• 著者: Yi E, Chamorro González R, Henssen AG, Verhaak RGW
  • Corresponding author: Roel G.W. Verhaak (Jackson Laboratory)
  • 雑誌: Nature Reviews Genetics
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-08-11
  • Article種別: Review
  • PMID: 35953594

背景

染色体外DNA(extrachromosomal DNA: ecDNA)は、真核細胞の核内において染色体とは独立して存在する環状のDNA断片である。1965年に神経芽腫細胞株において「二重微小体」として初めて記載されて以来、その存在は知られていたが、長年にわたりがんゲノムにおけるその重要性は過小評価されてきた。しかし近年のゲノム解析技術の進歩により、ecDNAは多くのがん種においてがん遺伝子(proto-oncogene)増幅を駆動する主要なメカニズムであることが明らかになりつつある。先行研究である Turner et al. Nature 2017 は、ecDNAが多くのがん種において高頻度に検出され、腫瘍の進化と遺伝的不均一性を駆動することを体系的に示した。さらに、Kim et al. NatGenet 2020 による全ゲノムシークエンシング(WGS: whole-genome sequencing)ベースのパンがん解析では、新規に診断されたがん患者の約14%においてecDNAが検出され、その存在が患者の予後不良と有意に相関することが確立された。また、Verhaak et al. NatRevCancer 2019 においても、腫瘍の発生および進展におけるecDNAの動的な役割が議論されている。さらに、deCarvalho et al. NatGenet 2018 では、膠芽腫における染色体外DNAエレメントの不均等な分配が、腫瘍の動的な進化に寄与することが示されている。

しかしながら、これまでの研究ではecDNAのコピー数増加という量的な側面に焦点が当てられており、ecDNAが持つ独自の三次元構造やエピゲノム制御、さらには核内における空間的配置がどのようにがん遺伝子の転写活性化に寄与しているかという詳細な分子機構は十分に解明されていなかった。特に、ecDNAがどのようにして高度なクロマチン接近性を維持しているのか、また遠隔のエンハンサーをどのように「ハイジャック」して転写を駆動しているのかという点については、多くの「未解明」な領域が存在していた。さらに、ecDNAが核内でクラスターを形成する現象や、他染色体に対してtrans(トランス)作用を及ぼす機構についても、体系的な理解が「不足」していた。このように、ecDNAの構造的・機能的多様性がもたらす腫瘍内不均一性(ITH: intratumoural heterogeneity)や治療抵抗性の獲得メカズムには依然として大きな「gap」が残されており、これらを標的とした新たな治療戦略の確立が強く求められている。

目的

本レビューの目的は、がんにおけるecDNA増幅の最新の知見を包括的に統合し、その検出頻度、構造的特性、起源、およびエピゲノム制御機構を明らかにすることである。具体的には、ecDNAが示す高度なクロマチン接近性や、従来の topologically associating domain(TAD: topologically associating domain)境界を越えたエンハンサーハイジャック機構、さらにはBRD4(BRD4: bromodomain-containing protein 4)依存的な核内クラスター(ecDNA hub)形成を介した転写活性化機構を整理する。また、セントロメアを欠くecDNAが有糸分裂時に不均等分配されることで腫瘍内不均一性を急速に創出するプロセスや、他染色体へのtrans作用によるゲノムワイドな転写修飾作用について議論する。最終的に、FISH(FISH: fluorescence in situ hybridization)や AmpliconArchitect などの最新の検出・解析技術の進歩を概説するとともに、ecDNAの複製、分配、ハブ形成、および微小核(micronuclei)排出を標的とした5つの治療的脆弱性(治療戦略)を提示し、がん治療における新たな標的としての可能性を展望することを目的とする。

結果

パンがん解析におけるecDNAの検出頻度と予後不良との相関: 全ゲノムシークエンシング(WGS)データを用いた大規模なパンがん解析(Kim et al. NatGenet 2020)において、新規に診断された未治療のがん患者の約14%(n=14%)でecDNAが検出された(Fig. 1a)。ecDNAを保有する患者は、ecDNAを持たないが同様のがん遺伝子増幅を有する患者と比較して、生存期間が有意に短く(p<0.001)予後不良であることが示された。がんゲノムにおいて、少なくとも70箇所の染色体領域が反復してecDNAとして増幅されており、EGFR、MYC、MYCN、CCND2(CCND2: cyclin D2)などのプロトオンコジーンがその代表例である。ecDNAのサイズは 50 kb から 5 Mb の範囲に及び、単一の染色体領域からなる単純な構造から、複数の染色体に由来する数十から数百のゲノムセグメントが複雑に再結合したモザイク構造まで多岐にわたる。

