• 著者: Michael A. Postow, Jason Chesney, Anna C. Pavlick, Caroline Robert, Kenneth Grossmann, David McDermott, Gerald P. Linette, Nicolas Meyer, Jeffrey K. Giguere, Sanjiv S. Agarwala, Montaser Shaheen, Marc S. Ernstoff, David Minor, April K. Salama, Matthew Taylor, Patrick A. Ott, Linda M. Rollin, Christine Horak, Paul Gagnier, Jedd D. Wolchok, F. Stephen Hodi
  • Corresponding author: F. Stephen Hodi (Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA); Jedd D. Wolchok (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2015
  • Epub日: 2015-04-20
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 25891304

背景

進行メラノーマの治療において、免疫チェックポイント阻害薬は画期的な進歩をもたらしてきた。CTLA-4 (cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4) 阻害薬であるイピリムマブは、転移性メラノーマ患者の全生存期間 (OS) を延長する最初の薬剤として承認されたが、客観的奏効率 (ORR) は10〜15%と限定的であった Hodi et al. NEnglJMed 2010Robert et al. NEnglJMed 2011。一方、PD-1 (programmed death 1) 阻害薬であるニボルマブは、単剤療法で20〜40%のORRを示し、イピリムマブ治療後に進行した患者やBRAF野生型メラノーマの一次治療において有効性が報告されていた Topalian et al. NEnglJMed 2012Robert et al. NEnglJMed 2015

CTLA-4とPD-1は、T細胞の活性化とエフェクター機能の異なる段階で免疫応答を抑制するため、両経路の同時阻害は相補的かつ相乗的な抗腫瘍効果をもたらす可能性が基礎研究で示唆されていた。具体的には、CTLA-4はT細胞のプライミング段階で共刺激シグナルを負に制御し、PD-1はエフェクターT細胞の腫瘍微小環境における活性を抑制する。この理論的根拠に基づき、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が進行メラノーマ患者において検討されてきた。

先行する第I相用量漸増試験(Wolchok et al. NEnglJMed 2013)では、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が約40%の高いORRと、2年OS率79%という有望な結果を示した。しかし、この試験は用量設定と安全性評価が主目的であり、大規模なランダム化比較試験による有効性と安全性の系統的な評価が不足していた。特に、未治療の進行メラノーマ患者における併用療法のベネフィットとリスクプロファイルを、イピリムマブ単剤療法と比較して明確に確立する必要があった。BRAF変異陽性メラノーマに対してはBRAF阻害薬やMEK阻害薬の併用療法が高い奏効率を示すものの、奏効期間が1年未満であることが多く、BRAF野生型メラノーマ患者(全メラノーマ患者の50〜60%を占める)に対する新たな治療選択肢が強く求められていた Chapman et al. NEnglJMed 2011。本CheckMate 069試験は、この知識ギャップを埋めることを目的として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法がイピリムマブ単剤療法と比較して、未治療の進行メラノーマ患者、特にBRAF野生型腫瘍患者において、奏効率および無増悪生存期間 (PFS) を改善するかどうかを検証する第II相ランダム化二重盲検試験として実施された。未治療の進行メラノーマ患者における併用免疫療法の最適な位置付けは、依然として未解明な点が残されていた。

目的

本研究の主要目的は、未治療の進行(切除不能なステージIIIまたはステージIV)メラノーマ患者において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、イピリムマブ単剤療法と比較して、BRAF V600野生型腫瘍患者における独立中央判定による客観的奏効率 (ORR) を有意に改善するかを検証することである。

副次目的としては、BRAF V600変異陽性腫瘍患者におけるORR、全患者集団における無増悪生存期間 (PFS)、全患者集団および各サブグループにおける安全性プロファイル、ならびに全生存期間 (OS) を評価することであった。また、PD-L1 (programmed death-ligand 1) 発現状況と治療効果の関連性についても探索的に評価することを目的とした。本研究は、先行する第I相試験で示された併用療法の有望な結果を、より厳密なランダム化比較試験デザインで検証し、未治療進行メラノーマにおける併用免疫療法の位置付けを確立するための重要なステップと位置付けられた。

