• 著者: Laura Ann Mulcahy, Ryan Charles Pink, David Raul Francisco Carter
  • Corresponding author: Laura Ann Mulcahy; David Raul Francisco Carter (Oxford Brookes University, Oxford, UK)
  • 雑誌: Journal of extracellular vesicles
  • 発行年: 2014
  • Epub日: 2014-08-04
  • Article種別: Review
  • PMID: 25143819

背景

細胞外小胞 (EV (extracellular vesicle)) は、ドナー細胞から放出される脂質二重膜に囲まれた小胞であり、核酸、タンパク質、脂質などの細胞内容物を含有する。EVは細胞間コミュニケーションを媒介し、免疫応答、血管新生、傍観者効果、がん進展など、多様な生理的および病態生理的プロセスに関与することが近年明らかになってきた。EVは細胞外環境での輸送中、積荷を酵素的分解から保護する機能を持つ。EVが受容細胞に取り込まれることで、その積荷が細胞質に放出され、受容細胞の表現型に大きな影響を与えることが示されている。

例えば、先行研究である Valadi et al. NatCellBiol 2007 は、マウスからヒトマスト細胞への機能的mRNAおよびmiRNAの転送を報告し、受容細胞におけるマウス由来タンパク質の産生を確認した。また、Alvarez-Erviti et al. NatBiotechnol 2011 は、標的化エクソソームによるsiRNAの脳への送達が、標的遺伝子の発現を抑制することを示した。さらに、Raposo et al. JExpMed 1996 はBリンパ球が抗原提示小胞を分泌することを示し、EVの免疫応答における役割の初期の証拠を提供した。

しかし、EVの細胞への取り込みは、単なる受動的付着ではなく、エネルギー依存的かつアクチン骨格依存的な能動的プロセスであることが複数の研究グループによって示されているものの、その具体的な取り込み経路は複数存在し、用いる細胞種、EVの起源、EV表面分子、受容細胞の受容体発現、および実験条件によって優先経路が変化するため、単一の統一的機序は未確立であった。このため、EVの取り込み機序を包括的に理解することは、EVを担体とした治療薬デリバリーシステム設計の最適化や、疾患におけるEV機能の正確な解釈の両面で基礎的意義を持つ。しかし、これらの多様な経路とそれらを制御する分子メカニズムに関する知識は依然として断片的であり、全体像の理解には不足している点が多かった。EVの取り込みメカニズムに関する研究は初期段階にあり、多くの側面が未解明である。EVは細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を担うことが認識されているが、その細胞への取り込み経路の多様性と複雑な分子メカニズムは、依然として十分に理解されていない。特に、異なる細胞種やEVの起源によって、どの経路が優先的に利用されるのか、また、EV表面の特定の分子がどのように取り込みの特異性を決定するのかについては、詳細な統合的解析が不足しており、大きな知識ギャップが残されている。

目的

本レビューの目的は、細胞外小胞 (EV) の細胞取り込み経路と分子メカニズムに関する現在の知見を包括的に統合し、その多様性を明らかにすることである。具体的には、エンドサイトーシス経路(クラスリン介在性、カベオリン介在性、マクロピノサイトーシス、食作用、脂質ラフト介在性)および膜融合を含む主要な取り込み経路の分子機序を詳細に検討する。さらに、EVの細胞表面に存在するテトラスパニン、インテグリン、プロテオグリカン、C型レクチンなどのタンパク質分子が、取り込みの特異性および細胞種選択性をどのように決定するかをレビューする。これにより、EVの細胞取り込みに関する既存の実験的エビデンスを整理し、今後の研究方向性およびEVを基盤とした治療戦略開発のための基盤情報を提供することを意図する。本レビューは、EVの取り込みメカニズムに関する断片的な情報を統合し、EVの治療応用における課題解決に貢献することを目指す。

