• 著者: Kelly K, Crowley J, Bunn PA Jr, Presant CA, Grevstad PK, Moinpour CM, Ramsey SD, Wozniak AJ, Weiss GR, Moore DF, Israel VK, Livingston RB, Gandara DR
  • Corresponding author: Karen Kelly, MD (University of Colorado Cancer Center, Denver, CO, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2001
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 11432888

背景

1990年代後半、進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の一次治療において、複数の新規化学療法薬がシスプラチンとの併用療法として評価されていた。これらの新規薬剤には、タキサン系薬剤 (パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ゲムシタビン、トポイソメラーゼ阻害薬 (トポテカン、イリノテカン) などが含まれる。特に、ビノレルビンとシスプラチン (VC) の併用療法は、Le Chevalierらによる試験 (1994) において、従来のビンデシンとシスプラチン併用療法と比較して全生存期間 (OS) の改善 (8ヶ月 vs 6ヶ月) を示し、その有効性が確立された。さらに、SWOG 9308試験 (Wozniak et al. JClinOncol 1998) では、VC療法がシスプラチン単剤療法と比較して、奏効率 (26% vs 12%, p=0.0002)、無増悪生存期間 (PFS) (4ヶ月 vs 2ヶ月, p=0.0001)、およびOS (8ヶ月 vs 6ヶ月, p=0.0018) において優位性を示したため、SWOGにおける進行NSCLCの標準レジメンとして採用された。このVC療法の有効性は、他の先行研究でも報告されており、その再現性が確認されている。

一方、パクリタキセルとカルボプラチン (PC) の併用療法も、複数の第I/II相試験で有望な結果を示していた。これらの試験では、パクリタキセル175mg/m²以上の用量で奏効率29%〜55%、OS中央値6.5ヶ月〜14ヶ月という報告がなされていた。特に、パクリタキセルを3時間で投与するスケジュールは、外来での実施が可能であり、比較的良好な毒性プロファイルを持つことから、その利便性が注目されていた。カルボプラチンはシスプラチンと比較して毒性が低いことが示されており、NSCLC治療における有効性も同等であることがKlastersky et al. JClinOncol 1990により報告されていた。しかし、カルボプラチンの最適な用量はまだ明確に定義されておらず、大規模な臨床試験での検証が不足していた。

これらの背景から、進行NSCLCの一次治療におけるPC療法の有効性と安全性を、当時の標準治療であったVC療法と比較する大規模なランダム化第III相試験の必要性が認識された。同時期にEastern Cooperative Oncology Group (ECOG) によるE1594試験 (Schiller et al. 2000) も進行していたが、これは4つの異なるレジメンを比較するものであり、VCとPCを直接比較する主要な試験は不足していた。SWOG 9509試験は、PCとVCという2つの新規プラチナ併用療法を直接比較する最初の主要な第III相試験として設計された。これにより、どちらのレジメンがより優れた有効性、忍容性、QOL、および医療経済性を提供するかを評価し、進行NSCLCの新たな標準治療を確立することが期待された。従来の治療法では生存期間の延長が限定的であり、より効果的で忍容性の高い治療法の確立が強く求められていたため、本研究は重要な意義を持つものであった。特に、PC療法がVC療法と比較して、生存期間において臨床的に意義のある優位性を示すか否かは未解明であった。

目的

本SWOG 9509試験の主要目的は、未治療のStage IIIB/IV進行非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に、パクリタキセルとカルボプラチン (PC) 併用療法が、標準治療であるビノレルビンとシスプラチン (VC) 併用療法と比較して、全生存期間 (OS) において優位性を示すかどうかを評価することであった。本試験は、PC群でVC群と比較してOSが50%増加する(VC群8ヶ月に対しPC群12ヶ月)という臨床的意義のある差を検出することを目標とした。

副次目的としては、両レジメンの客観的奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS)、毒性プロファイル、治療の忍容性、患者の生活の質 (QOL)、および医療資源の利用状況(医療経済性)を比較し、それぞれのレジメンの総合的な優劣を判断することが含まれた。特に、毒性プロファイルと忍容性の比較は、患者のQOLと治療継続性に与える影響を評価する上で重要な目的であった。

