• 著者: Garcia GL, Baruwal R, Suresh S, Kapur Britt A, Li A, Atiya HI, Coffman L
  • Corresponding author: Lan Coffman (University of Pittsburgh / Hillman Cancer Center)
  • 雑誌: Nature Reviews Cancer
  • 発行年: 2026
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • DOI: 10.1038/s41568-026-00936-w

背景

間葉系間質/幹細胞 [MSCs (mesenchymal stromal/stem cells)] は事実上あらゆるヒト組織に低頻度 (~0.001–0.01% of all cells) に常在し、骨髄から全身組織に供給される多能性間質前駆細胞である。MSCsは脂肪細胞・軟骨細胞・骨細胞・線維芽細胞・ペリサイトへの三系統分化能と、CXCL12 (CXC motif chemokine 12) /CCL2 (C-C motif chemokine 2) に代表される傍分泌シグナルによるホーミング能を持つ。International Society for Cell and Gene Therapy (ISCT) は2006年(2019年更新)に、MSCsの定義基準としてCD73+CD90+CD105+/CD45-/PanCK- の表面マーカープロファイルおよびプラスチック接着性・三系統分化能を規定した (Roberts et al. CancerCell 2017)。

しかし、癌の文脈ではMSCsが腫瘍微小環境 (TME) に浸潤して「癌教育 (cancer education)」を受け、腫瘍促進性のCA-MSCs (cancer-associated MSCs) へと変換されることが明らかになってきた。CA-MSCsと類似した表面マーカーを持つ癌関連線維芽細胞 (CAFs) との関係性も複雑であり、CA-MSCsが三系統分化能を維持する前駆体状態からCAFsへの分化連続体を形成するという見解が優勢であるが、その境界は不明瞭なままである (Liu et al. CancerCell 2026)。また、MSCsが三次リンパ構造 (TLS) 形成においても正常型 (促進) とCA-MSC型 (抑制) で相反する役割を担うことが示され (Kirschstein et al. CancerCell 2026)、MSCsの機能的二面性の理解が臨床応用上の急務となっている。一方、CA-MSCsを正常MSCや他の間質細胞から明確に区別する普遍的biomarkerが現時点では不足しており、治療標的化を妨げる根本的な障壁となっている。正常組織由来のMSCsが一般に癌増殖を抑制するのに対し、TME由来・癌教育済みのCA-MSCsはほぼ普遍的に腫瘍を支持する — この「MSCの起源と状態が機能を規定する」という原則が本レビューの核心的メッセージである。

目的

本レビューは、MSCsの癌生物学上の役割を①腫瘍促進/抑制の二面性、②CA-MSCによる癌進展の分子機序、③免疫調節とTLS形成、④癌発症 (cancer initiation) への新興的関与、⑤老化MSCsのSASP (senescence-associated secretory phenotype) による腫瘍促進、⑥MSCを利用したDDS・CA-MSC標的療法の臨床展開、の6軸から整理し、研究上の未解決課題と今後の方向性を示すことを目的とした。

結果

MSCの同一性規定と癌教育のパラダイム: MSCsは骨髄・脂肪組織・臍帯(Wharton’s jelly)など正常組織から単離され、CD73+CD90+CD105+かつCD45-/PanCK-の表面プロファイル、プラスチック接着性、脂肪・骨・軟骨への三系統分化能で規定される (ISCT, 2006/2019)。組織恒常性維持では傍分泌シグナル (CXCL12/CCL2/VCAM1) を通じてリクルートされ、ECM (extracellular matrix) のコラーゲン・ラミニン・プロテオグリカン分泌とMMP (matrix metalloproteinase) 産生で間質を調整する。単細胞解析 (scRNA-seq) は骨髄・Wharton’s jelly由来MSCsに分化軌跡・stemness・免疫調節能の異なるサブポピュレーションが存在することを示し、MSCの異質性が機能的多様性の基盤であることを明確にした (Fig 1)。

癌の文脈でのMSCsの機能は「正常組織由来か否か」が最大の規定因子である。正常骨髄・脂肪組織・臍帯由来MSCsは、一般に癌増殖を抑制する(肝細胞癌での遊走・浸潤抑制、臍帯由来MSC exosomesによるZNF367 (zinc finger protein 367) 下方制御とmiR-21-5p誘導、AKT抑制によるKaposi’s肉腫増殖阻害など)。一方、TME由来またはTMEによって癌教育を受けたCA-MSCsは卵巣・乳癌・膵臓癌モデルで腫瘍増殖を支持する。腫瘍学的文脈でのMSCsを「CA-MSC(TME由来)」vs「MSC(正常組織由来)」として明確に区別することが、一見矛盾した研究成果を統合する鍵である (Table 1)。

