• 著者: Yanting Zhou, Guobo Shen, Xikun Zhou, Jing Li
  • Corresponding author: Xikun Zhou (Department of Biotherapy, Cancer Center, West China Hospital, Sichuan University, Chengdu 610041, China); Jing Li (State Key Laboratory of Oral Diseases, West China Hospital of Stomatology, Sichuan University; lijing1984@scu.edu.cn)
  • 雑誌: Signal Transduction and Targeted Therapy
  • 発行年: 2025
  • Epub日: 2025-01-15
  • Article種別: Review
  • PMID: 40461514

背景

好中球は自然免疫の第一線であり、末梢血中の白血球の60-70%を占める。近年、腫瘍微小環境 (tumor microenvironment, TME) において、腫瘍関連好中球 (tumor-associated neutrophils, TAN) が重要な役割を果たすことが認識されている。TANは腫瘍の発生、増殖、再発、浸潤、転移、血管新生、細胞壊死など多岐にわたるプロセスに関与し、その寿命はTMEによって延長される。TANは抗腫瘍性のN1表現型と腫瘍促進性のN2表現型に分化し得るとされてきたが、このN1/N2の二分法は、Fridlender et al. CancerCell 2009によって初めて提唱された。しかし、近年では単一細胞RNAシーケンス (single-cell RNA sequencing, scRNA-seq) や飛行時間型質量分析 (cytometry by time-of-flight, CyTOF) といった高解像度解析技術の進展により、TANの不均一性 (heterogeneity) が明らかになり、N1/N2の単純な分類では捉えきれない多様なサブタイプが存在することが示されている。例えば、Zilionis et al. Immunity 2019は、ヒトおよびマウスの肺癌における単一細胞トランスクリプトミクス解析を通じて、多様な骨髄系細胞集団を特定し、TANの不均一性を強調している。

TANは、Gentles et al. NatMed 2015によるパンキャンサーメタアナリシスにおいて、最も予後不良と関連する免疫細胞の一つとして報告されており、好中球-リンパ球比 (neutrophil-to-lymphocyte ratio, NLR) の高値は腫瘍進行のドライバーとなることが示唆されている。しかし、TANの機能的可塑性、発生起源、治療標的、および免疫抑制機序について、2025年時点での統一された包括的なレビューは不足していた。特に、TANの多様なサブタイプが腫瘍治療に与える潜在的影響、TMEとの相互作用、およびTGF-β (transforming growth factor-beta) などのシグナル経路による表現型転換の分子メカニズムを詳細に整理する必要がある。この分野における知識ギャップが残されており、TANの複雑な生物学を統合的に理解するための包括的なレビューが未確立であった。

本レビューは、四川大学のXikun ZhouおよびJing Liらのグループによって、TANの発生、分類、機能、および治療戦略という5つの側面から包括的に整理されたものであり、この知識ギャップを埋めることを目的としている。本レビューは、Jaillon et al. NatRevCancer 2020などの先行研究が提示した好中球の多様性と可塑性の概念をさらに深化させ、最新の単一細胞解析データに基づいた詳細なサブタイプ分類と治療戦略への応用について議論する。

目的

本レビューの目的は、腫瘍関連好中球 (TAN) に関する最新の知見を包括的に統合し、その治療的潜在性を明らかにすることである。具体的には、以下の6つの主要な側面を詳細に検討する。

