- 著者: Alesha A Thai, Benjamin J Solomon, Lecia V Sequist, Justin F Gainor, Rebecca S Heist
- Corresponding author: Rebecca S Heist (Department of Medicine, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA)
- 雑誌: Lancet
- 発行年: 2021
- Epub日: 2021-07-14
- Article種別: Review
- PMID: 34273294
背景
肺がんは世界におけるがん関連死の最大の原因であり、年間約220万例の新規診断と179万人の死亡が発生している極めて予後不良な悪性腫瘍である。高所得国においては、禁煙キャンペーンや公衆衛生対策の恩恵により全体の罹患率は低下傾向にあるものの、男性の低下速度が女性の2倍速いなど、性別や地域による格差が存在する。これに対し、低・中所得国では公衆衛生上の介入が遅れており、医療アクセスも制限されているため、新規診断数と死亡数は増加の一途をたどっている。さらに、生涯非喫煙者における肺がん診断も一定の割合を占めており、喫煙歴のみに依存しない発がん機序の解明が求められている。
過去20年間において、肺がんの疾患生物学に対する理解は劇的に深まった。特に、特定の遺伝子変異や転座が腫瘍の生存と増殖を駆動する「オンコジーンアディクション (oncogene addiction)」の概念が確立され、これらを標的とした分子標的薬の開発が進んだ。歴史的には、ゲフィチニブなどの第一世代薬に対する感受性とEGFR変異の関連性が示され、個別化医療の幕開けとなった (Lynch et al. NEnglJMed 2004、Paez et al. Science 2004)。また、進行期非小細胞肺がん (NSCLC) に対する細胞障害性化学療法にベバシズマブを併用する意義も検証されてきた (Sandler et al. NEnglJMed 2006)。さらに、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の登場により、進行期肺がんの治療成績は飛躍的に向上した。
しかし、これまでの治療パラダイムにおいては、個々の患者のバイオマーカープロファイルに基づいた最適な治療選択や、初期治療後の耐性獲得メカニズムへの対処、さらには早期発見のためのスクリーニングの最適化といった領域において、依然として多くの課題や不明な点が残されている。特に、低線量CTを用いたスクリーニングの有効性は示されているものの、実臨床における導入率の低さや、対象となる高リスク群の定義における喫煙歴以外のリスク因子の評価については、十分な知見が不足している。また、初期の分子標的薬治療における耐性変異の出現や不均一な治療応答といった臨床的課題が山積していた。さらに、免疫療法においても、どのような患者が長期的なベネフィットを享受できるかという予測バイオマーカーの確立には至っておらず、腫瘍の遺伝子変異量 (TMB) やPD-L1発現の評価基準には依然として議論の余地があり、治療選択における最適な指標が未確立であるなど、多くの課題が残されている。このように、肺がん治療における個別化医療の進歩は著しいものの、実臨床への展開や耐性克服に向けた包括的なアプローチには、まだ解決すべき gap が残されている。本セミナーは、これらの背景を踏まえ、2014年から2020年までの主要な進歩を整理し、今後の展望を議論するために企画された。
目的
本レビューの目的は、非小細胞肺がん (NSCLC) および小細胞肺がん (SCLC) におけるスクリーニング、組織学的分類、バイオマーカー検査、病期分類、および外科治療、放射線療法、術後補助療法、進行期における分子標的療法およびICIを用いた治療戦略の最新の進歩を包括的に概説することである。特に、過去20年間、とりわけ2014年から2020年にかけての臨床試験の成果に焦点を当て、個別化医療 (personalized medicine) がどのように実臨床に統合され、患者の生存期間や生活の質を改善したかを明らかにする。また、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRK、MET、RET、HER2、KRASなどのドライバー遺伝子変異に対する新規標的治療薬の有効性と耐性機序を整理し、PD-L1発現やTMBに基づく免疫療法の最適な選択基準を提示する。さらに、早期肺がんに対する低線量CTスクリーニングの普及における課題や、術後補助療法におけるosimertinibやICIの役割を検証し、今後の肺がん診療における臨床的課題と研究の方向性を明確にすることを目的とする。
結果