CA-MSCによるEMT誘導と転移促進: CA-MSCsは上皮間葉転換 (EMT) を多彩な機序で誘導し、転移を促進する (Fig 2, 3)。直接接触では急性リンパ芽球性白血病でintegrin B1/WNT-β-cateninシグナルを活性化し、急性骨髄性白血病 (AML) ではvimentinを上方制御する。卵巣癌のTMEではCA-MSC由来のFGF (fibroblast growth factor)、EGF (epidermal growth factor)、HGF (hepatocyte growth factor) が傍分泌的にE-cadherinを分解してEMTを誘導する。さらにCA-MSC由来MMPs (matrix metalloproteinases) (とくにMMP2)は乳癌in vivoモデルでRAC1B-ROS (reactive oxygen species) 経路を介して癌細胞の運動性を増大させる。TGFβ (transforming growth factor-β) はSMAD経路を介して乳癌・卵巣癌でEMTを促進し、初期には腫瘍抑制的に機能するが進行期には腫瘍支持的に転じる二面性を持つ。またCA-MSC由来miR-221/222が乳癌などでEMTを促進し、NOTCHシグナルは血管新生・CXCR4発現調節・Treg細胞誘導を介して多経路的にEMTを駆動する。

転移促進の注目すべき機序として「CA-MSCによる癌細胞の物理的随伴転移 (co-metastasis)」がある。卵巣癌モデルにおいてCA-MSCsは間葉上皮転換 (MET) を起こして癌細胞に直接結合し、遠隔臓器へのチャペロンとして共転移する。また、乳癌・肺癌・胃癌では癌細胞がMSCsを「飲み込む (engulf)」現象が観察され、融合ハイブリッド細胞はSASP関連因子(IL-6/CCL2/OPN (osteopontin)/THBS1/uPAR)を高発現し、転移関連遺伝子(MSR1/WNT5A/ELMO1/IL1RL2/ZPLD1/SIRPB1)の転写変化とともに高い転移能を示す。さらにミトコンドリア転移 (CA-MSC→癌細胞、tunnelling nanotube/exosome経由) が卵巣癌・AML・神経膠芽腫で癌細胞の酸化的リン酸化を増強し、増殖・化学療法抵抗性・代謝リプログラミング (グルタミン利用増加・ピリミジン/プリン合成増大) を促進する。

間質リモデリングとmatrisome制御: CA-MSCsはECMの組成・架橋・分解を制御して腫瘍浸潤に適した間質環境を形成する。卵巣・乳癌のTMEではCA-MSCsの存在が特定コラーゲン (COL4、COL10A1、COL8A1、COL12A1) の沈着増加と相関する。また照射により誘導した老化骨髄MSCsは非老化MSCsより多くのコラーゲンを沈着させ、三次元培養系で癌細胞の浸潤表現型を増悪させる。乳・卵巣癌でCA-MSCsはMMP2産生を増加させ、さらにlysyl oxidaseを産生してコラーゲン・エラスチンの架橋によりmatrisomeを安定化する(lysyl oxidase高発現は臨床的に乳癌の高侵襲性と相関)。間質のECM繊維配向・組成変化は細胞遊走だけでなく免疫細胞浸潤や特定シグナルカスケードにも影響し、多面的にTMEを改変する。

CSC (cancer stem-like cell) プールの増強: CA-MSCsは骨髄造血幹細胞ニッチを支持する正常機能を踏台に、CSCsのニッチ形成を促進する。卵巣癌においてCA-MSCsはin vitro・マウスモデル・患者コホートの複数段階でCSCプールを増強し、化学療法抵抗性と不良予後をもたらす。BMP (bone morphogenetic protein) /hedgehogシグナル経路が卵巣癌・膵臓癌でのCSC支持を仲介する。乳癌マウスモデルではCA-MSCsがサイトカインネットワーク形成によりCSCプールを拡大し、結腸癌では癌細胞刺激を受けたCA-MSCsがPGE2 (prostaglandin E2) を分泌してβ-cateninシグナルを誘導しCSC数を増加させる。

