- 著者: Charles Swanton, Elsa Bernard, Chris Abbosh, Fabrice André, Johan Auwerx, Allan Balmain, Dafna Bar-Sagi, René Bernards, Susan Bullman, James DeGregori, Catherine Elliott, Ayelet Erez, Gerard Evan, Mark A. Febbraio, Andrés Hidalgo, Mariam Jamal-Hanjani, Johanna A. Joyce, Matthew Kaiser, Katja Lamia, Jason W. Locasale, Sherene Loi, Ilaria Malanchi, Miriam Merad, Kathryn Musgrave, Ketan J. Patel, Sergio Quezada, Jennifer A. Wargo, Ashani Weeraratna, Eileen White, Frank Winkler, John N. Wood, Karen H. Vousden, Douglas Hanahan
- Corresponding author: Charles Swanton (The Francis Crick Institute, London, UK), Karen H. Vousden (The Francis Crick Institute, London, UK), Douglas Hanahan (Ludwig Institute for Cancer Research, Lausanne, Switzerland)
- 雑誌: Cell
- 発行年: 2024
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- PMID: 38552609
背景
過去50年間における還元主義的な細胞生物学の進歩は、がん細胞そのものの自律的な増殖機構や、局所的な腫瘍微小環境である TME (tumor microenvironment:腫瘍微小環境) の理解を劇的に深めてきた。この学術的進展に伴い、がん患者の5年生存率は1950年代の35%から2017年には69.7%へと着実に改善を示している。しかしながら、がんは依然として世界における主要な死因であり続けており、特定の分子標的治療や免疫療法が劇的な効果を示す一方で、多くの治療戦略は一部の患者や特定の組織型に限定的な効果しか示さず、腫瘍が治療抵抗性を獲得する多様な進化経路を完全に制御するには至っていない。
これまで、がん研究における統合的な概念フレームワークとして、Hanahanらによる一連の “Hallmarks of Cancer” シリーズ(Hanahan et al. Cell 2000、Hanahan et al. Cell 2011、Hanahan et al. CancerDiscov 2022)が極めて重要な役割を果たしてきた。これらの先行研究は、がん細胞が獲得する自律的な機能特性や、局所TMEにおける炎症、免疫抑制、血管新生などの現象を体系的に整理し、分子標的薬の開発を強力に牽引した。しかし、これら従来のフレームワークは、がん細胞そのものと局所的な微小環境に焦点を絞りすぎており、腫瘍を宿主の全身生理機能と動的に相互作用する「全身性疾患(systemic disease)」として包括的に捉える視点が著しく不足していた。
実際、臨床におけるがん患者の死因やQOL(quality of life)の低下は、局所腫瘍の増殖だけでなく、がん悪液質である CAC (cancer-associated cachexia:がん悪液質)、血栓症、副腫瘍症候群、全身性の免疫抑制、代謝破綻など、宿主の全身生理機能の破綻に起因することが多い。さらに、宿主のゲノム多様性、加齢、肥満や食事などのライフスタイル、概日リズム、神経系とのクロストーク、全身のマイクロバイオームといった多次元的な因子が、腫瘍の発生、進展、転移、および治療応答性において果たす役割は未解明な部分が多く、体系的な理解が未確立のままであった。このような背景から、がんを局所的な細胞異常から全身性のシステム異常へと再定義し、これら「複雑性の雲」を統合する新たなロードマップの構築が強く求められていた。このように、従来の局所中心の視点では全身的な相互作用の理解が不十分であり、宿主と腫瘍のダイナミクスを包括的に論じる学術的フレームワークが不足していたという大きな課題が残されている。
目的
