• 著者: Du Feng, Wen-Long Zhao, Yun-Ying Ye, Xiao-Chen Bai, Rui-Qin Liu, Lei-Fu Chang, Qiang Zhou, Sen-Fang Sui
  • Corresponding author: Sen-Fang Sui (School of Life Sciences, State Key Laboratory of Biomembrane and Membrane Biotechnology, Tsinghua University, Beijing, China)
  • 雑誌: Traffic
  • 発行年: 2010
  • Epub日: 2010-02-05
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 20136776

背景

エクソソームは直径30〜100 nmの膜小胞であり、多胞体 (MVB) と細胞膜の融合により細胞外へ放出される。1980年代に網状赤血球の成熟過程におけるトランスフェリン受容体 (TfR) 除去機構として初めて報告されて以来 (Johnstone et al. 1987)、リンパ球、上皮細胞、腫瘍細胞、神経細胞など多様な細胞種から放出されることが明らかになった (Raposo et al. JExpMed 1996; Thery et al. 1999; van Niel et al. 2001; Bard et al. 2004)。エクソソームは抗原提示、細胞変換、mRNA/miRNA転送による細胞間コミュニケーションに深く関与していると考えられている (Fevrier et al. 2004; Valadi et al. NatCellBiol 2007)。また、尿、血中、腹水、脳脊髄液 (CSF) など生体液中に存在し、in vivoでの細胞間シグナル伝達の媒体として機能することが示唆されている (Pisitkun et al. 2004; Caby et al. IntImmunol 2005; Keller et al. 2006; Vella et al. 2008)。さらに、エクソソームは毒素、レトロウイルス、プリオンなどのシャトルとしても利用され、グリオーマ由来エクソソームは腫瘍促進性のRNAやタンパク質を運搬することが報告されている (Skog et al. NatCellBiol 2008)。これらの機能は、主にエクソソームの細胞内取り込みと細胞内輸送経路に依存すると考えられている (Lakkaraju et al. 2008; Simons et al. CurrOpinCellBiol 2009)。

しかし、2010年時点では、レシピエント細胞へのエクソソームの取り込みメカニズムおよび細胞内ソーティング経路は依然として未解明であった。先行研究では未成熟樹状細胞によるエクソソームの取り込みが報告されていたが (Morelli et al. Blood 2004)、その取り込み経路がエンドサイトーシス、ファゴサイトーシス、マクロピノサイトーシス、あるいは直接融合のいずれであるかの同定は課題として残されていた。特に、エクソソームが細胞表面に結合するのか、細胞内に取り込まれるのか、そしてその細胞内運命がどうなるのかについては、明確な証拠が不足している状況であった (Stoorvogel et al. 2002; van Niel et al. 2006)。エクソソームの生理学的・病理学的な役割を完全に理解するためには、その細胞取り込み機構を詳細に解明することが不可欠であったが、この分野の知見は不足している状況であった。本研究は、エクソソームと細胞の相互作用様式と細胞内輸送経路に関するこの知識のギャップを埋めることを目指した。

目的

本研究の目的は、K562 (ヒト赤白血病) およびMT4 (HTLV-1変換T細胞白血病) 由来エクソソームの細胞内取り込み機構を系統的に解析することである。具体的には、食細胞と非食細胞間でのエクソソーム取り込み効率の分子機構、関与する取り込み経路 (ファゴサイトーシス、クラスリン/カベオリン媒介エンドサイトーシス、マクロピノサイトーシス)、関連する分子 (ダイナミン2 (Dyn2)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質4 (TIM-4) 受容体、アクチン、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ (PI3K))、および取り込み後の細胞内輸送経路を明らかにすることを目指した。これにより、エクソソームとレシピエント細胞間の相互作用様式と細胞内運命に関する基礎的な理解を深めることを意図した。特に、エクソソームが非食細胞では主に細胞膜に付着するのみであるのに対し、食細胞ではファゴサイトーシスを介して効率的に内在化されるという仮説を検証し、その分子メカニズムを詳細に解明することを目的とした。