血管新生促進: CA-MSCsはVEGF (vascular endothelial growth factor) をはじめとする複数の血管新生促進因子を産生する。卵巣癌xenograftモデルでCA-MSCsはVEGF分泌を介して強く血管新生を促進する。腫瘍分泌LPA (lysophosphatidic acid) に応答してCA-MSCsはIL-6/IL-8/VEGFA/CXCL12を産生して血管新生を追加刺激する。さらに低酸素領域へのM2極性化マクロファージのリクルートを介した間接的な血管新生増幅も示されている。高血管化腫瘍(神経膠腫・腎癌・卵巣癌・肝細胞癌・黒色腫・乳癌)でCA-MSCsは初期腫瘍血管化を支持し、FDA承認の抗VEGF療法(抗血管新生薬)に対する抵抗性にも寄与する。

代謝リプログラミング: CA-MSCsは腫瘍の代謝需要を満たすための多彩な機序を有する。CA-MSC由来TGFβは乳癌細胞でGLUT1 (glucose transporter 1) を上方制御し、解糖亢進と脂肪酸代謝変化を誘導する。ミトコンドリア転移(上記)により癌細胞の酸化的リン酸化能を増強する。さらに卵巣類内膜/明細胞癌では特定CA-MSCサブセットがferroporin介在鉄輸出を増強し、ferritin貯蔵でなくLIP (labile iron pool; 遊離鉄プール) の形で鉄を癌細胞に提供する。LIPは代謝経路ですぐに利用可能な反応性鉄の形態であり、癌細胞の鉄需要を満たしつつferroptosissに対する脆弱性をも高める、という二律背反的な依存性を生み出す。この鉄調節機序の他癌種への適用可能性は今後の研究課題である。

免疫調節:TLS形成と免疫抑制の二面性: 正常MSCsとCA-MSCsは免疫調節においても相反する役割を担う。臍帯由来MSCsはNK細胞数の増加や胸腺・脾臓機能改善に寄与し、リンパ節常在MSCsはCCL2高分泌によりT細胞増殖を促進する(組織文脈依存性の免疫活性化役割)。しかしTMEではCA-MSCsが免疫抑制を主導する:ICAM1/VCAM1を介してTAM (tumour-associated macrophage)・Treg・MDSC (myeloid-derived suppressor cell) に接着し免疫抑制を増強、肝細胞癌由来MSC-fibroblastsはPGE2/TNF/IDO (indoleamine-2,3-dioxygenase) /HLAG5分泌によりNK細胞を抑制、膵臓癌モデルではCA-MSCsがM2マクロファージへの極性化を誘導し、卵巣癌ではCD8+ T細胞浸潤を低下させてICIの効果を制限する。

TLS (tertiary lymphoid structures) 形成においては、正常MSCsがIL-4/GM-CSF (granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)/TNF刺激下でfDC (follicular dendritic cell) に分化し、CD23+CD106+CD21+CD271+ fDCマーカーを発現してGC-TLS (germinal centre-TLS) 形成を促進するのに対し、CA-MSCsはfDC分化能が低下しTLS形成を負に制御する (Grout et al. CancerDiscov 2022)。卵巣癌患者のTMEではCA-MSCsの高頻度がTLS減少・生存短縮と相関し、正常MSCsがTLS近傍に局在するのに対しCA-MSCsはTLSから遠位に位置することが空間転写解析で示された (Ho et al. Cell 2026)。

癌発症へのMSCsの新興的関与(hrMSCs): 癌発症 (cancer initiation) は長らく癌細胞自律的な変異蓄積の問題と考えられてきたが、特定MSCサブセット——hrMSCs (high-risk MSCs)——が遺伝毒性を持つことが示された。WT1 (Wilms’ tumour protein 1) 過剰発現hrMSCsとの24時間共培養で非腫瘍性卵管上皮細胞のDNA損傷が有意に増加し、hrMSC馴化培地が過酸化物誘発性DNA損傷からの回復を促進した。重要なことに、hrMSCsは癌病変のない患者から単離されており、BRCA1/2生殖細胞変異患者の卵管間質ではhrMSCsが濃縮していることが確認された。BRCA1/2変異hrMSCsとの長期共培養では、非腫瘍性卵管上皮細胞にSNP (single nucleotide polymorphism) と構造変異が蓄積し、最終的に浸潤・転移性癌への完全な悪性形質転換が得られた。この知見は「MSCsが卵巣癌発症の積極的ドライバーとなりうる」という革新的概念を提示する。また骨肉腫では腫瘍促進性MSCsの傍分泌シグナル遮断が腫瘍細胞増殖を抑制し、前癌状態でのMSC標的療法の予防的可能性を示した。

