• 著者: Haidong Dong, Gefeng Zhu, Koji Tamada, Lieping Chen
  • Corresponding author: Lieping Chen (Department of Immunology, Mayo Graduate and Medical Schools, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA)
  • 雑誌: Nature medicine
  • 発行年: 1999
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 10581077

背景

B7ファミリー分子であるB7-1 (CD80) とB7-2 (CD86) は、T細胞表面の共受容体CD28と結合し、抗原特異的なT細胞の増殖、サイトカイン産生、エフェクターT細胞への分化を促進する必須の共刺激経路を構成することが知られている (Chambers & Allison 1997; Lenschow et al. 1996)。このB7-CD28共刺激は、T細胞の生存を促進するbcl-xLの発現も誘導すると報告されている (Boise et al. 1995)。一方、活性化T細胞上のB7-1およびB7-2のカウンター受容体であるCTLA-4 (cytotoxic T-lymphocyte antigen 4) を介したシグナル伝達は、T細胞増殖、IL-2 (interleukin-2) 産生、IL-2受容体発現、細胞周期進行を抑制する負のシグナルを伝達すると報告されている (Krummel & Allison 1996; Walunas et al. 1996)。

また、CD28と構造的・機能的に関連する別の分子としてICOS (inducible co-stimulator) がHutloff et al. (1999) によって同定されており、ICOSに対するモノクローナル抗体はT細胞増殖を共刺激し、IL-10 (interleukin-10) およびIL-4 (interleukin-4) 産生を誘導することが示されていた。IL-10産生の増加は、通常、細胞性免疫応答の低下、免疫グロブリン産生の増加、抗原特異的T細胞のアネルギーと関連すると考えられる (Moore et al. 1993)。しかし、ICOSの自然リガンドは当時未同定であった。

B7-1とB7-2は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、細胞外ドメインのIgV様およびIgC様領域において約25%のアミノ酸同一性を共有するが、細胞質ドメインは大きく異なると報告されていた (Freeman et al. 1993; Azuma et al. 1993)。これらの分子はCD28には低親和性で、CTLA-4には高親和性で結合する特性を持つ (Linsley et al. 1994)。B7ファミリーの構造的類似性から、未解明な関連分子が存在する可能性が推測されており、これらの新規分子がT細胞免疫応答においてどのような役割を果たすのかは不明であった。特に、CD28/CTLA-4/ICOSとは異なる共刺激経路が存在する可能性や、それらが誘導するサイトカインプロファイルが従来のTh1/Th2パターンと異なるのかどうかは課題として残されていた。既存のB7分子に関する研究は進んでいたものの、T細胞共刺激の全容を理解するには、さらなる新規メンバーの同定と機能解析が不足している状況であった。

目的

本研究は、B7-1/B7-2と配列相同性を有する新規B7ファミリー分子を同定・クローニングし、その構造的特徴、組織発現パターン、T細胞への共刺激機能、受容体特異性、およびサイトカイン産生プロファイルを詳細に解析することを目的とした。特に、既知のB7ファミリーメンバーとは異なる受容体を介して機能する可能性、および免疫応答の新たな制御軸としての役割を解明することを目指した。具体的には、新規B7ファミリー分子がT細胞の増殖やサイトカイン産生にどのような影響を与えるか、またその作用がCD28、CTLA-4、ICOSといった既知の受容体を介するものであるかを明らかにすることを目的とした。これにより、T細胞共刺激の多様性と、免疫応答の微調整に関わる新たな分子メカニズムの理解を深めることを意図した。

結果

新規B7ファミリー分子B7-H1の構造的特徴と既知B7分子との比較: B7-H1遺伝子は、290アミノ酸からなるI型膜貫通タンパク質をコードすることが判明した。このタンパク質は、IgV様ドメイン、IgC様ドメイン、疎水性膜貫通 (TM) 領域、および30残基の細胞質尾部から構成される (Fig. 1a)。細胞外ドメインのアミノ酸配列は、B7-1と約20%、B7-2と約15%の同一性を共有した (Fig. 1b)。B7ファミリーに共通して保存されている4つの構造的システイン残基はB7-H1にも保存されていたが、CD28およびCTLA-4への結合に必須とされるSQDXXXELYモチーフ (B7-1の190-198位、B7-2の189-197位) はB7-H1には欠損していた (Fig. 1b)。この特徴は、B7-H1が既知のB7受容体とは異なる結合特性を持つ可能性を示唆した。