低線量CTによるスクリーニング効果と死亡率低下: 肺がんの早期発見を目的としたスクリーニングにおいて、低線量CTの有効性が2つの大規模ランダム化比較試験 (RCT: randomised controlled trial) によって実証された。米国全国肺スクリーニング試験 (NLST: National Lung Screening Trial) では、高リスクの喫煙者53,454人を対象に、年1回の低線量CT群と胸部X線群を3年間比較した。その結果、低線量CT群は胸部X線群と比較して、肺がん死亡率を20%減少させ、ハザード比 (HR) は 0.80 (95% CI 0.73-0.93、p=0.004) を達成した。また、全死亡率についても6.7%の有意な減少 (p=0.02) が示された。続いて報告されたNELSON (Nederlands-Leuvens Longkanker Screening Onderzoek) 試験では、13,195人の男性 (および少数の女性) を対象に、低線量CTスクリーニング群と非介入群を比較した。10年時点での累積肺がん死亡率は、スクリーニング群で24%低下し、累積相対リスク (RR) は 0.76 (95% CI 0.61-0.94、p=0.01) であった。これらの結果は、適切な対象選定に基づく低線量CTスクリーニングが、肺がん死亡率を劇的に低下させることを示している (Fig 2)。
バイオマーカー検査と液体生検の臨床応用: 進行期NSCLC、特に肺腺癌の治療方針決定において、マルチプレックス次世代シーケンシング (NGS) を用いた包括的な遺伝子検査が標準化された。ガイドラインでは、EGFR変異、ALK/ROS1再構成、BRAF V600E変異、RET再構成、MET exon 14 skipping変異の検査が強く推奨されている。組織生検が困難な症例や、治療耐性獲得時の再生検においては、血中循環腫瘍DNA (ctDNA: circulating tumor DNA) を用いた液体生検が極めて有用である。ctDNA検査の感度は腫瘍の局在やサイズに依存し60-80%であるが、組織採取に伴う合併症リスクを回避できる。また、免疫療法の予測バイオマーカーとして、腫瘍細胞におけるPD-L1発現レベルを示す腫瘍細胞陽性割合 (TPS: tumor proportion score) の評価が必須であり、これが一次治療の選択を規定する。一方、腫瘍遺伝子変異量 (TMB: tumor mutational burden) は、pembrolizumabの既治療例に対する承認 (TMB ≥ 10 mutations/Mb) に寄与したが、一次治療における標準的な指標としての確立には至っていない (Fig 2)。
早期および局所進行期NSCLCにおける局所治療の進歩: Stage I NSCLCに対する外科的切切除は5年生存率約80%をもたらす標準治療である。胸腔鏡下手術 (VATS: video-assisted thoracoscopic surgery) は、開胸術と比較して術後1年以内の短期合併症を軽減し、長期的な腫瘍学的転帰において同等であることがRCTで示された。医学的に手術不能なStage I症例に対しては、体幹部定位放射線治療 (SABR: stereotactic ablative body radiotherapy) が標準治療となった。CHISEL試験において、SABRは標準的な分割放射線療法と比較して、局所制御失敗のハザード比を 0.32 (95% CI 0.13-0.77、p=0.01) に低下させ、生存期間を有意に延長した。一方、完全切除後のN2陽性NSCLCに対する術後放射線療法 (PORT: postoperative radiotherapy) の意義を検証したLung ART試験では、3年全生存率に有意差がなく (PORT群 66.5% vs 観察群 68.5%)、術後放射線療法は標準治療から除外された (Fig 4)。
術後補助療法および切除不能Stage IIIにおける全身療法の刷新: 早期NSCLCの術後補助療法において、分子標的薬の導入が治療成績を塗り替えた。ADAURA試験では、完全切除後のStage IB-IIIAのEGFR変異陽性NSCLC患者に対し、術後補助化学療法後にosimertinibを3年間投与する群とプラセボ群を比較した。主要エンドポイントであるStage II-IIIA患者における2年無病生存 (DFS) 率は、osimertinib群で90% (95% CI 84-93)、プラセボ群で44% (95% CI 32-55) であり、ハザード比は 0.17 (95% CI 0.12-0.23、p<0.0001) という極めて顕著な改善を示した。また、切除不能なStage III NSCLCに対しては、化学放射線療法 (CRT: chemoradiotherapy) 施行後のdurvalumabによる12ヶ月間の維持療法が標準治療となった。PACIFIC試験において、durvalumab群はプラセボ群と比較して、無増悪生存期間 (PFS) を 17.2 vs 5.6 months へと有意に延長し (HR 0.51、95% CI 0.41-0.63)、24ヶ月生存率も 66.3% vs 55.6% と有意な改善を示した (Fig 4)。
