• 著者: Garth Lawrence Burn, Alessandro Foti, Gerben Marsman, Dhiren Ferise Patel, Arturo Zychlinsky
  • Corresponding author: Arturo Zychlinsky (Department of Cellular Microbiology, Max Planck Institute for Infection Biology, Berlin, Germany; zychlinsky@mpiib-berlin.mpg.de)
  • 雑誌: Immunity
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-07-13
  • Article種別: Review
  • PMID: 34260886

背景

好中球は末梢血白血球の50-70%を占める最多の免疫細胞であり、自然免疫の第一応答者として感染防御に中心的役割を果たす。従来、好中球は「短寿命・使い捨て・単純な貪食細胞」と捉えられてきたが、2004年のNETs (Neutrophil Extracellular Traps) 発見以来、その生物学は大きく書き換えられている。NETsの発見に加え、specialized pro-resolving mediators (SPM) 産生、樹状細胞 (DC) やT細胞との免疫制御的相互作用、さらには造血ニッチとのクロストークなど、好中球の多様な機能が次々と解明されてきた。好中球の血中半減期は12-24時間と短く、骨髄から常時補充されるが、組織内では寿命が延長する可能性も示唆されている。好中球の抗菌機構は骨髄での分化時に事前に合成されており、展開後は転写・翻訳への依存度が低い「武装状態で戦場派遣される兵士」として機能するという概念が提唱されている。

しかし、好中球の多面的な機能と、それが宿主の恒常性維持に果たす役割を統合的に理解するための包括的なレビューは不足していた。特に、感染防御以外の文脈、例えば炎症の収束や他免疫細胞との複雑な相互作用、さらにはがんにおける二面性といった側面が、断片的にしか理解されていなかった点が課題として残されている。例えば、好中球ががんの転移を促進する機構については、Albrengues et al. Science 2018 がNETsによる休眠がん細胞の覚醒を報告しているが、その詳細な分子メカニズムや臨床的意義は依然として未解明な部分が多い。また、好中球が他の免疫細胞、特にT細胞やB細胞の応答をどのように調節するのかについても、Teijeira et al. Immunity 2020 がNETsによるCTL機能抑制を示唆しているものの、その全容解明には至っていない。さらに、好中球の多様な機能が宿主恒常性維持に果たす役割を統合的に示したレビューは不足しており、これらの知識ギャップを埋めることが求められていた。本レビューは、NETsの発見者であるZychlinskyグループ (Max Planck Institute for Infection Biology, Berlin) が、これらの現代的知見を統合し、好中球生物学の包括的な理解を提供することを目的としている。これにより、好中球の役割に関する知識ギャップを埋め、新たな治療標的の探索に貢献することが期待される。

目的

本レビューの目的は、好中球の接着・遊走、主要な殺菌機構 (食作用、脱顆粒、NET形成)、脂質メディエーターおよび免疫制御機能、さらには造血と寿命に関する現代的知見を網羅的に概説することである。これにより、感染防御と宿主恒常性維持における好中球の多面的な役割を統合的に提示する。特に、好中球が単なるエフェクター細胞ではなく、免疫応答全体をオーケストレーションする中枢的な調節因子としての役割を持つことを強調する。また、好中球のエネルギー代謝におけるグルコースと酸素の二重の役割、およびがんにおけるその促進的・抑制的な二面性についても深く掘り下げる。本レビューは、好中球が「武装状態で戦場派遣される兵士」であり、展開後の転写・翻訳依存度が低いという概念に基づき、その多様な機能が宿主恒常性維持に果たす役割を統合的に示すことを目指す。自己免疫疾患 (例: 全身性エリテマトーデス、関節リウマチ) やアテローム性動脈硬化症など、慢性疾患における好中球の役割については、最近の専門的なレビューが存在するため、本レビューのスコープ外と明確にしている。