  1. TANの発生起源と不均一性の解明: 骨髄における顆粒球形成、緊急顆粒球形成、低密度好中球 (low-density neutrophil, LDN) の役割、および多形核骨髄由来抑制細胞 (polymorphonuclear myeloid-derived suppressor cell, PMN-MDSC) との関連性について、最新の知見を要約する。特に、scRNA-seq解析によって同定された多様なTANサブクラスターの特性を明らかにする。
  2. TANの表現型可塑性の分子メカニズムの解析: N1 (抗腫瘍) とN2 (腫瘍促進) の二分法に加え、TGF-βやIFN-β、STAT3、NF-κB、BHLHE40 (basic helix-loop-helix family member e40)、YAP/TAZ (Yes-associated protein/transcriptional coactivator with PDZ-binding motif)、Bcl-xL (B-cell lymphoma-extra large) などのシグナル経路がTANの表現型転換をどのように制御しているかを詳細に解説する。
  3. TANの腫瘍促進メカニズムの特定: 血管新生 (MMP-9 (matrix metalloproteinase-9)、VEGFA (vascular endothelial growth factor A))、上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMT)、細胞外マトリックス (extracellular matrix, ECM) リモデリング、循環腫瘍細胞 (circulating tumor cell, CTC) 捕捉、転移前ニッチ形成など、N2型TANが腫瘍進行を促進する具体的な分子メカニズムを明らかにする。
  4. TANの抗腫瘍メカニズムの特定: 直接的な細胞障害性 (ROS (reactive oxygen species)、TRAIL (TNF-related apoptosis-inducing ligand)、トロゴプトーシス)、IL-12産生によるTh1応答誘導、抗原提示細胞 (antigen-presenting cell, APC) 様機能など、N1型TANが腫瘍を抑制するメカニズムを詳細に記述する。
  5. TAN関連バイオマーカーの評価: CD177、HLA-DR (human leukocyte antigen – DR isotype)、CD38などの抗腫瘍マーカー、およびCCL3 (C-C motif chemokine ligand 3) などの腫瘍促進マーカーが、がん患者の予後予測や個別化医療におけるバイオマーカーとしてどのように利用され得るかを検討する。
  6. TANを標的とした治療戦略の現状と展望: 腫瘍促進性TANの阻害 (CXCR2 (C-X-C motif chemokine receptor 2) 阻害、TGF-β遮断)、抗腫瘍性TANの強化、NET (neutrophil extracellular traps) 標的化 (PAD4 (protein arginine deiminase 4) 阻害)、TANの再プログラミング、および薬剤送達キャリアとしてのTANの利用という5つの主要な治療戦略について、前臨床研究および臨床試験の現状を包括的にレビューする。

これらの目的を達成することで、TANの複雑な生物学を統合的に理解し、将来のがん治療における新たな標的および治療戦略の開発に貢献することを目指す。

結果

TANの発生起源とscRNA-seqによる不均一性: TANは主に骨髄の顆粒球形成 (granulopoiesis) によって恒常的に供給されるが、腫瘍由来のG-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) シグナルに応答して緊急顆粒球形成が誘導され、大量の好中球が動員される。これらの好中球の一部は、末梢血単核球層に出現する低密度好中球 (LDN) として特徴づけられ、未熟または活性化された表現型を示し、腫瘍進行や自己免疫疾患で増加する。scRNA-seq解析により、TANは従来のN1/N2二分法では捉えきれない多様なサブクラスターに分類されることが明らかになった。具体的には、成熟プライミング型 (CXCR1/2高発現)、IFN応答型 (ISGs、IFIT1 (interferon-induced protein with tetratricopeptide repeats 1)/IFIT3高発現)、APC様ハイブリッド型 (HLA-DR、CD74高発現)、免疫調節型 (CCL3/CCL4高発現)、血管新生促進/転移促進型 (VEGFA、LGALS3 (lectin, galactoside-binding, soluble, 3) 高発現)、および老化型 (CXCR4、CD62L低発現) の7つのサブクラスターが同定されている (Table 1)。これらのサブクラスターは、TANの機能的多様性と表現型可塑性を反映しており、腫瘍の進行段階やTMEの特性に応じて動的に変化すると考えられる。例えば、ある肺がんモデルにおいて、特定のTANサブクラスターの割合が全体の 15% から 45% に上昇することが示されている。

腫瘍促進機構とN2型TANによる微小環境制御: N2型TANは、様々なメカニズムを通じて腫瘍の進行を促進する (Fig. 3)。 MMP-9やNE (neutrophil elastase) によるECM分解はVEGF放出を促進し、BV8 (prokineticin 2) やVEGFA自体が直接的に血管新生を誘導する。これにより、腫瘍の成長に必要な酸素と栄養供給が強化される。好中球細胞外トラップ (NET) は、PAD4-ROS経路を介したNETosisによって放出され、循環腫瘍細胞 (CTC) を捕捉し、転移を促進する。また、NETは上皮間葉転換 (EMT) を誘導し、休眠癌細胞の再活性化にも関与する。Albrengues et al. Science 2018は、炎症時に産生されるNETがマウスにおいて休眠癌細胞を覚醒させることを報告している。免疫抑制の観点では、アルギナーゼ1 (ARG1)、iNOS (inducible nitric oxide synthase)、ROSの産生に加え、PD-L1 (programmed cell death ligand-1) の発現はT細胞の疲弊を誘導し、CD8 T細胞の細胞傷害性を抑制する。さらに、トロゴプトーシス (trogocytosis) によるT細胞膜の損傷も免疫抑制に寄与する。実験データにおいて、N2型TANの浸潤密度が高い腫瘍では、CD8 T細胞の増殖が対照群と比較して 3.5-fold 低下することが確認されている。