結果

食細胞と非食細胞におけるエクソソーム取り込み効率の決定的差異: K562細胞またはMT4細胞由来のPKH26/PKH67標識エクソソームをRAW 264.7マクロファージとNIH 3T3線維芽細胞に曝露した。PBS洗浄のみではNIH 3T3細胞表面にエクソソームが付着したままであったが、トリプシン処理とクエン酸バッファー洗浄により表面結合エクソソームを除去すると、NIH 3T3、Jurkat、293T、COS-7、HEL299などの非食細胞ではエクソソームの細胞内取り込みがほぼゼロであることが確認された (Figure 1C)。一方、RAW 264.7、U937、THP-1、J774A.1などの食細胞ではエクソソームが効率的に取り込まれた (Figure 1C)。取り込みの動態曲線は、食細胞では15分から検出され、12時間でプラトーに達したのに対し、非食細胞では24時間後でも取り込みがほとんど検出されず、遅延取り込みではなく質的に異なるメカニズムが示唆された (Figure 1D, E)。対照として、トランスフェリン取り込み (クラスリン依存性エンドサイトーシス) は両細胞群で正常であり、バイオスフィア取り込み (ファゴサイトーシス) は食細胞のみで観察されたことから、エクソソーム取り込みがファゴサイトーシス経路と関連している可能性が強く示唆された (Figure 1B)。この実験には、各細胞タイプにつき n=3 replicates を用いた。

エクソソームのファゴサイトーシス経路への関与とアクチン・PI3K依存性: 金標識エクソソームの電子顕微鏡観察により、エクソソームはまず細胞表面の細胞突起に付着し、その後カップ状の陥入 (ファゴサイトーシスカップ) に取り込まれる様子が観察された (Figure 2A)。インキュベーション30分後には、直径1 µm以上のファゴソーム様コンパートメント内に複数の金標識エクソソームが検出された (Figure 2C)。ファゴサイトーシスマーカーであるバイオスフィアとPKH26標識エクソソームを同時にマクロファージに添加すると、10分で両者の共内在化が始まり (Figure 2D)、30分後には大型の滑らかな表面を持つファゴソーム内に共に包含された (Figure 2E, Figure 3A, B)。トランスフェリンはこれらのファゴソームには侵入せず、エンドサイトーシス経路とは明確に分離された。ライブセルイメージングでは、PKH26標識エクソソームがマクロファージの細胞シナプスに沿って移動し、その後細胞内部に侵入する様子が観察された (Movie S1)。アクチン重合阻害剤であるCytochalasin DおよびLatrunculin Bは、エクソソームの取り込みを用量依存的に阻害した。0.5 µMおよび1 µMのCytochalasin DまたはLatrunculin Bの存在下では、取り込みはそれぞれ38±10%および75±5%減少した。5 µMでは両薬剤ともエクソソーム取り込みをほぼ完全に阻害した (Figure 2H)。同様に、ファゴソーム形成に必須のPI3K阻害剤であるWortmanninおよびLY294002も、エクソソームの取り込みを用量依存的に抑制した (Figure 2I, J)。これらの結果は、ファゴソーム形成に不可欠なアクチン重合とPI3K経路がエクソソーム取り込みにも共通して必要であることを強く示唆している。この実験では、各条件につき n=3 experiments を実施した。

TIM-4依存性およびファゴリソソームへのソーティング: アポトーシス細胞のファゴサイトーシス受容体として同定されているTIM-4とT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質1 (TIM-1) の関与を評価した。抗TIM-4抗体 (5 mg/mL) による前処理は、エクソソーム取り込みを30±10%抑制したが、抗TIM-1抗体では5±4%のわずかな抑制に留まった (Figure 4B)。両抗体の併用では37±8%の抑制が観察された (Figure 4B)。この結果は、エクソソーム表面のホスファチジルセリンを介したTIM-4による認識が、マウスマクロファージにおけるエクソソーム内在化の一つのメカニズムであることを示唆している。取り込まれたエクソソームは、Lamp-1 (65±9%)、LBPA (48±5%)、Rab7 (37±7%) と高い割合で共局在し、ファゴリソソームへ選択的にソーティングされることが示された (Figure 5A, C)。スピニングディスク共焦点ライブセルイメージングにより、Rab7-EGFP陽性小胞とエクソソーム含有ファゴソームの直接的な融合が観察された (Figure 5B, Movie S2)。ERマーカー (カルネキシン) やゴルジマーカー (Rab6) との共局在は観察されず、エクソソームが逆行性輸送経路には入らないことが確認された (Figure S2)。この解析には、n=20 cells を用いて定量分析を行った。

