• 著者: Kim DW, Mehra R, Tan DS, Felip E, Chow LQ, Camidge DR, Vansteenkiste J, Sharma S, De Pas T, Riely GJ, Solomon BJ, Wolf J, Thomas M, Schuler M, Liu G, Santoro A, Sutradhar S, Boulay A, Bordogna W, Balas B, Morcos PN, Mok T
  • Corresponding author: Mok T (Chinese University of Hong Kong); Kim DW (Seoul National University Hospital, Seoul, Korea)
  • 雑誌: Lancet Oncology
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-01-07
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 26973324

背景

ALK再構成非小細胞肺がん (NSCLC) は、ALKチロシンキナーゼ阻害剤 (ALK阻害剤) であるクリゾチニブに感受性を示すが、抵抗性が必然的に生じ、しばしば脳内で進行することが知られている Kwak et al. NEnglJMed 2010。クリゾチニブ耐性の機序としては、ALK依存性およびALK非依存性の両方が報告されており、新たな治療選択肢が求められていた Katayama et al. SciTranslMed 2012。セリチニブ (LDK378) は、in vitroでクリゾチニブよりも強力なALK阻害剤であり、in vivoで血液脳関門を通過し、クリゾチノブ耐性疾患患者において臨床的奏効を示すことが報告されていた。セリチニブの第I相試験ASCEND-1の初回報告 Shaw et al. NEnglJMed 2014 では、130例においてORR 58% (≥400 mg投与群) が示され、2014年5月に米国食品医薬品局 (FDA) が加速承認した。しかし、より長い追跡期間と拡大コホート (246例) におけるセリチニブの全身および頭蓋内抗腫瘍活性に関する詳細なデータは不足しており、特に、ALK阻害剤未治療サブグループとクリゾチニブ前治療サブグループに分けた詳細解析、および中枢神経系 (CNS) 奏効の系統的評価を含む更新解析の必要性が認識されていた。クリゾチニブ前治療患者における治療選択肢は限られており、効果的な代替治療薬の開発が残された課題であった。

目的

ASCEND-1試験の更新解析として、より大きなコホート (246例) と長い追跡期間に基づいて、ALK阻害剤未治療患者およびクリゾチニブ前治療患者におけるセリチニブの有効性 (全奏効率 (ORR)、奏効期間 (DOR)、無増悪生存期間 (PFS)、頭蓋内ORR) と安全性を評価すること。

結果

ALK阻害剤未治療患者における全身奏効と無増悪生存期間: ALK阻害剤未治療群 (naive群、83例) におけるORRは72% (95% CI 61-82) であった (Table 2)。内訳は、完全奏効 (CR) 4例 (4.8%)、部分奏効 (PR) 56例 (67.5%)、安定疾患 (SD) 18例 (21.7%) であった。奏効までの期間中央値は6.1週 (IQR 6.1-7.6) であった。DOR中央値は17.0ヶ月 (95% CI 11.3-NE) であり、PFS中央値は18.4ヶ月 (95% CI 11.1-NE) と長く、1次治療としてのセリチニブの潜在的有効性が示唆された (Figure 3B)。この群では、12ヶ月PFS率は62% (95% CI 50-72) であった。ベースライン時に測定可能病変を有し、少なくとも1回のベースライン後評価を受けたALK阻害剤未治療患者77例のほとんどで腫瘍量の減少が観察された (Figure 2A)。

クリゾチニブ前治療患者における全身奏効と無増悪生存期間: クリゾチニブ前治療群 (pretreated群、163例) におけるORRは56% (95% CI 49-64) であった (Table 2)。内訳は、CR 3例 (1.8%)、PR 89例 (54.6%)、SD 42例 (25.8%) であった。奏効までの期間中央値は6.1週 (IQR 5.9-7.6) であった。DOR中央値は8.3ヶ月 (95% CI 6.8-9.7ヶ月) であり、PFS中央値は6.9ヶ月 (95% CI 5.6-8.7ヶ月) であった (Figure 3B)。この群では、12ヶ月PFS率は27% (95% CI 20-35) であった。ベースライン時に測定可能病変を有し、少なくとも1回のベースライン後評価を受けたクリゾチニブ前治療患者151例のほとんどで腫瘍量の減少が観察された (Figure 2B)。これらの結果は、クリゾチニブ耐性患者においてもセリチニブが有意な抗腫瘍活性を示すことを裏付けている。

頭蓋内活性の評価: ベースライン時に脳転移を有し、評価可能な画像データがあった94例 (naive群19例、pretreated群75例) を対象とした後向き中央レビューの結果、頭蓋内疾患コントロール率 (CR+PR+SD) は、naive群で79% (95% CI 54-94)、pretreated群で65% (95% CI 54-76) であった (Table 3)。特に、ベースライン時に測定可能病変を有し、放射線治療歴のない脳転移患者 (11例) のうち6例が部分奏効を達成した。これは、セリチニブが血液脳関門を通過し、脳転移に対して有意な活性を持つことを示している。頭蓋内奏効までの期間中央値は6.1週 (IQR 6.1-12.3) であった。ベースライン時に測定可能な脳転移を有していた患者36例のうち、ALK阻害剤未治療群8例での頭蓋内疾患コントロール率は63% (95% CI 25-92) であり、クリゾチニブ前治療群28例では61% (95% CI 41-79) であった (Table 3)。

