• 著者: Alexander Drilon, Jeffrey W. Clark, Jared Weiss, Sai-Hong Ignatius Ou, D. Ross Camidge, Benjamin J. Solomon, Gregory A. Otterson, Liza C. Villaruz, Gregory J. Riely, Rebecca S. Heist, Mark M. Awad, Geoffrey I. Shapiro, Miyako Satouchi, Toyoaki Hida, Hidetoshi Hayashi, Danielle A. Murphy, Sherry C. Wang, Sherry Li, Tiziana Usari, Keith D. Wilner, Paul K. Paik
  • Corresponding author: Alexander Drilon (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY)
  • 雑誌: Nature Medicine
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-01-13
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 31932802

背景

MET exon 14変異は非小細胞肺癌 (NSCLC) の3-4%に認められる重要なドライバー変異である。これらの変異は、スプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位、ポリピリミジントラクト、Y1003周辺の多様な変異(点変異、挿入欠失、大欠失)を含み、いずれもMET exon 14のRNAスキッピングを引き起こす。これにより、CBL (Casitas B-lineage lymphoma) E3ユビキチンリガーゼ結合部位Y1003を含むMET受容体の juxtamembrane 領域が欠失し、CBLによるMETユビキチン化が障害されてMET分解が低下する。結果としてMETシグナルが持続的に亢進し、腫瘍原性を示すことが知られている。Crizotinibは、2011年にALK融合陽性NSCLC、2016年にROS1融合陽性NSCLCに対してFDA承認を取得したALK/MET/ROS1マルチキナーゼ阻害薬である。MET exon 14変異陽性NSCLCに対するcrizotinibの前臨床データおよび後方視的感受性データは早期から報告されていたものの、前向き試験による大規模な検証は、Awad et al. JClinOncol 2016などの小規模な報告に留まり、その抗腫瘍活性と安全性を包括的に評価したデータは不足していた。また、Kwak et al. NEnglJMed 2010が報告したALK阻害の成功、さらにShaw et al. NEnglJMed 2014によるROS1阻害の成功に続き、MET exon 14変異に対する標的治療の必要性が高まっていた。PROFILE 1001試験は当初ALK、MET、ROS1融合/変異NSCLCに対するcrizotinibの第1相試験として設計されたが、MET exon 14変異専用の拡大コホートが組み込まれ、この未解明な領域の治療ギャップを埋めることが期待された。

目的

PROFILE 1001試験のMET exon 14変異陽性NSCLC専用拡大コホートにおいて、crizotinibの抗腫瘍活性と安全性を初の前向き試験として評価すること。また、スプライス部位、変異型、METコピー数、循環腫瘍DNA (ctDNA) statusといった分子的サブグループ間での奏効の差異を検証することを目的とした。

結果

高齢かつ既治療例を多く含む患者背景: 登録された69例の患者コホートは、年齢中央値72歳(範囲34-91歳)と高齢であり、女性が40例 (58%)、元喫煙者が42例 (61%) を占めた。組織型は腺癌が58例 (84%)、肉腫様癌が6例 (9%)、扁平上皮癌が3例 (4%) であった。前治療歴は、未治療が26例 (38%)、1ラインが29例 (42%)、2ライン以上が14例 (20%) であった。MET exon 14変異型は多様であり、スプライスドナー部位が57%、スプライスアクセプター部位が25%、変異不明が17%であった (Table 1)。

良好な客観的奏効率と生存期間の延長: 奏効評価可能患者65例におけるORRは32% (95% CI 21-45) であった。内訳は、完全奏効 (CR) が3例 (5%)、部分奏効 (PR) が18例 (28%)、安定 (SD) が29例 (45%)、進行 (PD) が4例 (6%) であった (Figure 1)。奏効までの期間中央値は7.6週であった。DoR中央値は9.1ヶ月 (95% CI 6.4-12.7) であり、奏効した21例中12例 (57%) が6ヶ月以上の奏効を維持した (Figure 2)。PFS中央値は7.3ヶ月 (95% CI 5.4-9.1) であった (Figure 3)。OS中央値は20.5ヶ月 (95% CI 14.3-21.8) であった。

