• 著者: Lee J, Vernon A, Park HJ, Kwon YV
  • Corresponding author: Young V. Kwon (Department of Biochemistry, University of Washington)
  • 雑誌: Journal of Extracellular Vesicles
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-04-01
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 42106918

背景

腫瘍細胞由来の細胞外小胞 (extracellular vesicles, EV) は、腫瘍の発生、進展、および遠隔転移において多面的な役割を果たすことが知られている (Kalluri et al. Science 2020)。EVはその物理的サイズと生合成経路に基づき、エンドソーム由来のエクソソーム (約100 nm)、細胞膜出芽由来のマイクロベシクル (50 nm〜1 µm)、さらに1 µmを超える大型細胞外小胞 (large EV) に分類される (vanNiel et al. NatRevMolCellBiol 2018)。このうち大型EVは、ラージオンコソーム (large oncosome) やサイトプラストとも呼ばれ、ヒトの進行がん細胞株やがん患者の循環血中で同定されているが、悪性腫瘍細胞がなぜこのような巨大なEVを活発に産生するのか、また生体内 (in vivo) でどのように機能するのかについては、これまで未解明な点が多く残されていた。特に、生理的条件下で大型EVの動態をリアルタイムに追跡し、ドナー細胞とレシピエント細胞の双方を遺伝学的に操作できる簡便な動物モデルが不足しているという課題が存在した。

cGAS (cyclic GMP-AMP synthase)-STING (stimulator of interferon genes) 経路は、サイトゾルに漏出した異常な二本鎖DNA (dsDNA) を感知して自然免疫応答を惹起する極めて重要なシグナル伝達経路である。がん細胞における染色体不安定性 (chromosomal instability, CIN) は、微小核の形成やサイトゾルへのDNA漏出を引き起こすため、cGAS-STING経路の主要な活性化要因となる (Bakhoum et al. Nature 2018)。活性化されたSTINGは、下流のTBK1 (TANK-binding kinase 1) やIKK (IκB kinase) を介してI型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を誘導するが、このcGAS-STING経路自体が大型EVの生合成を直接駆動するかどうかは不明であった。また、腫瘍由来EVが腫瘍DNAやcGASタンパク質を内包して周囲の免疫細胞に伝播し、免疫微小環境を修飾する可能性が示唆されていたが (Clancy et al. CellRep 2022)、その詳細な分子機構や全身性免疫応答における役割の全体像は未解明であり、大きな知識ギャップ (knowledge gap) が存在していた。

ショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) は、cGAS様受容体 (cGLR) やSTINGを含む自然免疫経路が高度に保存されており、哺乳類の複雑ながん免疫微小環境を模した遺伝学的解析を行う上で極めて優れたモデル生物である。特に、活性型Ras (RasV12) の発現と細胞極性遺伝子 scribble (scrib) の欠失を組み合わせた悪性腫瘍モデル (RasV12, scrib-/- クローン) は、侵攻性の増殖、周囲組織への浸潤、遠隔転移、およびマクロファージ様細胞 (haemocyte) の動員など、ヒトの悪性腫瘍と酷似した病態を示す。しかし、ショウジョウバエにおける腫瘍由来大型EVの存在やその生合成機構については、これまで報告されておらず、十分な知見が不足していた。本研究は、このショウジョウバエ悪性腫瘍モデルとヒトがん細胞株を相補的に活用し、cGAS-STING経路が大型EVの生合成を駆動する進化的保存性と、それによる全身性免疫応答の伝播機構を解明することを目指した。

目的

本研究は、ショウジョウバエの遺伝学的悪性腫瘍モデルおよび複数のヒトがん細胞株を用いて、腫瘍由来大型EVの生合成機構と、宿主免疫系との相互作用における役割を解明することを目的とした。具体的には、以下の4つの学術的問いを検証した。

第一に、ショウジョウバエRasV12, scrib-/- 悪性腫瘍モデルにおいて、腫瘍由来の大型EVが実際に産生されているかをin vivoおよびex vivoライブイメージング、電子顕微鏡観察により実証し、大型EV研究のための新規動物モデルとして確立する。

