• 著者: Riely GJ, Wood DE, Aisner DL, Axtell AL, Bauman JR, Bharat A, Chang JY, Desai A, Dilling TJ, Dowell D, Durm GA, Gettinger S, Grotz TE, Gubens MA, Juloori A, Lackner RP, Lanuti M, Levy B, Lin J, Loo BW Jr, Lovly CM, Maldonado F, Morgensztern D, Mullikin TC, Ng T, Owen D, Owen DH, Patel SP, Patil T, Polanco PM, Riess J, Ruano Mendez AL, Shapiro TA, Singh AP, Stevenson J, Tam A, Tanvetyanon T, Yanagawa J, Yau E, Gregory K, Hang L
  • Corresponding author: Gregory J. Riely, MD, PhD (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, USA)
  • 雑誌: National Comprehensive Cancer Network
  • 発行年: 2025
  • Epub日: 2025-05-19
  • Article種別: Guideline
  • PMID: 40499586

背景

胸腺腫 (thymoma) および胸腺癌 (thymic carcinoma) は、前縦隔に発生する稀な上皮性悪性腫瘍であり、その年間発生率は米国で百万人あたり約2例(胸腺腫)・0.48例(胸腺癌)と極めて低い (Engels EA, J Thorac Oncol 2010)。これらの腫瘍は、WHO(世界保健機関)分類に基づき、胸腺腫はType A、AB、B1〜B3(B1: lymphocyte-rich thymoma; B2: cortical thymoma; B3: epithelial-rich thymoma)、MNT (micronodular thymoma with lymphoid stroma)、metaplastic thymomaなどに細分化され、胸腺癌はsquamous cell carcinoma、adenocarcinoma、lymphoepithelial carcinoma、NUT (nuclear protein in testis) carcinomaなどに分類される Marx et al. JThoracOncol 2022。これらの腫瘍は、重症筋無力症、PRCA (pure red cell aplasia)、低ガンマグロブリン血症などの傍腫瘍症候群を呈することがあり、治療方針の決定に大きく影響する (Loehrer PJ Sr et al., J Clin Oncol 2004)。治療の主軸は外科的切除(R0切除)であるが、進行・再発例においては全身療法が不可欠となる。胸腺腫の5年生存率は約90%であるのに対し、胸腺癌では約60%と予後が相対的に不良であり (Ahmad U et al., J Thorac Cardiovasc Surg 2015)、特に進行期における治療選択肢の不足が重要な gap in knowledge とされてきた。

NCCN (National Comprehensive Cancer Network) Guidelinesは、米国の主要がんセンターの専門家パネルによる合意形成に基づく標準的診療アルゴリズムを提供し、最新のエビデンスを反映して毎年更新される。本ガイドラインのVersion 2.2025(2025年5月19日公開)は、RELEVENT試験(Ramucirumab plus Carboplatin and Paclitaxel in Untreated Thymic Carcinoma, NCT03921671)、CAVEATT試験(Checkpoint inhibitor Avelumab plus AXiTinib in Thymic tumors)などの重要な臨床試験の結果を反映した改訂版であり、特に胸腺癌の初回治療における血管新生阻害剤の導入と、二次治療における免疫チェックポイント阻害剤 (ICI; immune checkpoint inhibitor) 併用療法の追加が主な更新点である。

胸腺腫患者の約3分の1が重症筋無力症を合併するとされており、周術期管理への影響が大きい。一方、胸腺癌では傍腫瘍症候群の合併は稀であるが、診断時から進行期(Masaoka Stage III/IV)で発見される割合が75%以上にのぼるとされる。これらの稀な疾患に対しては、外科・腫瘍内科・放射線腫瘍科・病理・神経内科を含む多職種チームによる集学的アプローチが不可欠であり、本ガイドラインはその標準的枠組みを提示する。治療選択肢については、進行・再発胸腺癌の化学療法でカルボプラチン+パクリタキセルのORR 21.7%(Lemma et al. JClinOncol 2011)やスニチニブのORR 26%(Thomas et al. LancetOncol 2015)が報告されてきたが、いずれも単群フェーズII試験でありランダム化比較データが乏しく、免疫療法では心筋炎リスクが懸念された(Giaccone et al. LancetOncol 2018)。血管新生阻害薬を組み込んだ一次治療レジメンの確立と重症筋無力症合併例への安全な治療開発が残された重要課題として指摘されており、各版の改訂を通じた継続的なエビデンス更新が求められている。

