• 著者: Chenghui Yang, Zhen Wang, Lili Li, Jian Huang
  • Corresponding author: Jian Huang (Key Laboratory of Tumor Microenvironment and Immune Therapy of Zhejiang Province, Second Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, China; drhuangjian@zju.edu.cn)
  • 雑誌: Journal for ImmunoTherapy of Cancer
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-10-23
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 34716206

背景

がんの遠隔転移プロセスにおいて、一次腫瘍が放出する液性因子や細胞外小胞が、将来の転移先臓器にあらかじめ好適な微小環境を構築する。この微小環境は前転移ニッチ(pre-metastatic niche)と呼ばれ、転移成立における極めて重要な段階である。Peinado et al. NatRevCancer 2017 などの先行研究により、前転移ニッチの形成は骨髄由来細胞の動員や血管透過性の亢進など、多段階の宿主反応を伴うことが示されてきた。特に好中球は、このニッチ形成において中心的な役割を果たす免疫細胞として注目されている。好中球が放出する好中球細胞外トラップ(NETs: neutrophil extracellular traps)は、本来は感染防御機構として Brinkmann et al. Science 2004 により発見されたが、近年ではがんの進展や転移促進にも深く関与することが明らかになっている。例えば、Albrengues et al. Science 2018 は炎症によって惹起されたNETsが休眠状態のがん細胞を再活性化させることを報告し、Yang et al. Nature 2020 はNETsのDNA成分がCCDC25受容体を介してがん細胞の遊走と転移を直接的に誘導することを示した。

しかしながら、腫瘍微小環境における好中球の高度な不均一性や、前転移ニッチ形成における詳細な役割については未解明な点が多く残されている。好中球は従来、寿命が短くミトコンドリアの極めて少ない細胞とみなされてきたため、その代謝制御やミトコンドリアの機能的役割については長年研究が手薄であり、知見が著しく不足していた。好中球の特定のサブセットである高齢好中球(aged neutrophil: Naged)は、CXCR4+CD62Llow(CXCR4: C-X-C motif chemokine receptor 4, CD62L: L-selectin)の表面抗原発現パターンを持ち、Casanova et al の研究によって概日リズムに伴う生理的な循環・骨髄回帰システムとして定義された。しかし、がんの病態、特にトリプルネガティブ乳がん(TNBC: triple-negative breast cancer)の肺転移において、このNagedがどのように前転移ニッチに動員され、どのような分子機構で転移を促進するのかは不明であった。従来のNETs研究は主に活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)やPAD4(peptidylarginine deiminase 4)に依存して細胞死を伴う「致死型NETs(suicidal NETs)」を対象としており、好中球の生存を維持したまま放出される「生存型NETs(vital NETs)」の形成におけるミトコンドリアの寄与や、その制御機構に関する知見は決定的に不足しており、大きな knowledge gap が存在していた。本研究は、乳がん肺転移におけるNagedの動員機構と、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を主成分とする生存型NETs形成の分子軸を解明し、この知識ギャップを埋めることを目的とした。

目的

本研究の目的は、乳がんの肺前転移ニッチ形成期において、腫瘍関連高齢好中球(Naged)が肺組織へ蓄積する動態を明らかにし、Nagedがミトコンドリア依存性の生存型NETs(vital NETs)を形成して循環腫瘍細胞(CTCs: circulating tumor cells)を捕捉・定着させる分子メカニズムを解明することである。

具体的には、乳がん患者206名の臨床検体、4T1同所性移植マウスモデル、および自発性乳がんモデルであるMMTV-PyMT(mouse mammary tumor virus-polyoma middle T antigen)マウスを用いて、Naged(CXCR4+CD62Llow)の時系列的な蓄積パターンを検証する。さらに、トランスクリプトーム解析によりNagedの独自の遺伝子発現プロファイルを同定し、SIRT1(sirtuin 1)を介した核の過分節化制御(SIRT1-C/EBPε-LBR軸、C/EBPε: CCAAT/enhancer-binding protein epsilon, LBR: lamin B receptor)および選択的マイトファジー(mitophagy)による生存期間延長メカニズムを突き止める。また、Nagedが放出するNETsが、従来のPAD4依存的な核DNA放出とは異なり、ミトコンドリア透過性移行孔(mPTP: mitochondrial permeability transition pore)の開口を介したmtDNA放出であることを実証する。最終的に、腫瘍分泌性のNAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase)が好中球のSIRT1を活性化する上流シグナルであることを同定し、NAMPT阻害剤(FK866)、SIRT1阻害剤(Vitamin B3)、マイトファジー阻害剤(Mdivi-1: mitochondrial division inhibitor 1)などの薬理学的介入、あるいは造血幹細胞移植(HSCT: hematopoietic stem cell transplantation)を用いた遺伝学的介入により、このNAMPT-SIRT1-Naged-mtNETs軸が乳がん肺転移の新規治療標的として臨床応用可能であるかを検証することを目的とする。

