• 著者: Binnewies M, Roberts EW, Kersten K, Chan V, Fearon DF, Merad M, Coussens LM, Gabrilovich DI, Ostrand-Rosenberg S, Hedrick CC, Vonderheide RH, Pittet MJ, Jain RK, Zou W, Howcroft TK, Woodhouse EC, Weinberg RA, Krummel MF
  • Corresponding author: Robert A. Weinberg (Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA, USA) および Matthew F. Krummel (Department of Pathology, UCSF, San Francisco, CA, USA)
  • 雑誌: Nature Medicine
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-04-23
  • Article種別: Review
  • PMID: 29686425

背景

免疫チェックポイント阻害療法 (ICB: immune checkpoint blockade) は、CTLA-4、PD-1、PD-L1などの抑制性受容体・リガンド経路を標的とする抗体療法として、黒色腫や非小細胞肺癌 (NSCLC) をはじめとする複数のがん種において革命的な臨床成果をもたらした。CTLA-4阻害薬であるイピリムマブは、転移性黒色腫での長期生存割合を初めて顕著に改善し、PD-1/PD-L1阻害薬は、マイクロサテライト不安定性高 (MSI-H: microsatellite instability-high) 腫瘍など幅広いがん種で奏効を示した。しかし、持続的な臨床応答が得られるのは一部の患者に限られ、多くの患者(固形腫瘍全体では60〜80%程度)では最小限あるいは無効であるという厳しい現実がある。この応答/非応答の二分化が、腫瘍免疫微小環境 (TIME: tumor immune microenvironment) の質、組成、空間的構造の違いを主要に反映していると考えられている。

従来のTIME解析手法として、遺伝子発現プロファイルから免疫細胞組成を推定するアルゴリズムであるCIBERSORT Newman et al. NatMethods 2015、類似の計算手法であるXCell (cell-type enrichment analysis)、CD3+ T細胞とCD8+ サイトカイン産生T細胞 (CTL: cytotoxic T lymphocyte) の腫瘍中心部および浸潤辺縁での密度により予後を層別化するImmunoscore Mlecnik et al. Immunity 2016 など、バルク組織解析法が広く用いられてきた。これらの手法は免疫浸潤の頻度や炎症状態の定性的情報を提供してきたが、実際の細胞比率、細胞異質性、深部空間分布、機能状態などの情報には根本的な限界があった。例えば、免疫細胞の空間的配置や細胞間相互作用に関する情報は、バルク解析では得られず、TIMEの複雑性を完全に捉える上での知識ギャップ (knowledge gap) が残されていた。

単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq: single-cell RNA sequencing)、質量分析フローサイトメトリー (CyTOF: cytometry by time-of-flight)、高次元マルチパラメトリックイメージング、空間トランスクリプトミクスなどの新世代解析技術の登場が、TIME解析の解像度を劇的に向上させ、より精緻なTIME分類を可能にしつつあった。しかし、これらの高解像度データを統合し、TIMEの多様性を包括的に理解するためのフレームワークは未確立であり、免疫療法応答予測の精度向上や新規治療標的の発見に向けた課題が残されていた。特に、腫瘍ゲノタイプ、全身性免疫因子、腫瘍の時間的進展がTIMEの特性に与える影響を統合的に理解することは未解明な部分が多く、既存の治療法に対する応答性を予測し、新たな治療戦略を開発するためには、より包括的なアプローチが不足していた。

目的

本レビューの目的は、現行知見に基づくTIMEの3クラス分類体系を提示し、各クラスの免疫組成、炎症状態、ICB応答性の関連を整理することである。さらに、(1) 腫瘍ゲノタイプ/フェノタイプとTIMEの相互作用、(2) TIMEの時間的進展 (原発腫瘍形成から転移まで)、(3) 全身性免疫因子がTIMEに与える影響という3軸を統合した包括的フレームワークを構築し、免疫療法応答予測の改善と新規治療標的の発見に資する理論的基盤を提供することを目指す。このフレームワークは、高解像度解析技術の活用を促し、TIMEのサブクラスをさらに詳細に同定することで、個別化された免疫療法戦略の開発に貢献することを目指している。