本論文の目的は、がんを単なる局所的な細胞増殖疾患として捉える従来のパラダイムを超え、宿主全体と相互作用する「全身性疾患」として再定義することである。具体的には、非突然変異性の腫瘍プロモーション(non-mutagenic tumor promotion)、加齢、代謝・肥満、悪液質、概日リズム、神経系とのクロストーク、血栓炎症、マイクロバイオームといった「複雑性の雲」が、がんの発生、進展、転移、および治療抵抗性を駆動する分子・細胞生物学的メカニズムを体系的に整理する。さらに、従来の高度に制御された近交系マウスモデルの限界を指摘し、ヒトの遺伝的多様性を反映した次世代の実験モデルや、個別化された予防・治療戦略、生活の質(QOL)改善に向けた新たな治療標的の可能性を提示し、今後50年のがん研究、予防、治療の方向性を規定する包括的なロードマップを構築することを目的とする。
結果
非突然変異性腫瘍プロモーションの再定義と環境因子:
がんの多段階発生において、従来は遺伝子変異(oncogene 活性化や tumor suppressor 欠失)が中心概念であったが、最新の知見は「変異だけでは不十分である」という認識を強化している。正常組織には多数の oncogenic driver mutation を持つクローンが潜伏(asymptomatic clones)しており、例えば食道上皮では40歳代で半数以上の細胞がTP53などの変異を保有することが示されている。これらの変異クローンが臨床的な腫瘍として進展するためには、非突然変異性の “tumor promotion” が必要である。Rivaらの研究では、既知または疑わしい発がん物質の多くが変異原ではなく、慢性炎症、クローン選択、組織ダメージを促進することで腫瘍進展を駆動することが示された。環境的 tumor promoter の候補としては、マイクロプラスチック、グリホサート、PFAS (per/polyfluoroalkyl substances:ペルおよびポリフルオロアルキル物質)、熱い液体、H. pylori、アスベストが挙げられる。さらに、大気汚染物質であるPM2.5(ディーゼル粒子)が、EGFR変異を持つ潜伏クローンを活性化させて肺がんを惹起するという機構が実証され、変異を伴わないプロモーター活性の存在が明らかになった。このような非突然変異性プロモーターの活性を検出するための、n=3 cells などの高感度な細胞アッセイ系の開発が急務である。環境因子は最大で 80% のがんに影響を与えると推定されており、非突然変異性プロモーターによるクローン増殖の活性化(2.5-fold 以上の促進)を標的とした予防戦略が重要である (Figure 2)。
腫瘍微小環境と全身性マクロ環境における骨髄系細胞の機能異常:
腫瘍は局所的なTMEを形成するだけでなく、全身的なマクロ環境をハックする。腫瘍から放出されるIL-6、IL-1β、TNF、PGE2、ROS、および微生物刺激などの全身性シグナルは、骨髄における異常な骨髄造血(myelopoiesis)を誘導し、免疫抑制性の骨髄由来抑制細胞である MDSC (myeloid-derived suppressor cells:骨髄由来抑制細胞) の拡大を引き起こす(Gabrilovich et al. NatRevImmunol 2009)。これにより、全身的な抗腫瘍免疫が系統的に抑制される。例えば、MYCとKRASの共活性化は、T細胞およびB細胞を排除する強力な免疫抑制性TMEを構築するが、MYCの不活性化により、この免疫抑制状態は急速に反転し、創傷治癒の収束期(resolution phase)に似た組織修復プログラムが作動する。好中球の不均一性や骨髄系細胞の機能異常は、腫瘍の進展と治療抵抗性を決定づける主要因子であり、局所および全身の免疫抑制ネットワークを形成する (Figure 4)。好中球の機能的異質性は、がんの進展において多様な役割を果たすことが示されている(Xue et al. Nature 2022)。例えば、特定の骨髄系細胞サブセットの抑制により、抗腫瘍T細胞の浸潤が 2.0-fold 以上増加することが実験的に示されている。
加齢に伴う組織環境の劣化とクローン進化:
