• 著者: Kelly J. McKelvey, Katie L. Powell, Anthony W. Ashton, Jonathan M. Morris, Sharon A. McCracken
  • Corresponding author: Kelly J. McKelvey (Division of Perinatal Medicine, Kolling Institute of Medical Research, University of Sydney at Royal North Shore Hospital, St Leonards, NSW, Australia)
  • 雑誌: Journal of circulating biomarkers
  • 発行年: 2015
  • Epub日: 2015-07-17
  • Article種別: Review
  • PMID: 28936243

背景

エクソソームは、細胞間コミュニケーションにおいて極めて重要な役割を果たすナノスケール(30-100 nm)の細胞外小胞であり、タンパク質、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、脂質といった複雑な細胞シグナルを積荷として含有する。これらの積荷を介して、エクソソームは生理的および病理的プロセス、例えば癌の進行、妊娠合併症、感染症、自己免疫疾患など、多岐にわたる生命現象に関与することが示唆されている。そのため、エクソソームは無限の治療可能性を秘めていると考えられ、その応用が期待されている。エクソソームの生合成と分泌に関する分子メカニズムについては、ESCRT (endosomal-sorting complex required for transport) 複合体やセラミド/テトラスパニン依存性経路など、多くの知見が蓄積されてきた。具体的には、セラミドがマルチベシキュラーエンドソーム(MVE)内への出芽を誘発することや (Trajkovic et al. Science 2008)、Rab27aおよびRab27bがエクソソーム分泌経路の異なるステップを制御していること (Ostrowski et al. NatCellBiol 2010)、さらにT細胞から抗原提示細胞へのmiRNAを搭載したエクソソームの一方向性転送機序 (Mittelbrunn et al. NatCommun 2011) など、多くの先行研究によって分泌側の機構は明らかにされてきた。

しかし、エクソソームが受容細胞に認識され、取り込まれる具体的な分子機序については、2015年時点において未解明な点が多く、特に免疫細胞(T細胞など)や非免疫細胞(癌細胞など)における詳細な取り込み経路や、それによって引き起こされる細胞内シグナル伝達経路に関するデータは決定的に不足していた。エクソソームの取り込み機序は多様であり、細胞種、エクソソームの起源、および微小環境によって異なることが示唆されているが、これらの多様な経路がどのように制御され、細胞応答に結びつくのかという知識ギャップ(knowledge gap)が存在していた。エクソソームの生体内動態、特に血中半減期の短さや特定の臓器への迅速な取り込みは、治療担体としてのエクソソームの全身投与における大きな課題として認識されており、その効率的な標的化、内在化、および排除のメカニズムを理解することは、エクソソームを基盤とした治療戦略を構築する上で不可欠である。本レビューは、これらの不足している知見を補い、治療応用への道を拓くことを目的としている。

目的

本レビューの目的は、エクソソームが受容細胞に取り込まれる分子機序を包括的に整理し、生体内での動態データとともに系統的にレビューすることである。特に、エクソソームの標的化、内在化、および排除のメカニズムに焦点を当て、T細胞との相互作用に関する最新の知見を統合して論じる。これにより、エクソソームの治療応用における標的化、内在化、および排除の理解を深め、将来的な治療戦略の基盤を確立することを目指す。具体的には、食作用、マクロピノサイトーシス、受容体介在エンドサイトーシス、および膜融合といった主要な取り込み経路を詳細に分析し、それぞれの経路が細胞応答にどのように影響するかを考察する。さらに、細胞培養由来のエクソソームを治療に用いる際のプロテオームの再現性やバッチ間変動といった実用的な課題についても言及し、臨床応用へ向けた具体的な解決策を提示することを目的とする。

結果

エクソソームの生体内動態と初期クリアランス: 静脈内投与された蛍光標識B細胞由来エクソソームの血漿中半減期は、マウス(n=12 mice)の実験において約2分(t1/2 ~2 min)という極めて短い値が示された (Fig 1)。これは、エクソソームが血中ではほぼ即座に組織に取り込まれることを意味し、非修飾エクソソームの全身投与における大きな障壁となっている。投与後2時間後には脾臓での検出が継続して観察された。経鼻投与では3時間後に脳と腸管でエクソソームが検出されており、鼻腔から脳・腸管への到達が可能であることを示す。両投与経路において、投与後15分以内にエクソソームとマクロファージの共局在が確認されており、循環モノサイト/マクロファージによる迅速な捕捉が主要クリアランス機序として機能していることが示唆された。血管内のナノ粒子(エクソソームサイズ域:30-100 nm)は赤血球コアから血管壁近傍に向かって側方に分散し、白血球が局在する血管壁へのドリフトによってモノサイト・マクロファージおよびT細胞との接触が促進されることが、intravital video microscopy(生体体内顕微鏡法)およびコンピュータモデリングによる試算で明らかになっている。類似したクリアランスメカニズムとして、網状赤血球由来エクソソームの表面ホスファチジルコリンが iPLA2 (calcium-independent phospholipase A2) によってリゾホスファチジルコリンに変換され、天然IgM抗体および補体C3が結合することで食作用が促進される(オプソニン化機序)。PtdSer (phosphatidylserine) や MFG-E8 (milk fat globule-EGF factor 8 protein) もエクソソーム表面オプソニンとして機能し、マクロファージによる迅速な捕捉を説明する。