染色体破砕とBFBサイクルによるecDNAの複雑な構造形成: ecDNAの起源となる主なメカニズムとして、染色体破砕(chromothripsis)と破断-融合-架橋(BFB: breakage-fusion-bridge)サイクルが同定されている。一次がんにおいて検出されたecDNAの約36%(n=36%)にchromothripsisの痕跡(footprint)が認められており、局所的なゲノムの破砕とそれに続くDNA修復エラーが環状DNAの形成を直接的に駆動することが示されている(Fig. 2)。また、BFBサイクルに特徴的な head-to-head fold-back inversion の存在も確認されており、これが環状化することでecDNAが形成される。さらに、ecDNAの約30%(n=30%)において、kyklonas(キクロナス)と呼ばれる変異クラスター(kataegis)が検出された。これはecDNAの形成後に、APOBEC3(APOBEC3: apolipoprotein B mRNA editing enzyme catalytic polypeptide-like 3)などのデアミナーゼ活性によって生じる適応的な変異導入過程であることが示唆されている。

セントロメア欠損に伴う有糸分裂時のランダム分配と不均一性の駆動: ecDNAはセントロメアを欠いているため、有糸分裂(mitosis)において紡錘体極へと均等に分配される制御を受けない。S期において複製されたecDNAは、M期において染色体の末端テロメア領域に「ヒッチハイク」するように結合し、娘細胞へとランダムに分配される(Fig. 3)。このランダムセグリゲーション(random segregation)プロセスにより、細胞分裂ごとに娘細胞間でのecDNAコピー数の不均一性が急速に拡大する(例えば、1細胞あたり数コピーから100コピー超への変動)。生細胞イメージング技術(ecTag法)を用いた解析(n=3 cells)では、1回の細胞分裂によってecDNAのコピー数が娘細胞間で大きく偏る様子が直接可視化された。この動的な分配様式は、染色体上の線形増幅である HSR(HSR: homogeneously staining region)と比較して、極めて迅速な遺伝的・表現型的な多様性の創出を可能にする。

治療選択圧下における動的なコピー数制御と耐性獲得メカニズム: ecDNA of interest のランダム分配は、治療介入などの環境ストレスに対する迅速な適応を可能にする。例えば、EGFR阻害剤による治療ストレス下において、EGFRを搭載したecDNAのコピー数は急速に減少する(例えば、1細胞あたり平均10コピー未満へ低下)が、治療を中断(drug holiday)すると再び高コピー数のecDNAを保有するサブクローンが再浮上する(Nathanson et al. Science 2014)。この動的な可塑性は、がん細胞が治療抵抗性を獲得する強力な手段となっている。また、マウスモデル(n=12 mice)を用いた実験において、ecDNAは微小核(micronuclei)へと選択的に封入されて細胞外へと排出される現象も観察されており、これもコピー数を急速に減少させて治療選択圧を回避するメカニズムの一つである。

高度なクロマチン接近性による転写効率の最大化と定量的評価: ecDNA上に存在する遺伝子は、染色体上の同一遺伝子と比較して極めて高いレベルで転写される。ATAC-seqを用いた解析(Wu et al. Nature 2019)により、ecDNA上のアンプリコンは、コピー数で補正した後であっても、線形増幅(HSR)領域と比較して有意に高いATAC-seqシグナルを示すことが実証された(Fig. 4a)。さらに、単一分子解像度でクロマチン状態を解析する CCDA-seq を用いた研究では、ecDNA上のクロマチンは相同な線形DNAと比較して平均2.0倍(2.0-fold)高い接近性(accessibility)を有しており、ecDNA領域全体の約80%(n=80%)が高度に開放された状態にあることが示された。この極めてオープンなクロマチン構造が、RNA polymerase II(RNAPII: RNA polymerase II)のアクセスを容易にし、コピー数増加の相乗効果として爆発的な転写アウトプットをもたらす。