Dynamin 2依存性: Dyn2のドミナントネガティブ変異体 (Dyn2K44A) の発現は、バイオスフィア取り込みを65%、エクソソーム取り込みを81%抑制した (Figure 6A)。Dyn2 siRNAによるノックダウンは、エクソソーム取り込みをほぼ完全に阻害した (Figure 6C)。Dyn2はクラスリン依存性、カベオリン依存性エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシスに共通して必要な分子であり、マクロピノサイトーシスには不要であるため、この結果はエクソソーム取り込みがファゴサイトーシスに依存しているという結論と整合する。Dyn2K44Aの発現によるエクソソーム取り込みの阻害は、Dyn2WT発現細胞と比較して約 5-fold の減少を示した (MFI 1570 vs 553)。

クラスリン、カベオリン、マクロピノサイトーシスの役割排除: クラスリンとの共局在は10分で8±5%、60分で3±2%と非常に低い値であった (Figure S3A, C)。クラスリン被覆ピット形成を阻害するEps15ドミナントネガティブ変異体の発現は、トランスフェリン取り込みを劇的に減少させたが、エクソソーム取り込みには75±6% (対照95±5%) と軽微な影響しか与えなかった (Figure 7A, B)。クラスリン媒介エンドサイトーシス阻害剤であるクロルプロマジン (50 µM) はトランスフェリン取り込みを82±5%阻害したが、エクソソーム取り込みは24±7%の阻害に留まった (Figure 7C, D)。カベオリン-1との共局在も低値であった (Figure S3B, C)。マクロピノサイトーシスのマーカーであるFITC-デキストランとの共局在は16±5%であり (Figure 8A, C)、マクロピノサイトーシス阻害剤EIPAはFITC-デキストラン取り込みを抑制したが、エクソソーム取り込みには影響を与えなかった (Figure 8B, D)。これらの結果から、クラスリン媒介エンドサイトーシス、カベオリン媒介エンドサイトーシス、およびマクロピノサイトーシスはエクソソーム取り込みに主要な役割を果たさないことが示された。各条件につき n=3 experiments を実施し、統計的に評価した。

考察/結論

本研究は、K562およびMT4細胞由来エクソソームの細胞内取り込みの主要経路が、クラスリン、カベオリン、マクロピノサイトーシスではなく、ダイナミン2、アクチン、PI3K、TIM-4依存性のファゴサイトーシスであることを、複数の細胞系、薬理学的阻害剤、分子操作、および超構造観察を用いて系統的に実証した初期の決定的研究である。食細胞がエクソソームを選択的に効率よく取り込むという所見は、網状赤血球から放出されるエクソソームが最終的に専門的食細胞によって除去されるという血液中クリアランス機構とも整合する (Johnstone et al. 1991)。

先行研究との違い: これまでの研究ではエクソソームの細胞取り込み経路は不明確であったが、本研究は非食細胞ではエクソソームが主に細胞膜に付着するのみであり、効率的な細胞内取り込みは食細胞に限定されることを明確に示した点で、先行研究と異なる知見を提供している。特に、エクソソームがファゴサイトーシスのトレーサーであるバイオスフィアと共内在化し、ファゴソームに輸送されるという直接的な証拠は、これまでの報告にはない新規性を持つ。例えば、Tumne et al. JVirol 2009 は、エクソソームが細胞内取り込みではなく直接結合を介してHIV-1転写を抑制することを示しており、本研究の取り込みメカニズムの特異性を強調する。

新規性: 本研究で初めて、エクソソームの細胞内取り込みがアクチン重合、PI3K、およびダイナミン2に依存するファゴサイトーシス経路を介して行われることを実証した。さらに、アポトーシス細胞の認識に関与するTIM-4受容体が、マクロファージによるエクソソーム内在化に部分的に関与することも新規に同定された。取り込まれたエクソソームが最終的にLamp-1、LBPA、Rab7陽性のファゴリソソームへ輸送されるという細胞内運命も本研究で初めて詳細に明らかにされた。これらの発見は、エクソソームの細胞内輸送と機能に関する理解を深める上で重要な貢献である。