結果

乳がん肺前転移ニッチにおけるNagedの時系列的蓄積: 4T1同所性移植マウスモデルにおいて、腫瘍接種後の経過を追ったところ、肺組織における全免疫細胞(CD45+)に対する好中球(CD11b+Ly-6G+)の割合は、腫瘍進展に伴い有意に増加した(p<0.001)(Fig 1A)。Ly-6G抗体を用いた好中球除去実験では、腫瘍接種後早期(0-2週)の好中球除去は4T1およびMMTV-PyMTモデル(n=10 mice/group)のいずれにおいても肺転移を有意に抑制したが(p<0.01)、後期(5週以降)の介入では転移抑制効果が得られなかった(Figure 1B)。この結果は、前転移ニッチ形成期における好中球の存在が転移定着に必須であることを示している。肺浸潤好中球の核形態をGiemsa染色および透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ニッチ形成期(2週目)において核の過分節化を示す高齢好中球(Naged: CXCR4+CD62Llow)の割合が有意に増加していた(p<0.001)(Figure 1C, D)。臨床検体解析において、乳がん患者(特にトリプルネガティブ乳がん:TNBC患者)の末梢血中のNaged割合は、乳腺線維腺腫患者と比較して有意に高値を示した(p<0.001)(Figure 1I, J)。

Nagedによる腫瘍細胞の捕捉と肺定着促進: Nagedはin vitroにおいて4T1がん細胞の増殖や生存に直接影響を与えなかったが(p>0.05)、走査型電子顕微鏡(SEM)および免疫蛍光染色により、Nagedが放出するNETsを介してがん細胞を物理的に捕捉することが確認された(Figure 2A, B)。マウス肺転移病変の多重免疫染色において、Ly-6G+CD62LlowのNagedが好中球エラスターゼ(NE)陽性のNETsを形成し、GFP+腫瘍細胞と直接接触している像が観察された(Figure 2C)。ヒト乳がん肺転移組織においても、正常肺組織と比較してMPO+CD62Llow好中球およびNE+のNETs形成が有意に増加していた(p<0.001)(Figure 2D-F)。in vivoイメージング解析において、ルシフェラーゼ発現4T1細胞とともにNagedを静脈内投与したマウス(n=5 mice/group)は、Non-Aged好中球を投与した群と比較して、肺における腫瘍細胞の保持を示す生物発光強度が有意に高値であった(p<0.001)(Figure 2G)。

Nagedのトランスクリプトーム特性と独自のサブセット同定: 肺組織から分取した腫瘍関連Naged、Non-Aged、およびLPS誘発性炎症関連高齢好中球のRNA-seq解析(n=3 replicates/group)を実施したところ、主成分分析(PCA)においてこれら3群は完全に異なる遺伝子発現プロファイルを示した(Figure 3A)。遺伝子セット富化解析(GSEA)により、Nagedではアポトーシス抑制経路や細胞接着分子の発現が有意に上昇していることが明らかになった(Figure 3B)。NagedにおけるN1/N2マーカー遺伝子群の発現は混在しており、従来のN1/N2分類には当てはまらなかった(Figure 3C)。また、不連続密度勾配遠心法による解析では、低密度好中球(LDN)と高密度好中球(HDN)の間でNagedの割合に有意差はなく(p>0.05)、Nagedは従来のPMN-MDSC(polymorphonuclear myeloid-derived suppressor cell)とも異なる独自の好中球サブセットであることが示された(Figure 3D-G)。