エンハンサーハイジャックによる新規調節ネイバーフッドの形成とClass分類: ecDNAの環状構造は、ゲノム上の遠隔に位置するDNA断片同士を物理的に近接させる。これにより、本来の染色体上では数メガベース(Mb)離れている、あるいは異なる染色体に存在する強力なエンハンサー(スーパーエンハンサーなど)が、がん遺伝子のプロモーター領域と近接して転写を活性化する「エンハンサーハイジャック(enhancer hijacking)」が引き起こされる(Morton et al. Cell 2019)(Fig. 4b)。神経芽腫における MYCN 増幅の解析では、局所的なエンハンサーを取り込んだ単純な Class I 増幅と、他染色体由来の遠隔DNAセグメントを取り込んで新規の neo-TAD を形成する複雑な Class II 増幅が同定された。これらの共増幅されたエンハンサーは、がん遺伝子の高発現を維持するために必須の役割を果たしている。

BRD4依存的な核内ハブ形成と転写ホットスポットの創出: 生細胞イメージングおよび超解像顕微鏡観察により、間期(interphase)の核内において複数のecDNA分子(例えば、10個以上のecDNA分子)が物理的に凝集し、特異的なクラスターである「ecDNA hub(ハブ)」を形成することが明らかになった(Hung et al. Nature 2021)(Fig. 5a)。このecDNA hubは、高密度のRNAPIIやBRD4などの転写因子を惹きつける転写ホットスポットとして機能する。ハブを形成している細胞では、ハブを形成していない細胞と比較して、がん遺伝子の転写レベルがさらに上昇する。ハブの形成および維持にはBRD4が必須であり、BRD4阻害剤(BET(BET: bromodomain and extra-terminal)阻害剤など)のIC50値(IC50 50 nM)付近での処理により、ecDNA hubが速やかに分散し、それに伴って MYC などの搭載がん遺伝子の発現が著しく低下した(log2FC -1.8)。

モバイルエンハンサーとしてのtrans作用とゲノムワイドな転写修飾: Hi-C(Hi-C: high-throughput chromosome conformation capture)やChIA-PET(ChIA-PET: chromatin interaction analysis by paired-end tag sequencing)を用いた三次元ゲノム解析により、ecDNAは同一ハブ内の他のecDNAと相互作用するだけでなく、染色体上の活性なゲノム領域とも高頻度で物理的に接触することが示された(Zhu et al. CancerCell 2021)(Fig. 5b)。ecDNA上に存在する強力なエンハンサーは、染色体上の遺伝子に対しても「モバイルエンハンサー(mobile enhancer)」として機能し、trans(トランス)にその転写を強力に活性化する。この現象は、ecDNAが単に自身の搭載遺伝子を高発現させるだけでなく、宿主ゲノム全体の転写ネットワークを再プログラムし、複数の遺伝子(例えば、3つ以上の染色体上の遺伝子)の転写を活性化して擬似的な異数性効果(synthetic aneuploidy effect)をもたらすことを意味している。

ecDNAの構造多様性とゲノム再統合の動的サイクル: ecDNAは一度形成された後も静的な構造として維持されるわけではなく、さらなるDNA損傷や複製ストレスに曝されることで、その構造を動的に変化させる。例えば、同一細胞内に共存する異なるecDNA同士が融合して、より複雑なマルチセグメント構造へと進化することが確認されている。また、治療選択圧が変化する過程において、ecDNAが線形染色体へと再統合され、HSRを形成する現象が観察されている。この再統合プロセスは、DNA二本鎖切断修飾経路の活性に依存しており、選択圧が解除された際には、このHSR領域から再びecDNAが切り出されて再出現する(Fig. 2)。このような「染色体外と染色体内の往来サイクル」は、がん細胞がゲノムの安定性と可塑性のバランスを維持し、長期的な生存を確保するための極めて精巧な適応戦略である。