MSC老化とSASPの腫瘍促進的役割: 慢性的な組織傷害(喫煙・飲酒・加齢関連炎症)はMSCsに老化表現型を誘導し (Fig 4)、老化MSCsの蓄積がTME形成の一翼を担う。老化MSCsはSASP——IL-6/CCL2/OPN/THBS1/uPAR等の炎症性サイトカイン・ケモカイン・増殖因子——を介してDNA損傷・変異・悪性形質転換のリスクを高める。CA-MSC由来exosomesはCICsのDNA修復・細胞周期調節を撹乱し、clonal expansionを促進する。骨髄MSCsにおけるTGFβシグナルの阻害がin vitro・マウスモデルで乳癌細胞への腫瘍促進効果を減弱させ、CA-MSCから分化したfibroblastsも腫瘍支持能を失うことが示され、予防的TGFβ標的療法の可能性が示唆される。ただしTGFβシグナルは発症初期と進行期で異なる機能を持つため、適切なモデル・段階での更なる検討が必要である。

臨床応用①:MSCをDDSベクターとして利用: MSCsの低免疫原性・広い組織トロピズムを活かしたDDS (drug delivery system) が複数の臨床試験で検討されている (Table 2, Fig 5b)。代表的な前臨床知見として、遺伝子改変MSCsが乳癌腫瘍にホーミングしGaussiaルシフェラーゼ (hGluc) を産生して血液アッセイで癌検出を可能にした。治療的応用では、卵巣癌に対するMSC搭載腫瘍溶解性麻疹ウイルス (NCT02068794) や、IFNβ発現骨髄MSCsを用いた卵巣癌治療 (NCT02530047) の第1相試験が進行中である。完了した2つの欧州試験では:スペイン試験(NCT01844661)で小児再発固形腫瘍患者 n=16例2例(神経芽腫、12.5%)が病勢安定を達成しgrade 2-5有害事象なし;ドイツ試験では胃腸癌・肝胆膵癌患者 n=6例4例(66.7%)が病勢安定、PFS 1.8ヶ月、重篤有害事象なしの結果が報告された。また前臨床では、cytosine deaminase発現MSCによる5-FU局所産生でグリオーマ縮小、Taxol搭載脂肪組織MSCが白金抵抗性卵巣癌細胞の増殖抑制、doxorubicin超常磁性鉄酸化物ナノ粒子のMSC膜コーティングが大腸癌細胞への取り込みと殺細胞効果を増強することが示されている。

臨床応用②:CA-MSC標的療法と現状: CA-MSCsを直接標的とする治療開発も加速している。最初のMSC療法のFDA承認は2024年12月、移植片対宿主病 (GvHD) に対するallogenic MSCsで実現し、小児難治性GvHDへの第3相単アーム試験で全奏効率 (ORR) 70%​・良好な安全性プロファイルが確認された(ただしこれはMSCsの抗炎症特性の活用であり直接的抗腫瘍作用ではない)。CA-MSC標的の進行中試験として、EZH1/EZH2 (enhancer of zeste homologue 1/2) 二重阻害剤CPI-0209 + carboplatin(NCT05942300、EZH2がCA-MSCの腫瘍促進表現型に必須である前臨床知見に基づく)、hedgehog経路阻害剤vismodegib + PD-L1抗体atezolizumab(NCT05538091、CA-MSC介在免疫除外機構の破壊によりICI奏効向上を狙う)、PD1抗体tislelizumab(NCT05782361、NSCLC)、HGF受容体阻害剤tepotinib(NCT06893380、胆道癌)が実施中である。2026年1月15日時点で230本超の臨床試験がMSCsを標的または利用ベクターとして世界同時進行しており、研究と臨床応用の双方での急速な発展が続いている。