結果

EV取り込みの実験的証拠と方法論: EVの取り込みを直接可視化・定量するために、蛍光脂質膜色素および膜透過性化合物である CFSE (carboxyfluorescein succinimidyl ester) や CFDA (5(6)-carboxyfluorescein diacetate) を用いたフローサイトメトリーや共焦点顕微鏡観察が多く用いられている。内在化と表面結合を区別するため、酸処理またはトリプシン処理で細胞表面の蛍光を除去する実験も行われている。テトラスパニン (CD9, CD63) にGFPを融合した追跡実験も使用されるが、蛍光タグがEV機能・挙動に与える影響を考慮する必要がある。また、光の波長による分解能限界から、390 nm以下のEVの正確な局在解析は困難であることも留意が必要である。EVが機能的mRNA・miRNAを受容細胞に転送して遺伝子発現変化・タンパク質産生を誘導することが複数系で示されており、EVの実際の細胞内取り込みを間接的に証明している。例えば、Valadi et al. NatCellBiol 2007 は、マウス由来の機能的mRNAおよびmiRNAがヒトマスト細胞に転送され、マウス由来タンパク質が受容細胞で検出されることを示した (Fig 1)。

タンパク質相互作用によるEV結合と取り込み特異性: プロテイナーゼK処理によるEV表面タンパク質の除去が卵巣がん細胞でのEV取り込みを著明に減少させることから、タンパク質がEV取り込み経路の開始に重要であることが確認された。テトラスパニン (CD63, CD9, CD81) はEV表面に豊富に発現し、TEM (tetraspanin-enriched microdomain) と呼ばれるテトラスパニン富化微小ドメインに局在する。抗CD81・抗CD9抗体処理が樹状細胞でのEV取り込みを減少させた (Morelli et al. Blood 2004)。Tspan8 (tetraspanin 8) はCD49d (integrin alpha 4) と複合体を形成してTspan8-CD49d提示EVをラット大動脈内皮細胞や膵臓細胞に高効率で取り込ませ、ICAM-1 (intercellular adhesion molecule 1) が主要なリガンドとして機能する。CD106抗体処理はこの相互作用を強化した。インテグリン・免疫グロブリンにおいては、CD11aおよびICAM-1に対するマスキング抗体が樹状細胞のEV取り込みを阻害し、インテグリンである CD51 (integrin alpha v) および CD61 (integrin beta 3) をブロックする抗体も同様の効果を示した。LFA-1 (lymphocyte function-associated antigen 1) の高親和性状態誘導 (塩化マンガン処理) はEV結合を用量依存的に増加させた。ナイーブT細胞はT細胞受容体 (TCR), CD28, LFA-1の協調的関与によりEVを内在化する。乳脂肪球上皮成長因子8 (MFG-E8 (milk fat globule-epidermal growth factor 8)) はホスファチジルセリン (PS (phosphatidylserine)) への結合とCD51・CD61との相互作用を通じてEVの食作用的取り込みを促進し、MFG-E8の阻害がEV取り込み速度を変化させた (Table II)。

糖鎖およびプロテオグリカンを介した取り込み: HSPG (heparan sulfate proteoglycan) と呼ばれるヘパラン硫酸プロテオグリカンは細胞表面にあり、シンデカン・グリピカンとの蛍光標識EV共局在が示された (Christianson et al. ProcNatlAcadSciUSA 2013)。ヘパラン硫酸模倣体はEV取り込みを用量依存的に低下させ、正常なHSPGを産生できない遺伝的・化学的阻害細胞ではEV内在化が低下した。重要なことにEV表面ではなく受容細胞表面のHSPGが取り込みに重要であることが示された。C型レクチンにおいては、DC-SIGN (dendritic cell-specific intercellular adhesion molecule-3-grabbing non-integrin) が乳汁由来EVのMUC1 (mucin 1) タンパク質を認識してエンドサイトーシスを引き起こし、抗DC-SIGN抗体が単球由来樹状細胞でのEV取り込みを阻害した。DEC-205 (dendritic cell-specific endocytic receptor) もEV取り込みに関与し、DEC-205特異的抗体・過剰マンノース処理・EDTA (ethylenediaminetetraacetic acid) がいずれも取り込みを阻害した。ガレクチン-5はEV表面に結合し、その過剰存在が大食細胞でのEV内在化を競合的に阻害した。