SIRT1-C/EBPε-LBR軸によるNagedの核過分節化制御: トランスクリプトーム解析から、Nagedの形成を制御する鍵因子としてヒストン脱アセチル化酵素SIRT1が同定された(Figure 4A, B)。SIRT1の発現は、マウスおよびヒトのNagedにおいてNon-Aged好中球と比較して有意に高発現していた(Figure 4C)。in vitroにおいて、骨髄由来好中球にSIRT1アゴニストSRT1720を添加すると、Naged(CXCR4+CD62Llow)の割合および核の過分節化が用量依存的に増加した(p<0.001、1.8-fold increase)(Figure 4D, E)。Nagedでは核膜裏打ちタンパク質であるLamin B Receptor(LBR)の発現が有意に上昇していた(Figure 4F, G)。好中球においてLBRをsiRNAによりノックアウトすると、SRT1720刺激による核の過分節化およびNaged化が完全に消失した(Figure 4I, J)。共沈降(Co-IP)およびクロマチン免疫沈降(ChIP)解析により、SIRT1は転写因子C/EBPεを脱アセチル化し、脱アセチル化されたC/EBPεがLBRプロモーター領域に高効率に結合してLBRの転写を活性化することが実証された(Figure 4K-M)。

SIRT1依存性マイトファジーによるNagedの生存期間延長: Seahorseアナライザーを用いた代謝解析において、NagedはNon-Aged好中球と比較して酸素消費率(OCR)および解糖率(ECAR)が著しく低下していた(p<0.001)(Figure 5A, B)。TEM観察では、Naged(n=3 replicates/group)の細胞質内に多数の自食胞(autophagic vesicles)が確認された(Figure 5D)。NagedではLC3B-IIの発現上昇を伴うオートファジー活性の亢進が認められ(Figure 5E)、SIRT1活性化が選択的なマイトファジー(mitophagy)を誘導していることが示された(Figure 5G, H)。in vitro培養において、NagedはNon-Aged好中球よりも有意に長い生存期間を示した(p<0.001、2.2-fold increase)(Figure 5I, J)。SRT1720によって誘導される好中球の寿命延長効果は、マイトファジー阻害剤Mdivi-1(10 uM)の併用によって完全に阻害された(p<0.001)(Figure 5K)。

mPTP開口を介したミトコンドリアDNA依存性生存型NETsの形成: Nagedが形成するNETsは、PMA刺激による従来の致死型NETs(suicidal NETs)とは形態的・分子機構的に異なっていた。NagedのNETs形成は、NADPHオキシダーゼ(Nox)活性やPAD4発現、およびヒストンH3のシトルリン化(cit-Histone H3)を伴わなかった(p>0.05)(Supplemental Figure 6A-C)。SRT1720刺激により形成されるNETsは針状(needle-like)の構造を呈し、細胞膜の破裂を伴わず好中球は生存を維持していた(Figure 6B, Supplemental Figure 6E)。この生存型NETsの構成成分をPCR解析したところ、核DNAではなくミトコンドリアDNA(mtDNA)が極めて優位に検出された(Figure 6D, E)。SRT1720刺激は好中球(n=3 replicates/group)のミトコンドリア透過性移行孔(mPTP)の開口を誘導し(Figure 6F)、mPTP阻害剤であるCiclosporin AまたはTRO19622の添加により、SRT1720誘発性の生存型NETs形成および上清中の細胞外DNA(cfDNA)量が有意に抑制された(p<0.001、3.5-fold decrease)(Figure 6G, H)。

