• 著者: Hellmann MD, Rizvi NA, Goldman JW, Gettinger SN, Borghaei H, Brahmer JR, Ready NE, Gerber DE, Chow LQ, Juergens RA, Shepherd FA, Laurie SA, Geese WJ, Agrawal S, Young TC, Li X, Antonia SJ
  • Corresponding author: Matthew D. Hellmann, MD (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: Lancet Oncology
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2016-12-05
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 27932067

背景

進行非小細胞肺がん (NSCLC) 患者において、標的可能な遺伝子変異がない場合の一次治療は、過去30年間プラチナ製剤ベースの併用化学療法が標準治療であった。しかし、この治療法は中等度から重度の毒性を伴い、奏効率は約30%程度に留まり、奏効の持続性も限定的であり、患者の約半数が1年以内に死亡するという課題があった Sandler et al. NEnglJMed 2006。近年、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) が複数のがん種で治療成績を改善している。特に、抗PD-1抗体であるニボルマブは、既治療の進行NSCLCにおいてドセタキセルと比較して全生存期間 (OS) の改善を示した Brahmer et al. NEnglJMed 2015 Borghaei et al. NEnglJMed 2015。しかし、ニボルマブ単剤療法の奏効率は、未選択患者で15〜20%程度であり、さらなる治療効果の向上が求められていた。

CTLA-4とPD-1は、T細胞の活性化、増殖、機能の抑制において異なるが補完的な経路を介して作用するため、これらを同時に阻害する併用療法は相乗的な抗腫瘍効果をもたらす可能性が前臨床試験で示唆されていた。実際に、転移性悪性黒色腫においては、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が単剤療法と比較して奏効率とOSを改善することが報告され、2年以上の追跡期間でOS中央値が未到達という優れた成績を示している Larkin et al. NEnglJMed 2015 Hodi et al. NEnglJMed 2010

CheckMate 012試験の先行コホートでは、ニボルマブ1mg/kg q3w + イピリムマブ1mg/kg q3wまたは3mg/kg q3wの併用療法が検討されたが、グレード3-4の治療関連有害事象 (TRAE) が51%に発生し、治療関連死も3例報告されるなど、毒性が許容範囲を超えていた。この結果から、未治療NSCLCに対するニボルマブとイピリムマブの併用療法において、より忍容性の高い用量と投与スケジュールの確立が喫緊の課題として残されていた。特に、イピリムマブの投与頻度を減らすことで毒性を軽減しつつ、有効性を維持できるかどうかが未解明であった。本試験は、この知識ギャップを埋めるべく、ニボルマブ3mg/kg q2wにイピリムマブ1mg/kgをq12週またはq6週で組み合わせる新たな投与スケジュールの安全性と有効性を評価することを目的とした。本研究は、未治療進行NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬併用療法の最適な投与量とスケジュールに関する知識の不足を解消するものである。

目的

本CheckMate 012 Phase 1オープンラベル多コホート試験の拡張コホートでは、Stage IIIB/IVの未治療・化学療法未経験の進行NSCLC患者を対象に、ニボルマブ3mg/kgを2週間に1回 (q2w) 投与とイピリムマブ1mg/kgを12週間に1回 (q12w) または6週間に1回 (q6w) 投与する併用療法の安全性および忍容性 (主要エンドポイント) を評価することを目的とした。副次エンドポイントとして、客観的奏効率 (ORR)、奏効期間中央値 (mDOR)、24週時点の無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、およびPD-L1発現レベルと臨床活性との相関を評価した。これらの評価を通じて、未治療進行NSCLCに対するニボルマブとイピリムマブの併用療法における最適な用量とスケジュールを特定し、今後の臨床開発に繋がる有望なレジメンを確立することを目指した。特に、イピリムマブの投与頻度を減らすことで毒性を軽減しつつ、有効性を維持できるかどうかの検証が本研究の重要な目的であった。

結果

安全性・毒性プロファイル: グレード3-4の治療関連有害事象 (TRAE) は、q12w群で37% (14/38例)、q6w群で33% (13/39例) に発生した (Table 2)。最も頻度の高かったグレード3-4のTRAEは、リパーゼ上昇 (q12w群8%、q6w群0%)、肺臓炎 (q12w群5%、q6w群3%)、副腎不全 (q12w群3%、q6w群5%)、大腸炎 (q12w群3%、q6w群5%) であった。治療関連重篤有害事象は、q12w群で32% (12例)、q6w群で28% (11例) に報告された。TRAEによる両薬剤の投与中止は、q12w群で11% (4例)、q6w群で13% (5例) であり、主な原因は肺臓炎 (各群2例、5%) であった。本試験では、治療関連死は両群ともに0例であった。これらの安全性データは、先行コホートで報告されたグレード3-4 TRAE 51%、治療関連死3例と比較して、大幅な忍容性の改善を示している。あらゆるグレードのTRAEは、q12w群で82%、q6w群で72%に認められた。