EGFR変異陽性進行期NSCLCにおける標的治療: EGFR変異陽性進行腺癌に対する一次治療として、第三世代EGFR-TKIであるosimertinibが確立された。FLAURA試験において、osimertinibは第一世代薬 (gefitinibまたはerlotinib) と比較して、PFS中央値を 18.9 vs 10.2 months へと延長し、ハザード比は 0.46 (95% CI 0.37-0.57、p<0.001) であった。また、OS中央値も 38.6 months (95% CI 34.5-41.8) vs 31.8 months (95% CI 26.6-36.0) と有意な延長を示した (HR 0.80、95% CI 0.64-1.00、p=0.046)。このFLAURA試験の結果に基づき、osimertinibは未治療のEGFR変異陽性進行NSCLCにおける標準治療としての地位を不動のものとした。さらに、脳転移を有する患者サブグループにおいても、osimertinibは優れた中枢神経系 (CNS: central nervous system) 病変制御能を示し、従来のファーストライン治療薬を大きく凌駕する臨床的ベネフィットをもたらした (Fig 5)。
ALK転座陽性進行期NSCLCにおける標的治療: ALK転座陽性NSCLC (全体の3-5%) においては、第二世代ALK-TKIであるalectinibが一次治療の標準となった。ALEX試験において、alectinibはcrizotinibと比較して、無増悪生存期間を有意に延長し (PFS中央値 34.8 vs 10.9 months、HR 0.43、95% CI 0.32-0.58)、5年生存率は62.5%に達した。さらに、第三世代ALK-TKIであるlorlatinibは、CROWN試験においてcrizotinibと比較して、未治療例におけるPFSのハザード比 0.28 (95% CI 0.19-0.41、p<0.001) を達成し、優れた中枢神経系病変制御能を示した (Fig 5)。これらの新規ALK-TKIは、crizotinib耐性後に生じる二次変異 (ALK G1202R変異など) に対しても高い活性を示し、ALK陽性肺がんの長期予後を劇的に改善した。
希少ドライバー遺伝子変異に対する標的治療: 希少なドライバー遺伝子変異に対しても、新規標的治療薬が次々と開発され、高い客観的奏効率 (ORR: objective response rate) を示した。ROS1転座に対しては、entrectinibがORR 77% (95% CI 67-85) を達成した。BRAF V600E変異に対しては、dabrafenibとtrametinibの併用療法により、未治療例においてORR 64% (95% CI 46-79) が得られた。NTRK融合遺伝子に対しては、larotrectinibがORR 79% (95% CI 72-85) を示した。MET exon 14 skipping変異に対してはcapmatinibが未治療例においてORR 68% (95% CI 48-84) を示し、RET転座に対してはselpercatinibが未治療例においてORR 85% (95% CI 70-94) を示した。HER2変異に対してはtrastuzumab deruxtecanがORR 61.9% (95% CI 45.6-76.4) を示し、KRAS G12C変異に対してはsotorasibがORR 30-50%の有望な治療効果を示した (Fig 5)。
PD-L1高発現進行期NSCLCにおける免疫療法単剤: ドライバー遺伝子変異陰性の進行期NSCLCに対する一次治療は、PD-L1発現レベルに応じて個別化された。PD-L1 TPS ≥ 50%の症例に対しては、pembrolizumab単剤療法が化学療法と比較して生存期間を有意に延長した。KEYNOTE-024試験において、pembrolizumab群は化学療法群と比較して、OS中央値を 26.3 vs 14.2 months へと有意に延長し、ハザード比は 0.62 (95% CI 0.48-0.81、p=0.005) であった。この結果は、特定のバイオマーカー (PD-L1高発現) を有する患者群において、化学療法を介さない免疫チェックポイント阻害薬単剤によるファーストライン治療が、標準治療として極めて有効であることを実証した歴史的な知見である (Fig 5)。