安全性プロファイル: 全246例において、少なくとも1つの有害事象 (AE) が報告され、238例 (97%) で治療関連AEが疑われた (Table 4)。Grade 3-4のAEは200例 (81%) で報告され、重篤なAEは117例 (48%) で報告された。最も一般的なGrade 3-4の非臨床検査値異常AEは、下痢と悪心であり、いずれも15例 (6%) で発生した。消化器系障害は243例 (99%) で発生したが、ほとんどがGrade 1-2であり、治療早期に発現した (下痢の発生中央値4日、悪心8日、嘔吐8日)。これらは併用薬の投与や用量変更により管理可能であった。最も一般的なGrade 3-4の臨床検査値異常AEは、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 上昇 (73例、30%) およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) 上昇 (25例、10%) であった。これらは用量中断により管理可能であり、Hy’s lawに合致する致命的な肝障害の症例は認められなかった。間質性肺疾患 (ILD) または肺炎は9例 (4%) で報告され、うち8例がGrade 3-4であった。治療関連死は2例報告され、1例は間質性肺疾患、もう1例は感染症および虚血性肝炎に伴う多臓器不全によるものであった。AEによる治療中止は26例 (11%) であり、そのうち9例 (35%) が治験薬関連と疑われた。

考察/結論

ASCEND-1試験の更新解析は、セリチニブがALK再構成NSCLCの幅広い患者集団において、臨床的に意義のある、迅速かつ持続的な抗腫瘍活性を示すことを確認した。

先行研究との違い: 本研究でALK阻害剤未治療群におけるPFS中央値18.4ヶ月 (95% CI 11.1-NE) は、クリゾチニブを1次治療として用いたPROFILE 1014試験のPFS中央値10.9ヶ月 Solomon et al. NEnglJMed 2014 を上回る数値であり、これまで報告されたクリゾチニブの第I相試験におけるPFS中央値9.7ヶ月 Camidge et al. LancetOncol 2012 と比較しても優位性を示した。これは、本研究のALK阻害剤未治療患者の81%が前治療として化学療法を受けていたにもかかわらず達成された結果であり、クリゾチニブが主に全身治療未治療患者を対象としていたことと対照的である。

新規性: 本研究で初めて、ALK阻害剤未治療群とクリゾチニブ前治療群を明確に分離して詳細な有効性解析を実施し、両群におけるセリチニブの持続的な全身および頭蓋内抗腫瘍活性を大規模コホートで示した。特に、脳転移を有する患者における高い頭蓋内疾患コントロール率 (pretreated群で65% (95% CI 54-76)) は、セリチニブのCNS浸透性と脳転移制御における重要な特性を新規に強調するものである。

臨床応用: 本知見は、クリゾチニブ治療後に進行したALK再構成NSCLC患者に対する治療選択肢としてセリチニブの臨床的有用性を強く支持する。また、ALK阻害剤未治療患者におけるセリチニブの優れたPFSは、1次治療としてのセリチニブの可能性を示唆し、後続の第III相試験 (ASCEND-4) の仮説設定に貢献した。脳転移に対する高い活性は、局所アブレーション療法に代わる治療戦略としてのセリチニブの役割を拡大する可能性を秘めており、臨床現場での治療選択に影響を与える。

残された課題: セリチニブの安全性プロファイルは管理可能であったものの、悪心、下痢、嘔吐といった消化器毒性が高頻度で認められ、これは主要な管理課題として残された課題である。今後の検討課題として、食事とともに投与することで消化器症状を軽減できる可能性が示唆されており、後続試験 (ASCEND-4) で750 mg空腹時投与と450 mg食事とともに投与の比較が行われた。また、本研究の頭蓋内活性に関する解析は後向き研究であるため、その限界を考慮する必要がある。今後の研究では、セリチニブと他の次世代ALK阻害剤 (例:アレクチニブ、ブリガチニブ) との直接比較、および長期的な安全性と有効性プロファイルの評価が重要となる。

方法

本研究は、多施設非盲検第I相試験ASCEND-1 (ClinicalTrials.gov, number NCT01283516) の更新解析である。2011年1月24日から2013年7月31日の間に、ALK再構成NSCLC患者246例がセリチニブ750 mg/日 (空腹時) の推奨用量で経口投与された。患者は、ALK阻害剤未治療サブグループ (naive群、83例) とクリゾチニブ前治療サブグループ (pretreated群、163例) に分けられた。クリゾチニブ前治療患者のうち149例 (91%) は、前治療ALK阻害剤投与中または最終投与後2週間以内に疾患進行を認めていた。全患者において、ベースライン時に脳、胸部、腹部のMRIまたはCTスキャンが実施された。腫瘍評価は、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) バージョン1.0に基づき、6週間ごとに実施された。

主要評価項目は、独立評価委員会 (BIRC) によるORRであった。副次評価項目は、DOR、PFS、頭蓋内ORR (脳転移を有する患者)、および安全性であった。追跡期間中央値は、naive群で13.5ヶ月、pretreated群で11.4ヶ月であった。PFSおよびDORの推定にはKaplan-Meier法が用いられた。頭蓋内活性の評価は、ベースライン時に未治療または局所治療済みの神経学的に安定した脳転移を有する患者を対象に、独立した神経放射線科医2名によるRECIST 1.1に基づく後向き中央レビューによって実施された。安全性は、セリチニブを少なくとも1回投与された全患者で評価された。統計解析にはSASバージョン9.3が使用された。