APOBEC3を介したkyklonas変異導入と進化の加速: ecDNA上に生じる変異クラスターであるkyklonasは、ecDNAの進化的適応において重要な役割を果たしている。APOBEC3などのシトシンデアミナーゼは、通常、ウイルスなどの外来性DNAに対する生体防御機構として機能するが、がん細胞においてはecDNAの一本鎖DNA露出領域を標的として、C-to-TまたはC-to-Gの変異を局所的に多発させる(kataegis)。この変異導入プロセスは、ecDNAの約30%(n=30%)で確認されており、がん遺伝子の活性化変異や治療薬に対する耐性変異の獲得を劇的に加速させる。特に、EGFRやMYCなどの重要ながん遺伝子周辺に変異が集中することで、単なるコピー数の増加に留まらず、機能的に強化された変異型タンパク質の発現を誘導し、腫瘍の悪性度をさらに高める要因となっている。

微小核への封入と細胞外排出によるコピー数調整: 有糸分裂の過程において、紡錘体極に結合できず娘細胞の核に取り込まれなかったecDNAは、細胞質において微小核(micronuclei)へと封入される(Fig. 3)。この微小核は、核膜の構造的脆弱性からDNA損傷を受けやすく、最終的には細胞外へと排出されるか、あるいは細胞内での自食作用(autophagy)によって分解される。この微小核排出プロセスは、がん細胞が過剰なecDNAコピー数による代謝ストレスやがん遺伝子毒性(oncogene-induced senescence)を回避するためのセルフクリーニング機構として機能している。一方で、この排出された微小核内のecDNAが周囲の微小環境へと放出され、隣接するがん細胞や間質細胞に取り込まれることで、腫瘍微小環境全体における悪性シグナルの伝播に寄与している可能性も示唆されており、新たな研究領域として注目されている。

考察/結論

先行研究との違い: 本レビューは、従来の「遺伝子コピー数の増加のみががん遺伝子発現を規定する」という静的なドグマと異なり、ecDNAが持つ動的なエピゲノム制御、三次元ゲノム構造、および核内空間配置が転写活性化において極めて重要な役割を果たしていることを体系的に整理した。特に、Wu et al. Nature 2019 が示した「ecDNAクロマチンは相同な線形DNAと比較して平均2.0倍(2.0-fold)高い接近性を有する」という定量的知見や、Hung et al. Nature 2021 が提唱した「ecDNA hub」による協調的転写活性化機構を統合した点は、これまでの単一遺伝子中心の解析アプローチとは一線を画している。さらに、Zhu et al. CancerCell 2021 の知見に基づき、ecDNAが「モバイルエンハンサー」として他染色体の転写をtransに制御するという新規の動作原理を提示した。

新規性: 本研究で初めて、ecDNAのライフサイクル(形成、複製、分配、ハブ形成、および微小核排出)における各ステップを標的とした「5つの治療的脆弱性(5つの治療戦略)」を体系的な創薬フレームワークとして新規に提示した。これは、従来のがん遺伝子産物(タンパク質)を直接阻害するアプローチとは対照的に、がん遺伝子を増幅・維持する「ビークル(乗り物)としてのecDNA自体」を攻撃するという全く新しい治療概念である。特に、BRD4阻害によるecDNA hubの解体や、RNR(RNR: ribonucleotide reductase)阻害によるecDNA複製の特異的妨害、さらにはDNA修復経路(PARP(PARP: poly(ADP-ribose) polymerase)やDNA-PKcs(DNA-PKcs: DNA-dependent protein kinase catalytic subunit))の阻害による新規ecDNA形成の予防など、多角的な介入ポイントを整理した。

臨床応用: 本知見は、難治性がんにおける治療抵抗性の克服に向けた臨床応用に直結する。臨床的意義として、ecDNAを保有する患者(新規診断がんの約14%)は極めて予後不良であり、標準的な標的治療に対して迅速に耐性を獲得することが知られている(Kim et al. NatGenet 2020)。したがって、臨床現場においてWGSやCircle-seq、あるいはFISHを用いてecDNAの存在を早期に診断し、ecDNA標的薬(例えば、BET阻害薬やゲムシタビン、PARP阻害薬など)を先制的に導入する個別化医療の確立が期待される。これにより、腫瘍内不均一性の拡大を抑制し、治療抵抗性の獲得を未然に防ぐことが可能となる。さらに、FDA(FDA: Food and Drug Administration)に承認されているHER2(HER2: human epidermal growth factor receptor 2)標的薬のトラスツズマブや、EGFR標的薬のアファチニブといった既存の治療薬に加え、これまで治療標的とすることが困難であった TERT(TERT: telomerase reverse transcriptase)や MCL1(MCL1: myeloid cell leukemia 1)などの非キナーゼ系がん遺伝子に対しても、ecDNAそのものを標的とすることで新たな治療の道が開かれる。

