• 著者: Clotilde Théry, Matias Ostrowski, Elodie Segura
  • Corresponding author: Clotilde Théry (Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale U932, Institut Curie, Paris, France)
  • 雑誌: Nature Reviews Immunology
  • 発行年: 2009
  • Epub日: 2009-06-05
  • Article種別: Review
  • PMID: 19498381

背景

多細胞生物における細胞間コミュニケーションは、これまで主に可溶性タンパク質の分泌と、隣接する細胞の受容体への結合を介して行われると考えられてきた。しかし、近年の研究により、細胞膜由来の分泌小胞 (membrane vesicles) を介した新たな情報伝達機構が注目を集めている。この分泌小胞は、脂質二重膜に囲まれた複雑な構造体であり、ドナー細胞の細胞質に由来する親水性成分を内包し、膜表面には膜貫通タンパク質を発現している。歴史的には、約30年前に骨髄キメラを用いた研究において、ドナー由来の胸腺細胞がホスト由来の主要組織適合遺伝子複合体 (MHC; major histocompatibility complex) を獲得する現象が報告されたことが端緒である。その後、細胞間で膜成分やタンパク質が転送される現象として、直接的な細胞接触を伴う「nibbling (ニブリング)」や「trogocytosis (トロゴサイトーシス)」、あるいは「nanotube (ナノチューブ)」を介した経路に加え、分泌小胞を介した長距離 (long-range) の伝達経路が次々と明らかになってきた。

特に、Bリンパ球が抗原提示能を有するエキソソーム (exosome) を分泌することを示した Raposo et al. JExpMed 1996 の報告や、樹状細胞 (DC; dendritic cell) 由来のエキソソームが腫瘍特異的な免疫応答を誘導してマウスの定着腫瘍を退縮させることを示した Zitvogel et al. NatMed 1998 の研究は、分泌小胞が免疫制御において極めて重要な役割を果たすことを実証し、この分野の研究を大きく加速させた。さらに、2007年にはエキソソームを介してメッセンジャーRNA (mRNA; messenger RNA) やマイクロRNA (miRNA; microRNA) などの遺伝物質が細胞間で水平転送され、レシピエント細胞の機能を改変しうることが Valadi et al. NatCellBiol 2007 によって初めて示され、細胞間コミュニケーションのパラダイムシフトが起こった。

しかしながら、これらの分泌小胞に関する研究が急速に進展する一方で、文献中では「exosome」や「microvesicle (マイクロベシクル)」、「ectosome (エクトソーム)」、「microparticle (マイクロパーティクル)」といった用語が混在し、それぞれの定義や細胞内起源、生化学的特性の境界線が極めて曖昧であった。また、これら多様な小胞が免疫系においてどのように双方向の制御を司っているのか、あるいは腫瘍細胞と免疫細胞の相互作用においてどのように機能しているのかという全体像は、依然として「未解明」な部分が多く、体系的な整理が「不足」していた。特に、生体内 (in vivo) における生理的動態や、治療応用へ向けた標準化プロトコルの確立には多くの「課題」が残されており、学術的な混乱を解消するための包括的なレビューが強く求められていた。

目的

本総説の目的は、細胞膜由来の分泌小胞 (特にエキソソーム) の起源、組成、および分泌機構に関する最新の知見を整理し、これらが免疫細胞間および腫瘍-免疫細胞間における抗原提示や免疫活性化・抑制シグナルの双方向伝達を媒介する機序を体系的に解説することである。具体的には、第一に、文献中で混同されがちな各種分泌小胞 (exosome, microvesicle, ectosome, membrane particle, apoptotic body など) を、その細胞内起源 (intracellular origin) および生化学的・生物物理学的特性に基づいて厳格に分類・定義し、用語の混乱を解消する。第二に、小胞の構成的 (constitutive) および誘導的 (inducible) な分泌制御機構を整理し、細胞内シグナルや環境変化 (DNA損傷や細胞ストレスなど) が分泌に与える影響を明らかにする。第三に、プロテオミクス解析等に基づく生化学的組成を提示し、小胞が内包するタンパク質や核酸 (mRNA/miRNA) の機能的意義を考察する。第四に、免疫応答の活性化および抑制における分泌小胞の双方向性の役割を整理し、特に樹状細胞や腫瘍細胞由来の小胞が果たす役割を対比させる。最後に、がん免疫療法 (樹状細胞由来エキソソームを用いた臨床試験など) や診断バイオマーカーとしての臨床応用の可能性と、今後の研究における未解決の課題を提示することを目的とする。