結果

本試験には1996年4月から1998年1月にかけてn=444例の患者が登録された。そのうちn=36例 (8%) が不適格と判断され、最終的にn=408例が適格患者としてランダム化された (VC群 n=202、PC群 n=206)。両群間で患者背景特性に重要な差は認められなかった (Table 1)。患者の大部分は白人男性で、Stage IVの測定可能病変を有していた。Stage IIIB患者はVC群で11%、PC群で12%であった。

OS (主要エンドポイント) およびPFS: PC群のOS中央値は8.6ヶ月 (95% CI 7.2-10.7ヶ月) であり、VC群のOS中央値は8.1ヶ月 (95% CI 6.7-9.6ヶ月) であった (Fig 1)。両群間でOSに統計学的に有意な差は認められなかった (HR 0.98, 95% CI 0.81-1.19, p=0.86)。1年生存率はPC群で38%、VC群で36%であり、2年生存率はPC群で15%、VC群で16%であった。試験の検出仮説であったPC群における12ヶ月の生存優位性は確認されなかった。無増悪生存期間 (PFS) 中央値は両群ともに4ヶ月であり、同等であった。Stage IIIB患者のサブセット (n=46) では、全体ORRは35%、OS中央値は12ヶ月と良好な結果が示された。

客観的奏効率 (ORR): 客観的奏効率 (ORR) は、VC群で28% (完全奏効 [CR] 0%、部分奏効 [PR] 28%)、PC群で25% (CR 1%、PR 24%) であり、両群間に有意差はなかった (Table 2)。未確認奏効を含んだ数字である。病勢安定 (SD) はPC群で33%、VC群で26%であった。病勢進行 (PD) はVC群で28%、PC群で26%に認められた。

Grade 3-4の毒性プロファイル: Grade 3および4の毒性において、両群間で有意な差が認められた項目があった (Table 3)。

  • 血液毒性: VC群ではGrade 3/4の白血球減少が50% (Grade 3: 35%、Grade 4: 15%) とPC群の31% (Grade 3: 26%、Grade 4: 5%) と比較して有意に高かった (p=0.002)。同様に、Grade 3/4の好中球減少もVC群で76% (Grade 3: 27%、Grade 4: 49%) とPC群の57% (Grade 3: 21%、Grade 4: 36%) と比較して有意に高かった (p=0.008)。Grade 4の発熱性好中球減少は両群ともに認められなかったが、Grade 3の発熱性好中球減少はVC群で2例、PC群で3例に発生した。Grade 3の血小板減少はVC群で4%、PC群で10%であったが、有意差はなかった。
  • 非血液毒性: VC群ではGrade 3の悪心 (18% vs 7%, p=0.001) および嘔吐 (12% vs 4%, p=0.007) がPC群と比較して有意に高頻度で発生した。一方、Grade 3の感覚神経障害はPC群で13%とVC群の3%と比較して有意に高かった (p<0.001)。その他のGrade 3および4の非血液毒性 (脱水、倦怠感、低ナトリウム血症、運動神経障害など) は両群間で有意差はなかった。Grade 3または4の好中球減少を伴う感染症はVC群で10例、PC群で2例に発生したが、統計学的な有意差はなかった。治療関連死はVC群で8例、PC群で5例であったが、これも有意差はなかった。

忍容性と治療完遂度: 治療中止の最も一般的な理由は病勢進行であったが、毒性による治療中止率はVC群で28%、PC群で15%であり、VC群で有意に高かった (p=0.001) (Table 4)。計画された治療を完遂した患者の割合は、PC群で27%、VC群で15%であり、PC群で有意に高かった (p=0.008)。投与サイクル数の中央値は、VC群で3サイクル、PC群で4サイクルであった。6サイクルまでの平均投与量強度 (delivered dose-intensity) は、PC群でパクリタキセル97%、カルボプラチン94%と高かったのに対し、VC群ではシスプラチン78%、ビノレルビン65%と低かった (Fig 2)。これはVC群における毒性による用量変更や中断の影響を反映していると考えられる。G-CSFの使用率はVC群で20%、PC群で17%であり、両群間で大きな差はなかった。

QOL評価 (FACT-L): QOL評価は試験の途中で開始されたため、ベースラインのFACT-L質問票を提出したのはVC群n=123例、PC群n=122例であった。追跡調査の提出率は13週で68%、25週で47%であった。QOLステータスを「改善」「安定」「悪化」の3カテゴリで比較した結果、13週 (p=0.97) および25週 (p=0.74) のいずれにおいても、両群間でQOLに統計学的に有意な差は認められなかった (Table 5)。13週時点では、両群ともに約55%の患者がQOLの改善または安定を報告した。25週時点では、VC群で37%が改善、23%が安定、40%が悪化と報告されたのに対し、PC群では28%が改善、33%が安定、39%が悪化と報告された。欠測データを含む解析でも同様の結果であった。

