCellBiol 2006の標準的な分画超遠心法によりエクソソームを調製した。Western blotでテトラスパニン (CD9/CD63/CD81)、インテグリン (α6/β3)、flotillin-1、シンテニン、EGFRなどの組成を比較した。CD9ユビキチン化不能変異体 (CD9/3R: 細胞質内Lysを全てArgに置換) のエクソソームへの取り込みも解析した。

自動蛍光顕微鏡: 高スループット定量解析 (>12,000 cells/条件) でテトラスパニンの後期エンドソーム内分布を定量した。LysosensorによるエンドソームpH測定も実施した。統計解析にはMann-Whitney U検定またはt検定を用いた。