目的

本NCCNガイドラインは、胸腺腫および胸腺癌患者に対する包括的な診療推奨事項を提供することを目的とする。具体的には以下の主要側面について米国における標準的な診療アルゴリズムを提示する。(1) 初期評価: 縦隔腫瘤の診断と鑑別、傍腫瘍症候群の評価。(2) 初期治療: 外科的切除、術前化学療法、根治的化学放射線療法を含む。(3) 術後治療とサーベイランス: 再発予防と長期管理。(4) 再発・進行・転移性疾患に対する全身療法: 初回および二次治療レジメンの選択。(5) 外科切除の原則: R0切除の重要性と低侵襲手術の適用基準。(6) 放射線治療の原則: 線量設定・照射野・最新技術の活用。(7) 全身療法の原則: 各治療ラインにおける推奨レジメンと注意事項。(8) WHO組織分類(2021年版)の適用。(9) TNM病期分類(UICC/AJCC第8版)とMasaoka-Koga病期分類の併用。本ガイドラインは多職種(multidisciplinary tumor board)による評価と意思決定を前提としており、個々の患者の病態に応じた最適な治療選択を支援する。

結果

胸腺癌一次治療へのラムシルマブ三剤併用追加(RELEVENT試験): 未治療の転移性または進行胸腺癌患者を対象としたRELEVENT単群フェーズII試験 Proto et al. AnnOncol 2024 に基づき、カルボプラチン(AUC 5)+パクリタキセル(200 mg/m²)+ラムシルマブ(10 mg/kg)の3週毎投与(最大6サイクル、以降はラムシルマブ単剤維持療法)が新たな優先推奨(Preferred)として追加された(Figure 2; THYM-C = thymic carcinoma treatment algorithm figures in NCCN guidelines)。n=35における主要評価項目のORRはinvestigator評価で80%(95% CI 63.1-91.6%)、中央判定で57.6%(95% CI 39.2-74.5%)という高い奏効率を達成した。中央PFSは9.5ヶ月(95% CI 6.7-12.3ヶ月)、中央追跡31.6ヶ月時点での中央OSは43.8ヶ月(95% CI 31.6-NA)に達した。またS1701試験(n=21、無作為化)においても、ラムシルマブ追加群 ORR 88% vs カルボプラチン+パクリタキセル単独群 ORR 40%と大きな差を認めた。この成績は、従来のカルボプラチン+パクリタキセル単独療法のORR 21.7%(95% CI 7.5-43.7%) Lemma et al. JClinOncol 2011 やWJOG4207L試験のORR 36%(95% CI 21-53%) Hirai et al. AnnOncol 2015 と比較して顕著な改善を示しており、本改訂において血管新生阻害剤を含む初の一次治療優先推奨が確立された。なお、未治療脳転移例や抗血管新生薬に対する標準禁忌を持つ例は除外されており、術前療法としての使用実績は未報告である。

胸腺癌二次治療へのアベルマブ+アキシチニブ追加(CAVEATT試験): 既治療の切除不能または転移性胸腺癌(およびType B3胸腺腫)を対象としたCAVEATT単群フェーズII試験 Conforti et al. LancetOncol 2022 に基づき、アベルマブ(10 mg/kg、2週毎)+アキシチニブ(5 mg、1日2回)併用療法が「Other Recommended」として新規追加された(Figure 3)。n=32(うち胸腺癌n=27)でのORRは34%(95% CI 19.1-52.2%)、中央PFSは7.5ヶ月(95% CI 4.3-11.0ヶ月)、中央OSは26.6ヶ月(95% CI 14.6-NA)であった。抗血管新生薬の前治療歴がない患者(n=28)ではORR 47%(95% CI 28.3-66.8%)と良好な一方、前治療歴あり(n=4)ではORR 15%(95% CI 0.4-57.9%)に留まり、前治療歴による効果の差異が示された。

