• 著者: Xin Li, Arlind B. Mara, Shawn C. Musial, Evelyn Bruner, Remi Gratien, et al., Claudia V. Jakubzick
  • Corresponding author: Claudia V. Jakubzick (Department of Microbiology and Immunology, Geisel School of Medicine at Dartmouth, Hanover, NH, USA; claudia.jakubzick@dartmouth.edu)
  • 雑誌: Nature Immunology
  • 発行年: 2024
  • Epub日: 2024-04-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 38698086

背景

組織常在マクロファージは、肺(肺胞マクロファージ (AM) および間質マクロファージ (IM))、脾臓、肝臓、骨、皮膚、腸など、様々な組織ニッチにおいて特異的な機能を発揮する。しかし、IMの機能的多様性は、古典的なM1(炎症促進性)/M2(抗炎症性)の二分類では不十分であり、その活性化状態に帰されることが多く、系統的な解析は未完であった。近年、単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq) 技術の進展により、IMの多様性に関する研究が進められてきた。例えば、Chakarov et al. Science 2019やUral et al. Cell Rep 2020などのIMアトラス研究は、Lyve1⁺MHC-II^loとLyve1⁻MHC-II^hiという基本的な不均一性を確立した。また、Gibbings et al. AmJRespirCellMolBiol 2017は、定常状態のマウス肺に3種類のユニークな間質マクロファージが存在することを報告している。しかし、ケモカイン発現プロファイルに基づくIMサブタイプ特異化とその機能的意義は未解明なままであった。この分野には知識のギャップが残されている。

三次リンパ組織 (tertiary lymphoid structure, TLS) は、癌、慢性炎症、自己免疫疾患において形成される異所性のリンパ節様構造であり、癌免疫療法の予後バイオマーカーとして臨床的に関連性が高い。TLS形成における組織化細胞の同定については、間質細胞とマクロファージのどちらが主要な役割を果たすかという議論があった。特に、肺におけるTLS形成は、アレルギー性炎症や感染症において重要な役割を果たすことが知られている。例えば、気管支関連リンパ組織 (BALT) は、呼吸器感染症に対する防御応答において中心的な役割を担う。しかし、これらの構造の形成を駆動する特定の細胞集団、特にマクロファージサブセットの寄与については、詳細なメカニズムが不足していた。

本研究は、Dartmouth Jakubzickグループ(組織マクロファージ研究の権威)によって行われ、IMのケモカインプロファイリングを通じて、TLS形成における細胞起源を解明することを目的としている。従来のM1/M2分類では捉えきれないIMの機能的多様性を、ケモカイン発現という新たな視点から体系的に解析し、炎症時の免疫細胞動員と三次リンパ組織形成におけるIMの中心的役割を明らかにすることが期待された。このアプローチは、組織マクロファージの不均一性に関する知識ギャップを埋め、新たな治療戦略の開発に繋がる可能性を秘めている。

目的

本研究の目的は、以下の5点に集約される。

  1. 肺間質マクロファージ (IM) の包括的scRNA-seq転写プロファイリングとケモカイン発現サブセット (IMck0-9) の同定: 定常状態および炎症状態のマウス肺IM 26,267細胞を対象に、高解像度scRNA-seq解析を実施し、ケモカイン発現パターンに基づいてIMの新たな分類体系を確立することを目指した。これにより、従来のM1/M2分類では捉えきれないIMの機能的多様性を明らかにする。

  2. 組織間および種間でのIMckサブセットの保存性解析: 同定されたIMckサブセットが、肺以外の組織(脾臓、皮膚、腸、リンパ節)や種間(マウスとヒト)で保存されているかを検証し、その進化的重要性と普遍的な機能的役割を評価する。

  3. Pf4cre EYFP系統を用いたCD206ʰⁱ IMの可視化と条件付き枯渇: Pf4cre (Platelet Factor 4 Cre) EYFPレポーターマウスを用いてCD206ʰⁱ IMを特異的に標識し、Pf4cre × iDTR (inducible diphtheria toxin receptor) 系統を用いたジフテリア毒素A (DTA) 投与による条件付き枯渇実験系を確立する。これにより、CD206ʰⁱ IMのin vivoでの機能解析を可能にする。