結果

接着・遊走カスケード:多様な機序と組織特異性: 好中球の血管外遊走は、セレクチン介在性ローリング、内皮表面ケモカインのサンプリングによるインテグリン高親和性構造への変換と細胞停止、好中球のクローリングと内皮サーベイランス、そして傍細胞型または経細胞型の経内皮遊走という4段階に分類される。LFA-1/ICAM-1相互作用が血流下での安定接着の主要機構であるが、肝臓や肺では、組織特異的な接着受容体であるdipeptidase-1 (DPEP1) がセレクチン・インテグリン非依存的に好中球を動員することが示されている (Choudhury et al. Cell 2019)。LTB4-BLT1軸は好中球の極性化とswarming (局所クラスター形成) を制御し、細胞移動にはアクチン重合力 (約1 piconewton/フィラメント) による膜前進と接着・脱接着サイクルが用いられる。好中球は組織内で、グリップ・プル型以外に、接着受容体不要なプッシュ・スクイーズ型、および「遊泳」型の3種類の移動様式を用いる。組織内でのself-generated chemotaxis (近傍のケモカインを分解することで勾配サンプリングを可能にする機構) は、定常状態の濃度飽和による脱感作を克服する巧妙なメカニズムである。また、好中球はEphrin type A receptor 2 (EphA2) を介してCandida albicansをオプソニン非依存的に感知するなど、多様なパターン認識受容体 (PRR) を保有する。組織到達後には逆行性経内皮遊走 (reverse transmigration) が起こり、エフェクター機能を終えた好中球が血流に再参入し、遠隔部位の炎症に関与しうるが、その分子機序は未解明である。

殺菌機構の三本柱:食作用・脱顆粒・NET形成: (i) 食作用: FcγR/CR3経路によるオプソニン依存的な微生物取り込みでファゴソームを形成する。顆粒がファゴソーム膜と融合し、ミエロペルオキシダーゼ (MPO) や好中球エラスターゼ (NE)、ディフェンシンなどを内腔に分泌する。ファゴソーム内でNADPH oxidase複合体がスーパーオキシドを産生し (intraphagosomal superoxide)、MPOが次亜塩素酸 (HOCl) を生成して殺菌する。好中球の食作用による殺菌能は他のプロフェッショナル貪食細胞の10-100倍以上であり、微生物に利用されるニッチとなることは稀である。(ii) 脱顆粒: アズール顆粒 (MPO、NE、カテプシンG、プロテイナーゼ3、ディフェンシンなど)、特異顆粒 (ラクトフェリン、MMP-8/9など)、ゼラチナーゼ顆粒の段階的放出が細胞外空間を殺菌するが、collateral tissue damageをもたらす可能性がある。NE含有エクソソームが細胞外マトリックスを分解・再形成する役割も示されている。(iii) NET形成: クロマチンを脱凝縮してエフェクタータンパクで装飾し、細胞外に放出する。元来は細菌捕捉・殺傷戦略として報告されたが、自己免疫、凝固、がんでの機能も次々と解明されている (詳細は後述)。好中球の殺菌能は他の免疫細胞と比較して際立って高く、ほぼすべての病原微生物を迅速に認識・排除できる (Figure 2)。

エネルギー代謝:グルコースと酸素の二重役割: 好中球はミトコンドリアが極めて少なく、ATPの主要産生経路は酸素非依存的な嫌気性解糖系であり、低酸素環境での活動を可能にする。これは酸素をATP産生でなくNADPH oxidaseによるスーパーオキシド産生に優先的に使用するための適応と考えられる (Reiss and Roos J Clin Invest 1978)。NADPH再生にはペントースリン酸経路 (oxPPP、G6PDH (glucose 6-phosphate dehydrogenase) 律速) が不可欠であり、G6PDH欠損者ではROS・NET産生が障害されて細菌感染リスクが上昇する (Siler et al. J Allergy Clin Immunol 2017)。G6PDH欠損患者における感染症感受性の増加はp<0.001で認められる。好中球のみが糖新生 (gluconeogenesis) とグリコーゲン合成 (glycogenesis) の両方を行える唯一の骨髄系細胞であり、低グルコース・低酸素環境でもATP産生を維持できる (Sadiku et al. Cell Metab 2021)。高血糖 (正常酸素下) はNADPH oxidase、oxPPP、グルコース依存的にNET産生を誘導し、グルコース欠乏 (尿毒症ではGSK3βが過活性化してグルコース取り込みを阻害) はROS産生と殺菌能を障害する (Jawale et al. Sci Transl Med 2020)。HIF-1α・HIF-2αが炎症局所の低酸素下での好中球生存と機能 (アポトーシス遅延最大20時間、酸素非依存的殺菌能増強) を保護する。インビトロ実験が大気酸素分圧 (160 mmHg) 下で行われる一方、インビボの炎症組織は10 mmHg (肺胞は100 mmHg) と大きく異なるため、インビトロデータの解釈には注意が必要である (Sitkovsky and Lukashev Nat Rev Immunol 2005) (Figure 3)。