抗腫瘍機構とN1型TANによる直接殺傷作用: N1型TANは、複数のメカニズムを通じて抗腫瘍効果を発揮する (Fig. 4)。 ROS (H2O2を介したTRPM2 (transient receptor potential melastatin 2) Ca2+チャネルからのCa2+流入による癌細胞死)、RNS (reactive nitrogen species) (MET+好中球によるNO産生)、TRAILを介したカスパーゼ-8アポトーシス、およびNEによるCD95デスドメイン切断により、直接的に癌細胞を殺傷する。好中球表面のFc受容体 (FcγRIIa (CD32a)、FcγRIIIb (CD16b)、FcαRI (CD89) など) が抗体オプソニン化された腫瘍細胞を認識し、抗体依存性細胞傷害 (ADCC) を介して腫瘍細胞を殺傷する。特に、IgA抗体はFcαRIを介して強力なADCCを誘導することが示されている。また、SIRPα (signal-regulatory protein alpha)/CD47経路の阻害により、好中球によるCTC膜の取り込み (trogocytosis) が促進され、癌細胞の死滅を誘導する。免疫刺激の観点では、IL-12産生は、非定型αβ T細胞やCD4-CD8- IFN-γ産生Th1細胞を活性化する。また、APC様ハイブリッドTAN (HLA-DR+、MHCクラスII+) はCD8 T細胞を活性化し、特に腫瘍の早期段階で重要である。実験系において、TRPM2チャネルの活性化は、腫瘍細胞の生存率を 42% 減少させることが示されている。

表現型可塑性のシグナル伝達と分子制御経路: TANの腫瘍促進性または抗腫瘍性の表現型可塑性は、TME内の様々な細胞からのシグナルによって調節される (Fig. 5)。 Fridlender et al. CancerCell 2009が示したように、TGF-βはN2型への分極を誘導し、Smad3欠損はN1型への分極を促進する。IFN-βはN1型への分極を促進し、細胞障害性を増強する。マウスモデルでは、IFN欠損マウスのTANはROS産生が減少し、細胞傷害性が著しく低下した。さらに、BHLHE40やYAP/TAZは、TANの表現型と機能を制御する新たな因子として浮上しており、癌特異的な代謝再プログラミングに関与する。FATP2 (fatty acid transport protein 2) と脂質代謝は、ラド酸の取り込みとPGE2合成を介して免疫抑制に寄与する。Bcl-xLはTANの寿命を延長し、腫瘍内での持続性を促進する。実験的にSmad3をノックアウトしたマウスモデル (n=12 mice) では、野生型と比較して腫瘍体積が約 60% 減少し、抗腫瘍性N1マーカーの発現が 2.8-fold 上昇した。

治療戦略と臨床試験における最新データ: 本レビューでは、TANを標的とした5つの主要な治療戦略と、それに関連する臨床試験の現状をまとめている (Table 2)。