医療経済性分析: 医療資源利用に関する詳細な分析は別の論文で報告される予定であるが、24ヶ月間の総平均費用はPC群で40,292であり、PC群が有意に高かった (p=0.0004) (Table 6)。この費用の差は主に薬剤費に起因しており、PC群のパクリタキセルとカルボプラチンの薬剤費が5,231であった。ただし、PC群では投与コストが低く (2,251)、入院費も低い傾向にあった (21,063)。これはPC群の毒性プロファイルが良好であったことによる入院日数の削減を反映している可能性がある。

考察/結論

SWOG 9509試験は、進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の一次治療において、パクリタキセルとカルボプラチン (PC) 併用療法が、ビノレルビンとシスプラチン (VC) 併用療法と同等の有効性を示すことを明らかにした。両群の客観的奏効率はそれぞれ25%と28%、OS中央値は8.6ヶ月 vs 8.1ヶ月であり、1年生存率も38% vs 36%と類似していた (HR 0.98, 95% CI 0.81-1.19, p=0.86)。このVC群の有効性データは、先行するSWOG 9308試験 (Wozniak et al. JClinOncol 1998) の結果 (奏効率26%、OS中央値8ヶ月、1年生存率36%) とも一致しており、VC療法の再現性が確認された。

先行研究との違い: 本研究は、進行NSCLCにおいて2つの新規薬剤とプラチナ製剤の併用療法を直接比較した最初のランダム化第III相試験である。これまで報告された他のランダム化試験は、PC療法を評価していたものの、4アーム比較であったり、VC療法との直接比較ではなかったりしたため、本研究はPCとVCの相対的な有効性と毒性を明確に比較した点でこれまでと異なり、重要な知見を提供する。

新規性: 本研究で初めて、進行NSCLCの一次治療においてPC療法がVC療法と同等の有効性を持ちながら、より優れた忍容性と利便性 (3週ごとの外来投与) を提供することを明確に示した。特に、VC群で認められた生命を脅かすGrade 3/4の血液毒性 (白血球減少 50% vs 31%, p=0.002; 好中球減少 76% vs 57%, p=0.008) や悪心嘔吐 (悪心 18% vs 7%, p=0.001; 嘔吐 12% vs 4%, p=0.007) の有意な増加は、PC療法が患者のQOLを維持しつつ治療を継続する上で優位であることを新規に確立した。QOL評価では両群間に有意差は認められなかったが、PC群がベースラインのQOLを維持する点で臨床的に有益である可能性が示唆された。

臨床応用: 本知見は、進行NSCLCの一次治療におけるPC療法の標準化に大きく貢献した。PC療法は、その良好な忍容性と外来での投与が可能であるという利便性から、その後の実臨床で広く採用されるようになった。本試験で確立されたPC療法は、後にベバシズマブとの併用療法 (E4599試験) や、ペムブロリズマブとの併用療法 (KEYNOTE-189試験) など、現代の免疫化学療法の基盤となる画期的な試験の比較対照レジメンとして採用され、その後の治療開発の礎となっている。特に、ペムブロリズマブとPC (±ペメトレキセド) の組み合わせは、本試験のデータを直接踏まえており、その臨床的有用性は現在も進行NSCLCの一次治療標準の中心にある。

残された課題: 本試験の経済学的分析では、薬剤費の高さからPC群の総費用がVC群よりも高価であることが示された (40,292, p=0.0004)。しかし、PC群では入院日数や支持療法費の削減により、薬剤費の差の一部が相殺される可能性が示唆された。当時のパクリタキセルの薬剤費は高価であったが、後にジェネリック化されたことで、現代においては経済的差が縮小または逆転している可能性がある。今後の検討課題として、長期的なQOLの維持や、特定の患者サブグループにおけるPC療法のさらなる最適化が挙げられる。また、本研究では脳転移患者が除外されており、これらの患者に対するPC療法の有効性と安全性については今後の研究が必要である。さらに、より長期的なフォローアップデータや、新たなバイオマーカーに基づく個別化治療戦略の開発も残された課題である。