結果

細胞内起源に基づく分泌小胞の分類体系と物理化学的特性: 本総説では、混乱していた分泌小胞の用語を整理するため、細胞内起源に基づく分類を提案している。(1) エキソソームは、多胞体エンドソーム (MVE; multivesicular endosome) 内の内腔小胞 (ILV; intraluminal vesicle) が原形質膜と融合することにより分泌される、直径 50-100 nm の小胞である。(2) マイクロベシクルやエクトソームは、原形質膜から直接出芽 (budding) または脱落 (shedding) して放出される、直径 >100 nm (通常 100-1000 nm) の大型小胞である。(3) 膜粒子 (membrane particles) は、プロミニン1 (prominin-1) が富化された膜サブドメインから放出される直径 <100 nm の小胞である。(4) アポトーシス小胞は、死細胞の断片化に伴い放出される直径 500-2000 nm の小胞であり、生細胞由来の小胞とは組成や機能が明確に異なる。これらの物理化学的特性は (Table 1) に整理されており、電子顕微鏡下でのカップ状の形態やショ糖密度勾配における 1.13-1.19 g/ml の浮遊密度がエキソソームの特徴として示されている。

分泌制御機構における構成的経路と誘導的経路の差異: 分泌小胞の放出は、細胞種や環境刺激によって厳密に制御されている。マイクロベシクルの放出は、細胞内カルシウムイオン (Ca²⁺) 濃度の上昇に依存する原形質膜のリモデリングによって誘導される。例えば、単球や好中球におけるP2X7受容体 (P2X7; purinergic receptor P2X, ligand-gated ion channel, 7) の刺激や、樹状細胞におけるTLR4 (Toll-like receptor 4; Toll様受容体4) のLPS (lipopolysaccharide; リポ多糖) 刺激が引き金となる。一方、エキソソームの分泌は、細胞種によって構成的 (constitutive) または誘導的 (inducible) に進行する。未成熟樹状細胞は構成的にエキソソームを分泌するが、LPSによる成熟化に伴い、エキソソームの分泌量は 25-75% 減少することが示されている (Fig 1)。しかし、成熟樹状細胞はT細胞との同種抗原認識 (cognate interaction) を介して、一過性にエキソソーム分泌を増加させる。また、放射線照射や細胞老化などのDNA損傷ストレス条件下では、p53経路の活性化に伴い、膜貫通タンパク質であるTSAP6 (tumour suppressor-activated pathway 6; 腫瘍抑制因子活性化経路6) の発現が上昇し、エキソソームの分泌が約 2.0-fold に増加することが報告されている。

プロテオミクス解析に基づくエキソソームの生化学的組成: エキソソームは、その細胞内起源であるMVEの膜組成を反映した特徴的なプロテオーム (proteome) を有している。15件以上の独立したプロテオミクス解析データの統合により、エキソソームに共通して高頻度 (50% 以上の研究で検出) で含まれるタンパク質群が同定されている (Fig 2)。これには、膜貫通テトラスパニン類 (CD9, CD63, CD81)、エンドソーム輸送に関与するESCRT (endosomal sorting complexes required for transport; エンドソーム輸送修飾複合体) 関連タンパク質であるAlix (ALG-2-interacting protein X; ALG-2相互作用タンパク質X) やTSG101 (tumor susceptibility gene 101; 腫瘍感受性遺伝子101)、熱ショックタンパク質70 (HSP70; heat shock protein 70)、熱ショックタンパク質90 (HSP90; heat shock protein 90)、および細胞接着分子 (インテグリン、ICAM1) が含まれる。特に、Thery et al. JImmunol 2001 による樹状細胞由来エキソソームのプロテオミクス解析では、アポトーシス小胞とは明確に異なるサブセラーコンパートメントとしての組成が実証されている。また、エキソソーム膜はコレステロールやスフィンゴミエリン、セラミドなどの脂質が豊富であり、Trajkovic et al. Science 2008 は、セラミドがESCRT非依存的なエキソソームの出芽機構をトリガーすることを示している。