第二に、腫瘍から放出された大型EVが、宿主のマクロファージ様細胞 (haemocyte) を介して、遠隔臓器である脂肪体 (fat body) における全身性の抗菌ペプチド (antimicrobial peptide, AMP) 発現を誘導するシグナル伝達媒体として機能するかを検証する。

第三に、腫瘍細胞内における染色体不安定性 (CIN) とそれに伴うcGAS-STING経路の活性化が、大型EVの生合成を駆動する上流シグナルであるかを明らかにし、その下流で機能するキナーゼ群 (JNKおよびFAK) を同定する。特に、従来のTBK1/IKKβ依存的経路とは異なる、新規のシグナル軸の関与を検証する。

第四に、同定されたSTING-JNK-FAK軸を介した大型EV生合成機構が、ヒトがん細胞株 (MDA-MB-231、DU145、U87) においても進化的に保存されているかを検証し、がん治療における新規治療標的としての可能性を提示する。

結果

腫瘍由来大型EV生成の進化的保存性: ショウジョウバエの生体内において、RasV12, scrib-/- 腫瘍を保持する幼虫の体腔内でのみ、自由浮遊する多数のGFP陽性粒子が検出された (Figure 1a)。これに対し、野生型対照群やRasV12単独発現群の幼虫体内では、このような粒子は全く観察されなかった。ex vivoライブイメージングにより、RasV12, scrib-/- 腫瘍ディスクの辺縁部から、直径1〜2 µmのGFP陽性粒子が連続的に出芽・放出される動態がリアルタイムに確認された (Figure 1b)。電子顕微鏡観察では、RasV12, scrib-/- 腫瘍ディスクの表面において、細胞外マトリックスの崩壊に伴い、直径500 nm〜2 µmの球状ベシクル構造が多数出芽している像が捉えられた (Figure 1c)。これらの構造物には細胞核が含まれておらず、単なる遊離細胞ではないことが実証された。差次的遠心分離により単離された粒子の粒径解析を行ったところ、平均直径は1.74 µmであり (Figure 1f)、電子顕微鏡下で陥没したボール状の形態を示した (Figure 1g)。これは、哺乳類のがん細胞が産生する大型EVの特徴と完全に一致する。さらに、ヒトがん細胞株であるMDA-MB-231、DU145、U87においても、同様のサイズ分布 (約1.0 ± 0.68 µm) を持つ大型EVが活発に産生されていることが確認された (Figure 4a-c)。以上の結果から、悪性腫瘍細胞からの大型EVの生成は、無脊椎動物から哺乳類まで高度に保存された生物学的プロセスであることが示された。

大型EVによるhaemocyte依存的な全身性免疫応答の誘導: 腫瘍由来の大型EVが宿主の免疫系に与える影響を検証するため、RasV12, scrib-/- 腫瘍ディスクから単離した大型EV画分を野生型幼虫の体腔内に移植した (Figure 2b)。その結果、移植後18時間において、遠隔臓器である脂肪体における抗菌ペプチド遺伝子 (DptB, Drs, Def) のmRNA発現レベルが著しく上昇した (DptB: p<0.0001, Drs: p<0.0001, Def: p<0.0001, n=3 independent experiments) (Figure 2d)。これに対し、PBSを注入した模擬移植群、野生型ディスク由来画分、あるいはRasV12単独発現ディスク由来画分を移植した群では、抗菌ペプチドの発現誘導は認められなかった。また、同腫瘍ディスク由来の小型EV画分や、大型EVを遠心した後の上清の移植では、この免疫応答は再現されなかった (Figure S3)。次に、この大型EVによる遠隔免疫応答の媒介細胞を同定するため、Hml∆-GAL4>rpr 系統を用いてマクロファージ様細胞であるhaemocyteを遺伝学的に除去した幼虫を作製した (Figure 2e)。このhaemocyte除去幼虫に腫瘍由来大型EVを移植したところ、脂肪体におけるDptB、Drs、Defの発現誘導は完全に消失した (Figure 2f)。この結果は、腫瘍由来の大型EVがhaemocyteに直接作用し、それを介して全身性の液性免疫応答を惹起する必須のシグナル媒体であることを実証している。