組織発現パターンとT細胞/単球での誘導発現: Northern blot解析により、B7-H1 mRNAは心臓、骨格筋、胎盤、肺組織で豊富に発現していることが示された。胸腺、脾臓、腎臓、肝臓では弱い発現が認められたが、脳、結腸、小腸、PBMCでは検出されなかった (Fig. 1c)。ほとんどの組織で約4.1 kbと7.2 kbの2種類の転写産物が検出された。FACS解析では、新鮮なT細胞およびB細胞 (n=5 donors) ではB7-H1の発現はほとんど認められなかったが、CD14+単球の約16%がB7-H1を恒常的に発現していた (Fig. 1d)。細胞活性化によりB7-H1の発現は誘導され、PHA刺激CD3+ T細胞の約30%、IFN-γとLPS処理CD14+単球の約90%でB7-H1の発現が認められた。LPS刺激CD19+ B細胞では約6%がB7-H1を発現した (Fig. 1d)。これらの結果は、B7-H1が特定の組織や活性化された免疫細胞で選択的に発現することを示している。

CD28/CTLA-4/ICOSとは異なる受容体結合特異性: B7-H1の受容体結合特異性を評価した結果、B7-H1を安定発現させた293細胞 (B7-H1/293細胞) はCTLA4IgまたはICOSIgと結合しなかった (Fig. 2a)。また、B7-H1IgはCD28を恒常的に発現するJurkat T細胞に結合しなかった (Fig. 2b)。さらに、Raji細胞に対するCTLA4IgおよびICOSIgの結合は、B7-H1Igの共存によって阻害されなかった (Fig. 2a)。これらの結果は、B7-H1がCD28、CTLA-4、ICOSのいずれのリガンドでもないことを明確に示しており、これらの既知のB7受容体とは異なる新規の受容体を介して機能することを示唆した。このことは、B7-H1がT細胞共刺激において独自の経路を持つことを強く裏付けるものである。

T細胞増殖共刺激機能: 固相化B7-H1Igは、抗CD3抗体 (5-20 ng/ml) の存在下で、精製T細胞 (n=5 donors) の増殖をコントロールIgと比較して最大で約1,000%増強した (Fig. 3a)。抗CD3抗体が存在しない場合、B7-H1Ig単独 (最大5 µg/ml) ではT細胞増殖を誘導しなかったことから、B7-H1が古典的な共刺激分子として機能することが示された (Fig. 3a)。可溶性B7-H1Igでは共刺激効果が大幅に低下した。また、同種MLRにおいて、可溶性B7-H1Ig (0.6-5 µg/ml) はT細胞増殖を中程度に促進し、約200%の増強が認められた (Fig. 3b)。これらのデータは、B7-H1がポリクローナルなT細胞刺激および同種抗原に対するT細胞の増殖応答を促進する共刺激機能を持つことを示した。

IL-10優先誘導の独特なサイトカインプロファイル: B7-H1Igと抗CD3抗体で刺激したT細胞は、48時間および72時間で培養上清中にIL-10を著明に分泌した (Fig. 4)。IFN-γの産生も上昇したが、B7-1Igや抗CD28抗体で刺激した場合とは異なり、IL-2およびIL-4の産生はごく少量または検出不能であった (Fig. 4)。これは、B7-1Igや抗CD28抗体が大量のIL-2およびIFN-γを誘導し、B7-2がIL-4およびIL-10も誘導するという従来の知見 (Freeman et al. 1995) とは対照的なパターンである。B7-H1共刺激は、従来のTh1/Th2サイトカインパターンから逸脱した、IL-10産生を優先的に誘導する独特なサイトカインプロファイルを示すことが明らかになった。