結果

患者背景の均一性: 2013年9月16日から2014年2月6日までに、米国およびフランスで合計179名の患者がスクリーニングされ、142名の患者がランダムに割り付けられた(BRAF野生型腫瘍患者109名、BRAF V600変異陽性腫瘍患者33名)。患者のベースライン特性は、両治療群間で良好にバランスが取れており、年齢中央値は併用群で64歳、単剤群で67歳であった。全患者の87%がステージIV疾患であり、46%がM1c病変を有していた。LDH (lactate dehydrogenase) 値上昇は全患者の25%で認められた。PD-L1発現が評価可能であった118名の患者のうち、30%がPD-L1陽性腫瘍であった (Table 1)。

BRAF野生型腫瘍患者における客観的奏効率 (ORR) の大幅な改善: BRAF野生型腫瘍患者サブグループ (n=109) における独立中央判定によるORRは、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群で61% (44/72例、95% CI 49-72) であったのに対し、イピリムマブ単剤療法群では11% (4/37例、95% CI 3-25) であり、統計学的に有意な差が認められた (P<0.001)。併用群では16例 (22%) で完全奏効 (CR) が報告されたが、単剤群ではCRは認められなかった。部分奏効 (PR) は併用群で28例 (39%)、単剤群で4例 (11%) であった。ORRのオッズ比は12.96 (95% CI 3.91-54.49) であった。腫瘍量の変化の中央値は、併用群で68.1%の減少、単剤群で5.5%の増加であった (Table 2, Figure 1A)。

BRAF変異陽性腫瘍患者および全患者集団におけるORR: BRAF V600変異陽性腫瘍患者サブグループ (n=33) においても、併用群のORRは52% (12/23例、95% CI 31-73) であったのに対し、単剤群では10% (1/10例、95% CI 0-45) であり、併用療法の優位性が示された。併用群では5例 (22%) でCRが認められ、BRAF野生型腫瘍患者と同様のCR率であった。全患者集団におけるORRは、併用群で59% (56/95例) であったのに対し、単剤群では11% (5/47例) であり、P<0.001の有意差が認められた。全患者集団でのCR率は併用群で17%、単剤群で0%であった (Table 2)。

PD-L1発現とORRの関連性: PD-L1発現状況とORRの関連性について、併用群ではPD-L1陽性 (≥5%) 腫瘍患者のORRが58% (95% CI 37-78)、PD-L1陰性腫瘍患者のORRが55% (95% CI 41-69) であり、PD-L1発現状態にかかわらず高い奏効率が維持された。一方、単剤群ではPD-L1陽性腫瘍患者のORRが18% (95% CI 2-52)、PD-L1陰性腫瘍患者のORRが4% (95% CI 0-19) であり、PD-L1陽性患者で数値的に高い傾向が見られたものの、併用群ほどの顕著な差はなかった。

無増悪生存期間 (PFS) の有意な延長: BRAF野生型腫瘍患者におけるPFS中央値は、併用群では未到達であったのに対し、イピリムマブ単剤療法群では4.4ヶ月 (95% CI 2.8-5.7) であった (ハザード比 [HR] 0.40、95% CI 0.23-0.68、P<0.001)。BRAF変異陽性腫瘍患者においても、PFS中央値は併用群で8.5ヶ月 (95% CI 2.8-推定不能)、単剤群で2.7ヶ月 (95% CI 1.0-5.4) であり (HR 0.38、95% CI 0.15-1.00)、併用療法の優位性が示された。奏効期間中央値は両群ともに未到達であり、併用群で奏効した44例中36例 (82%)、単剤群で奏効した4例中3例 (75%) で奏効が継続していた。奏効発現までの期間に有意な差はなく、ほとんどの奏効は初回評価時 (8-12週目) に確認された (Figure 1C)。