  4. HDMアレルゲンおよびMycoplasma pneumoniae感染モデルにおけるCD206ʰⁱ IMの機能欠損表現型の解析: ハウスダストダニ (HDM) アレルゲン誘導性炎症モデルおよびMycoplasma pneumoniae感染モデルにおいて、CD206ʰⁱ IMの枯渇が炎症性細胞浸潤、三次リンパ組織形成、および病原体クリアランスに与える影響を評価する。

  5. iBALT形成および胚中心B細胞生成におけるCD206ʰⁱ IM/IMck8の役割の解明: 誘導性気管支関連リンパ組織 (iBALT) 形成および胚中心B細胞生成におけるCD206ʰⁱ IM、特にCXCL13を産生するIMck8サブセットの中心的役割を、遺伝学的アプローチと機能阻害実験を用いて確立する。

これらの目的を達成することで、協調的なケモカイン産生によるIMの機能的特殊化という新たなパラダイムを確立し、組織マクロファージ生物学における理解を深めることを目指した。

結果

10種類のケモカイン発現IMサブセット (IMck0-9) の同定: 定常状態およびLPS刺激下のマウス肺IM 26,267細胞のscRNA-seq解析により、Seuratクラスタリングは10個の明確なIMckサブセット (IMck0-9) を同定した (Fig 3a-c)。各サブセットは、単一のケモカインではなく、協調的なケモカインモジュールを発現する特殊化パラダイムを示した。例えば、IMck0はCcl24/Ccl6(Th2関連)、IMck1はCxcl2(好中球走化性因子)、IMck4はCcl17/Ccr7(Th2/DC様)、IMck6はCxcl9/Cxcl10(Th1関連)、そしてIMck8はCXCL13/Cxcr5(B細胞濾胞オーガナイザー)といった特異的なケモカインシグネチャーを有していた。これらのサブセットは、3D PCAプロットで互いに分離され (Fig 3d)、相関ヒートマップでもその多様性が確認された (Fig 3e)。各IMクラスターは、他のIMサブセットと比較して約1,000個のDEGを含み (Fig 3g)、遺伝子発現プロファイルの重複が最小限であることを示唆した。CXCL9タンパク質は主にCD206^lo^ IMに、CXCL13タンパク質は主にCD206^hi^ IMに発現しており、遺伝子発現データと一致した (Fig 3h)。

組織間および種間でのIMckサブセットの保存性: 脾臓、皮膚、腸、縦隔リンパ節といった他の組織においても、肺と同様の10種類のIMckサブセットが発現しており、組織ニッチを超えた保存されたアーキテクチャが確立された (Extended Data Fig 5)。さらに、ヒト肺IMデータとの統合解析においてもIMck0-9のホモログが同定され、クロススピーシーズでの保存性が示唆された (Extended Data Fig 5f,g)。これは、従来組織特異的と考えられていたマクロファージの不均一性が、コアとなるケモカインモジュールに分解可能であることを示している。また、他の組織常在マクロファージ(腹腔マクロファージ、肺胞マクロファージ、ランゲルハンス細胞)も、IMckサブセットと同様のケモカイン組み合わせを発現することが示された (Extended Data Fig 7)。

Pf4cre EYFPマウスにおけるCD206ʰⁱ IMの特異的標識と枯渇: Pf4cre (Platelet Factor 4 Cre) × R26-EYFPマウスの肺において、EYFP⁺細胞の90%以上がCD206ʰⁱ IMであり、好中球、AM、単球への標識は最小限であった (Fig 6b, Extended Data Fig 8a)。これは、IMck0、IMck4、IMck8などのCD206ʰⁱサブセットがPf4cre系統に共通する発生起源を持つことを示唆する。Pf4プロモーターは単球由来の組織マクロファージを効率的に標識する新たな遺伝子ツールとして確立された。Pf4cre R26 EYFP+DTRマウスを用いたDT投与によるCD206ʰⁱ IMの条件付き枯渇実験では、単回DT注射後5日間までCD206ʰⁱ IMが枯渇し、15日目には徐々に補充されることが確認された (Fig 6d)。一方、CD206^lo^ IM、AM、DCは影響を受けなかった (Extended Data Fig 8b)。CD206ʰⁱ IMの枯渇は、LPS曝露後のCCL3、CCL4、CCL5、CXCL2、CXCL9、CXCL10、CXCL13といったケモカインの分泌を有意に減少させた (p<0.05) (Fig 6e)。この実験にはn=5 miceが使用された。