染色体不安定性とSTING活性化による大型EV生合成の駆動: RasV12, scrib-/- 腫瘍細胞内における大型EV生合成の上流駆動メカニズムを解析した。腫瘍クローン細胞内を詳細に観察したところ、不規則な核形態に加え、クロマチンブリッジ、微小核、およびサイトゾルへのクロマチン漏出といった染色体不安定性 (CIN) の特徴的所見が顕著に観察された (Figure 3a)。これに伴い、腫瘍ディスク内においてSTING標的遺伝子 (Srg1, Srg2, Srg3) の発現が有意に上昇しており、cGAS-STING経路が定常的に活性化していることが示された (Figure 3b)。そこで、腫瘍細胞特異的にStingをRNAiによりノックダウンしたところ、CINの表現型は維持されたものの、STING標的遺伝子の発現上昇は完全に抑制された。重要なことに、Stingのノックダウンにより、腫瘍ディスクからの大型EV産生量が有意に低下し (p<0.001, n=3 independent experiments) (Figure 3c, d)、同時に宿主脂肪体における抗菌ペプチドの発現誘導も著しく減弱した (Figure 3f)。さらに、有糸分裂チェックポイント遺伝子 Bub3 のノックダウンにより人為的にCINを誘発したRasV12発現細胞では、微小核の形成とともに大型EVの産生が有意に増加した (Figure S8)。これらのデータは、腫瘍細胞内のCINに起因するサイトゾルDNA応答が、STING経路を介して自己分泌的に大型EVの生合成を駆動することを示している。

TBK1/IKKβ非依存的なJNK-FAK軸を介した大型EVの産生: STINGの下流で大型EVの生合成を制御する分子内シグナルカスケードを探索した。ショウジョウバエにおいて、TBK1の最近縁であるIKKε、あるいはIKKβ、NF-κB (Relish) のノックダウンは、腫瘍からの大型EV産生量に影響を与えなかった (Figure S6a)。一方で、RasV12, scrib-/- 腫瘍細胞内では、リン酸化JNK (pJNK) およびリン酸化FAK (pFAK) のシグナル強度が、STING依存的に著しく上昇していた (Figure 5a-d)。腫瘍細胞においてJNK (bsk) のノックダウン、ドミナントネガティブ体 (BskDN) の発現、またはFakのノックダウンを行うと、大型EVの産生量が劇的に減少した (p<0.01, n=6 replicates) (Figure 5e)。ex vivoライブイメージング解析により、腫瘍細胞の辺縁部では激しい膜ブレビングダイナミクスが観察されたが、これはSTINGまたはJNKのノックダウンにより完全に消失した (Figure 5f, g)。なお、アポトーシス実行因子である各種カスパーゼ (Dronc, Drice, Dcp1) のノックダウンは大型EV産生に影響を与えず (Figure S6b)、本機構が細胞死とは独立した能動的プロセスであることが示された。このシグナル軸の保存性をヒトがん細胞株で検証したところ、MDA-MB-231細胞 (n=3 cells) においてpoly(dA:dT)刺激によりpJNKの上昇が確認され、JNK阻害剤 (SP600125) およびFAK阻害剤 (defactinib) の添加により、dsDNA誘発性の大型EV産生が有意に抑制された (Figure 5h, i)。一方、TBK1阻害剤 (GSK8612) は大型EV産生を抑制しなかった (Figure S9)。これにより、STINGが従来のTBK1/IKKβ経路を介さず、進化的に保存されたJNK-FAK軸を介して細胞膜の動態を制御し、大型EVの生合成を駆動するという新規のシグナル経路が明らかになった。