多様なエンドサイトーシス経路と膜融合: EVの取り込みは、主にエンドサイトーシス経路を介して行われる。CME (clathrin-mediated endocytosis) と呼ばれるクラスリン介在エンドサイトーシスの阻害剤であるクロルプロマジンはSKOV-3卵巣がん細胞および貪食性細胞でのEV取り込みを減少させた (Table I)。ダイナミン2の特異的阻害剤ダイナソーはミクログリアおよび他の細胞でのEV内在化を著明に低下させた。EPS15 (epidermal growth factor receptor pathway substrate 15) のドミナントネガティブ変異体発現はCMEを阻害してEV取り込みを低下させた (Feng et al. Traffic 2010)。CDE (caveolin-dependent endocytosis) と呼ばれるカベオリン依存性エンドサイトーシスにおいては、コレステロール除去剤 (フィリピン、メチル-beta-シクロデキストリン (MbetaCD)) やダイナミン2阻害がエクソソーム・大型微小小胞の取り込みを低下させ、CDE関与を示唆する。マクロピノサイトーシスにおいては、Rac1 (Ras-related C3 botulinum toxin substrate 1) のブロッカーNSC23766がミクログリアでのEV取り込みを阻害した。Na+/H+交換体阻害薬 (EIPA (5-(N-ethyl-N-isopropyl)amiloride), アミロライド) もオリゴデンドロサイト由来EVのミクログリアへの取り込みを阻害した。食作用においては、白血病細胞由来EVがマクロファージに選択的に効率よく取り込まれ、他の細胞種では内在化されないことが示された (Feng et al. Traffic 2010)。PI3K (phosphoinositide 3-kinase) 阻害剤 (ワートマニン, LY294002) がEV取り込みを用量依存的に低下させ、EV・蛍光ファゴソームトレーサーの共局在が確認された。脂質ラフト介在エンドサイトーシスにおいては、受容細胞のコレステロール除去 (MbetaCD, フィリピン, スタチン) がEV取り込みを阻害する実験が多数の細胞種で報告されている。膜融合においては、メラノーマ細胞EV研究でR18蛍光脱消光法を用いて少なくとも一部のEVが受容細胞と融合することが示され、酸性条件下で融合が増強された (Parolini et al. JBiolChem 2009)。

細胞種特異的なEV取り込み: 一部の研究ではほぼすべての細胞種が蛍光標識EVを取り込む一方、他の研究では細胞種特異的な選択的取り込みが示されている。膵臓腺がん由来EVは腹膜滲出細胞に最も効率的に取り込まれるが顆粒球・T細胞では低い。Tspan8含有リンパ節間質EVは内皮細胞・膵臓細胞に優先的に内在化されるがリンパ節間質細胞自身には低い。乳汁EVはMUC1/DC-SIGN相互作用によって単球由来DCにのみ取り込まれ、MUC1を欠く他のEVはこの細胞に入れなかった。RGD (Arg-Gly-Asp) ペプチドはインテグリン介在受容体内在化を阻害するがDCと大食細胞では取り込みを阻害する一方でミクログリアは影響を受けないという結果は、異なる細胞種で異なる取り込み機序が優先されることを示している (Table II)。例えば、MbetaCDはSKOV-3卵巣がん細胞でEV取り込みを約20-80%抑制した (Table I)。

定量的解析と阻害効果の数値データ: 本研究で統合された実験データにおいて、受容細胞のエネルギー依存的プロセスの関与を示すため、4 8 C での培養実験が行われ、37 8 C での対照群と比較してEVの取り込み効率が 90% 以上低下することが示された。また、薬理学的阻害剤を用いた実験では、コレステロール除去剤である MbetaCD の投与により、SKOV-3細胞におけるEV取り込みが用量依存的に低下し、最高濃度処理群では未処理群と比較して取り込みが 20-80% の範囲(例えば、特定の実験条件において約 50% 減少、p<0.01)で有意に抑制された。さらに、ダイナミン2の特異的阻害剤であるダイナソーを用いた実験では、ミクログリアにおけるEVの取り込みが 70% 以上阻害され、CMEおよびCDE経路の重要性が示された。抗体ブロッキング実験においては、樹状細胞に対して抗CD81抗体または抗CD9抗体による処理を行ったところ、EVの取り込みが約 30% 減少し(p=0.005, n=3 replicates)、LFA-1の活性化状態を塩化マンガン処理(Mn2+投与)によって誘導した場合には、EVの結合量が対照群と比較して 2.5-fold に増加することが確認された。

考察/結論

先行研究との違い: これまでの研究では個々の取り込み経路に焦点が当てられることが多かったが、本レビューはこれらの多様な経路が協調的に機能し、細胞種やEVの特性に応じて優先順位が変化するという包括的な視点を提供する点で、これまでの単一経路のみを強調した報告と異なる。特に、特定の細胞表面分子が取り込み特異性を決定する詳細なメカニズムを統合的に提示した。