客観的奏効率 (ORR) および奏効持続性 (DOR): 確認された客観的奏効は、q12w群で47% (18/38例、95% CI 31-64%)、q6w群で38% (15/39例、95% CI 23-55%) であった (Table 4)。全ての奏効は当初部分奏効 (PR) であったが、後に各群1例が残存病変の摘出生検により病理学的完全奏効 (pCR) と判明した。奏効の初回確認は、両群ともに初回評価時 (11週目) が多く、q12w群で78% (14/18例)、q6w群で80% (12/15例) が初回評価時点で奏効が確認された (Figure 2A, B)。奏効期間中央値 (mDOR) は、両群ともに未到達であった (q12w群 95% CI 11.3ヶ月〜NR; q6w群 8.4ヶ月〜NR)。解析時点で奏効が継続していた患者の割合は、q12w群で72% (13/18例)、q6w群で80% (12/15例) であった。

無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS): 24週時点のPFSは、q12w群で68% (95% CI 50-80%)、q6w群で47% (95% CI 31-62%) であった (Table 4)。無増悪生存期間中央値 (mPFS) は、q12w群で8.1ヶ月 (95% CI 5.6-13.6ヶ月)、q6w群で3.9ヶ月 (95% CI 2.6-13.2ヶ月) であった (Figure 2C)。疾患コントロール率 (CR+PR+SD≥6週) は、q12w群で79% (30/38例)、q6w群で56% (22/39例) であった。1年OSは、q6w群で69% (95% CI 52-81%) であった。q12w群の1年OSおよび両群のmOSは、解析時点での打ち切り割合が71%を超えていたため算出されなかった。死亡例は、q12w群で11例 (29%)、q6w群で15例 (38%) であり、そのほとんどが疾患進行によるものであった。

PD-L1発現レベル別サブグループ解析: PD-L1発現が1%以上の患者では、両群ともに57%のORRを達成した (q12w群 12/21例、q6w群 13/23例)。PD-L1発現が1%以上の患者における24週PFSは、q12w群で80%、q6w群で65%であった。PD-L1発現が50%以上の13例 (PD-L1評価可能例の21%) のうち、12例が確認された客観的奏効を達成し、1例は未確認奏効であった。PD-L1発現が1%未満の患者では、q12w群で30% (3/10例) が奏効したが、q6w群では0% (0/7例) であった。PD-L1発現が1%以上の患者におけるPFS中央値は、q12w群で8.1ヶ月 (95% CI 5.6-NR)、q6w群で10.6ヶ月 (95% CI 3.6-NR) であった。これは、ニボルマブ単剤療法コホートのPD-L1 1%以上患者のPFS中央値3.5ヶ月と比較して延長している。

喫煙歴およびEGFR変異ステータス: 現喫煙者または元喫煙者におけるORRは46% (30/65例) であったのに対し、非喫煙者では27% (3/11例) であった。EGFR変異陽性例 (n=8) におけるORRは50% (4/8例) であり、これらのEGFR変異陽性例は全てPD-L1発現が1%以上であった。

治療期間および投与状況: ニボルマブの投与期間中央値は、q12w群で9.4ヶ月 (IQR 3.6〜12.8ヶ月)、q6w群で4.1ヶ月 (IQR 1.9〜10.1ヶ月) であった。イピリムマブの投与期間中央値は、q12w群で9.7ヶ月 (IQR 5.5〜13.8ヶ月)、q6w群で3.4ヶ月 (IQR 1.4〜9.4ヶ月) であった。ニボルマブの相対的用量強度90%以上は、q12w群で66%、q6w群で67%に達成された。イピリムマブでは、q12w群で87%、q6w群で85%であった。データカットオフ時点で治療継続中の患者は、q12w群で9例 (24%)、q6w群で7例 (18%) であった。治療中止の主な理由は疾患進行であった (q12w群76%、q6w群82%) (Figure 1)。

考察/結論

本CheckMate 012試験は、未治療進行NSCLC患者に対する一次治療として、ニボルマブ3mg/kg q2wとイピリムマブ1mg/kgのq12週またはq6週併用療法が、許容可能な安全性プロファイルと有望な臨床活性を示すことを初めて実証したPhase 1試験である。特に、q12w群におけるORR 47% (95% CI 31-64%)、mDOR未到達、24週PFS 68% (95% CI 50-80%) という成績は、従来のプラチナ製剤ベースの化学療法 (ORR約30%、mPFS 4〜6ヶ月) を大きく凌駕するものであった。治療関連死がゼロであり、グレード3-4のTRAEによる治療中止率が11〜13%であったことは、先行コホートで報告された中断率最大33%、治療関連死3例と比較して、安全性プロファイルが大幅に改善されたことを示している。このことから、イピリムマブの投与頻度を減らすことで、毒性を管理しつつ有効性を維持できる可能性が示唆された。

先行研究との違い: 本研究で示された安全性プロファイルは、CheckMate 012の初期コホートで検討された高頻度イピリムマブ投与レジメンと比較して大幅に改善されており、これは投与スケジュールの最適化が毒性軽減に極めて重要であることを示している。また、ニボルマブ単剤療法と比較して、特にPD-L1陽性患者における奏効率とPFSの改善が示唆された点は、これまでの単剤療法では得られなかった新たな知見である。例えば、PD-L1発現1%以上の患者におけるORRは、ニボルマブ単剤療法コホートの28%に対し、本併用療法コホートでは57%であった (Figure 3)。