方法

本研究は、1996年4月から1998年1月にかけて患者登録が行われた多施設共同前向きランダム化第III相試験 (SWOG 9509) である。本試験は、未治療のStage IIIB (胸水または同側多発肺結節を伴う) またはStage IVのNSCLC患者を対象とした。適格基準は、組織学的または細胞学的に確認されたNSCLC患者であり、パフォーマンスステータス (PS) は0または1に限定され、測定可能または評価可能な病変を有し、脳転移がないことが条件とされた。また、好中球数1,500/µL以上、血小板数100,000/µL以上、ヘモグロビン9mg/dL以上、血清クレアチニン1.5mg/dL以下またはクレアチニンクリアランス60mL/min以上、ビリルビン2.0mg/dL以下、ASTが施設基準値上限の2倍以下(肝転移がある場合は4倍以下)が求められた。Grade 2以上の末梢神経障害を有する患者は除外された。

患者は以下の2つの治療群にランダムに割り付けられた。層別化因子として、体重減少 (<5% vs ≥5%)、乳酸脱水素酵素 (LDH) 値 (正常 vs 異常)、病期 (IIIB vs IV)、病変評価可能性 (測定可能 vs 評価可能)、前治療歴 (手術・放射線治療の有無)、および組織型 (扁平上皮癌 vs 大細胞癌 vs 腺癌 vs 不明) が用いられた。

  • VC群 (Arm I): ビノレルビン 25mg/m² を週1回静脈内投与、およびシスプラチン 100mg/m² をDay 1に4週ごとに静脈内投与。シスプラチン投与前後に少なくとも1〜2Lの生理食塩水による輸液とマンニトールが投与され、適切な制吐剤が使用された。
  • PC群 (Arm II): パクリタキセル 225mg/m² を3時間かけて静脈内投与、およびカルボプラチン AUC 6 をDay 1に3週ごとに静脈内投与。パクリタキセル投与前には、過敏症反応予防のためデキサメタゾン、ジフェンヒドラミン、ラニチジンまたはシメチジンが前投薬として投与された。

治療は、病勢進行または許容できない毒性が認められない限り、最低6サイクル実施された。完全奏効または部分奏効を達成した患者は、最良奏効後に追加で2サイクル、最大10サイクルまで治療を受けることが可能であった。

用量調整: VC群では、毎週の血算に基づいて、好中球数1,500/µL未満または血小板数100,000/µL未満の場合に用量減量または投与延期が行われた。PC群では、前サイクルの最低血球数に基づいて用量調整が行われ、好中球数500/µL未満または血小板数50,000/µL未満の場合にカルボプラチン用量がAUC 5に減量された。G-CSF (顆粒球コロニー刺激因子) の使用は、Grade 3または4の好中球減少症または発熱性好中球減少症を発症した患者に対して、最初のコース後に許可された。

エンドポイント: 主要エンドポイントはOSであった。副次エンドポイントには、客観的奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS)、毒性、忍容性、QOL、および医療経済性が含まれた。奏効判定には標準的なSWOG基準が用いられ、毒性評価はNCI Common Toxicity Criteria (バージョン2.0) に基づいて行われた。

QOL評価: QOLは、事前に検証されたFunctional Assessment of Cancer Therapy-Lung (FACT-L) バージョン3 (全44項目) を用いて、ランダム化前、13週後、および25週後に患者が自己記入式で回答した。QOLの変化は、FACT-Lスコアの9.0点以上の増加を「改善」、8.5点以上の減少を「悪化」、それ以外を「安定」と定義して評価された。欠測データを含む解析も実施された。

医療経済性分析: 医療資源の利用状況は、ランダム化から24ヶ月間、または死亡までの期間で収集された。収集されたデータには、検査、医療処置、支持療法薬、血液製剤、その他の医療費が含まれた。費用は全国データベースを用いて算出され、医療費の打ち切りを考慮した方法で推定された。

統計解析: 統計学的検出力は、PC群でOSが12ヶ月、VC群で8ヶ月という差を検出するために94% (片側ログランク検定、α=0.025) と設定され、各群n=200例のサンプルサイズが必要とされた。生存曲線はカプラン・マイヤー法により推定され、ログランク検定を用いて比較された。予後因子が生存に与える影響や治療と因子の交互作用を評価するために、コックス回帰分析が用いられた。すべてのP値は両側検定で報告された。中間解析はn=300例の登録後に行われ、試験継続が決定された。