考察/結論

本レビューは、MSCsが癌生物学において「状態と組織文脈に依存した二面性」を持つことを包括的に示した。正常MSCsが癌増殖を抑制するのに対し、TMEで癌教育を受けたCA-MSCsはEMT誘導・間質リモデリング・CSCプール増強・血管新生・代謝リプログラミング・免疫抑制・TLS阻害という多機能的な腫瘍促進活動を担う。さらにhrMSCsが遺伝毒性を持ち卵巣癌発症を駆動しうるという新規な知見は、MSCsを癌発症の積極的プレイヤーとして位置づける。

先行研究との違い: CA-MSCsとCAFsを概念的に同一視する従来の単純化と異なり、本レビューはCA-MSC→CAF分化連続体と機能的相違(三系統分化能/免疫調節能/TME内存在比)を精緻に整理した。これまでのMSC研究が抗腫瘍vs促腫瘍という二項対立で語られることが多かったが、本論文は起源・癌種・モデル系・癌進行段階という4変数での統合フレームワークを提示する点でこれまでにない整理である (Liu et al. CancerCell 2026)。

新規性: 新規に確立された概念として、①hrMSCsによる上皮細胞のDNA損傷誘導と悪性形質転換(MSCsが癌発症ドライバーとなりうる)、②CA-MSCsが鉄代謝を制御してLIPをferroptosis脆弱性とともに提供するという鉄-ferroptosis軸、③正常MSCsがfDC分化によりTLS形成を促進しCA-MSCsがこれを阻害する、という三つの機序が本研究で初めてまたは本レビューで初めて統合された (Kirschstein et al. CancerCell 2026)。

臨床応用: MSCsは「臨床応用」の観点で二方向の価値を持つ:低免疫原性・腫瘍トロピズムを活かしたDDSベクターと、CA-MSC標的療法の標的両面である。FDA承認のGvHD治療(70% ORR)、EZH2阻害(CPI-0209、NCT05942300)、hedgehog-ICI併用(NCT05538091)などが進行中であり、MSCsの臨床的意義はGvHDを超えて癌免疫療法との組み合わせ戦略に拡張されつつある (Grout et al. CancerDiscov 2022)。

残された課題: CA-MSCsの普遍的biomarkerが未確立であり(WT1は卵巣癌に限定的)、CA-MSC教育の正確な時期・機序が未解明のままである。MSCsのin vivoでの運命追跡 (lineage tracing) がCA-MSCへの変換と前転移ニッチへの移行を明確化する上で優先課題である。また、DDS (drug delivery system) としてのMSCsが同時に癌を促進する可能性(二面性の臨床上のリスク)への対策、異なる癌種・MSC起源ごとのheterogeneity、大規模臨床製造技術の確立、慢性炎症下でのMSCの自発的悪性形質転換リスクの抑制策が今後の課題である。2026年1月時点で230本超の試験が進行中であり、MSCsは癌治療・予防の両面で最注目の間質標的の一つとなっている。

方法

  • レビュー設計: 系統的文献レビュー(Nat Rev Cancer形式、2026年公開); PubMed/clinicaltrials.gov等からのMSC・CA-MSC・TLS・DDS・癌発症に関する文献精選
  • MSC同一性定義: ISCT 2006/2019 基準 (CD73+CD90+CD105+/CD45-/PanCK-、プラスチック接着性、三系統分化能) に準拠
  • データ対象: 主要固形腫瘍(卵巣・乳・膵・脳・結腸・肺・肝細胞・胃癌)および造血器腫瘍(AML・ALL・多発性骨髄腫)を対象とした細胞・動物・臨床試験研究
  • 臨床試験情報: 米国内で活動中または完了の試験(clinicaltrials.gov、2026年1月1日時点)を対象; 前臨床・非米国試験は除外(Table 2)
  • 除外基準: 非癌研究または十分な研究デザインを欠く研究はTable 1から除外
  • 識別子: NCT02068794(MSC搭載腫瘍溶解性麻疹ウイルス、卵巣癌)、NCT02530047(IFNβ発現MSC、卵巣癌)、NCT01844661(MSC+Icovir-5、小児固形腫瘍)、NCT05942300(CPI-0209+carboplatin、卵巣癌)、NCT05538091(vismodegib+atezolizumab、卵巣癌)、NCT05782361(tislelizumab、NSCLC)、NCT06893380(tepotinib、胆道癌)
  • 統計手法: 本論文は一次データを生成するReviewのため、統計解析は参照文献に依拠(参照原著論文でのKaplan-Meier法による生存解析・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析・Fisher’s exact test等を含む)