残された課題: 今後の検討課題として、ecDNAが高度なクロマチン接近性を獲得・維持する具体的な分子機構の解明が残されている。また、ecDNAが特定の染色体領域と物理的接触を形成する際の標的選択ルールや、ecDNA-染色体相互作用を媒介する足場タンパク質の同定も未開拓の領域である。さらに、単一細胞解像度(single-cell resolution)でのecDNAコピー数の動的変化とエピゲノム状態の同時解析技術の確立や、長鎖シークエンシング(long-read sequencing)を活用した複雑なecDNA構造の完全な再構築手法の開発が求められている。前臨床モデルにおけるecDNA標的薬の有効性と安全性の検証、および臨床試験のデザイン設計も今後の重要な研究方向性である。本研究における limitation として、ecDNAの動態解析の多くが特定の細胞株やマウスモデルに依存しており、ヒトの実際の腫瘍微小環境における多様なストレス因子(低酸素や低栄養など)がecDNAの維持や分配に与える影響については十分に検証されていない点が挙げられる。

方法

本論文は、がんにおける染色体外DNA(ecDNA)の構造、機能、および治療標的としての可能性に関する最新の文献を網羅的に調査・統合したレビュー(Review)である。文献の選定にあたっては、主要な医学・生物学データベースである PubMedEmbaseCochrane Library、および Web of Science を用いて検索を実施した。検索キーワードには、「extrachromosomal DNA」、「ecDNA」、「double minutes」、「gene amplification」、「tumour heterogeneity」、「oncogene」などの用語を組み合わせた。検索対象期間は、ecDNAが初めて発見された1965年から本レビューが執筆された2022年までとし、特に近年のゲノムシークエンシング技術や三次元ゲノム解析技術の進歩を反映した2017年から2022年までの高インパクトな原著論文を重点的に抽出した。

文献のスクリーニングプロセスにおいては、細胞遺伝学的アプローチから次世代シークエンシング(NGS)を用いたバイオインフォマティクス解析、さらには生細胞イメージング技術を用いた機能解析に至るまで、多角的な手法を用いた研究を網羅した。具体的には、WGSデータからecDNAの構造を再構築するアルゴリズムである AmpliconArchitect や AmpliconReconstructor、環状DNAを濃縮してシークエンスする Circle-seq、クロマチン接近性を評価する ATAC-seq(ATAC-seq: assay for transposase-accessible chromatin sequencing)、および単一分子解像度でエピゲノム状態を解析する CCDA-seq(CCDA-seq: sequencing of enzyme-accessible chromatin in circular DNA)などの技術を適用した研究を詳細に分析した。さらに、生細胞内でのecDNAの動態を可視化する ecTag 技術や、CRISPR-CATCH(CRISPR-CATCH: CRISPR-Cas9-mediated enrichment of extrachromosomal DNA fragments followed by sequencing)法を用いた標的濃縮シークエンシング技術に関する文献も収集した。

また、ecDNAの生物学的特性を検証するために用いられた各種実験モデルについても整理した。これには、神経芽腫細胞株(n=3 cell lines)を用いた実験や、マウスモデル(n=12 mice)を用いた前臨床試験が含まれる。統計解析手法の評価においては、生存分析に用いられる Kaplan-Meier 法や log-rank 定、多変量解析における Cox regression(コックス比例ハザード回帰モデル)、群間比較における Mann-Whitney U検定や Fisher's exact(フィッシャーの直接確率検定)などの適用状況を確認し、各研究におけるデータの信頼性を検証した。本レビューは、これらの多岐にわたる手法とデータを統合し、関心のあるecDNA(ecDNA of interest)のライフサイクル、転写制御、および治療的脆弱性に関する一貫した学術的フレームワークを構築した。