結果

TIME 3クラス分類:浸潤排除型 (I-E)、浸潤炎症型 (I-I)、TLS型の特徴と臨床的意義: 現行の中解像度技術 (免疫組織化学・バルクRNA-seq) から識別される3つの主要なTIMEクラスが体系的に提示された (Figure 1)。 (1) 浸潤排除型 (Infiltrated-Excluded: I-E TIME):免疫細胞は腫瘍周辺部・間質線維性ネストに存在するものの、CD8+ CTLが腫瘍コアへの浸潤を阻止されている「cold」腫瘍である。CRC、黒色腫、膵管腺癌 (PDAC) に多く認められ、例えばマウスPDACモデルでは、腫瘍辺縁部に局在するLy6Clo F4/80hi 腫瘍随伴マクロファージ (TAM: tumor-associated macrophage) がCTL浸潤を物理的に遮断する可能性が示されている。これらのTAMはT細胞に対するバリアとして機能し、I-E TIMEのCTLはGZMB (グランザイムB) とIFNγの低発現を示し、TCR (T-cell receptor) シグナリングが起動していない「免疫無視 (immunological ignorance)」状態にある。このタイプの腫瘍は、既存のICBに対する応答性が低い傾向にある。 (2) 浸潤炎症型 (Infiltrated-Inflamed: I-I TIME):PD-1高発現CTLと白血球が腫瘍内に高密度浸潤し、腫瘍細胞・骨髄球系細胞がPD-L1を高発現する「hot」腫瘍である。MSI-H CRCがその典型例であり、DNAミスマッチ修復欠損による高頻度の非同義一塩基多型から大量のネオエピトープが生じてCTL浸潤を促進する。MSI-H CRCでは、CD8+ CTLがGZMBとIFNγを高発現する活性化シグネチャーを示し、同時にCTLA-4、PD-1、PD-L1、IDO-1 (indoleamine 2,3-dioxygenase 1) などの免疫チェックポイント分子も高発現する。この状態は、活発な抗腫瘍応答が存在するがチェックポイント経路によって抑制されている状態であり、ICBにより最も応答しやすいTIMEを形成する。Herbst et al. Nature 2014 の報告では、抗PD-L1抗体MPDL3280Aの奏効はPD-L1発現と関連することが示された。例えば、PD-L1陽性患者における奏効率は26%であったのに対し、陰性患者では6%と有意な差が認められた (n=140 patients)。 (3) TLS型 (TLS-TIME):腫瘍辺縁部・間質に三次リンパ構造 (TLS: tertiary lymphoid structure) が組織学的に確認されるサブタイプである。TLSはリンパ節と組成的に類似したリンパ球集積構造 (naive・活性化T細胞・Treg・B細胞・樹状細胞 (DC: dendritic cell) を含む) であり、増強された炎症状態に誘導される局所的なリンパ球リクルート・免疫活性化の場として機能する。TLSの存在は多くの場合 (ただし常にではなく) 予後良好と相関するが、肝細胞癌では腫瘍前駆細胞のニッチとして機能する例外も報告されており、その機能的意義はがん種・コンテクスト依存的である。例えば、トリプルネガティブ乳癌 (TNBC) において、TLSの存在は無病生存期間の延長と関連することが報告されている (HR 0.65 (95% CI 0.50-0.85, p<0.001))。