新規性: 本研究は、未治療進行NSCLCに対するPD-1/CTLA-4デュアルチェックポイント阻害療法の安全性と有効性を評価した最初の報告の一つであり、特にイピリムマブの低頻度投与スケジュールが良好な忍容性と高い奏効率、持続的な臨床活性を示すことを新規に明らかにした。PD-L1発現が1%未満の患者においてもORRシグナルが認められた (q12w群30%) ことは、デュアル阻害がPD-L1単独発現による予測を超えた活性を持ちうることを示唆しており、患者選択の観点で重要な含意を持つ。

臨床応用: 本試験の結果は、未治療進行NSCLC患者に対する一次治療として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が新たな治療選択肢となる可能性を示唆する。特に、PD-L1発現レベルに関わらず一定の有効性が期待できることから、より広範な患者集団への臨床応用が期待される。本研究の知見は、その後の大規模なPhase 3試験であるCheckMate 227 (ニボルマブ+イピリムマブ vs 化学療法) やCheckMate 9LA (ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法2サイクル) の設計根拠となり、最終的にニボルマブ+イピリムマブ併用療法のFDA承認 (2020年5月) の歴史的な礎となった。

残された課題: 本試験はPhase 1試験であり、サンプルサイズが比較的小さく、治療スケジュール間の安全性と有効性を直接比較するようにはデザインされていない点がlimitationである。また、KRAS変異ステータスやCNS転移の既往など、一部のベースライン特性はルーチンに収集されておらず、サブグループ解析が限定的であった。q6w群でmPFSが短かったのは、ベースライン特性の偶発的な不均衡による可能性が考えられるが、さらなる検討が必要である。PD-L1発現が1%未満の患者におけるデュアル阻害の真の有効性については、より大規模な検証が今後の課題として残されている。

方法

本研究は、NCT01454102としてClinicalTrials.govに登録されたPhase 1オープンラベル多コホート試験 (CheckMate 012) の一部であり、米国8施設で実施された。対象患者は18歳以上、組織学的または細胞学的に確認された再発Stage IIIBまたはStage IVの化学療法未経験のNSCLC患者で、RECIST v1.1に基づき測定可能病変を有し、ECOG PS 0〜1、十分な臓器機能を有することが条件とされた。脳転移患者も、安定しており、放射線療法や手術が2週間以上前に完了し、ステロイド治療を必要としない場合に限り適格とされた。自己免疫疾患の既往がある患者は除外された。

患者はインタラクティブ音声応答システムを用いて、ニボルマブ3mg/kg q2w + イピリムマブ1mg/kg q12w群 (q12w群、n=38) またはニボルマブ3mg/kg q2w + イピリムマブ1mg/kg q6w群 (q6w群、n=39) に1:1で無作為に割り付けられた。ランダム化は組織型 (扁平上皮 vs 非扁平上皮 vs NOS) で層別化された。治験薬は疾患進行、許容できない毒性、または同意撤回まで継続された。用量減量は許容されず、有害事象による投与遅延のみが許可された。イピリムマブによる有害事象が疑われる場合は、イピリムマブを中止し、ニボルマブ単剤療法を継続することが可能であった。

安全性は、最終投与後100日目まで、NCI-CTCAE v4.0に基づき治験責任医師によって評価された。主要エンドポイントは有害事象および重篤有害事象の頻度であった。腫瘍評価はRECIST v1.1に基づき、ベースライン、11週目、17週目、23週目、その後12週ごとに実施された。疾患進行後も、治験責任医師が臨床的利益があると判断し、腫瘍増大が10%を超えない限り、治療継続が許可された。

PD-L1発現は、Dako社の28-8クローン抗体を用いた免疫組織化学 (IHC) 法により、ベースラインの腫瘍組織検体で後方視的に評価された。PD-L1発現は、腫瘍細胞の膜染色が認められる腫瘍細胞の割合 (TPS) として定量され、カットオフ値は1%、5%、10%、25%、50%で解析された。PD-L1発現の評価は、少なくとも100個の評価可能な腫瘍細胞を含む組織切片で行われた。

統計解析はSAS version 9.04を用いて実施された。安全性および有効性の評価は、少なくとも1回治験薬を投与された全患者を対象とした。客観的奏効率の95%信頼区間 (CI) はClopper-Pearson法を用いて算出された。時間依存性エンドポイント (PFS、DOR、OS) はカプラン・マイヤー法により推定された。中央値の95% CIは標準的な方法を用いて算出された。データカットオフは2016年1月7日であった。中央値追跡期間はq12w群で12.8ヶ月 (IQR 9.3〜15.5)、q6w群で11.8ヶ月 (IQR 6.7〜15.9) であった。本研究は、各コホート約30例の登録を目標とし、治療関連有害事象による治療中止率が17週目までに25%未満 (30例中7例以下) であれば安全と定義された。