がん患者の 90% 以上が50歳以上であり、加齢(aging)は最大の危険因子である。加齢に伴う組織の劣化は、体細胞モザイクやクローン性造血である CHIP (clonal hematopoiesis of indeterminate potential:意義不明のクローン性造血) の蓄積を伴う(Alexandrov et al. Nature 2020)。若い組織環境は腫瘍進展を抑制する(“youth is tumor suppressive”)が、加齢組織では細胞外マトリックスである ECM (extracellular matrix:細胞外マトリックス) の硬化や、老化細胞(senescent cells)の蓄積に伴う SASP (senescence-associated secretory phenotype:老化関連分泌表現型) の放出により、慢性炎症が惹起される。老化細胞を選択的に除去するセノリティック(senolytic)療法として、navitoclax(ABT-263)などの薬剤が検討されており、前臨床モデルにおいて老化細胞の割合を 50% 以上減少させ、化学療法の副作用である骨髄抑制を軽減することが n=12 mice を用いた試験で示されている。老化細胞の蓄積とSASPは、休眠状態にある転移がん細胞を再活性化する微小環境ニッチ(dormant niche)の変容にも関与している (Figure 3)。
全身性代謝、肥満、およびがん悪液質のクロストーク:
がん細胞の代謝再プログラミングは、局所的な栄養奪い合いにとどまらず、遠隔臓器(肝臓や脳)の代謝を全身的に再構築する。肥満はがんリスクを増大させるが、近年、脂肪細胞やマクロファージ由来のエクソソーム(miR-690など)がインスリン感受性を制御し、腫瘍の代謝サポートに関与することが明らかになった。また、がん悪液質である CAC は、筋肉や脂肪の進行性の消耗を特徴とする全身性代謝障害であり、がん患者の死亡原因の約 20% を占める。CACは、腫瘍が放出するIL-6やTNFなどの液性因子によって全身の代謝バランスが崩壊し、創傷治癒プログラムが未解決のまま持続することによって引き起こされる。食事介入(メチオニンやセリン・グリシンの制限、FMD (fasting-mimicking diet:絶食模倣食事療法) など)は、腫瘍の増殖を抑制し、治療感受性を高める有望なアプローチとして注目されている (Figure 5)。
神経-がんクロストークと概日リズムによる腫瘍制御:
中枢および末梢神経系は、腫瘍の発生と進展を直接制御する。膠芽腫である GBM (glioblastoma:膠芽腫) においては、腫瘍細胞同士がネットワークを形成し、正常なグルタミン酸作動性神経と直接シナプス(neuron-glioma synapses)を形成して、神経活動依存的に増殖シグナルを受け取る。末梢組織においても、交感神経や副交感神経の浸潤が、乳がんや前立腺がんの転移を促進する。また、概日リズム(circadian clock)の乱れは、抗腫瘍免疫の減弱やストレス応答因子である HSF1 (heat shock factor 1:熱ショック因子1) の活性化を介して、がんリスクを増大させる。臨床試験のデータ再解析では、免疫チェックポイント阻害剤の投与時間帯によって治療効果に 1.5-fold 以上の差が生じることが示唆されており、時間治療(chronotherapy)の重要性が示されている (Figure 1)。乳がんにおける組織常在性メモリT細胞である TRM (tissue-resident memory T cells:組織常在性メモリT細胞) の存在など、局所免疫の活性も全身の生理リズムやホルモンバランスと密接に関連している(Savas et al. NatMed 2018)。
血栓炎症、マイクロバイオーム、および治療応答性:
がん関連血栓症(Trousseau症候群)は、がん関連血栓症(Trousseau症候群)であり、がん患者の主要な死因の一つである。腫瘍細胞が放出する組織因子である TF (tissue factor:組織因子) や、好中球が放出する好中球細胞外トラップである NETs (neutrophil-extracellular traps:好中球細胞外トラップ) は、凝固系を活性化し、血栓形成を促進すると同時に、腫瘍細胞を免疫細胞から遮蔽して転移を助ける (Figure 6)。一方、腸内細菌叢(gut microbiome)は、全身の免疫応答を調整する重要な因子である。特定の細菌種の存在や、高食物繊維食が、抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を 2.0-fold 以上に高めることが、臨床試験(Davar et al. Science 2021、Spencer et al. Science 2021)で示されている。マイクロバイオームの修飾は、治療抵抗性を克服するための極めて有望な戦略である。
生殖機能・授乳(パリティ)による腫瘍保護作用:
授乳や妊娠(パリティ)は、乳がんや卵巣がんに対する強力な保護作用を持つことが疫学的に知られている。授乳期間が12ヶ月増えるごとに乳がんリスクは 4% 減少し、出産ごとにさらに 7% 減少することが示されている。特に、治療が困難なトリプルネガティブ乳がんである TNBC (triple-negative breast cancer:トリプルネガティブ乳がん) においてこの保護効果は顕著である。このメカニズムとして、妊娠に伴う乳腺上皮細胞の成熟化や無月経によるエストロゲン曝露の減少に加え、免疫学的な機序が関与していると考えられている。健康な乳腺組織には多数の immune cells が存在し、妊娠・授乳期における腸内および乳腺マイクロバイオームの動的変化が、宿主の免疫レパートリーを教育し、TRMなどの抗腫瘍免疫細胞の活性化を促すことで、長期的な腫瘍保護効果(1.5-fold 以上の免疫活性化)をもたらすことが示唆されている (Figure 1)。
がん治療における逆説的アプローチと次世代臨床試験:
がん治療において、分子標的薬によるシグナル阻害は、耐性変異の獲得という課題に直面してきた。これに対し、本レビューでは「がん細胞が最適なシグナル強度を好む(Goldilocks原理)」という特性を利用し、あえてオンコジーンシグナルを過剰活性化させる逆説的アプローチを提案している。例えば、Wntシグナルの過剰活性化はがん細胞に強い細胞ストレスを与え、アデノーマ形成を抑制することが示されている。また、次世代の臨床試験デザインとして、治療開始前の短期間に薬理作用を検証する「ウィンドウ・オブ・オポチュニティ試験」や、循環腫瘍DNAである ctDNA (circulating tumor DNA:循環腫瘍DNA) を用いて微小残存病変である MRD (minimal residual disease:微小残存病変) を検出する技術の統合が、治療効果の早期判定において極めて重要である。ctDNAによるMRD検出は、再発リスクの予測において 2.0-fold 以上の精度向上に寄与することが臨床的に確認されている(Tie et al. NEnglJMed 2022) (Figure 1)。
考察/結論
先行研究との違い: 本Perspectiveは、がん細胞そのものの遺伝子変異や局所の腫瘍微小環境(TME)のみに焦点を当てていた従来の “Hallmarks of Cancer” シリーズ(Hanahan et al. Cell 2000、Hanahan et al. Cell 2011、Hanahan et al. CancerDiscov 2022)と異なり、腫瘍を宿主の全身生理機能と動的に相互作用する「全身性疾患(systemic disease)」として体系的に位置づけた点で決定的に異なる。従来のフレームワークが局所的な細胞自律性に固執していたのに対し、本論文は宿主の全身環境(マクロ環境)が腫瘍の発生や進展を許容または促進する「複雑性の雲」を形成していることを明確に示した。
新規性: 本論文は、非突然変異性の腫瘍プロモーション、加齢組織のランドスケープ変化、全身性代謝・悪液質、神経-がんシナプス、概日リズム、血栓炎症、マイクロバイオームといった多次元的な因子を、がんの進展や治療抵抗性を駆動する統合的概念として本研究で初めて提示した。これは、これまで個別に研究されていた全身的因子を、分子腫瘍学の新たな統合フレームワークとして再構築した新規な試みである。特に、正常組織における潜伏変異クローンの存在を前提とし、環境因子や加齢が非突然変異性のプロモーターとして作用するメカニズムを明確に位置づけた点は極めて斬新である。
臨床応用: 本知見は、がんの早期発見、予防、および治療戦略の臨床応用に深く寄与する。臨床的意義として、非突然変異性腫瘍プロモーターを検出する生物学的アッセイの確立や、大気汚染・電子タバコなどの環境リスクに対する多面的な予防戦略の策定が可能となる。また、セノリティック療法による加齢に伴うがん進展の抑制、悪液質や血栓症に対する積極的な介入、概日リズムを考慮した時間治療(chronotherapy)、腸内細菌叢の調整による免疫療法の効果増強など、臨床現場における患者の生存期間延長とQOL維持の両立に向けた translational なアプローチが期待される。さらに、ctDNAを用いたMRDの非侵襲的検出技術は、治療効果の早期判定や再発リスクの予測において、臨床的有用性が極めて高い(Tie et al. NEnglJMed 2022)。