臨床応用: 本知見は、エクソソームを治療ベクターとして設計する際の戦略に重要な臨床的含意を持つ。例えば、食細胞による取り込みを回避することでエクソソームの循環時間を延長したり、逆に食細胞への標的化を利用して免疫療法や抗がん剤送達に応用したりすることが可能となる。また、腫瘍由来エクソソームの血中クリアランスを担う食細胞の機能が、がんの診断バイオマーカーや治療標的となる可能性も示唆される。TIM-4を標的とすることで、マクロファージにおけるエクソソーム取り込みを調節し、疾患治療に応用できるかもしれない。

残された課題: 今後の検討課題として、他の起源のエクソソーム (例: 樹状細胞由来、腫瘍由来、乳由来など) が同様の経路で取り込まれるのか、あるいは異なるカーゴによって受容体媒介性結合、直接融合、マクロピノサイトーシスなどの他の経路を利用するのかを明らかにすることが挙げられる。また、TIM-4のホスファチジルセリン認識機構の詳細、ファゴリソソーム内でのエクソソームカーゴ (mRNA、miRNA、タンパク質) の運命と機能的シグナル伝達の時空間制御、および血液脳関門や特殊な組織環境におけるエクソソーム取り込みの一般化可能性も残された課題である。非食細胞における「表面結合のみ」の状態が、実はシグナル伝達のトリガーとして機能し得る可能性 (例: LFA-1/ICAM-1によるT細胞プライミング、脂質ラフト結合によるアポトーシス誘導など) も、今後の研究でさらに深掘りされるべき点である。

方法

K562細胞およびMT4細胞から、差分超遠心分離、30%スクロースクッション、限外ろ過 (Amicon Ultra-15) を組み合わせた方法でエクソソームを精製した。精製されたエクソソームは、透過型電子顕微鏡 (TEM)、スクロース密度勾配遠心、免疫金標識 (抗Tsg101抗体、抗TfR抗体)、PKH26/PKH67蛍光標識によりその特性を同定した (Figure S1)。

エクソソームの細胞内取り込みアッセイには、食細胞 (RAW 264.7マクロファージ、U937単球由来マクロファージ、THP-1骨髄単球細胞、J774A.1マクロファージ) と非食細胞 (NIH 3T3線維芽細胞、Jurkat T細胞、293T細胞、COS-7腎臓細胞、HEL299ヒト肺線維芽細胞) を用いた。エクソソーム添加後、表面結合エクソソームを除去するため、トリプシン処理とクエン酸バッファー洗浄を行い、細胞内取り込み量を定量した。蛍光強度測定にはルミノメーターを用いた。

エクソソームの細胞内輸送経路を追跡するため、金標識エクソソームを用いた電子顕微鏡観察を実施した。また、ファゴサイトーシスのトレーサーとしてポリスチレンカルボキシレート修飾ラテックスビーズ (バイオスフィア) を用い、エクソソームとの共局在を評価した。

取り込み経路の分子機構を解析するため、以下の阻害剤および分子操作を用いた。

  • アクチン重合阻害剤: Cytochalasin D (Cyto D)、Latrunculin B (Lat B)
  • PI3K阻害剤: Wortmannin、LY294002
  • クラスリン媒介エンドサイトーシス阻害剤: Chlorpromazine
  • マクロピノサイトーシス阻害剤: EIPA (5-ethyl-N-isopropyl amiloride)
  • Dyn2の機能阻害: Dyn2野生型 (Dyn2WT) およびドミナントネガティブ変異体 (Dyn2K44A) の過剰発現、Dyn2 siRNAによるノックダウン
  • クラスリン被覆ピット形成阻害: Eps15変異体 (Eps15 mt) の発現
  • TIM受容体の関与: 抗TIM-1抗体、抗TIM-4抗体を用いた前処理

取り込み後の細胞内ソーティング経路を特定するため、ファゴリソソームマーカーであるLamp1、LBPA、Rab7との共局在を免疫蛍光染色と共焦点顕微鏡で評価した。特に、Rab7-EGFPを用いたライブセルイメージングにより、ファゴソームとリソソームの融合過程を直接観察した。ERマーカー (カルネキシン) およびゴルジマーカー (Rab6) との共局在も確認し、逆行性輸送経路への関与を排除した (Figure S2)。 統計解析には、平均値±標準偏差 (mean ± SD) を算出し、必要に応じて Student t-test を用いて群間比較を行った。