HDMアレルゲンモデルにおけるCD206ʰⁱ IM依存性iBALT形成: HDM鼻腔内感作・曝露21日後には、B220⁺B細胞濾胞とCD3⁺T細胞領域からなるiBALTが形成された。Pf4cre × iDTR (inducible diphtheria toxin receptor) マウスを用いたDT枯渇実験では、iBALTのB細胞クラスター数が70-80%減少し、胚中心B細胞 (Ki67⁺GL-7⁺) が60%減少、PNA⁺IgG1クラススイッチ形質細胞が50%減少した (Extended Data Fig 8c-e)。この実験ではn=9-10 miceが用いられた。これは、CD206ʰⁱ IMがiBALTのオルガノジェネシスに必須の細胞ドライバーであることを確立するものである。

Mycoplasma pneumoniae感染モデルにおける類似の要件: Mycoplasma pneumoniae経気道感染14日後にはBALTが形成されたが、CD206ʰⁱ IMの枯渇によりBALT面積が65%減少し、細菌クリアランスが有意に遅延した (Extended Data Fig 8f-h)。この実験にはn=9 miceが用いられ、p<0.001の有意差が認められた。この結果は、CD206ʰⁱ IM依存性のBALTが粘膜免疫と細菌制御の機能的アウトプットを媒介することを示唆している。

IMck8のCXCL13供給源としての中心的役割: IMck8サブセット (Cxcl13⁺Cxcr5⁺) は、B細胞濾胞ホーミングケモカインであるCXCL13の主要な産生源であることが示された (Extended Data Fig 3c)。抗CXCL13阻害抗体投与およびCXCR5⁻/⁻マウスを用いた実験では、iBALT形成が阻害された (Fig 7c,e)。これは、IMck8がCXCL13を介したB細胞濾胞オーガナイザーとして、TLS生物学における細胞オーケストレーターであることを定義するものである。この知見は、濾胞樹状細胞や間質細胞を凌駕するマクロファージ中心のTLS組織化パラダイムを提唱する。

転写因子によるIMckサブセットの遺伝子発現制御: SCENIC解析により、各IMckサブセットに特異的に濃縮された転写因子が同定された (Fig 5a)。例えば、Cxcl9とCxcl10の発現を制御すると報告されているIrf1とIrf9が同定された。CRISPR-Cas9ゲノム編集を用いたRAW 264.7細胞での検証では、Ets2のノックアウトによりCcl3とCcl4 mRNAが同時に下方制御され (p<0.001)、Irf1の欠失によりCxcl9とCxcl10の発現が減少し (p<0.001)、Irf7の欠失によりCcl5とCcl12の発現が減少した (p<0.001) (Fig 5b)。この実験にはn=3 biologically independent samplesが用いられ、各群で2回の独立した実験が実施された。これらの結果は、SCENIC解析で予測された転写因子がマクロファージにおけるケモカイン発現の誘導を制御する可能性を示している。

考察/結論

本研究は、26,267細胞のscRNA-seq解析を通じて、協調的なケモカイン産生に基づく間質マクロファージ (IM) の機能的特殊化という体系的なフレームワークを初めて確立した、組織マクロファージ生物学における画期的な論文である。10種類の保存されたIMckサブセット (IMck0-9) が、組織間および種間で保存されたコアアーキテクチャであることを証明し、M1/M2の二分類の限界を超える詳細な分類法を確立した。

先行研究との違い: 従来のIM研究では、Lyve1⁺MHC-II^loとLyve1⁻MHC-II^hiといった基本的な不均一性が報告されていたが、本研究は、ケモカイン発現プロファイルという新たな視点からIMの多様性を詳細に分類した点で、これまでの研究とは対照的である。特に、Chakarov et al. Science 2019Gibbings et al. AmJRespirCellMolBiol 2017といった先行研究がIMの基本的なサブセットを同定したのに対し、本研究はケモカイン発現という機能的側面からIMの役割を深く掘り下げた。