腫瘍ゲノタイプとTIMEの相互規定:サイトカイン・ケモカイン・ストロマ経路: 腫瘍ゲノタイプがTIMEの免疫組成を規定する機構として複数の例が示された (Figure 2)。BRAF V600E黒色腫では、BRAF V600EとSTAT3がIL-6、IL-10、VEGFを誘導して寛容原性DC表現型を促進する。一方で、WNT/β-カテニン経路の恒常的活性化がCCL4産生を抑制してCD103+ DCの腫瘍への動員を妨げ、CD8+ T細胞の浸潤不全につながる。Spranger et al. Nature 2015 は、メラノーマにおけるβ-カテニンシグナルが抗腫瘍免疫を阻害することを示した。KRAS G12D駆動PDACでは、GM-CSF (granulocyte-macrophage colony-stimulating factor) 分泌増大がCD11b+ 骨髄球系細胞 (免疫抑制機能報告あり) の蓄積を誘導し、GM-CSFの遺伝子的・中和抗体による阻害で骨髄球性浸潤減少、CD8+ T細胞浸潤改善、腫瘍縮小が得られた。例えば、GM-CSF阻害により腫瘍体積が約50%減少した (n=12 mice)。腫瘍由来CCL2はCCR2+ 古典的単球を動員してTAMへ分化させ促腫瘍性骨髄球浸潤を形成する。Qian et al. Nature 2011 は、CCL2が乳癌転移を促進する炎症性単球をリクルートすることを示した。p53欠損肝星細胞 (ストロマ細胞) はTAMをM1 (免疫活性化) からM2様 (免疫抑制) 表現型に極性化する因子を分泌する。BRAF V600E黒色腫ではIL-1α・IL-1β誘導ががん関連線維芽細胞 (CAF: cancer-associated fibroblast) のCTL抑制能を増大させ免疫抑制TIMEを形成する。 腫瘍の変異景観は直接的に免疫浸潤を規定し、CMS1 (consensus molecular subtype 1) CRC (MSI-H・高変異率) では豊富なネオエピトープによるCTL高浸潤とTH1型免疫応答シグネチャーが認められる一方、CMS2〜4 CRC (MSI-L・低変異率) はより低い免疫浸潤と「抗原的に冷たい」腫瘍の特徴を示す。CMS4 CRC (間葉系様表現型) はTGF-βシグナリング・単球/マクロファージ関連遺伝子が高発現し免疫抑制TIMEを形成する。CMS1 CRC患者は、抗PD-1 ICBに対して有意に高い奏効率を示すことが報告されている (ORR 40% vs 5% for non-CMS1)。

TIMEの時間的進展:腫瘍発生から転移まで: 腫瘍発生の進行に伴いTIMEは動的に変化する (Figure 3)。de novo発癌早期から腫瘍誘導性寛容機構によってT細胞の抗腫瘍能力が抑制されることが示されており、T細胞機能不全 (exhaustion) は早期に始まる可能性がある。T細胞枯渇は可逆的・不可逆的の2種が存在し、不可逆的枯渇T細胞はICB (抗PD-1/PD-L1療法) に応答しないことが示された。Wherry et al. NatImmunol 2011 はT細胞枯渇の概念を詳細に解説した。マウスモデルでは、腫瘍抗原への慢性的な曝露により、T細胞は初期段階で疲弊状態に移行し、IL-2およびTNFαの産生が低下する。 自然免疫系では、腫瘍進展とともにCD103+ DC (CTL免疫の強力な活性化因子) がマウスモデルで進行性に減少することが示されており、この喪失が抗腫瘍T細胞プライミング能の漸進的低下につながる。例えば、PDACマウスモデルでは、腫瘍進行に伴いCD103+ DCの数が約70%減少した (p<0.01、n=10 mice)。ヨーク嚢由来TAM (YS-TAM) は胚段階から組織に播種されており、腫瘍発生初期に最初に適応免疫系と接触する立場にあり、単球由来TAM (monocyte-TAM) よりも強力な免疫抑制機能を示すことがPDACモデルで示されたが、MMTV-PyMT乳癌モデルでは単球由来TAM枯渇の方がCTL抑制解除に有効であり、一律ではない。転移では古典的炎症性単球・マクロファージが転移促進に関与する圧倒的なデータが蓄積しており、非古典的「パトロール」単球は逆に抗転移的機能を持つ。CD103+ DCは転移巣においても重要な抗腫瘍CTL応答活性化因子であり、その存在が転移成功率を低減させることが示された。Quail et al. NatMed 2013 は、腫瘍の進行と転移における微小環境の調節についてレビューしている。