IL-2依存的増殖・IL-10分泌: B7-H1共刺激によるIL-2産生は少量ではあったが、24時間でピークに達し、B7-H1Ig濃度依存的にわずかに増加した (1 ng/ml未満) (Fig. 4 inset)。一方、IL-10分泌は48時間から72時間にかけて急激に増加した。初期に産生される少量のIL-2の役割を調べるため、IL-2中和抗体 (8 µg/ml) を添加した実験をn=3 replicatesで実施した。その結果、IL-2中和抗体はB7-H1-COS細胞によって誘導されるT細胞増殖をB7-1-COS細胞の場合と同様に完全に阻害した (Fig. 5a)。さらに、B7-H1Ig共刺激によるT細胞からのIL-10分泌もIL-2中和抗体によって阻害された (Fig. 5b)。これらのデータは、B7-H1によるT細胞増殖およびIL-10分泌の共刺激効果がIL-2依存性であることを示しており、初期の少量のIL-2がT細胞のアネルギー防御と増殖・IL-10分泌維持に必須であることを示唆した。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、ヒトB7ファミリーの第3のメンバーであるB7-H1 (後にPD-L1として同定) を本研究で初めて同定し、その詳細な構造的特徴と機能的役割を明らかにした。B7-H1はB7-1およびB7-2と細胞外ドメインで約20%のアミノ酸同一性を共有し、B7ファミリーに保存された4つのシステイン残基やIgV様ドメインのチロシン残基も保存されていた (Fig. 1b)。しかし、CD28およびCTLA-4への結合に必須とされるSQDXXXELYモチーフが欠損しており、CTLA4Ig、ICOSIg、CD28Igのいずれとも結合しないことが示された (Fig. 2a, 2b)。このことは、B7-H1が既知のB7受容体とは全く異なる受容体を介して機能する新規の共刺激分子であることを明確に示している。従来のB7-1/B7-2共刺激が大量のIL-2やIFN-γを誘導するのに対し (Freeman et al. 1995)、B7-H1共刺激はT細胞増殖を促進する一方で、IL-10を優先的に誘導し、IL-2やIL-4の産生はごく少量または検出不能であるという独特なサイトカインプロファイルを示した (Fig. 4)。このパターンは、従来のTh1/Th2サイトカイン二分法とは対照的であり、T細胞免疫応答における新規の制御軸の存在を示唆する。IL-10は細胞性免疫の抑制、免疫グロブリン産生の増強、抗原特異的T細胞のアネルギー誘導に関連することが知られている (Moore et al. 1993)。このことから、B7-H1は細胞性免疫応答の負の制御、特に組織特異的な炎症や免疫反応の抑制に関与する可能性が考えられる。胎盤や肺などの免疫特権組織でのB7-H1 mRNAの豊富な発現 (Fig. 1c) は、この仮説を裏付けるものである。

新規性: 本研究で初めて、B7ファミリーの新規メンバーであるB7-H1を同定し、その共刺激機能とこれまで報告されていないIL-10優先誘導というサイトカインプロファイルを明らかにした。B7-H1がCD28、CTLA-4、ICOSとは異なる受容体を介して機能するという発見は、T細胞共刺激経路の多様性に関する理解を深める上で画期的な知見であった。この発見は、後のPD-1/PD-L1経路の同定へと繋がり、免疫チェックポイント分子としてのPD-L1の役割を解明する上で不可欠な基盤を築いた。

臨床応用: 本研究の知見は、後のPD-1/PD-L1経路の同定、PD-L1の腫瘍免疫回避機構の発見 (Dong et al. 2002 Nature Medicine)、そして抗PD-1/抗PD-L1チェックポイント阻害剤 (ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブなど) の臨床応用による現代がん免疫療法革命の基盤となった点で、極めて重要な臨床的意義を持つ。B7-H1がIL-10産生を誘導し、T細胞アポトーシスを増加させる可能性 (Dong et al. unpublished data) は、がん細胞がPD-L1を発現することでT細胞の抗腫瘍応答を抑制し、免疫回避を行うメカニズムの理解に繋がった。この基礎研究が、現在のがん治療における画期的な進歩である免疫チェックポイント阻害療法の開発に直結したことは、bench-to-bedside研究の成功例として特筆される。

残された課題: 本研究の発表時点では、B7-H1のカウンター受容体は未同定であった。これは当時の残された課題であり、後にFreemanらによってPD-1がB7-H1のカウンター受容体であることが解明された。今後の検討課題として、B7-H1/PD-1経路が免疫応答を負に制御する詳細な分子メカニズム、特にIL-10産生誘導とT細胞アネルギー・アポトーシスとの関連性をさらに深く解明する必要がある。また、B7-H1の組織特異的な発現が、各臓器の免疫特権をどのように維持しているのか、その生理的役割の全容解明も今後の研究方向性として重要である。