脂質メディエーターと炎症収束 (SPM産生): 好中球はアラキドン酸、DHA、EPA由来のpro-inflammatory eicosanoid (LTB4、PGE2) のみならず、炎症収束に重要なspecialized pro-resolving mediators (SPM) を産生する。SPMファミリーにはresolvins (E series:EPA由来、D series:DHA由来)、maresins (DHA由来)、protectins (DHA由来)、lipoxins (LXA4:アラキドン酸由来) が含まれる。これらのSPMは好中球の浸潤停止、マクロファージ efferocytosis (アポトーシス細胞の貪食) 促進、組織修復を誘導し、好中球自身が炎症の「off-switch」を提供する積極的なresolver機能を持つ (Serhan Nat 2014)。LTB4はBLT1を介して好中球のswarmingを誘導し、感染部位での集積を促進する重要なpro-inflammatory脂質メディエーターであり、一方でYersinia pestisによりLTB4産生が抑制されることが報告されている (Pulsifer et al. Infect Immun 2020)。

免疫制御:好中球は免疫応答の「指揮者 (conductor) 」: 好中球は単なるエフェクター細胞ではなく、免疫ネットワーク全体をオーケストレーションする中枢的レギュレーターとして機能する (Figure 1)。マクロファージへの作用として、カテリシジン (mCRAMP) を介してインフルエンザモデルで肺胞マクロファージのNLRP3インフラマソーム・IL-1β産生をプライミングする一方 (Peiro et al. Thorax 2018)、急性肝障害では好中球由来ROSがLy6C lo修復型単球への分化を促進する (Yang et al. Nat Commun 2019)。樹状細胞 (DC) への作用としては、DCの炎症部位・リンパ節へのリクルート促進、NETsによるCD11b+ DCの抗原取り込み増強 (Radermecker et al. Nat Immunol 2019)、アポトーシス好中球による単球→DC分化誘導 (EGF産生) が挙げられる (Lim et al. Nat Immunol 2020)。NETs/LL37複合体が形質細胞様樹状細胞 (pDC) を活性化してI型インターフェロン産生を誘導することも示されており (Lande et al. Sci Transl Med 2011)、全身性エリテマトーデス (SLE) などの自己免疫疾患の病態形成にも関与する。T細胞への作用として、ROS産生 (Aarts et al. Blood Adv 2019)、PD-L1発現 (Langereis et al. J Leukoc Biol 2017)、アルギナーゼ-1過剰発現、CD10発現を通じて細胞傷害性T細胞 (CTL) の機能を抑制する。好中球由来サイトカイン (IL-12など) がTh1/Th17分化を促進することもある。好中球は抗原をリンパ節に輸送し、MHC class I/IIを上方制御してT細胞に抗原提示しうるが、プロフェッショナルAPCとの比較での生物学的意義は未確認である (Vono et al. Blood 2017)。B細胞への作用として、BAFF・APRIL産生によるB細胞増殖・IgクラススイッチとIg多様化を促進する「B helper neutrophil」の存在が確認されている (Puga et al. Nat Immunol 2011)。好中球由来セリンプロテアーゼ (NE、PR3、CG) がIL-1α、IL-33、IL-36全亜型を切断して活性化し、ILC2動員とIL-6/IL-8産生を増幅する (Clancy et al. Cell Rep 2018)。TNFαをTACEとは独立してPR3が切断し、可溶化型TNFαのバイオアベイラビリティを調節することも報告されている (Armstrong et al. Clin Exp Immunol 2009)。