腫瘍分泌性NAMPTによるSIRT1活性化と治療介入効果: 骨髄再構築モデル(shSIRT1 HSCT、n=8 mice/group)において、肺組織におけるNagedの蓄積、核の過分節化、およびNETs形成が有意に減少し(p<0.001)(Figure 7A-C)、肺転移結節数が劇的に減少した(p<0.001)(Figure 7E)。乳がん細胞は無血清条件下でNAMPTを培地中に高濃度に分泌し(Figure 7K)、リコンビナントNAMPT(rNAMPT)刺激は好中球(n=3 replicates/group)のSIRT1発現およびNaged化を誘導した(Figure 7I, J)。臨床検体において、乳がん患者の血清NAMPTレベルおよびがん組織におけるNAMPT発現は、線維腺腫と比較して有意に高値であり(p<0.001)(Figure 7G, H)、TCGAデータベース解析からNAMPT高発現は乳がん患者の無遠隔転移生存期間(DMFS)の短縮と有意に相関することが示された(Figure 7F)。 4T1移植マウス(n=8 mice/group)に対し、NAMPT阻害剤FK866、SIRT1阻害剤Vitamin B3(ナイアシンアミド)、またはMdivi-1を2週間投与した結果、肺におけるNagedの蓄積が有意に抑制され(p<0.001)(Figure 7N)、長期投与により肺転移が有意に減少した(p<0.001、4.2-fold decrease)(Figure 7O)。さらに、4T1細胞においてNAMPTをノックダウンした株(shNAMPT)を移植したマウス群(n=8 mice/group)でも、肺組織へのNaged蓄積および肺転移が有意に抑制された(p<0.001)(Figure 7P, Q)。

考察/結論

先行研究との違い: 従来の好中球およびNETs研究は、主にPAD4によるクロマチン脱凝集と細胞死を伴う致死型NETs(suicidal NETs)に焦点を当ててきた。これに対し、本研究は好中球の生存を維持したまま放出される非致死性の「生存型NETs(vital NETs)」を同定し、その主成分がミトコンドリアDNA(mtDNA)であることを明らかにした点で、これまでの報告と決定的に異なる。好中球が乳がんの肺転移を促進することを示した Wculek et al. Nature 2015Coffelt et al. Nature 2015 の知見と比較して、本研究は高齢好中球(Naged)という特定のサブセットが前転移ニッチ形成の主役であること、そしてその制御にミトコンドリア代謝およびマイトファジーが直接関与しているという新たなパラダイムを提示しており、先行研究の知見を大きく拡張している。

新規性: 本研究は、腫瘍分泌性の代謝酵素NAMPTが、前転移ニッチにおける好中球のSIRT1を活性化するという「腫瘍-骨髄-前転移ニッチ」を繋ぐ新規の分子軸(NAMPT-SIRT1-Naged-mtNETs軸)を本研究で初めて実証した。SIRT1がC/EBPεの脱アセチル化を介してLBRの転写を促進し、核の過分節化を誘導するエピジェネティックな制御機構、およびSIRT1依存的な選択的マイトファジーが好中球の寿命を延長させて肺への持続的な蓄積を可能にするメカニズムは、これまで報告されていない完全に新規の知見である。さらに、mPTPの開口がmtDNA放出のゲートキーパーとして機能し、これがPAD4非依存的に生存型NETsを形成させるという発見は、免疫学および腫瘍生物学における極めて先駆的な成果である。

臨床応用: 本研究の成果は、乳がん肺転移の予防および治療における「bench-to-bedside(トランスレーショナル)」な臨床応用に直結する。特に、SIRT1阻害作用を有するVitamin B3(ナイアシンアミド)は、すでに臨床現場で安全に使用されている経口薬であり、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術後補助療法として肺転移を予防するための極めて安価かつ低毒性な治療オプションとなる可能性をヘテロな治療戦略として秘めている。また、NAMPT阻害剤であるFK866やmPTP阻害剤の併用は、CTCsを標的とした新たな転移阻害戦略として有望である。さらに、患者末梢血中のNaged(CXCR4+CD62Llow)比率や血清NAMPTレベルの測定は、乳がん患者における肺転移リスクを予測する非侵襲的なバイオマーカーとしての臨床的有用性が期待される。