受容細胞への接着と認識分子: 受容細胞へのエクソソーム接着は細胞間コミュニケーションの前提ステップであり、複数の分子が関与する。リンパ球との接着においてはインテグリンの低親和性状態から高親和性状態への構造変化が必要であり、これによりインテグリンのオリゴマー化と細胞骨格連結が生じて高アビディティ結合が実現する。成熟樹状細胞由来エクソソームのICAM-1(CD54)は白血球インテグリンLFA-1(CD11a/CD18またはαLβ2)を介してナイーブT細胞の初回感作を効率的に促進することが示されており、ICAM-1はエクソソームのT細胞への最初の結合・ドッキングを規定する。その後のより強固な接着にはαL(CD11a)、α4(CD49d)、CD44、ICAM-1のリンパ球側発現と、エクソソーム上のテトラスパニンCD9およびCD81が寄与する。テトラスパニン(CD9, CD53 [tetraspanin-25], CD63, CD81, CD82)はエクソソーム表面に高発現し、インテグリン(例:α3β1)、Ig超遺伝子ファミリー(ICAM-1, MICA, MICB)、コレセプター(CD4, CD8, CD19, CD21 [complement receptor type 2])と複合体を形成して抗原認識の空間的組織化とシグナルの性質決定に寄与する。テトラスパニンCD9によるTCR(T細胞受容体)共刺激は完全活性化に至らず最終的にT細胞アポトーシスを誘導するのに対し、CD28経由の共刺激はT細胞増殖を促進するという対照的な機能も報告されており、テトラスパニン複合体の構成がエクソソーム誘導シグナルの性質を規定する可能性を示す。マクロファージのCD169(シアロアドヘシン)は脾臓・リンパ節でのエクソソーム捕捉を担う重要な受容体として同定されている (Saunderson et al. Blood 2014)。グリオブラストーマ細胞やHEK293T細胞(n=3 cells)では HSPG (heparan sulfate proteoglycan) がエクソソームの取り込みに必要であることも示されている (Christianson et al. ProcNatlAcadSciUSA 2013) (Table 1)。MHCクラスI分子のエクソソーム上の発現は ILT2 (immunoglobulin-like transcript 2), ILT4 (immunoglobulin-like transcript 4), KIR2DL4等の抑制型受容体を介してCD8+ T細胞とNK(ナチュラルキラー)細胞の応答を阻害し、MHCクラスII分子を持つエクソソームはCD4+ T細胞の増殖・分化を促進する。ただし、MHC-II陽性エクソソームが直接T細胞を活性化するのに比べて、樹状細胞(DC)に提示されたMHC-II-エクソソームは抗原特異的T細胞を高効率に刺激することが示された (Vincent et al. IntImmunol 2002)。

直接的な膜融合による積荷送達: 膜融合はエクソソームが受容細胞の形質膜と直接融合し積荷をサイトゾルに直接導入する経路であり、細胞応答誘導という観点では最も効率的な経路の一つである。単球由来マイクロベシクルは活性化血小板の形質膜と結合・融合し、組織因子(tissue factor)やPSGL-1(P-selectin glycoprotein ligand-1)等のタンパクを転送することが蛍光脂質混合アッセイで実証された。転移性メラノーマ細胞由来エクソソームも形質膜との融合が示され、フィリピン(コレステロール封鎖剤)によって阻害されることが明らかになった (Parolini et al. JBiolChem 2009)。酸性微小環境(低pH)がエクソソームの膜融合を促進することが腫瘍微小環境での優先的取り込みを部分的に説明すると考えられる。テトラスパニン複合体は膜融合においても調節的役割を持ち、CD9やCD81はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染時の細胞融合を抑制することが示されており、エクソソームとT細胞融合への関与も示唆されるが直接的証拠は未確立である。インテグリンが接着後の融合を促進し、テトラスパニン濃縮マイクロドメインが融合を実行するという二段階モデルが仮説として提案されている。