大型EVによるcGASの内包とhaemocyteのSTING活性化: 腫瘍由来の大型EVがどのようにしてhaemocyteにおいてシグナルを伝達するかを検証した。ヒトMDA-MB-231細胞 (n=3 cells) 由来の大型EV画分を解析したところ、cGASタンパク質が大型EV内に豊富に内包されていることが免疫染色およびウェスタンブロットにより確認された (Figure 6a, b)。さらに、細胞にpoly(dA:dT)またはISD (interferon stimulatory DNA) をトランスフェクションしてcGAS-STING経路を活性化させると、放出される大型EV内のcGAS搭載量が有意に増加した (2.5-fold increase、p<0.05, n=3 replicates) (Figure 6c)。ショウジョウバエモデルにおいて、RasV12, scrib-/- 腫瘍由来の大型EV画分を野生型幼虫に移植すると、回収されたhaemocyte内においてSTING標的遺伝子 (Srg1, Srg2, Srg3) の発現が有意に誘導された (p<0.0001) (Figure 6e)。しかし、haemocyte特異的にStingをノックダウンした幼虫 (Hml∆>Sting-i) では、このSTING標的遺伝子の活性化が完全に抑制された。さらに、haemocyteにおけるStingのノックダウンは、大型EV移植によって誘導される脂肪体での抗菌ペプチド (Drs, Dpt, Def) の発現上昇を有意に抑制した (p<0.05) (Figure 6f)。これらの結果は、腫瘍細胞から放出された大型EVが、cGAS/DNA複合体などのカーゴをhaemocyteへ輸送し、haemocyte内のSTING経路を直接活性化することで、全身性の免疫応答を惹起していることを示している。

考察/結論

本研究は、染色体不安定性 (CIN) を有する悪性腫瘍細胞において、cGAS-STING経路が自己分泌的に大型細胞外小胞 (large EV) の生合成を駆動し、これが宿主の免疫細胞に作用して全身性の免疫応答を伝播するという、進化的に高度に保存された新規の腫瘍-宿主間コミュニケーション機構を明らかにした。

先行研究との違い: 従来の知見では、cGAS-STING経路の活性化は主にTBK1-IRF3軸を介したI型インターフェロン産生や、IKK-NF-κB軸を介した炎症性サイトカイン産生を誘導し、細胞自律的な抗腫瘍免疫に寄与すると考えられてきた。しかし、本研究はこれまでの報告と異なり、STINGがTBK1やIKKβを介さずに、JNKおよびFAKのリン酸化を介して細胞膜のブレビングダイナミクスを直接制御し、物理的に巨大なEVの放出を促進するという、非標準的なシグナル伝達経路の上流ドライバーであることを初めて示した。この知見は、STINGの機能が単なる可溶性サイトカインの放出にとどまらず、細胞骨格および細胞膜の動態制御を介した物理的な小胞輸送にまで及ぶことを示している。

新規性: 本研究で初めて、無脊椎動物であるショウジョウバエの悪性腫瘍モデルにおいて、腫瘍由来大型EV (ラージオンコソーム様構造体) の存在を実証し、そのin vivoでの動態をリアルタイムに追跡可能な遺伝学的プラットフォームを新規に確立した。さらに、STING-JNK-FAK軸を介した大型EVの生合成機構が、約7億年前に分岐したショウジョウバエとヒトのがん細胞の間で高度に保存されていることを解明した。脊椎動物で獲得されたI型インターフェロンシステムとは異なり、JNK経路は早期後生動物から保存されているため、本研究で同定されたSTING-JNK-EV軸は、インターフェロン誕生以前から存在する、より原始的かつ本質的な自然免疫応答の出力形式であると考えられる。また、本研究は、この経路が細胞内の有害なサイトゾルDNAを大型EVとして細胞外へ排出する「DNAクリアランス機構」としても機能するという新規の仮説を提示している。

臨床応用: 本研究の知見は、がん治療における新たな translational な臨床的意義を持つ。腫瘍由来の大型EVは、がん患者の血中において循環腫瘍DNA (ctDNA) の主要な担体であることが知られており (Vagner et al. JExtracellVesicles 2018)、がんの早期診断やリキッドバイオプシーの標的として極めて有用である。STING-JNK-FAK軸を標的として大型EVの産生を薬理学的に制御することは、腫瘍から宿主免疫系へのシグナル伝播を修飾し、がん免疫療法の治療効果を最大化するための新規な治療戦略につながる可能性がある。例えば、大型EVの産生を抑制することで、腫瘍による全身性の炎症状態やプレメタスタティックニッチ (転移前微小環境) の形成を阻害できる可能性がある (Patras et al. CancerCell 2023)。