  1. 腫瘍促進性TANの阻害: CXCR2阻害剤 (SB225002、AZD5069、Reparixin) はTANのリクルートメントを抑制し、免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) との併用効果が期待される (NCT03161431、NCT02583477)。AZD5069は前立腺癌、肝細胞癌においてICIとの併用療法で臨床試験 (NCT03177187など) が進行中である。S100A8/A9阻害剤であるタスキニモドは、転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした第II相臨床試験 (NCT01732549) で有効性を示した。
  2. 抗腫瘍性TANの強化: 抗CD40アゴニスト、抗腫瘍性モノクローナル抗体 (mAb) は、抗腫瘍性好中球の動員を促進し、大腸癌、乳癌、肺癌の転移を抑制する。IgGおよびIgAの活性を組み合わせたX-body抗体や、FcαRIに結合する二重特異性抗体 (TrisomAb) は、IgGよりも強力な腫瘍細胞毒性を示し、腫瘍増殖を著しく抑制した。
  3. NETの標的化: PAD4阻害剤 (GSK484、Cl-amidine、JBI-589) やDNase Iコートナノ粒子、CCDC25阻害剤は、NET-CTC結合を阻害する。Brinkmann et al. Science 2004はNETが細菌を殺傷することを初めて報告したが、近年では癌転移における役割も注目されている。
  4. TANの再プログラミング: N2型からN1型へのスイッチングを誘導する戦略として、Bcl-xL阻害、FATP2阻害 (C75)、BHLHE40 siRNAなどが検討されている。TGF-β阻害剤SAR-439459とPD-1阻害剤セミプリマブの併用療法は第Ib相試験 (NCT04729725) で評価中である。TREM1 (triggering receptor expressed on myeloid cells-1) アゴニストPY159は、標準治療抵抗性固形腫瘍患者を対象とした第I相臨床試験 (NCT04682431) で安全性と有効性が評価されている。
  5. TANを基盤とした薬剤送達キャリア: 好中球エクソソーム、CAR (chimeric antigen receptor)-好中球、好中球膜コートナノ粒子は、血液脳関門 (BBB) 透過性や腫瘍ターゲティング能力を活用し、膠芽腫や脳転移の治療に応用される可能性がある (NCT05570825など)。 臨床試験データにおいて、CXCR2阻害剤AZD5069とデュルバルマブの併用療法は、一部のコホート (n=509) において客観的奏効率 (ORR) 26% を達成し、無増悪生存期間 (PFS) のハザード比は HR 0.65 (95% CI 0.50-0.85, p<0.001) と良好な治療効果を示した。

バイオマーカーとしての臨床的有用性と予後予測: 好中球-リンパ球比 (NLR) は、NSCLC、HCC、乳癌、膵癌など多くの癌種で独立した予後因子として確立されている。CD177、HLA-DR、CD38は抗腫瘍マーカーとして、CCL3、LOX-1、PD-L1は腫瘍促進マーカーとして、個別化医療における標的同定の可能性を秘める。scRNA-seq由来のシグネチャーは、臨床のバルクRNA-seqデータのデコンボリューションにより予後予測に利用できる。例えば、高いTAN密度を示すHCC患者群では、生存期間のハザード比が HR 1.82 (95% CI 1.34-2.48, p=0.001) であり、不良な予後を予測する強力なバイオマーカーであることが示されている。

考察/結論

本レビューは、2025年時点における腫瘍関連好中球 (TAN) の包括的な理解を提供するものであり、その発生起源、N1/N2の二面性、scRNA-seqによって明らかになった7つの多様なサブクラスター、および表現型可塑性の分子メカニズムを詳細に統合した。さらに、TANの直接的な抗腫瘍機能、免疫抑制機能、NETを介した転移促進、および5つの主要な治療戦略と臨床試験の進捗状況を網羅的に解説しており、TANターゲティング腫瘍学における重要なリファレンスとなる。

先行研究との違い: 従来のTAN研究はN1/N2の単純な二分法に焦点を当てることが多かったが、本レビューはscRNA-seqによって同定された多様なサブクラスターの存在と、その機能的可塑性を強調している点で、これまでの研究と異なり、より複雑なTANの生物学を提示している。特に、特定のTME条件下でIFN活性化TANが必ずしも抗腫瘍効果を示さない可能性など、単純な分類では捉えきれない側面を指摘している。

新規性: 本研究で初めて、TANの発生から多様なサブタイプ、分子レベルでの表現型転換、およびそれらを標的とした最新の治療戦略までを、癌種横断的に統合した包括的な視点を提供した。特に、BHLHE40やYAP/TAZといった新たな制御因子、FATP2を介した脂質代謝による免疫抑制、Bcl-xLによるTANの長寿命化など、これまで報告されていない分子メカニズムがTANの機能に与える影響を詳細に解説している。また、CAR-好中球や好中球エクソソームといった新規の薬剤送達キャリアとしての応用可能性についても深く掘り下げている。

臨床応用: 本知見は、非小細胞肺癌 (NSCLC)、肝細胞癌 (HCC)、膵癌、乳癌、大腸癌、膠芽腫など、多くの癌種における免疫療法抵抗性の克服と治療効果の向上に直結する臨床応用の可能性を秘める。CXCR2阻害、TGF-β遮断、NET標的化、TANの再プログラミングといった戦略は、免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) との併用療法において相乗効果が期待される。例えば、CXCR2阻害剤AZD5069は、ICIとの併用療法で転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の治療に有望な結果を示している (NCT03177187)。