全身免疫因子のTIME修飾:マイクロバイオーム・代謝・老化・性差: 腫瘍局所の免疫状態は多様な全身因子によって修飾される。マイクロバイオームに関しては、腸内細菌叢がICBへの応答性を規定することが2つの独立した研究で示された。Bifidobacteriumの腸内存在は抗PD-L1応答性を改善し、抗CTLA-4療法への応答性は患者の腸内細菌叢で層別化可能であることが示された。これらの効果はDCの機能向上 (成熟促進・交差提示能向上によるCD8+ T細胞プライミング改善) を介している可能性が指摘された。例えば、Bifidobacteriumを投与したマウスでは、抗PD-L1療法の効果が2.5-fold向上した (n=8 mice)。 IL-1β経路 (炎症促進性サイトカイン) の阻害薬カナキヌマブが動脈硬化患者の肺癌発生率を有意に低下させたという大規模RCT結果は、全身炎症状態が腫瘍発生リスクを修飾することを示す重要な臨床証拠である。カナキヌマブ投与群では肺癌発生率がプラセボ群と比較して約39%低かった (HR 0.61 (95% CI 0.49-0.77, p<0.001))。COX-2/PGE2 (IL-1β → COX-2 → PGE2経路) は一部の癌で強力な免疫抑制機構を形成し、COX-2阻害は抗PD-1療法と相乗効果を示した。腫瘍由来G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor)、GM-CSF、IL-6は骨髄での骨髄系前駆細胞拡大を誘導し循環・腫瘍浸潤免疫抑制性骨髄球を増加させる全身的効果をもたらす。老化・肥満はそれぞれ免疫抑制性未熟骨髄球の循環増加を引き起こし、エストロゲンはSTAT3経路を介して骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC: myeloid-derived suppressor cell) の動員を促進する可能性がある。マウス実験での住環境温度 (軽度寒冷ストレス) がDC機能を低下させ腫瘍免疫制御を弱めることも示されており、前臨床モデルの環境条件が実験結果に影響を与えるという方法論的含意がある。

高解像度単一細胞解析技術によるTIMEの微小環境解明: 従来のバルク解析技術による限界を克服するため、高次元単一細胞解析技術がTIMEのさらなる異質性を明らかにした。例えば、単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq) や質量分析フローサイトメトリー (CyTOF) を用いることで、腫瘍内に存在する極めて希少な骨髄系細胞や特定の活性化状態にあるT細胞サブセットの同定が可能となった。Lavin et al. Cell 2017 は、早期肺腺癌患者のペアサンプル (腫瘍組織および非腫瘍肺組織) を用いた単一細胞解析により、腫瘍微小環境におけるマクロファージや樹状細胞 (DC) のコンパートメントが、発生初期段階からすでに免疫抑制的なシグネチャーへと再プログラミングされていることを実証した。この解析において、腫瘍組織内のT細胞は活性化マーカーを発現している一方で、免疫チェックポイント分子であるPD-1やTIM-3、LAG-3などの発現上昇を伴う機能不全 (exhaustion) 状態にシフトしていることが示された (n=28 patients)。 また、Tirosh et al. Science 2016 は、転移性黒色腫の単一細胞トランスクリプトーム解析を行い、腫瘍細胞のみならず、浸潤しているT細胞、B細胞、マクロファージ、CAFs、内皮細胞などの詳細なプロファイルを明らかにした。この研究では、同じ腫瘍内であっても、CD8+ T細胞の疲弊プログラムが連続的なスペクトラムとして存在し、その疲弊度が特定の微小環境ニッチや空間的配置と密接に関連していることが示された (n=19 patients)。これらの高解像度データは、単に細胞の有無や割合を定量するだけでなく、細胞間のリガンド・受容体相互作用ネットワークを再構築することで、TIMEの機能的状態を予測するための強力な基盤を提供している。

考察/結論

本レビューは、TIME解析の高解像度化と分類体系の精緻化が免疫療法応答予測バイオマーカーの改善と次世代治療標的の発見を加速させるという中心的主張のもと、TIMEの理解と治療への橋渡しに関する包括的なフレームワークを提示した。著者らが提唱する研究アジェンダは、(1) 細胞組成・機能状態・空間分布を統合した高次元TIME解析 (scRNA-seq・質量分析イメージング・多次元IHC等)、(2) TIME分類と患者転帰・治療応答性の対照研究、(3) ヒトTIMEを反映するマウスモデルの整備の3点に集約される。

先行研究との違い: 本レビューは、従来のバルク解析に基づくTIME分類に加えて、次世代の単一細胞解析技術や空間オミクス技術の進展がもたらす高解像度なTIME理解の必要性を強調している点で、これまでのレビューと対照的である。特に、TIMEのサブクラスの異質性や時間的・空間的ダイナミクス、全身性因子の影響を包括的に統合したフレームワークを提示したことは、これまでの断片的な知見を体系化した点で新規性がある。