免疫細胞間コミュニケーションにおける抗原提示能の転送: 分泌小胞は、免疫細胞間における抗原提示分子や共刺激分子の転送を介して、適応免疫応答を双方向に制御する。樹状細胞由来のエキソソームは、MHC class I および class II 分子、さらに共刺激分子 (CD80, CD86) をその表面に提示しており、T細胞に対して直接的または間接的に抗原を提示する (Fig 4a)。特に、エキソソーム上のMHC-ペプチド複合体が、レシピエントである別の樹状細胞の表面にそのまま転送されて提示される「cross-dressing (クロスドレッシング)」現象が重要である。成熟樹状細胞由来のエキソソームは、未成熟樹状細胞由来のものと比較して、ナイーブT細胞のプライミング能が約 5.0-fold 高いことが示されている。これは、成熟樹状細胞由来エキソソーム上にICAM1 (intercellular adhesion molecule 1; 細胞間接着分子1) が高発現しており、レシピエント樹状細胞やT細胞上のLFA1 (lymphocyte function-associated antigen 1; リンパ球機能関連抗原1) との結合を介して、エキソソームのキャプチャー効率が 30% 以上向上するためである。

腫瘍由来エキソソームによる免疫抑制と腫瘍進展の促進: 腫瘍細胞から分泌されるエキソソームであるTEX (tumor-derived exosome; 腫瘍由来エキソソーム) は、抗腫瘍免疫を抑制し、腫瘍の生着や転移を促進する多面的な機能を有している。TEXは、FasL (Fas ligand; Fasリガンド) やTRAIL (TNF-related apoptosis-inducing ligand; TNF関連アポトーシス誘導リガンド)、あるいはTGF-β (transforming growth factor-beta; トランスフォーミング増殖因子-β) などの免疫抑制分子を表面に提示しており、これらがT細胞上の受容体に結合することで、エフェクターT細胞のアポトーシスを誘導する (Fig 4b)。臨床データにおいて、進行がん患者の血清中エキソソーム濃度は健康対照群と比較して有意に上昇しており、T細胞のCD3ζ鎖の発現低下や機能不全と相関している。また、TEXはNK細胞やCD8⁺ T細胞上の活性化受容体NKG2Dのダウンレギュレーションを誘導し、細胞傷害活性を約 40% 抑制することが示されている。さらに、TEXはMDSC (myeloid-derived suppressor cell; 骨髄由来抑制細胞) の分化を促進し、免疫抑制的な微小環境 (metastatic niche) を形成する。

遺伝物質 (mRNA/miRNA) の水平転送によるレシピエント細胞の機能改変: 分泌小胞の最も画期的な機能の一つは、内包する核酸 (mRNAおよびmiRNA) をレシピエント細胞へ転送し、その遺伝子発現や表現型をエピジェネティックに改変することである。Valadi et al. NatCellBiol 2007 は、マスト細胞由来のエキソソームが機能的なRNAを内包し、別のマスト細胞に取り込まれた後に、そのmRNAが実際にタンパク質へと翻訳されることを証明した。また、Skog et al. NatCellBiol 2008 は、膠芽腫由来のマイクロベシクルが腫瘍進展を促進するRNAやタンパク質を内包し、血管内皮細胞の血管新生を誘導することを示した。さらに、Al-Nedawi et al. NatCellBiol 2008 は、変異型受容体EGFRvIII (epidermal growth factor receptor variant III; 表皮増殖因子受容体変異体III) を搭載したマイクロベシクルが、受容体陰性の腫瘍細胞に転送されることで、MAPK (mitogen-activated protein kinase; 分裂酵母活性化プロテインキナーゼ) およびAktシグナル経路を活性化し、足場独立性増殖能を約 3.0-fold 向上させることを実証している。