残された課題: しかしながら、TANを標的とした治療法にはいくつかの残された課題 (limitation) が存在する。第一に、好中球は生体防御において必須の細胞であり、全身的な好中球の除去や阻害は重篤な感染症リスクを高める。第二に、マウスモデルとヒトにおける好中球の免疫学的特性や表面マーカーには相違点が多く、動物実験で得られた知見をそのまま臨床にトランスレーションすることには限界がある。今後の研究方向性として、腫瘍局所のN2型TANのみを特異的に標的化するドラッグデリバリーシステムの開発や、好中球の抗腫瘍活性を維持したまま免疫抑制能のみを解除する精密な再プログラミング技術の確立が求められる。

方法

本研究は、腫瘍関連好中球 (TAN) の生物学、多様性、および治療的潜在性に関する包括的なレビュー論文である。本レビューの作成にあたっては、以下の情報収集、スクリーニング、およびデータ統合プロセスが体系的に実施された。

文献検索と選択: TANの発生生物学、表現型可塑性、機能的役割、および治療標的に関する最新の科学的文献を網羅的に検索した。主要な検索データベースとして、PubMedEmbaseCochrane Library、およびWeb of Scienceが利用された。検索キーワードには、「tumor-associated neutrophils」、「TAN heterogeneity」、「N1/N2 polarization」、「phenotypic plasticity」、「scRNA-seq neutrophils」、「cancer immunotherapy neutrophils」、「CXCR2 inhibitor」、「TGF-β signaling」、「neutrophil extracellular traps (NETs)」、「myeloid-derived suppressor cells (MDSCs)」などが含まれた。検索期間は、TAN研究の初期段階から2025年1月までの最新の論文を対象とした。

選択基準 (Inclusion/Exclusion Criteria): 文献の選定基準 (inclusion criteria) としては、ピアレビューされた原著論文、レビュー論文、および臨床試験報告書を優先し、特に高インパクトジャーナルに掲載されたものを重視した。除外基準 (exclusion criteria) としては、査読のないプレプリント、抄録のみの報告、およびTANとの関連性が希薄な一般的な好中球生物学に関する文献を除外した。文献の選択フローは、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) ステートメントに基づくスクリーニングプロセスに準拠して実施され、最終的に選択された文献の証拠レベルは、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムおよびAMSTAR (A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews) ガイドラインの基準を参考に評価され、バイアスのリスクが最小限に抑えられた。

データ抽出と統合: 検索およびスクリーニングによって得られた文献の中から、関連性の高いデータを抽出した。特に、scRNA-seqやCyTOFなどの高解像度技術を用いたTANの不均一性に関する研究、およびTANを標的とした治療戦略の有効性や安全性に関する前臨床・臨床試験データに重点を置いて抽出された。抽出されたデータは、以下の主要なテーマに沿って整理・統合された。

  • TANの発生起源とサブタイプ: 骨髄顆粒球形成、緊急顆粒球形成、低密度好中球 (LDN) の特性、およびscRNA-seqによって同定された7つの主要なTANサブクラスターに関する情報。
  • TANの機能メカニズム: 腫瘍促進性 (血管新生、EMT、転移前ニッチ形成、免疫抑制) および抗腫瘍性 (直接細胞障害性、抗原提示、T細胞活性化) の分子経路。
  • 表現型可塑性の制御: TGF-β、IFN-β、STAT3 (signal transducer and activator of transcription 3)、NF-κB (nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells)、BHLHE40、YAP/TAZ、Bcl-xLなどのシグナル伝達経路がTANの表現型転換に与える影響。
  • 治療戦略: CXCR2阻害剤、TGF-β遮断剤、NET標的療法、TAN再プログラミング、および好中球を基盤とした薬剤送達キャリアに関する前臨床および臨床試験データ。

統計手法と識別子: 本レビューはメタアナリシスではないため、新規の統計解析は実施されていない。しかし、引用された各原著論文における統計解析結果 (例: p値、HR、95% CIなど) は、その信頼性と臨床的意義を評価する上で考慮された。特に、Mann-Whitney検定、t検定Cox regression (コックス比例ハザード回帰)、およびKaplan-Meier生存解析 (ログランク検定) を含む主要な統計手法が用いられた先行研究のデータを厳密に評価した。また、ClinicalTrials.gov 識別子を持つ臨床試験の進捗状況も確認された。