胸腺腫二次治療推奨区分の再整理: 胸腺腫の二次治療において推奨区分の整理が行われた。従来「Other Recommended」に分類されていたエベロリムス、ゲムシタビン±カペシタビン、オクトレオチド(オクトレオチドスキャンまたはdotatate PET/CT陽性例に対し、±プレドニゾン)、ペメトレキセドの4剤が「Preferred」へと昇格した。エベロリムスはシスプラチンベース化学療法後に増悪した胸腺腫/胸腺癌患者(n=51)対象フェーズII試験において、胸腺腫コホートでPFS 16.6ヶ月、ORR 9.8%(95% CI 2.0-26.0%)を示した。一方、エトポシド単剤・イホスファミド単剤は「Useful in Certain Circumstances(特定の状況下で有用)」へと降格した。

初期評価と縦隔腫瘤鑑別のアルゴリズム: 前縦隔腫瘤が検出された際の初期評価フローが明確化された(Figure 1)。造影胸部CTが必須検査として位置づけられ、胸腺悪性腫瘍と胸腺嚢胞・胸腺過形成との鑑別には造影胸部MRIがCTよりも高い識別能を有することが明記された。胚細胞腫瘍 (germ cell tumor) を鑑別するため、血中AFP (alpha-fetoprotein) およびbeta-hCG (beta-human chorionic gonadotropin) の測定も推奨される。臨床的に前縦隔腫瘤が胸腺bedに存在し、腫瘍マーカー陰性・リンパ節腫大なし・甲状腺との連続性なしの場合に「胸腺腫瘍likely」と判定し、切除可能なら生検を挟まず直接手術へ進むアルゴリズムが提示されている。生検が必要な場合も経胸膜アプローチ(transpleural approach)はStage IからStage IVへの人為的な進行を招くため厳禁とされる。

外科的切除の原則と周術期管理: 外科的切除は胸部腫瘍学を専門とする経験豊富な胸部外科医によって実施されるべきであり、Stage II以上は多職種チームによる評価が必須とされる (Table 1)。切除可能な胸腺腫が強く疑われる場合、生検による被膜破壊と胸膜播種(tumor seeding)のリスクを避けるため術前生検は回避すべきとされる。術前には重症筋無力症のコントロールが必須であり、R0切除が不確実な場合は術前補助療法(neoadjuvant systemic therapy)を検討する。デバルキング(debulking)は非推奨。低侵襲手術(VATS; video-assisted thoracoscopic surgery)は長期データが乏しいため通常は推奨されないが、clinical Stage I-IIで腫瘍学的目標を標準手術と同等に達成できる場合は専門施設での実施を考慮し得る。1,061例のシステマティックレビューではVATS後5年生存率83〜100%、10年無再発生存率89〜100%と開胸手術と同等の成績が報告されており、2,835例の後方視的検討でもVATS群の5年生存率97.9%と両群間に有意差を認めなかった。

放射線治療の線量基準と技術: PORT (postoperative radiation therapy) の線量設定は切除断端状態に基づいて厳格に規定される。断端陰性/近接(R0)の場合は45〜50 Gy、顕微鏡的断端陽性(R1)は54 Gy、肉眼的残存(R2)または切除不能例への根治的照射には60〜70 Gy(通常分割1.8〜2.0 Gy/回)が推奨される (Table 2)。胸腺腫瘍は領域リンパ節転移が稀なため予防的リンパ節照射(ENI; elective nodal irradiation)は非推奨。若年長期生存者が多いため、心臓への平均線量をas low as reasonably achievable(ALARA原則)に抑えるため、IMRT (intensity-modulated radiation therapy) が3D-CRT (three-dimensional conformal radiation therapy) より推奨される。陽子線治療は正常臓器(肺・心・食道)の線量低減と良好な局所制御・毒性プロファイルを示しており適切な選択肢として明記されている。

既治療胸腺癌に対する標的薬・免疫療法の成績: 既治療の進行・再発胸腺癌に対する二次治療として、REMORAフェーズII試験 Sato et al. LancetOncol 2020 ではレンバチニブ(n=42)がORR 38%(95% CI 23.0-54.0%)、中央PFS 9.3ヶ月、中央OS 46.2ヶ月を示した(ただし副作用が高頻度で用量減量が必要になることに注意)。ペムブロリズマブのフェーズII試験 Giaccone et al. LancetOncol 2018(n=40)ではORR 22.5%(95% CI 10.8-38.5%)、中央PFS 6.1ヶ月、中央OS 24.9ヶ月を達成。スニチニブのフェーズII試験 Thomas et al. LancetOncol 2015 (n=23) ではORR 26%(95% CI 10.2-48.4%)であった。STYLE試験では胸腺癌(n=28 assessable)でスニチニブのORR 21.4%、中央OS 27.8ヶ月が示された。これらレンバチニブ・ペムブロリズマブ・スニチニブはいずれも「Preferred」二次治療に位置づけられている。