樹状細胞由来エキソソームを用いたがん免疫療法の臨床試験成績: エキソソームの優れた抗原提示能と生体内安定性に着目し、樹状細胞由来エキソソーム (Dex) を用いたがんワクチン療法の臨床応用が進められている。悪性黒色腫 (メラノーマ) および非小細胞肺がん (NSCLC) の患者を対象とした複数の第I相臨床試験において、自己樹状細胞から調製したDexワクチンの安全性と忍容性が確認された。例えば、NSCLC患者 n=9 名を対象とした試験では、Dexの投与により重篤な毒性は認められず、n=3 名の患者において病勢コントロール (stable disease) が達成された。また、別の悪性黒色腫患者 n=6 名を対象とした試験では、n=1 名において腫瘍特異的なT細胞応答の増強が確認された。これらの試験では、DexワクチンにCpGアジュバントを併用することで、T細胞のプライミング効率が向上することが示されており、今後の治療戦略の基盤となっている。

腫瘍抗原のクロスプライミングと免疫活性化の二面性: 腫瘍由来のエキソソームは、前述の免疫抑制作用を持つ一方で、適切な条件下では強力な抗腫瘍免疫の供給源となりうる。TEXは、HER2やCEA (carcinoembryonic antigen; 癌胚性抗原)、MART1などの腫瘍抗原を豊富に含んでおり、これらが樹状細胞に取り込まれることで、CD8⁺ T細胞に対するクロスプライミング (cross-priming) を誘導する。Wolfers et al. NatMed 2001 は、腫瘍由来エキソソームが共通の腫瘍拒絶抗原を樹状細胞に供給し、CTL (cytotoxic T lymphocyte; 細胞傷害性Tリンパ球) の活性化を介して、マウスにおいて定着腫瘍の拒絶を誘導することを示した。特に、腫瘍細胞を熱ショック (heat shock) などのストレスに曝露すると、HSP70を豊富に含む高免疫原性のエキソソームが分泌され、これがNK細胞の細胞傷害活性を約 2.5-fold 向上させることが確認されている。このように、エキソソームを介した免疫応答は、微小環境におけるアジュバントシグナルの有無によって、活性化と抑制の双方向に傾く二面性を有している。

考察/結論

本総説は、2009年時点における細胞膜由来分泌小胞 (特にエキソソーム) の研究成果を体系的に整理し、その後の細胞外小胞 (EV; extracellular vesicle) 分野における研究の方向性を決定づけた金字塔的なレビューである。

先行研究との違い: 従来の細胞間コミュニケーション研究は、主に可溶性因子の分泌や細胞間の直接的な接触に焦点を当てていた。これら「これまで」の古典的な知見「と異なり」、本総説は脂質二重膜に包まれた分泌小胞が、タンパク質、脂質、および核酸 (mRNA/miRNA) を含む多成分のシグナルをパッケージ化して長距離かつ双方向に伝達する「第三のコミュニケーションシステム」であることを明確に位置づけた。特に、単一の分子によるシグナル伝達とは「対照的」に、エキソソームがMHC-ペプチド複合体と共刺激分子を同時にレシピエント細胞に転送し、抗原提示能を丸ごと「cross-dressing」によって譲渡できるという概念は、従来の免疫学の常識を覆すものであった。

新規性: 本総説の「新規」な貢献は、混乱していた分泌小胞の定義を、細胞内起源 (MVE由来のエキソソーム vs 原形質膜由来のマイクロベシクル) に基づいて体系的に整理し、統一的な分類基準を「本研究で初めて」提示した点にある。これにより、学術界における用語の混乱が解消され、研究データの比較可能性が飛躍的に向上した。また、エキソソームが単なる細胞内の「ゴミ捨て場」ではなく、ドナー細胞の生理状態 (成熟度、ストレス、がん化など) を反映した特異的な cargo (積荷) を選択的に搭載し、レシピエント細胞の機能をエピジェネティックに再プログラミングする能動的なキャリアであることを体系化したことは、「これまで報告されていない」画期的な概念の整理であった。

臨床応用: 本総説で提示された知見は、がん治療や診断における「臨床応用」に極めて重要な「臨床的意義」をもたらしている。特に、樹状細胞由来エキソソーム (Dex) を用いたがんワクチン療法は、細胞不含 (cell-free) の治療法として、従来の樹状細胞移植療法が抱えていた品質管理や生体内動態の不安定さといった課題を克服する「臨床的有用性」を秘めている。さらに、がん患者の血液や腹水などの体液中から腫瘍由来エキソソーム (TEX) を回収し、その内包するmiRNAやタンパク質プロファイルを解析する「液体生検 (liquid biopsy)」技術は、がんの早期診断や予後予測、治療効果モニターにおける「臨床現場」での実用化に直結する。このように、基礎研究の成果を臨床へと還元する「bench-to-bedside」の架け橋としての役割を果たしている。