PD-L1発現を問わない進行期NSCLCにおける化学免疫療法: PD-L1発現を問わない一次治療として、化学療法とICIの併用療法が標準化された。非扁平上皮NSCLCを対象としたKEYNOTE-189試験では、pembrolizumab+プラチナ製剤+pemetrexed併用療法が、化学療法単独群と比較して、OS中央値を 22.0 vs 10.7 months へと有意に延長し、ハザード比は 0.56 (95% CI 0.45-0.70、p<0.001) であった。扁平上皮がんを対象としたKEYNOTE-407試験でも、pembrolizumab+化学療法群がOS中央値 15.9 vs 11.3 months (HR 0.64、95% CI 0.49-0.83、p<0.001) と有意な改善を示した。さらに、抗PD-1抗体nivolumabと抗CTLA-4抗体ipilimumabの併用療法を検証したCheckMate 227試験では、PD-L1 ≥ 1%の群において、二剤併用群が化学療法群と比較してOS中央値を 17.1 vs 14.9 months へと有意に延長した (HR 0.79、95% CI 0.65-0.96、p=0.007) (Fig 5)。
小細胞肺がんにおける化学免疫療法の確立と進歩: 進展型小細胞肺がん (ES-SCLC: extensive-stage small-cell lung cancer) の一次治療において、長年標準治療であったプラチナ製剤+etoposide併用化学療法に、ICIを上乗せすることの有用性が示された。IMpower133試験では、atezolizumabを化学療法に併用することで、OS中央値が12.3 months (95% CI 10.8-15.9) へと延長し、化学療法単独群の10.3 months (95% CI 9.3-11.3) と比較して有意な生存改善を示した (HR 0.76、95% CI 0.60-0.95、p=0.0154)。同様に、CASPIAN試験では、durvalumabを化学療法に併用することで、OS中央値が13.0 months (95% CI 11.5-14.8) へと延長し、化学療法単独群の10.3 months (95% CI 9.3-11.2) に対して有意な改善を達成した (HR 0.73、95% CI 0.59-0.91、p=0.0047)。これにより、ES-SCLCの一次治療における化学免疫療法が新たな標準治療として確立された (Fig 1)。限局型小細胞肺がん (LS-SCLC: limited-stage small-cell lung cancer) に対する化学放射線療法後の維持療法を検証したSTIMULI試験では、PFSの有意な改善は示されなかった。
考察/結論
本セミナーは、過去20年間、特に2014年から2020年にかけての肺がん治療におけるパラダイムシフトを包括的に総括し、個別化医療と免疫療法の統合が患者の臨床転帰を劇的に改善したことを明快に示している。
先行研究との違い: 従来の肺がん治療ガイドラインやレビューが、組織型 (腺癌 vs 扁平上皮がん) のみに基づく細胞障害性化学療法の選択に終始していたのとは異なり、本研究は、詳細な分子プロファイリングとPD-L1発現レベルに基づく「完全な個別化治療アルゴリズム」を提示している。かつては一括りにされていたNSCLCが、今やEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRK、MET、RET、HER2、KRASなどの多数のドライバー遺伝子変異陽性サブグループに細分化され、それぞれに対して極めて高い特異性を持つ分子標的薬が一次治療として位置づけられている。このアプローチは、従来の「一律の化学療法」という治療概念と対照的であり、肺がん診療のあり方を根本から変革した。
新規性: 本研究の新規性として、単に進行期肺がんにおける新規薬剤の有効性を並べるだけでなく、早期肺がんに対する術後補助療法 (ADAURA試験におけるosimertinibの画期的なDFS改善効果、HR 0.17) や、切除不能Stage IIIにおける化学放射線療法後のdurvalumab維持療法 (PACIFIC試験) など、局所治療と全身療法の融合による「治癒 (cure)」を目指した新たな治療戦略を体系的に示した点にある。特に、術後補助療法におけるosimertinibの導入は、これまで化学療法のみに頼っていた術後再発予防のパラダイムを塗り替える新規なアプローチであり、実臨床における標準治療の再定義を迫るものである。また、EGFR/ALK野生型における化学免疫療法の優位性を、PD-L1発現レベルや組織型ごとに整理し、最適な組み合わせを明確にした点も極めて新規性が高い。