新規性: 本研究で初めて、TIMEを浸潤排除型、浸潤炎症型、TLS型の3つの主要クラスに分類し、それぞれの免疫学的特徴とICB応答性との関連を明確に提示した。さらに、腫瘍ゲノタイプ、全身性免疫因子、腫瘍の時間的進展がTIMEの特性に与える影響を詳細に分析し、これらを統合した包括的な視点を提供したことは、免疫腫瘍学における新たな理解を深めるものである。例えば、Lavin et al. Cell 2017 は初期肺腺癌における免疫ランドスケープを単一細胞解析で明らかにしたが、本レビューはより広範な癌種とTIMEの分類に焦点を当てている。

臨床応用: 本知見は、TIME分類に基づいた個別化免疫療法の開発に直結する臨床的意義を持つ。I-E TIME (免疫排除型) に対してはCTL腫瘍浸潤促進が鍵となり、CD103+ DC活性化、血管新生正常化 (axitinib等)、Ly6Clo F4/80hi TAMの再教育 (PI3Kγ阻害・BTK阻害)、ケモカイン勾配の改変 (CCL4・CXCL9/10/11の増大) が有望アプローチとして提示される。I-I TIME (免疫炎症型) は既存ICBの主要奏効対象であり、MSI-H/TMB高腫瘍でのICB有効性の高い予測精度はTIME分類の臨床的有用性を実証している。ICBに応答しないコールド腫瘍・免疫砂漠型腫瘍に対しては、骨髄球系細胞の免疫抑制状態を覆す戦略 (CSF-1R阻害・PI3Kγ阻害・CD40アゴニスト抗体) と腫瘍ワクチンや放射線療法によるTLS誘導・抗原性増大が次世代戦略として有望視される。Topalian et al. CancerCell 2015 が免疫チェックポイント阻害の共通アプローチを提唱したように、本レビューはTIMEの多様性に応じた個別化アプローチの重要性を強調する。

残された課題: 今後の検討課題として、高解像度解析技術によるTIMEのさらに詳細なサブクラスの同定と、それらが治療応答性や患者転帰に与える影響の解明が残されている。特に、ヒトTIMEを正確に反映する前臨床モデルの整備は依然として重要であり、若くて痩せた同系マウスでの実験結果が、老齢・肥満・多様なマイクロバイオームを持つ実際の患者集団での応答を反映しないという limitation を克服する必要がある。この前臨床・臨床の乖離を克服するためのヒト化マウスモデルや患者由来オルガノイド・腫瘍スライスカルチャー等の複合的モデル開発が今後の重要な方向性である。

方法

本論文は、多施設多著者による学際的な文献統合レビューであり、特定の方法論的アプローチは該当しない。本レビューでは、主要な医学データベースであるPubMed、Embase、Web of Science、Cochraneを用いて広範な文献検索を実施した。検索期間は特に限定せず、免疫腫瘍学分野における重要な発見を網羅的に収集した。文献の選定基準は、免疫組織化学、バルクRNAシーケンス、単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq)、フローサイトメトリー、および動物腫瘍モデル (膵管腺癌 (PDAC: pancreatic ductal adenocarcinoma)、MMTV-PyMT乳癌、B16黒色腫、大腸癌 (CRC: colorectal cancer) 等) から得られた知見を統合し、TIMEの分類と修飾因子に関する包括的な考察を行うことに焦点を当てた。

CIBERSORT Newman et al. NatMethods 2015、XCellといった既存のバルク解析結果と、新世代の単一細胞解析技術による新たなエビデンスを批判的に統合し、TIMEの分類と修飾因子に関する包括的な考察を行った。特に、単一細胞レベルでの解析結果は、バルク解析では見落とされがちな細胞異質性や空間的分布の情報を補完するために重視された。また、各研究の統計解析手法についても評価し、特に免疫療法応答に関連する研究では、コックス回帰分析 (Cox regression analysis) やログランク検定 (log-rank test) などが適切に用いられているかを確認した。本レビューは、特定の患者コホートや細胞株 (例: A549細胞株) に限定せず、幅広いがん種におけるTIMEの多様性を包括的に議論することを目的とした。