残された課題: 今後の検討課題として、いくつかの制限事項(limitation)が残されている。第一に、ヒト好中球はin vitroでの生存期間が極めて短く、遺伝子導入に対する耐性が低いため、LBRのノックアウト実験などの詳細な分子メカニズムの検証がマウス骨髄由来好中球に依存している点である。ヒト好中球における直接的な実証には、より高度な遺伝子導入技術やオルガノイド共培養システムの導入が必要である。第二に、Nagedの転移促進作用が乳がんに特異的な現象であるのか、あるいは他のがん種にも一般化できるのかという点である。本研究の予備検討では、B16F10メラノーマモデルでは肺にNagedの蓄積が認められた一方、LLC肺がんモデルでは認められず、腫瘍の分泌プロファイルに依存する可能性が示唆されており、今後の詳細な検証が求められる。第三に、好中球特異的(LysM-Creなどを用いた)SIRT1条件付きノックアウトマウスを用いたin vivoでの検証が未完であり、造血幹細胞移植モデル(shSIRT1 HSCT)の結果をさらに補強するための遺伝学的アプローチが今後の課題である。最後に、放出されたmtDNAを主成分とするNETsが、前転移ニッチにおいてT細胞などの獲得免疫系をどのように抑制するのか、その免疫微小環境全体に与える影響の全貌は未解明であり、今後の研究方向性として重要である。

方法

動物モデルと臨床検体: 本研究では、6-8週齢の野生型BALB/cマウス、BALB/cヌードマウス、および自発性乳がんモデルであるFVB/N-Tg (MMTV-PyMT) マウスを使用した。4T1乳がん細胞(1 x 10^5 cells)をBALB/cマウスの第4乳腺脂肪体に同所性移植し、移植後5週間までの肺組織および末梢血における好中球動態を解析した。生理的概日リズムによる好中球の変動を排除するため、マウスのサンプリングは午前9時に標準化して実施した。臨床検体として、浙江大学医学部第二附属病院にてインフォームドコンセントを得て採取された乳がん患者206名および乳腺線維腺腫患者の末梢血、ならびに乳がん組織、肺転移組織、正常肺組織を使用した。

フローサイトメトリーと細胞分離: マウス肺組織をコラゲナーゼIV(1 mg/mL)で37℃、2時間消化し、単一細胞懸濁液を調製した。好中球はCD45+CD11b+Ly-6G+として定義し、高齢好中球(Naged)はCXCR4+CD62Llow、非高齢好中球(Non-Aged)はCXCR4+CD62Lhighの表面抗原パターンに基づき、FACSAria IIを用いて分取した。ヒト末梢血からは、CD45+CD11b+CD66b+CXCR4+CD62LlowをヒトNagedとして同定した。低密度好中球(LDN)および高密度好中球(HDN)の分離は、Histopaque-1077およびHistopaque-1119を用いた不連続密度勾配遠心法により実施した。

遺伝学的介入(造血幹細胞移植モデル): 骨髄特異的なSIRT1ノックダウンマウスを構築するため、ドナーBALB/cマウスの骨髄からCD117(c-kit)陽性造血幹細胞(HSCs)を磁気ビーズ(MACS)により分離した。このHSCsにshSIRT1(またはshControl)レンチウイルスを感染(MOI=100)させた後、致死量放射線照射(7.0 Gy分割照射)を施したレシピエントBALB/cマウスに尾静脈移植(2 x 10^6 cells/mouse)し、骨髄再構築(shSIRT1 HSCT)を行った。

ミトコンドリア機能および代謝解析: 酸素消費率(OCR)および細胞外酸性化率(ECAR)は、Seahorse XFe96アナライザーを用いて測定した。分取した好中球(3 x 10^5 cells/well)をプレートに接着させ、オリゴマイシン(1 uM)、FCCP(1 uM)、ロテノン/アンチマイシンA(2.5 uM)を順次添加してミトコンドリア呼吸能を評価した。マイトファジーは、MitoTrackerを用いたフローサイトメトリーおよび透過型電子顕微鏡(TEM)による自食胞の観察により評価した。mPTPの開口はCalcein-AM染色法を用いて評価した。

in vitro遺伝子ノックアウト: マウス骨髄由来好中球に、HiCEP電極システムを用いてLBR(Lamin B Receptor)に対するsiRNA(100 nM)またはsiControlをエレクトロポレーション(300 V, 500 uF, 5 ms)により導入した。細胞の生存を維持するため、GM-CSF(0.5 ug/mL)を添加して24時間培養した。

統計解析: 2群間の比較にはStudent’s t-testまたはMann-Whitney U testを用い、多群間比較にはone-way ANOVA(一元配置分散分析)またはtwo-way ANOVAを用いた。生存解析にはKaplan-Meier法およびlog-rank検定を用いた。統計的有意差はp<0.05として定義した。