残された課題: しかしながら、エキソソームの治療応用や生理的機能の完全な解明に向けては、依然として多くの「残された課題」や「今後の検討課題」が存在する。最大の「limitation」は、生体内 (in vivo) におけるエキソソームのリアルタイムな動態追跡技術や、特定のレシピエント細胞への標的化機構が十分に解明されていない点である。また、in vitro で回収されるエキソソーム調製物の不均一性 (heterogeneity) を排除し、治療用エキソソームの単離・精製プロトコルを世界的に標準化 (standardization) することも、「今後の研究方向性」として極めて重要である。さらに、腫瘍由来エキソソームが示す免疫活性化作用と免疫抑制作用のバランスを決定づける分子メカニズムの解明や、内包する核酸の選択的搭載機構の特定など、基礎生物学的な問いが多く残されており、これらは次世代のエキソソーム医療を確立するための必須の課題である。

方法

本総説の執筆にあたり、細胞膜由来分泌小胞 (特にエキソソームおよびマイクロベシクル) の生物学的特性、免疫学的機能、および臨床応用に関する文献を網羅的に収集・分析するための体系的なアプローチを採用した。文献検索は、主要な学術データベースである PubMedWeb of Science、および Embase を用いて実施された。検索キーワードには、「exosome」、「microvesicle」、「ectosome」、「membrane vesicle」、「antigen presentation」、「tumor-derived vesicle」、「dendritic cell-derived exosome」などの用語を組み合わせた論理式を使用した。検索対象期間は、分泌小胞の初期の発見報告から本総説の執筆時点 (2009年) までに発表された査読付き原著論文およびレビュー論文とした。

文献の選定基準として、(1) 分泌小胞の単離・精製プロトコルが明確に記載されていること、(2) 電子顕微鏡観察、ウエスタンブロッティング、あるいはプロテオミクス解析 (質量分析) 等により小胞の物理的・化学的特性が評価されていること、(3) 免疫細胞 (T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー (NK; natural killer) 細胞など) または腫瘍細胞を用いた体外 (in vitro) あるいは生体内 (in vivo) の機能解析が行われていること、を重視した。特に、細胞培養上清や体液 (血漿、尿、腹水など) からのエキソソーム回収において、死細胞やアポトーシス小胞 (apoptotic bodies) の混入を排除するための超遠心分離法や密度勾配遠心法の妥当性を厳格に評価した。

さらに、エキソソームの単離・精製方法の標準化に関する記述においては、Thery et al. CurrProtocCellBiol 2006 に示された示差超遠心分離 (differential ultracentrifugation) プロトコルを基準とし、100,000g での超遠心沈殿ステップやショ糖密度勾配遠心法 (sucrose density gradient centrifugation) による精製効率の差異を体系的に比較した。また、細胞株の選定においては、ヒトおよびマウスの多様な免疫細胞株や腫瘍細胞株 (例えば、B細胞株、樹状細胞株、マクロファージ株、および各種がん細胞株) を用いた in vitro 実験データを網羅的に収集し、小胞分泌の構成的・誘導的プロファイルの違いを整理した。

臨床応用に関するセクションでは、樹状細胞由来エキソソーム (Dex; dendritic cell-derived exosome) を用いた第I相臨床試験 (例えば、悪性黒色腫や非小細胞肺がん (NSCLC; non-small cell lung cancer) を対象とした試験) のデータを統合した。これらの臨床試験において報告された主要評価項目 (安全性、忍容性) および副次評価項目 (抗腫瘍免疫応答、無増悪生存期間など) の解析手法を精査した。具体的には、生存率や無増悪生存期間の評価に用いられた Kaplan-Meier 法による生存曲線分析や、抗腫瘍効果の統計的有意性を検証するための log-rank テスト、あるいは細胞内サイトカイン染色や酵素結合免疫スポット (ELISPOT; enzyme-linked immunospot) アッセイによるT細胞活性化能の定量化データを比較検討した。