NET形成機構と多面的病態関与: NETsはクロマチン脱凝縮 (PAD4依存的ヒストンシトルリン化) →顆粒・細胞質エフェクタータンパクによるDNA装飾→細胞外放出で形成される (Figure 2)。NADPH oxidase依存経路 (suicidal NETosis:数時間要する) と非依存経路 (vital NETosis:短時間、生存好中球) が存在する。NETs上のシトルリン化ヒストンH3 (H3cit) が静脈血栓症の循環バイオマーカーとして機能し、予後価値を持つことが示されている (Mauracher et al. J Thromb Haemost 2018)。COVID-19ではNETマーカーが重症度・死亡率と相関し、NET含有微小血栓が剖検で確認された (Middleton et al. Blood 2020)。がん文脈では、NETs由来NE・カテプシンGがラミニン切断によって乳がん休眠細胞を覚醒させ、インテグリン結合を介した増殖・転移・生存シグナルを活性化する (Rayes et al. J Immunol 2020; Albrengues et al. Science 2018)。NETsは乳がん・大腸がんの肝転移を促進し (Hawes et al. Cancer Res 2015; Yang et al. Nature 2020)、CTLからがん細胞を保護し (Teijeira et al. Immunity 2020)、血栓形成も促進する (Demers and Wagner Semin Thromb Hemost 2014)。マクロファージ貪食後にファゴソームから細胞質へのNET DNAが移行してcGASを活性化し、I型インターフェロンを誘導する (Apel etal. Sci Signal 2021)。NETsに含まれるmiRNA (miRNA-142-3pなど) がマクロファージからのTNFα産生を促進することも報告されている (Linhares-Lacerda et al. Sci Rep 2020)。

造血と好中球寿命: G-CSF、GM-CSF、IL-6が骨髄でのgranulopoiesis (好中球産生) を駆動する。骨髄から成熟好中球が放出される際にCXCR4-CXCL12軸が骨髄貯留・放出のバランスを制御する (WHIM症候群ではCXCR4 gain-of-functionにより好中球が骨髄から出られず、plerixafor (CXCR4拮抗薬) で治療可能)。末梢血半減期は12-24時間と短いが、組織移行後は臓器特異的シグナルで寿命が延長する。CXCR4高発現の老化好中球が骨髄・肝・脾に帰還し、マクロファージによるefferocytosisで除去される。好中球は昼間により活発に組織へ遊走し、殺菌能も高まる概日リズム変動を示す (CXCL2によるcircadian regulation) (Adrover et al. Immunity 2019)。LDG (low-density granulocytes) は自己免疫疾患の循環中に認められる異質な好中球集団であり、未熟・部分的脱顆粒好中球を含む可能性があるが、疾患の原因か結果かは不明である (Sagiv et al. CellRep 2015)。

がんにおける好中球:多面的役割: 好中球はがんにおいて促進的および抑制的な二面性を持つ (Figure 4)。大腸がんでは好中球高数が良好予後と関連し (Governa et al. Clin Cancer Res 2017)、乳がんモデルでは好中球除去が病態進行を促進する (Granot et al. CancerCell 2011)。マクロファージが好中球をインターフェロンを介して活性化し、ケモカイン・サイトカイン産生を促してT細胞抗腫瘍免疫を活性化する (Hagerling et al. PNAS 2019)。好中球はROS・ATPにより直接がん細胞を殺傷可能である (Patel et al. Nat Immunol 2018)。逆に、好中球はTGFβ経路介在性の腫瘍転移促進 (Fridlender et al. CancerCell 2009)、CTL抑制 (Coffelt et al. Nature 2015)、LPS誘導性肺好中球浸潤による転移促進 (El Rayes et al. PNAS 2015) の役割も持つ。循環腫瘍細胞と結合した好中球は増殖能と転移能が高く (Szczerba et al. Nature 2019)、がん細胞に脂質を供給して増殖・転移を促進する (Li et al. Nat Immunol 2020)。c-MET阻害薬による好中球の腫瘍・リンパ節動員遮断がT細胞増殖を介して腫瘍排除につながるという間接的機序も存在する (Glodde et al. Immunity 2017)。

考察/結論

好中球は、単なる使い捨ての殺し屋ではなく、免疫応答全体を指揮する多面的な細胞であることが、現代の好中球生物学によって明確になった。感染防御だけでなく、SPM産生による炎症収束、他の免疫細胞ネットワークのオーケストレーション、さらには組織修復まで担う。本レビューは、好中球生物学の現代的理解を総括し、トランスレーショナルリサーチと治療標的開発の基盤を提供する。

先行研究との違い: これまでの好中球に関する研究は、その抗菌機能に焦点を当てることが多かったが、本レビューは、好中球が炎症の収束や免疫細胞間のクロストーク、がんにおける二面性といった、より複雑な役割を果たすことを統合的に示した点で、従来の理解と対照的である。特に、好中球が「武装状態で戦場派遣される兵士」であり、展開後の転写・翻訳依存度が低いという概念は、その多様な機能が宿主恒常性維持に果たす役割を新規に強調するものである。