安全性プロファイルと免疫関連有害事象 (irAE) の管理: グレード3または4の治療関連有害事象は、併用群で54% (51/94例)、単剤群で24% (11/46例) と、併用群で高頻度に報告された。併用群で最も頻繁に報告されたグレード3または4の有害事象は、大腸炎 (17%)、下痢 (11%)、ALT (alanine aminotransferase) 上昇 (11%)、AST (aspartate aminotransferase) 上昇 (7%)、リパーゼ上昇 (9%) であった。単剤群で最も頻繁なグレード3または4の有害事象は下痢 (11%) であった。治療中止に至った有害事象は併用群で47% (44/94例)、単剤群で17% (8/46例) であった。致死的な治療関連有害事象は、併用群で3例報告されたが、これらは既存疾患や医療処置との関連も示唆された (Table 3)。免疫介在性の可能性のある有害事象は、皮膚、消化管、内分泌、肝臓の臓器カテゴリーで最も頻繁に発生し、併用群でより多く観察された。これらの有害事象の管理には、併用群の89%、単剤群の59%で免疫抑制剤が使用され、その多く(約80%)は免疫調節薬による治療で完全に回復するか、ベースラインレベルまで症状が改善した。特に、毒性により併用療法を中止した患者のうち、68%が客観的奏効を示し、その多くで奏効が持続していた。

考察/結論

CheckMate 069試験は、未治療の進行メラノーマ患者において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法がイピリムマブ単剤療法と比較して、客観的奏効率 (ORR) および無増悪生存期間 (PFS) を有意に改善することを示した画期的な第II相ランダム化二重盲検試験である。特にBRAF野生型腫瘍患者において、併用群のORRは61% (単剤群11%)、完全奏効率 (CR) は22% (単剤群0%) と、圧倒的な優位性が示されたことは、併用免疫療法の臨床的価値を明確に確立するものであった。

先行研究との違い: 本研究の併用療法のORR 61%は、先行するニボルマブ単剤療法の第III相試験(BRAF野生型メラノーマの一次治療でORR 40%)や、他の抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ単剤療法の試験で報告された奏効率よりも数値的に高かった。これは、CTLA-4とPD-1の同時阻害が、単独阻害よりも強力な抗腫瘍免疫応答を誘導することを示唆している。また、先行第I相試験(Wolchok et al. NEnglJMed 2013)で報告されたORR約40%を、本第II相試験では59%に押し上げ、未治療患者集団での効果の増強が示された。これらの結果は、これまでの単剤療法や先行研究の併用療法と比較して、より高い治療効果を示しており、特に未治療患者における併用療法の優位性を強調する点で対照的である。

新規性: 本研究で初めて、未治療の進行メラノーマ患者において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、イピリムマブ単剤療法と比較して、ランダム化比較試験デザインでORRとPFSの優越性を証明した。特に、BRAF変異状態やPD-L1発現状況にかかわらず、併用療法が有効であったことは新規の知見である。PD-L1陰性腫瘍患者においても併用群で高い奏効率が維持されたことは、PD-L1が併用療法の患者選択バイオマーカーとしては不十分であることを示唆する。これは、イピリムマブがT細胞を腫瘍内に誘導し、その後のPD-1阻害薬の効果を増強する可能性など、PD-L1発現に依存しない作用機序が関与している可能性を示唆しており、これまで報告されていない重要なメカニズム的洞察を提供する。

臨床応用: 本研究の結果は、未治療の進行メラノーマに対するニボルマブとイピリムマブ併用療法を標準治療として確立するための重要な基盤データとなった。2015年10月の米国FDA承認の根拠の一つとなり、臨床現場における治療選択肢を大きく広げた。グレード3または4のirAEが54%と高頻度であったものの、その多くは標準的な免疫調節薬(主にステロイド)で管理可能であり、治療中止後も抗腫瘍効果が持続する患者が多かったことから、その毒性プロファイルは許容範囲内であると判断された。この深い奏効と持続性により、多くの腫瘍医が併用療法を選択するに至った。