食作用によるエクソソーム取り込み: 食作用はアクチン依存的機序であり、FcR(Fc受容体)、補体受容体、スカベンジャー受容体、Toll様受容体等のオプソニン受容体の存在を必要とする (Fig 1)。マクロファージや樹状細胞などのプロフェッショナル食細胞がエクソソームをこの経路で効率的に取り込む主要な細胞種であるが、γδ T細胞も抗体オプソニン化とFcγRIII受容体を介した食作用が可能な非プロフェッショナル食細胞として機能しうる。K562(赤血球性白血病)やMT4(T細胞白血病)細胞由来エクソソームに対して、単球性/マクロファージ系細胞株がJurkat T細胞やHEK293T細胞より有意に高い取り込み効率を示したことが確認された (Feng et al. Traffic 2010)。食作用によるエクソソーム取り込みはアクチン細胞骨格、PI3K(phosphatidylinositol 3-kinase)、およびダイナミン2の活性に依存し、取り込まれたエクソソームはLamp-1、リゾビスホスファチジン酸、Rab7と共局在することが示された(後期オートファゴソームおよびエンドソーム・リソソーム小胞への輸送)。食作用によって取り込まれたエクソソームは必然的に食小体-リソソーム融合を経て内容物が分解されるため、細胞間シグナル伝達ではなく「クリアランス機序」として機能する可能性が高い。

マクロピノサイトーシスによる非特異的取り込み: マクロピノサイトーシスはアクチン線維によって駆動される形質膜突起が陥入することで細胞外液と小粒子を非特異的に取り込む経路であり、複数の細胞種で確認されている。オリゴデンドロサイト由来エクソソームのPtdSerがミクログリア/マクロファージサブセット(抗原提示能を持たないもの)のマクロピノサイトーシスを活性化することが示され、この経路は抗原提示能を持つ細胞への特異的シグナルではなく「免疫学的サイレント」な分解・クリアランス経路である可能性が示唆された。マクロピノサイトーシスはNa+/H+イオン交換阻害剤 EIPA (5-(N-ethyl-N-isopropyl)amiloride) およびPI3K阻害剤LY294002によって阻害される。コレステロール依存的でもあり、メチル-β-シクロデキストリン(脂質ラフト破壊剤)によっても阻害される (Tian et al. JBiolChem 2014) (Table 2)。

受容体介在エンドサイトーシス経路: エクソソーム表面のリガンドと受容細胞受容体の特異的相互作用に基づくクラスリン介在エンドサイトーシスは、PC12(ラット副腎髄質腫瘍)細胞由来エクソソームの部分的な取り込みとして示されており、クラスリンのsiRNAノックダウンや薬理学的阻害である CPZ (chlorpromazine) によって取り込みが抑制される (Tian et al. JBiolChem 2014) (Table 2)。グリオブラストーマ由来エクソソームの取り込みはクラスリン・カベオリン非依存的な脂質ラフト依存性エンドサイトーシスを介し、ERK1/2-HSP27シグナル経路を要求する。この経路ではカベオリン-1によるERK1/2の負的調節がエクソソームエンドサイトーシスを抑制することが示された。これらのエンドサイトーシス経路では取り込まれたエクソソームはエンドソーム経路に送られ、初期エンドソームからリサイクリングエンドソームまたは後期エンドソーム・リソソームへの一方向的輸送を経る。後期エンドソームに到達した積荷も、trans-Golgiネットワークを介したリサイクリングによって分解を回避する可能性がある。エクソソームエンドサイトーシスの細胞内輸送にはv-SNAREタンパク(VAMP3/cellubrevin:エンドソーム-オートファゴソーム融合;VAMP7/TI-VAMP:アンフィソーム-リソソーム融合)、糸状アクチン、微小管が関与することが確認されている (Tian et al. JCellPhysiol 2013)。