新規性: 本研究で初めて、好中球が単なるエフェクター細胞ではなく、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞といった他の免疫細胞の機能を積極的に調節する「指揮者」としての役割を持つことを、包括的な文献レビューを通じて明確に位置づけた。また、好中球が糖新生やグリコーゲン合成を行う唯一の骨髄系細胞であるという最近の発見 (Sadiku et al. Cell Metab 2021) は、低酸素・低グルコース環境下での好中球の機能維持メカニズムに関する新規な知見である。

臨床応用: 本知見は、好中球を標的とした新たな治療戦略の開発に直結する臨床的意義を持つ。例えば、(i) 抗NET療法 (DNase I、PAD4阻害剤) は、COVID-19、自己免疫疾患、がん関連血栓症など、さまざまな炎症性疾患やがんでの病態改善に繋がる可能性がある。 (ii) SPM類似体を用いた炎症収束促進治療は、慢性炎症や敗血症の治療に有用である。 (iii) 好中球の免疫制御機能を活用した癌免疫療法 (neutrophil reprogramming、Ly6E hi 好中球による抗PD-1応答予測・増強) は、がん治療の新たな方向性を示す。 (iv) G-CSF治療の免疫調節側面の再評価や、(v) 好中球代謝 (グルコース代謝、GSK3β、oxPPP) を標的とした感染症・自己免疫疾患への介入も期待される。

残された課題: 今後の検討課題として、(i) 自己免疫疾患 (SLE、RA) やアテローム性動脈硬化症における慢性NET病態のさらなる詳細な解析、(ii) 好中球の不均一性 (N1/N2、LDN/NDNなど) の機能的意義の完全な解明、(iii) マウスとヒトにおける好中球機能の差異が大きく、直接的なトランスレーショナルリミテーションがあることへの対応、(iv) インビトロでの大気酸素圧下での研究結果をインビボの低酸素環境に外挿する際の限界の克服、(v) 好中球免疫細胞療法 (CAR-neutrophilなど) への展望の深化が残されている。本レビューは、2021年以降の好中球研究のグラントプロポーザル、教育シラバス、新規研究者向けの入門論文として繰り返し引用されるゲートウェイペーパーとして機能している。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の実験方法論は存在しない。本レビューは、2004年のNETs発見 (Brinkmann et al. Science 2004) 以来の好中球生物学における主要な研究成果と、Zychlinsky研究室の先行研究を系統的に収集し、統合的に考察している。文献検索はPubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学・生物学データベースを用いて行われたと推測される。検索期間は特に明記されていないが、最新の知見を網羅するため2021年までの関連論文が対象とされたと考えられる。

レビューの構成は、好中球の生物学的特徴を包括的に解説するために、各機能領域ごとに章立てされている。各セクションでは、関連する分子メカニズム、細胞生物学的プロセス、および生理学的・病理生理学的意義が詳細に記述されている。例えば、接着・遊走カスケードでは、セレクチンやインテグリンといった接着分子の役割、ケモカインによる細胞停止、経内皮遊走の様式などが解説されている。殺菌機構においては、食作用におけるファゴソーム形成とNADPH oxidaseによるスーパーオキシド産生、脱顆粒による細胞外へのエフェクター放出、そしてNET形成の分子メカニズムが詳細に説明されている。エネルギー代謝に関しては、好中球が主に嫌気性解糖系に依存すること、ペントースリン酸経路 (oxPPP) がNADPH産生に不可欠であること、低酸素環境でのHIF-1α/HIF-2αの役割などが論じられている。

免疫制御のセクションでは、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞といった他の免疫細胞との相互作用が、サイトカイン、ケモカイン、NETs、および細胞間接触を介してどのように行われるかが記述されている。がんにおける好中球の二面性についても、抗腫瘍効果と腫瘍促進効果の両側面が、様々な実験モデルや臨床的観察に基づいて議論されている。これらの情報は、既存の文献から抽出され、好中球の多様な機能と、それが宿主の健康と疾患にどのように影響するかを統合的に理解するための枠組みを提供している。本レビューは、特定の統計手法を用いたメタ解析やシステマティックレビューではないため、統計解析やバイアスリスク評価は行われていない。しかし、広範な文献を網羅し、好中球生物学の進化する理解を統合することで、この分野の知識ギャップを埋めることに貢献している。