胸腺腫の全身療法と術前化学療法のエビデンス: 胸腺腫に対する一次治療の優先推奨はCAP(シスプラチン 50 mg/m²+ドキソルビシン 50 mg/m²+シクロホスファミド 500 mg/m²、3週毎)である。LoehrらのフェーズII試験では進行・再発胸腺腫29例(胸腺癌1例含む)に対してCAPを投与し、全奏効率50%(完全奏効3例+部分奏効12例)を達成した。RYTHMICプロスペクティブデータベース研究では進行胸腺腫・胸腺癌においてCAPが他レジメンと比較して有意に高い客観的奏効率(44% vs 17%)を示した。術前化学療法の有効性に関するメタアナリシスでは進行胸腺上皮腫瘍における術前療法への奏効割合(プール推定)は59%、5年全生存率は87%であった。また大規模試験では70〜80%という高い奏効率が報告されており、これら患者の約50%が完全切除(R0)を達成した。R0切除を達成した胸腺腫患者の10年生存率はMasaoka病期別にそれぞれStage I: 約90%、Stage II: 約70%、Stage III: 約55%、Stage IVa: 約35%と報告されており、完全切除が最も重要な予後因子であることが示されている。

胸腺癌の再発リスクと術後放射線治療の意義: 胸腺癌は胸腺腫と比較して再発リスクが著しく高い。ITMIG/ESTS (European Society of Thoracic Surgeons) データベース(n=1,042)における胸腺癌の累積再発率(CIR; cumulative incidence of recurrence)は5年時点で35%、10年時点で40%に達した。完全切除後においても胸腺癌では51.2%が再発を経験するのに対し、胸腺腫では7.8%に留まる。再発までの期間は2〜108ヶ月(中央値11ヶ月)と幅広い。術後放射線治療の意義については、ITMIG/ESTS 462例の後方視的解析においてMasaoka Stage IIIまたはIV胸腺癌では切除断端状態にかかわらずPORT追加により5年生存率が有意に改善された。胸腺癌の5年生存率はR0切除66.9% vs 亜全切除30.1% vs 手術不能例24.2%と、切除完全性の影響が顕著である。なお、ペムブロリズマブに関しては重篤なirAE (immune-related adverse event; 免疫関連有害事象) の頻度が高く、胸腺癌患者でのグレード3〜4の心筋炎が5〜9%に発生することが報告されている。胸腺腫患者7例中5例(71%)でグレード3以上のirAEが発生したため、胸腺腫への抗PD-1/PD-L1 (programmed cell death protein-1/programmed death-ligand 1) 療法は推奨されていない。

考察/結論

先行研究との違い: 本ガイドラインは、従来の標準治療であったカルボプラチン+パクリタキセル療法 Lemma et al. JClinOncol 2011 のORR 21.7%やWJOG4207L試験のORR 36%という治療成績と異なり、ラムシルマブを上乗せした3剤併用療法がinvestigator評価ORR 80%という高い奏効率を達成したことを受けて、これを一次治療の優先推奨に位置づけた。また、二次治療におけるアベルマブ+アキシチニブ の導入は、従来の単剤殺細胞性抗がん剤成績と対照的であり、抗PD-L1 (programmed death-ligand 1) 抗体と抗血管新生薬アキシチニブの相乗効果を臨床的に示した。一次治療のRELEVENT試験では中央OS 43.8ヶ月という長期生存も確認されており、これまでの標準療法であるカルボプラチン+パクリタキセル単独での中央OS 20ヶ月や2年OS 71%といった既報と比較しても顕著に優れた成績を示している。

新規性: 本改訂により、未治療の進行胸腺癌に対するラムシルマブ含有三剤療法、および既治療例に対するアベルマブ+アキシチニブという、新規の血管新生阻害薬を軸とした治療アルゴリズムが公式に確立された。血管新生阻害剤が胸腺癌の一次治療優先推奨として採用されたことは、希少がんである胸腺癌の治療開発において新規の標準化された分子標的治療戦略が示された点で意義深く、これまで報告されていない一次治療優先推奨レベルでの抗血管新生療法の確立として注目される。