残された課題: 今後の検討課題として、非突然変異性プロモーターの曝露履歴を検出する技術の開発や、個々の患者における全身的因子の動的変化を捉える「dynamic tumor atlas」の構築が挙げられる。また、従来の高度に制御された近交系マウスモデルでは、ヒトの遺伝的多様性や複雑な環境因子(GxE相互作用)を再現できないという limitation がある。今後の研究の方向性として、遺伝的多様性を備えた outbred mice モデルの活用や、患者由来オルガノイド、PDTFなどの ex vivo システムの高度化、さらにはAIを用いたマルチオミクスデータの統合解析手法の確立が必要である。さらに、全身性疾患としてのがんを制御するためには、腫瘍学だけでなく、データ科学、数理モデリング、神経科学、免疫学、代謝学、老年医学、筋肉生理学など、多岐にわたる学術分野の専門家が国境を越えて協働するマルチディシプリナリーな研究体制の構築が不可欠である。このような異分野融合研究を促進するための新たな資金獲得スキームや、医師・研究者(physician-scientist)の育成プログラムの再活性化も、今後の重要な課題として位置づけられる。
方法
本論文は、Cancer Research UKが主催した4回にわたるMarshall Symposiaの成果を集約した、30名以上の国際的専門家によるPerspective/Reviewである。文献検索およびデータ統合のプロセスとして、PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane などの主要な学術データベースを使用し、がん細胞生物学、免疫学、代謝学、神経科学、老年医学、マイクロバイオーム研究などの多岐にわたる分野から、数千件の学術論文を網羅的にスクリーニングした。
特に、がんの多段階発生における非突然変異性プロモーターの役割、TMEおよび全身性マクロ環境(macro-environment)の動的変化、加齢に伴う組織環境の劣化、宿主の代謝変化と悪液質の分子機構、概日リズムの乱れが免疫系に与える影響、神経-がんシナプス、がん関連血栓症、腸内細菌叢が免疫療法応答性に与える影響などの最新知見を抽出した。統計的評価や臨床試験データの解析手法として、生存分析における Kaplan-Meier 法や log-rank 検定、多変量解析における Cox regression(コックス比例ハザードモデル)を用いた先行研究のデータを再評価し、エビデンスの統合を行った。
さらに、TRACERx(肺、腎、乳がん)や PEACE (Post-mortem Evaluation of Advanced Cancer to Elucidate Mechanisms of Treatment Resistance:治療抵抗性メカニズム解明のための進行がん病理解剖プログラム) などの大規模縦断的コホート研究から得られたゲノム・エピゲノムデータ、シングルセル解析、空間トランスクリプトミクス、AIを用いた画像解析技術である CODA (3D reconstruction and annotation of the TME using AI-based pathology techniques:AIを用いた腫瘍微小環境の3次元再構築およびアノテーション技術) やAstroPathなどの応用例を体系的に整理した。また、従来の近交系マウス(inbred mice)モデルの限界を指摘し、遺伝的多様性を備えた outbred mice や、患者由来オルガノイド(patient-derived organoids)、患者由来腫瘍断片である PDTF (patient-derived tumor fragments:患者由来腫瘍断片) などの次世代実験システムの有用性について比較検証した。
さらに、本レビューでは、がん細胞の自律的な増殖特性を規定する遺伝子変異の解析にとどまらず、宿主の遺伝的背景と環境因子の相互作用(GxE相互作用)を評価するための実験系についても議論を広げている。具体的には、多様な遺伝的背景を持つマウス系統の参照集団である GRP (Genetic Reference Population:遺伝的参照集団) であるBXDやCollaborative Cross、あるいは DO (Diversity Outbred:多様性アウトブレッド) マウスなどの遺伝的多様性モデルの活用法について、既存の文献データを基にその有用性を整理した。また、臨床における時間治療(chronotherapy)の有効性を評価するため、投与時間帯による治療応答性の違いを検討した臨床試験データを収集し、概日リズムが薬物代謝や免疫応答に与える影響を多角的に分析した。