臨床応用: 本セミナーで提示されたエビデンスの臨床的意義は極めて大きい。実臨床において、新規診断されたすべての進行腺癌患者に対して、マルチプレックスNGSを用いた迅速かつ包括的な遺伝子検査を行うことの重要性が改めて強調される。これにより、患者はゲフィチニブやエルロチニブといった初期の標的薬 (Mok et al. NEnglJMed 2009) を遥かに凌駕する治療効果を持つosimertinibやalectinibなどの最新世代薬による治療を、一次治療から享受することが可能となる。また、液体生検 (ctDNA) の臨床応用により、組織採取が困難な患者や、治療耐性獲得時の迅速なプロファイリングが可能となり、低侵襲かつタイムリーな治療変更が実現している。さらに、進展型SCLCに対する化学免疫療法の確立は、長年治療進歩が停滞していた領域における待望のブレイクスルーであり、実臨床における生存期間の底上げに直結している。
残された課題: しかしながら、今後の検討課題や解決すべき limitation も多く残されている。第一に、分子標的薬に対する「不可避的な耐性獲得」への対策である。Osimertinib治療後に生じるEGFR C797S変異やMET増幅、あるいは小細胞肺がんへの表現型変換といった多様な耐性機序に対し、次世代の治療薬や併用療法の開発が急務である。第二に、術後補助療法におけるosimertinibのDFSベネフィットが、最終的にOSの延長に直結するかどうかは依然として未確定であり、長期的なフォローアップが必要である。第三に、免疫療法におけるより精度の高い予測バイオマーカーの同定である。PD-L1発現やTMBのみでは、長期生存ベネフィットを得られる患者を完全に特定することはできず、腫瘍微小環境や宿主因子の関与を含めたさらなる研究が求められる。第四に、医療経済的な課題とアクセスの不平等である。本セミナーで紹介された革新的な新薬やNGS検査は極めて高額であり、世界の多くの地域、特に低・中所得国においては依然として入手困難である。この治療アクセスの格差は、グローバルな肺がん転帰の改善における最大の障壁の一つである。最後に、電子タバコの普及に伴う新たな健康リスクや喫煙行動の変化が、将来の肺がん疫学に与える影響についても、継続的な監視と研究が必要である。
方法
本セミナーの執筆にあたり、著者らは包括的な文献検索を実施した。検索データベースとして、主に PubMed、Embase、Cochrane Library、および Web of Science を使用し、さらに選択された関連論文の参考文献リストを手動で精査する二次検索も併せて行った。検索キーワードとして、「lung cancer」を基本語とし、これに「epidemiology」、「screening」、「radiotherapy」、「targeted therapies」、「immunotherapy」、「immune checkpoint」などの関連用語を論理演算子 (AND/OR) で組み合わせた検索式を構築した。
文献選定の基準 (inclusion/exclusion criteria) として、2014年1月1日から2020年1月7日までの期間に査読付き学術誌に英語で発表された原著論文、レビュー、メタアナリシス、および国際学会 (ASCO、ESMO、WCLCなど) の会議録や抄録を主な対象とした。ただし、肺がん治療の歴史的転換点となった極めて重要な古典的論文 (例えば、EGFR変異の同定や初期のゲフィチニブ臨床試験に関する2004年の報告など) については、上記期間外であっても例外的に検索対象に含め、適切に引用した。文献のスクリーニングおよび選定プロセスにおいては、情報の透明性と再現性を担保するため、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) フローチャートのガイドラインに準拠した手順を採用した。
データの抽出と評価においては、臨床試験の信頼性を担保するため、ランダム化比較試験 (RCT) から得られたエビデンスを最優先し、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムを用いてエビデンスの質を体系的に評価した。具体的には、全生存期間 (OS)、無増悪生存期間 (PFS)、無病生存期間 (DFS)、客観的奏効率 (ORR) などの主要エンドポイント、およびハザード比 (HR)、95%信頼区間 (CI)、p値などの統計学的指標を厳密に検証した。統計学的解析手法としては、生存曲線の比較に用いられるログランク (log-rank) 検定や、多変量解析におけるコックス比例ハザード回帰 (Cox regression) モデル、生存期間の推定におけるカプラン・マイヤー (Kaplan-Meier) 法などの適用状況を確認し、エビデンスの質を評価した。抽出された文献は、著者ら全員による独立した査読と議論を経て、その科学的妥当性と臨床現場への影響度が精査された上で、本セミナーの各セクションに体系的に統合された。