臨床応用: 胸腺腫の二次治療において、エベロリムス・ゲムシタビン±カペシタビン・オクトレオチド・ペメトレキセドがPreferredへ整理されたことは、臨床現場における治療選択の迅速な意思決定を支援する。特に、オクトレオチドスキャンやdotatate PET/CTで陽性を示した症例に対するオクトレオチド±プレドニゾン療法の推奨は、バイオマーカーに基づいた個別化医療の臨床応用として有用な指針を提供する。放射線治療においてはIMRTや陽子線治療の積極的活用により、長期生存が見込まれる若年患者における心臓・肺・食道への晩期毒性低減が期待される。臨床的意義として、胸腺癌の積極的な術前療法と多職種チームによる集学的な切除判断が長期予後に直結することが明確化された点も重要である。

残された課題: 今後の検討課題として、胸腺癌に対するペムブロリズマブ使用時における重篤なirAEの管理が挙げられる。グレード3〜4の心筋炎が5〜9%と高頻度で発生することが先行研究 Giaccone et al. LancetOncol 2018 で報告されており、自己免疫疾患の既往スクリーニングやトロポニン値モニタリング体制の確立が必須である。また、胸腺腫に対するICI適用は依然として安全性懸念から推奨外であり、重症筋無力症合併例における安全な治療開発が今後の重要な研究方向性である。さらに、低侵襲手術(VATS/RATS)の長期成績に関するランダム化比較試験データが不足しており、更なる検討が求められる。胸腺癌と胸腺腫の治療反応性の差異や、VEGFR-TKI・ICI組み合わせ療法の最適な序列・duration、PD-L1発現や腫瘍変異量(TMB; tumor mutational burden)などのバイオマーカーを用いた患者選択戦略についても、今後の研究によるエビデンス蓄積が待たれる(limitation: 現時点では単群フェーズII試験が大半でランダム化比較データが乏しい)。

方法

本ガイドラインは、NCCNの専門家パネルによる合意形成プロセスに基づいて作成された臨床診療ガイドラインであり、特に明記されない限り全推奨はカテゴリー2A(下位レベルのエビデンスに基づく均一なNCCNコンセンサス)とされている。作成にあたりPubMedデータベースを用いた系統的な文献検索を実施した。検索キーワードは「thymomas」「thymic carcinomas」「thymic epithelial tumors」とし、前回更新以降に発表された文献を収集。ヒトを対象とした英語論文に限定し、臨床試験(Phase II/III/IV)、ランダム化比較試験、メタアナリシス、システマティックレビュー、バリデーション研究などを対象とした。

主要推奨事項の根拠となった臨床試験には以下が含まれる: Lemma et al. JClinOncol 2011 によるカルボプラチン+パクリタキセル併用のフェーズII試験 (NCT00003058)、Hirai et al. AnnOncol 2015 によるWJOG4207L試験 (NCT00620816)、Thomas et al. LancetOncol 2015 によるスニチニブ試験 (NCT00938477)、Giaccone et al. LancetOncol 2018 および Cho et al. JClinOncol 2019 によるペムブロリズマブ試験 (NCT02364076, NCT02304244)、Sato et al. LancetOncol 2020 によるREMORA(Lenvatinib in Advanced or Metastatic Thymic Carcinoma)フェーズII試験 (NCT02377488)、Conforti et al. LancetOncol 2022 によるCAVEATTフェーズII試験、Proto et al. AnnOncol 2024 によるRELEVENTフェーズII試験 (NCT03921671)。

これらは主に単群非比較のフェーズII試験であり、主要評価項目としてORR (objective response rate; 客観的奏効割合)、PFS (progression-free survival; 無増悪生存期間)、OS (overall survival; 全生存期間) が設定された。統計手法としてはKaplan-Meier曲線による生存解析、Cox比例ハザードモデルを用いたHR (hazard ratio) 推定が用いられた。安全性評価はCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events) v4.03に基づいた。本ガイドラインの作成においてはこれらの試験データに加え、NCCNパネルメンバーの専門的意見と下位レベルのエビデンスが推奨策定に用いられ、年1回の改訂を通じて逐次更新されている(NCCNウェブサイト: www.NCCN.org)。