残された課題: 今後の検討課題として、ショウジョウバエモデルとヒト病態における免疫応答の相違点の精査が挙げられる。ショウジョウバエでは大型EVがToll経路やIMD経路を介して抗菌ペプチドを誘導するが、哺乳類においては腫瘍関連マクロファージ (TAM) や循環単球におけるI型インターフェロンおよび炎症性サイトカインの産生挙動を詳細に解析する必要がある。また、大型EVに内包される詳細なプロテオームやゲノムDNAカーゴの網羅的質量分析、およびそれらがレシピエント細胞に取り込まれる際の膜融合・エンドサイトーシスの具体的な受容体メカニズムの解明が、今後の重要な研究方向性である。

方法

ショウジョウバエモデルの構築と大型EVの可視化: 遺伝学的モザイク解析法である MARCM (mosaic analysis with a repressible cell marker) 法を用いて、GFP (green fluorescent protein) で標識されたRasV12, scrib-/- 腫瘍クローンを幼虫の眼・触角ディスクに誘導した。対照群として、野生型クローンである FRT82B (flippase recognition target 82B) およびRasV12単独発現クローンを誘導した幼虫を用いた。生体内の大型EVを追跡するため、タイルスキャン共焦点顕微鏡を用いてライブ幼虫内のGFP陽性粒子を可視化した。さらに、解剖した眼ディスクを用いてex vivoライブイメージングを実施し、ディスク表面からのEV放出動態を観察した。透過型電子顕微鏡 (TEM) を用いて、ディスク表面および単離された大型EVの超微細構造を解析した。

大型EVの単離・濃縮および移植実験: 20〜30個の幼虫眼ディスクをex vivo培養液中で4時間培養し、その上清を回収した。差次的遠心分離法により、まず500 × gで5分間遠心して細胞成分を除去し、その上清を3000 × gで10分間遠心して大型EV画分をペレットとして回収した。対照として、100,000 × gで30分間遠心して小型EV (small EV) 画分を回収した。単離した大型EV画分を、マイクロインジェクターを用いて野生型またはDrs-GFPレポーター遺伝子を持つ初期3齢幼虫の体腔内に微量注入 (30〜50 nL) し、18時間後に脂肪体における免疫応答を評価した。

遺伝学的介入と免疫応答解析: haemocyte特異的ドライバー (Hml∆-GAL4) を用いて細胞死誘導因子 Reaper (Rpr) を発現させ、haemocyteを特異的に除去した幼虫を作製した。また、腫瘍細胞内またはhaemocyte内において、Sting、bsk (JNK)、Fak、IKKε、IKKβ、Relish (NF-κB)、および各種カスパーゼ (Dronc, Drice, Dcp1) のRNAi (RNA interference) によるノックダウンを実施した。脂肪体およびhaemocyteにおける抗菌ペプチド (DptB, Drs, Def, AttA, Mtk, Dro) およびSTING標的遺伝子 (Srg1, Srg2, Srg3) の発現レベルは、RpL32を内部標準とした定量RT-PCR (qRT-PCR) 法により定量した。

ヒトがん細胞株を用いた検証: ヒト乳がん細胞株 (MDA-MB-231)、前立腺がん細胞株 (DU145)、および膠芽腫細胞株 (U87) を使用した。cGAS-STING経路の活性化は、dsDNAアナログであるpoly(dA:dT) (0.5 µg/mL) または2’3’-cGAMP (1.0 µg/mL) のトランスフェクションにより誘導した。大型EVの定量には、NanoLuc (NLuc) ルシフェラーゼを安定発現させた細胞株を構築し、単離した大型EV画分の発光強度を測定する新規測定系を確立した。また、FITC標識コレラタキシンBサブユニット (CTxB) による膜染色と画像解析を併用した。シグナル阻害剤として、STING阻害剤 H-151 (2 µM)、JNK阻害剤 SP600125 (10 µM) および CC-401 (5 µM)、FAK阻害剤 PF431396 (5 µM) および defactinib (5 µM)、TBK1阻害剤 GSK8612 (10 µM) を使用した。

統計解析: すべてのデータは3回以上の独立した実験 (n=3 independent experiments) から得られた平均値 ± 標準誤差 (SEM) として表記した。2群間の比較にはStudent’s t-test (t検定) を、多群間の比較には一元配置分散分析 (one-way ANOVA) を用い、p<0.05を統計学的有意差の基準とした。解析にはGraphPad Prism 9を使用した。