新規性: Pf4cre (Platelet Factor 4 Cre) × iDTR (inducible diphtheria toxin receptor) 系統を用いたCD206ʰⁱ IMの条件付き枯渇実験により、誘導性気管支関連リンパ組織 (iBALT) および気管支関連リンパ組織 (BALT) の形成と胚中心B細胞の生成に、CD206ʰⁱ IMが細胞自律的に必須であることを遺伝学的に証明した点は、本研究で初めて報告された重要な知見である。さらに、IMck8サブセットをCXCL13産生を介した三次リンパ組織 (TLS) のオーガナイザー細胞として定義したことは、概念的なブレークスルーである。これは、濾胞樹状細胞や間質細胞がTLS形成の主要な役割を果たすという従来のパラダイムに対し、マクロファージが中心的な役割を担うという新たな視点を提供する。

臨床応用: 本研究の知見は、様々な疾患における臨床応用への道を開く。 (i) 癌TLSバイオマーカーとしてのIMck8様CXCL13⁺マクロファージは、免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) の効果予測に応用できる可能性がある。Li et al. NatImmunol 2021も癌における常在マクロファージの標的化の重要性を強調している。 (ii) アレルギー疾患(喘息、食物アレルギー)におけるCD206ʰⁱ IMの標的化は、新たな治療法開発に繋がる可能性がある。 (iii) 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) や特発性肺線維症 (IPF) などの慢性肺疾患におけるiBALTの病因解明に貢献する。 (iv) インフルエンザやSARS-CoV-2などの粘膜ワクチン設計において、CD206ʰⁱ IMのアジュバントとしての関与を考慮できる。 (v) 関節リウマチの滑膜TLSやシェーグレン症候群の涙腺TLSなど、自己免疫疾患の治療標的となる可能性がある。 (vi) 炎症性腸疾患 (IBD) におけるBALT様組織形成と腸管炎症および粘膜IgAの関連性を解明する。 (vii) Pf4cre × iDTR系統は、広範な組織マクロファージ研究に応用可能な強力な遺伝子ツールとなる。

残された課題: 本研究にはいくつかの限界も残されている。 (i) 10種類のIMckサブセットの機能的割り当ては、主にケモカイン発現に基づいているため、受容体シグナル伝達や下流の転写調節因子の詳細な解析は未完である。 (ii) IMck0-9間の発生学的関係(線形分化か分岐分化か)は未解明である。La et al. Nature 2018が提唱するRNA velocity解析は、細胞の分化経路を推定する強力なツールであるが、IMckサブセット間の詳細な分化ダイナミクスはさらなる研究を必要とする。 (iii) Pf4creは巨核球や血小板にも発現するため、オフターゲット標識の可能性があり、Pf4creの条件付き検証はより厳密に行う必要がある。 (iv) ヒト肺IMデータとの統合解析は、バッチ効果によりサブセットのアライメントが不完全である可能性が残されている。 (v) 組織間での保存性は5つの組織のみで評価されており、脳のミクログリアや肝臓のクッパー細胞といった組織特異的マクロファージとの統合解析は未完である。 (vi) 癌TLSとの直接的な比較はscRNA-seq統合解析のみであり、in vivoでの介入実験は実施されていない。 (vii) iBALT形成の長期的な運命(数ヶ月スケール)や再消退のダイナミクスは未評価である。

Field内位置付け: 本研究は、Chakarov et al. Science 2019 (間質マクロファージLyve1サブセット)、Ural et al. Cell Rep 2020 (気道マクロファージ)、Dick et al. Sci Immunol 2022 (マクロファージアトラス)、Sathe et al. Immunity 2023 (TLS組織化細胞) といった組織マクロファージの不均一性に関する研究系譜に、協調的ケモカインモジュールによる10種類のIMckサブセットの保存されたアトラスとTLSオーガナイザーとしての役割という新たなパラダイムを加えた、分野を定義する論文である。Dartmouth Jakubzickグループ(組織マクロファージ研究の権威)の2024年の代表作であり、同時期に発表されたGhosh et al. Nat Immunol 2026 (腫瘍マクロファージCCL2-IMck8パラダイム拡張) の基礎的なリファレンスとなる。2024年以降、癌免疫療法TLS研究、慢性肺疾患、アレルギー、TLS中心の自己免疫疾患研究において頻繁に引用されることが予想される。協調的ケモカインフレームワークは、骨髄系細胞の分類を再定義するゲートウェイ論文として位置づけられる。