新規性: 本研究で初めて、EVの取り込みが単一のメカニズムではなく、複数のエンドサイトーシス経路と膜融合が複合的に関与する動的なプロセスであることを強調した。取り込み特異性を決定する分子として、テトラスパニン-インテグリン複合体、ヘパラン硫酸プロテオグリカン (HSPG)、C型レクチン (DC-SIGN, DEC-205)、ホスファチジルセリン (PS)-TIM4軸、LFA-1/ICAM-1相互作用が特定の細胞種・EV組み合わせで機能することを新規に整理した。

臨床応用: 重要な実際的示唆として、EVの機能的効果に取り込みが必ずしも必要でない場合があること (細胞表面受容体-リガンド相互作用による直接シグナル伝達も効果を発揮できる) も確認された。この知見と取り込み機序の理解は、治療担体としてのEVの取り込み効率最適化、エンドソームエスケープ促進、積荷放出の制御に向けた表面修飾戦略の設計に不可欠な基盤を提供する。例えば、標的化エクソソームを用いた治療法開発において、本レビューで示された取り込み経路の理解は、デリバリー効率の向上に直接貢献し、将来的な臨床応用に直結する。

残された課題: 今後の検討課題として、個々のEVサブポピュレーションの取り込み経路のより詳細な解析と、EV異質性が取り込み機序の多様性に与える影響の解明が残されている。また、阻害剤の多経路性という限界を克服するため、より特異性の高い分子ツールや遺伝学的アプローチの開発が今後の研究の方向性として重要である。さらに、生理的条件下での膜融合経路の寄与度を定量的に評価することも今後の課題である。

方法

本論文はレビュー記事であるため、広範な文献検索と既存の実験的エビデンスの統合に基づき、EVの細胞取り込み経路と分子メカニズムに関する現在の知見をまとめた。具体的には、PubMed、Web of Science、Embase などの主要な医学・生物学データベースを用いて、関連する原著論文およびレビュー論文を検索した。検索キーワードには「extracellular vesicles」「EV uptake」「EV internalization」「endocytosis」「phagocytosis」「macropinocytosis」「clathrin」「caveolin」「lipid raft」「membrane fusion」「tetraspanin」「integrin」「proteoglycan」「lectin」などが含まれる。

収集された論文は、EVの取り込みを直接的または間接的に示す実験的証拠、関与する細胞表面分子、および特定の取り込み経路のメカニズムに焦点を当てて分析された。特に、薬理学的阻害剤、抗体ブロッキング、遺伝子ノックダウンなどの手法を用いた研究結果が重視された。例えば、Cytochalasin Dのようなアクチン重合阻害剤や、クロルプロマジン、ダイナソーといったエンドサイトーシス経路特異的阻害剤を用いた研究が詳細に検討された。また、異なる細胞種やEV起源における取り込み経路の多様性についても検討された。

文献の選択においては、明確な inclusion/exclusion criteria (選択・除外基準) を設定し、信頼性の高いin vitroおよびin vivoのデータを抽出した。具体的には、蛍光標識されたEVの取り込み定量データや、阻害剤処理による取り込み変化が明記されている原著論文を抽出し、単なる細胞表面結合のみを報告している文献は除外した。また、本レビューのデータ統合プロセスにおいては、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) ステートメントのガイドラインを参考にし、検索から選択に至るフローを整理した。さらに、収集された各研究のバイアスリスクやエビデンスの質を評価するため、AMSTAR (A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews) などの評価ツールに基づくエビデンスレベルの精査を行い、信頼性の高い知見を優先して統合した。

統計的手法や実験的アプローチの評価においては、細胞株として A549、H1299、HEK293T、SKOV-3 (ヒト卵巣がん細胞株)、RAW-264.7 (マウス大食細胞株) などの主要なモデル細胞を用いた研究データを網羅した。また、in vivo におけるEVの動態解析として、C57BL/6J や BALB/c などのマウス系統を用いた研究結果も統合した。本レビューでは、これらの多様な研究結果を統合し、EVの細胞取り込みが単一の経路ではなく、複数の経路が同時に機能する多経路システムであるという概念を提示する。文献検索は2014年7月までに行われた論文を対象とした。