残された課題: 今後の検討課題として、長期的なOSデータ、irAEのより効果的な管理戦略、低用量イピリムマブ(例:1 mg/kg)を用いたレジメンでの毒性軽減と有効性のバランスの評価が挙げられる。また、最適なバイオマーカー(腫瘍変異負荷 (TMB)、PD-L1発現、腸内細菌叢、ネオアンチゲンなど)による患者選択の最適化、併用療法に無効な患者に対するサルベージ戦略、および脳転移を有する患者における併用療法の有効性(CheckMate 204試験などで検討中)などが残された課題である。さらに、免疫チェックポイント阻害薬の作用機序に関するさらなる理解を深めることで、個別化医療の進展が期待される。

方法

試験デザインと対象患者: 本研究は、未治療の進行(切除不能なステージIIIまたはステージIV)メラノーマ患者を対象とした多施設共同、ランダム化、二重盲検、第II相試験(CheckMate 069、ClinicalTrials.gov番号: NCT01927419)である。主要な適格基準は、組織学的に確認された切除不能なステージIIIまたはIVのメラノーマ、測定可能病変の存在、既知のBRAF V600変異状態、ECOG (Eastern Cooperative Oncology Group) Performance Statusが0または1であった。活動性の脳転移、ぶどう膜メラノーマ、重篤な自己免疫疾患を有する患者は除外された。

ランダム化と治療レジメン: 合計142名の患者が、BRAF変異状態(V600野生型 vs. 変異陽性)で層別化され、2:1の比率で以下の2つの治療群にランダムに割り付けられた。

  1. 併用療法群 (n=95): ニボルマブ 1 mg/kgとイピリムマブ 3 mg/kgを3週間ごとに4回静脈内投与。その後、ニボルマブ 3 mg/kgを2週間ごとに維持療法として投与。
  2. イピリムマブ単剤療法群 (n=47): イピリムマブ 3 mg/kgとプラセボを3週間ごとに4回静脈内投与。その後、プラセボを2週間ごとに維持療法として投与。 治療は、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続された。病勢進行後も、盲検化を維持したまま治療を継続するオプションが提供され、その後、イピリムマブ単剤療法群の患者はニボルマブ3 mg/kgの投与を受けることが可能であった。

評価項目: 主要評価項目は、BRAF V600野生型腫瘍患者における、独立中央判定によるRECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) v1.1に基づく客観的奏効率 (ORR) であった Eisenhauer et al. EurJCancer 2009。副次評価項目には、BRAF V600変異陽性腫瘍患者におけるORR、全患者集団におけるPFS、安全性プロファイル、およびOSが含まれた。

安全性評価: 有害事象はNCI (National Cancer Institute) CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events) v4.0に基づき評価された。免疫関連有害事象 (irAE) の管理に関するガイドラインが提供され、ステロイドなどの免疫調節薬が使用された。

PD-L1発現評価: 治療前の腫瘍組織サンプルを用いて、腫瘍細胞表面のPD-L1発現が中央検査室で免疫組織化学 (IHC) 的に評価された。腫瘍細胞の5%以上がPD-L1染色陽性である場合をPD-L1陽性と定義した。

統計解析: 統計解析は、両側α水準0.05で実施された。BRAF野生型腫瘍患者100例を対象とした場合、ORRが併用群で40%、単剤群で10%と仮定すると、約87%の検出力で有意差を検出できると算出された。主要評価項目解析後、階層的検定アプローチを用いて主要な副次評価項目が評価された。無増悪生存期間の解析にはカプラン・マイヤー法とログランク検定が用いられた。