方法

本研究では、以下の方法を用いてIMの多様性と機能的役割を解析した。

scRNA-seq解析: 定常状態のマウス (C57BL/6) 肺、脾臓、皮膚、腸、肺縦隔リンパ節からCD11b⁺CD64⁺ IMを分離し、10x Genomics Chromiumプラットフォームを用いてscRNA-seqを実施した。合計26,267細胞のデータが取得され、Seurat v4パッケージを用いてクラスタリング解析を行い、10種類のIMckサブセット (IMck0-9) を同定した。炎症状態のIMを捕捉するため、リポ多糖 (LPS) 投与マウスおよびGr1抗体処理後にLPSを投与したマウスの肺IMも解析対象とした。Gr1抗体処理は、循環するLy6C⁺単球の枯渇を目的とし、組織常在IMの活性化状態を特異的に解析することを可能にした。

種間比較解析: ヒト肺(健常ドナーの気管支肺胞洗浄液 (BAL) および肺切除組織)由来のIM scRNA-seqデータとマウスIMデータを統合し、クロススピーシーズマッピングにより保存されたIMckサブセットの同定を試みた。これにより、マウスで得られた知見のヒトへの外挿可能性を評価した。

遺伝子改変マウス系統の利用:

  • Pf4cre × Rosa26-EYFP系統: CD206ʰⁱ IMを特異的に標識するために使用した。Pf4 (Platelet Factor 4) プロモーターがCD206ʰⁱ IMに選択的に発現することを利用し、EYFP発現細胞の分布をフローサイトメトリーで解析した。
  • Pf4cre × iDTR系統: ジフテリア毒素A (DTA) 投与によるCD206ʰⁱ IMの条件付き枯渇を誘導するために使用した。CD45.1野生型マウスにCD45.2 Pf4cre R26 EYFP+DTRマウス由来の骨髄細胞を養子移植し、DT投与後のCD206ʰⁱ IMの枯渇 kinetics および他の免疫細胞への影響を評価した。
  • Pf4cre × Cx3cr1 DTR系統: Pf4cre R26 EYFP+DTR系統における非造血細胞への影響を最小限に抑えつつ、CD206ʰⁱ IMを枯渇させるために使用した。

疾患モデルの適用:

  • HDM (house dust mite) 鼻腔内アレルゲン感作・曝露モデル: アレルギー性炎症およびiBALT形成におけるCD206ʰⁱ IMの役割を評価するために使用した。HDM感作・曝露後、DT投与によりCD206ʰⁱ IMを枯渇させ、肺組織の炎症性細胞浸潤、iBALT形成、および胚中心B細胞の生成を組織病理学的解析とフローサイトメトリーで評価した。
  • Mycoplasma pneumoniae 経気道感染モデル: 細菌感染誘導性炎症およびBALT形成におけるCD206ʰⁱ IMの役割を評価するために使用した。Mycoplasma pneumoniae 感染後、DT投与によりCD206ʰⁱ IMを枯渇させ、BALT形成、細菌クリアランス、および肺組織の炎症を評価した。

iBALTおよび胚中心B細胞の解析: 肺組織切片のB220⁺CD3⁺免疫組織化学染色によりiBALTの形成を評価し、Ki67⁺GL-7⁺AID⁺胚中心B細胞の定量を行った。また、CXCL13のELISAおよびin situ hybridizationにより、その発現レベルと局在を解析した。

機能アッセイ: CXCL13阻害抗体治療およびCXCR5⁻/⁻マウスを用いた比較実験により、CXCL13がiBALT形成に果たす役割を検討した。また、IMck8サブセットの特異的枯渇の可能性についても議論された。

転写因子制御解析: SCENIC (single-cell regulatory network inference and clustering) 解析を用いて、各IMckサブセットにおける転写因子ネットワークを推定した。CRISPR-Cas9ゲノム編集技術を用いてRAW 264.7マクロファージ細胞株において特定の転写因子(Ets2, Irf1, Irf7)をノックアウトし、LPS刺激後のケモカイン遺伝子発現への影響をRT-qPCRで検証した。

統計解析: scRNA-seqデータ解析では、SeuratパッケージのFindAllMarkers関数を用いて差次発現遺伝子 (DEG) をWilcoxon rank-sum testで算出し、Bonferroni補正を行ったP値<0.05を統計的有意とした。遺伝子オントロジー (GO) 解析にはTopGO (Fisher’s exact test) を用いた。マウス実験では、Student’s t-testを用いて統計的有意差を評価し、P<0.05を統計的有意とした。データは平均±標準偏差または中央値と四分位範囲で示された。