方法

新規B7ファミリー分子のクローニングと発現ベクター構築:ヒトcDNA EST (expressed sequence tag) データベースをB7-1およびB7-2のIgV/C域アミノ酸配列で検索し、相同性のあるEST (GeneBank accession number AA292201) を同定した。このEST配列を基に、ヒト胎盤cDNAライブラリからRT-PCR (reverse transcription polymerase chain reaction) により5’末端および3’末端配列を取得し、全長cDNAをクローニングした。クローニングしたB7-H1 cDNAはpcDNA3ベクター (Invitrogen) に挿入され、B7-H1発現プラスミド (pcDNA3-B7-H1) を作製した。また、B7-H1の細胞外ドメインをマウスIgG2a Fc領域と融合させた融合タンパク質 (B7-H1Ig) を作製するため、pmIgV発現プラスミドにクローニングし、CHO (Chinese hamster ovary) 細胞に形質導入して発現させた。同様に、B7-1Ig、CTLA4Ig (CTLA4 immunoglobulin)、ICOSIg (ICOS immunoglobulin) 融合タンパク質も作製し、Protein G-Sepharoseカラムで精製した。

B7-H1の発現解析:B7-H1 mRNAの組織分布は、ヒト多組織Northern blot (Clontech) を用いて解析した。プローブには全長B7-H1 cDNA (870 bp) を使用し、コントロールとしてヒトβ-アクチンcDNAプローブ (2.0 kb) を用いた。細胞表面でのB7-H1タンパク質の発現は、B7-H1Igを免疫原として作製したマウスポリクローナル抗血清を用いたFACS (fluorescence-activated cell sorting) 解析により評価した。新鮮なヒトPBMC (peripheral blood mononuclear cell) およびPHA (phytohemagglutinin) 刺激CD3+ T細胞、IFN-γ (gamma interferon)/LPS (lipopolysaccharide) 処理CD14+単球、LPS処理CD19+ B細胞におけるB7-H1の発現誘導を解析した。

受容体結合特異性の評価:B7-H1の受容体結合特異性を評価するため、B7-H1を安定発現させた293細胞 (B7-H1/293細胞) を用いて、CTLA4Ig、ICOSIg、および抗B7-H1抗体との結合をFACSで解析した。また、CD28を恒常的に発現するJurkat T細胞に対するB7-H1Igの結合も評価した。Raji細胞に対するCTLA4IgおよびICOSIgの結合がB7-H1Igの共存によって阻害されるかどうかも確認した。

T細胞共刺激機能アッセイ:健康ドナーのPBMCから精製したT細胞 (純度95%以上CD3+) を用いて、B7-H1の共刺激機能を評価した。96ウェル平底プレートに固相化した抗CD3抗体 (suboptimal量 5-20 ng/ml) と、固相化B7-H1Ig (5 µg/ml) またはコントロールIg (マウスIgG2a) を併用してT細胞を刺激した。3日間の培養後、3H-thymidineの取り込み量を測定することでT細胞増殖を評価した。抗CD3抗体非存在下でのB7-H1Ig単独刺激による増殖も確認した。さらに、同種混合リンパ球反応 (MLR) における可溶性B7-H1Ig (0.6-5 µg/ml) のT細胞増殖促進効果も評価した。統計解析には、Student t-testを用いた。

サイトカイン産生プロファイルの解析:抗CD3抗体とB7-H1Ig、B7-1Ig、または抗CD28抗体で刺激したT細胞の培養上清中のIL-2、IL-4、IFN-γ、IL-10の濃度を、サンドイッチELISA (enzyme-linked immunosorbent assay) (PharMingen) により24時間、48時間、72時間で定量した。

IL-2依存性の評価:B7-H1共刺激によるT細胞増殖およびIL-10分泌におけるIL-2の役割を評価するため、IL-2中和モノクローナル抗体 (クローンMQ1-17H12, PharMingen) を培養開始時に添加し、T細胞増殖およびIL-10産生への影響を解析した。統計解析には、データは代表的な実験結果として示され、各実験は複数回繰り返された。