治療応用における免疫調節と課題: 取り込み機序は細胞応答の性質を規定する。可溶性・ジャクスタクリンシグナリングおよび膜融合はエンドソーム-リソソーム分解経路を介さず細胞応答を誘導しやすい。食作用はリソソームによる内容物分解を必然的に招くため主としてクリアランス機序として機能する。IL-10処理骨髄DC由来エクソソームがコラーゲン誘発関節炎の発症を予防し確立した炎症を抑制したこと、IL-4産生DCの遺伝子改変で作製したエクソソームがMHC-II・FasL依存的にT細胞活性を抑制したことなど、操作されたエクソソームによる免疫調節治療の有望な前臨床成績が報告されている。腫瘍由来エクソソームは死リガンド(FasL, TRAIL)を発現してCD8+ T細胞のアポトーシスを誘導し免疫逃避に寄与する一方、DC由来エクソソームはCD4+ T細胞増殖を促進して免疫強化に寄与するという対照的な機能がある。治療応用の課題として、培養由来エクソソームのバッチ間プロテオーム変動が大きく、3バッチで共通するタンパク質は huES9.E1 (human embryonic stem cell-derived mesenchymal stem cells) の約400種のうち154種(約38.5%)のみであり、再現性のある治療用エクソソーム産生が困難であることが示された。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューは、エクソソームの取り込み機序に関する既存の知見を包括的に整理し、特にT細胞との相互作用に焦点を当てた。これは、個別の取り込み経路のみを断片的に報告してきたこれまでの先行研究と異なり、複数の内在化経路と生体内動態データを統合的に論じた点で大きく異なる。特に、静脈内投与後の血中半減期が約2分(t1/2 ~2 min)という極めて短いことや、単球/マクロファージによる迅速なクリアランスが主要な機序であるという動態データは、治療応用におけるエクソソームの標的化戦略を検討する上で、これまでと対照的な視点を提供する。

新規性: 本研究で初めて、エクソソームの取り込みが単一の経路ではなく、食作用、マクロピノサイトーシス、受容体介在エンドサイトーシス(クラスリン介在、カベオリン介在、脂質ラフト依存)、および膜融合といった複数の経路が、細胞種、エクソソームの起源細胞、および微小環境に応じて並行または選択的に利用されることを明確に示した。また、各取り込み経路が細胞間シグナル伝達とクリアランス機序のどちらに寄与するのかという重要な問いを提起し、その解明がエクソソームの生物学的機能の理解と治療戦略構築の基盤となることを強調した。

臨床応用: 本知見は、エクソソームを治療担体として臨床応用する上で極めて重要な意味を持つ。例えば、エクソソームの表面修飾によって特定の取り込み経路を制御し、目的細胞への選択的ホーミングを増強する戦略は、薬物送達システムとしてのエクソソームの可能性を広げる。また、リソソーム分解からの回避効率を向上させることで、エクソソームの積荷が細胞内で機能的に作用する確率を高めることができる。これらの知見は、癌治療、炎症性疾患、自己免疫疾患など、様々な疾患に対するエクソソームベースの新規治療法の開発に直結する臨床的意義を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、各取り込み経路の細胞種依存性およびエクソソーム表面分子依存性の精密なメカニズムをさらに詳細に解明することが残されている。特に、各経路が真の細胞間コミュニケーションに寄与するのか、あるいは単なるクリアランス機序として機能するのかを明確に区別する必要がある。また、治療用エクソソームのバッチ間変動の課題を克服し、再現性のある高品質なエクソソームを大量生産するための技術開発も今後の研究方向性として重要である。これらの課題を解決することで、エクソソームの治療能力は無限に広がる可能性がある。

方法

本研究は、エクソソームの取り込みメカニズムに関する既存の文献を系統的にレビューしたものである。特定の実験プロトコルは含まれない。文献検索は、エクソソームの取り込み、エンドサイトーシス、食作用、マクロピノサイトーシス、受容体介在エンドサイトーシス、膜融合、生体内動態、およびT細胞との相互作用に関連するキーワードを用いて、主要な科学データベースである PubMed および Web of Science を対象に実施された。検索対象期間はデータベース創設から2015年以前に発表された関連性の高い原著論文およびレビュー論文に限定し、重複を除外した上で収集・分析された。

本レビューにおける文献選定の inclusion/exclusion criteria(選択・除外基準)として、エクソソーム(30-100 nm)の細胞取り込み機序を直接評価しているインビトロおよびインビボ研究を選択し、マイクロベシクル(100-1000 nm)やアポトーシス小体のみを対象とする研究は除外した。文献の選定プロセスおよびスクリーニング結果は、透明性を担保するために PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) フローチャートの概念に準拠して整理された。また、収集されたエビデンスの信頼性を担保するため、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムの基準を応用して、各研究の実験デザイン、サンプルサイズ、および結果の再現性に基づく evidence level grading(エビデンスレベル評価)を実施した。

統計的な解析手法や実験モデルの信頼性を評価するため、文献内で用いられている細胞株(HEK293T, A549, Jurkat, K562, PC12など)やマウスモデル(C57BL/6Jなど)の記述を精査した。特に、各文献における統計解析手法として、多重比較における ANOVA (analysis of variance) や、2群間比較における Student’s t-test、および生存分析における Kaplan-Meier 法や Cox regression(コックス比例ハザード回帰分析)などの統計手法が適切に使用されているかを確認した。本レビューでは、これらの情報を統合し、エクソソームの取り込みメカニズムに関する包括的な理解を提供することを目指した。