分子的サブグループにおける抗腫瘍効果: 奏効率は、スプライスドナー部位変異 (32%、12/37例) とスプライスアクセプター部位変異 (31%、5/16例) で統計的に同等であった (p=0.65)。変異タイプ別でも、塩基置換 (36%、12/33例) とindel (25%、5/20例) の間で奏効率に有意差は認められなかった。METコピー数増加は奏効の予測因子として同定されず、TP53 (38%)、MDM2 (20%)、CDKN2A (20%) などの共変異と治療効果の間に明確な相関は認められなかった。

ctDNA検出の有無による予後予測: 解析可能な血漿サンプルが得られた37例中18例 (49%) でctDNA中にMET exon 14変異が検出された。ORRはctDNA陽性患者と陰性患者の間で有意差はなかった (19% vs 24%、p=1.00)。しかし、PFSはctDNA陽性患者で有意に短かった。ctDNA陽性患者のPFS中央値は3.7 vs 8.1 months (HR 3.85, 95% CI 1.27-11.66, p=0.01) と、ctDNA陰性患者と比較して有意なPFS短縮が認められた。また、治療期間中央値も3.6 vs 7.8 months (HR 2.27, 95% CI 0.94-5.48, p=0.06) であり、ctDNA陽性例で短い傾向にあった。

安全性プロファイルと忍容性: crizotinibの安全性プロファイルは、Camidge et al. LancetOncol 2012Shaw et al. NEnglJMed 2014で報告されたALK/ROS1再構成陽性NSCLC患者におけるデータと同様であった。治療関連有害事象 (TRAE) で最も多かったのは、浮腫 (51%)、視覚障害 (45%)、悪心 (41%)、下痢 (39%)、嘔吐 (29%) であり、その多くはGrade 1または2であった。Grade 3のTRAEは、トランスアミナーゼ上昇 (4%) と呼吸困難 (4%) であった。Grade 5のTRAEとして、間質性肺疾患が1例報告された。TRAEによる減量は38%、永続的中止は7%であった。

考察/結論

先行研究との違い: 本試験のORR 32%は、Shepherd et al. JClinOncol 2000Garon et al. Lancet 2014で報告された2次化学療法 (ORR 7-23%) と異なり、これらを大きく上回る。また、Scagliotti et al. JClinOncol 2008Sandler et al. NEnglJMed 2006で示された1次プラチナダブレット化学療法 (ORR 31-35%) と同等以上の効果を示した。しかし、Soria et al. NEnglJMed 2018Shaw et al. NEnglJMed 2013で報告されたEGFR、ALK、ROS1標的療法 (ORR 約60-80%) と比較するとORRは低い。

新規性: 本研究で初めて、MET exon 14変異陽性NSCLCに対するMET阻害剤の有効性を、専用の前向きコホートで大規模に評価した。これにより、この遺伝子変異を持つ患者に対する標的治療の新規な選択肢が確立された。また、ctDNAの検出がPFSの短縮と関連するという知見は、ctDNAが予後予測マーカーとなりうる可能性を本研究で初めて示した。

臨床応用: 本知見は、MET exon 14変異陽性NSCLC患者に対するcrizotinibの臨床応用を裏付ける重要なデータを提供する。この結果は、NCCNガイドラインにおいてもMET exon 14変異陽性NSCLCの治療選択肢としてcrizotinibが推奨される根拠となる。DNA-NGSとRNA-seqの組み合わせがMET exon 14スキッピングの検出感度向上に重要であることも示唆され、臨床現場における診断戦略に影響を与える可能性がある。

残された課題: 今後の検討課題として、crizotinibよりも高選択的なMET阻害薬(capmatinib、tepotinib、savolitinibなど)との比較検討が挙げられる。これらの後継薬は、未治療患者でORR 44-68%、既治療患者でORR 40-55%と、crizotinibを上回る奏効率が報告されており、現在では1次治療の標準となっている。crizotinibはMETへの選択性が低く、MET阻害に起因する末梢浮腫や肝毒性などの毒性プロファイルも考慮する必要がある。また、METタンパク質発現のないMET exon 14変異陽性NSCLCではcrizotinibの奏効が認められないという報告もあり、治療効果を予測するバイオマーカーのさらなる特定が今後の研究で必要である。

方法

本研究は、NCT00585195として登録された非盲検単群第1相PROFILE 1001試験の拡大コホートである。2014年9月から2018年1月にかけて、MET exon 14変異陽性の進行NSCLC患者69例を前向きに登録した。MET exon 14変異は、主にローカルテスト(DNA/RNA-NGS 96%、RT-PCR 4%)により同定された。患者にはcrizotinib 250 mgを1日2回経口投与し、疾患進行または不耐容性まで継続した。主要評価項目は、盲検独立判定委員会によるRECIST 1.1に基づく客観的奏効率 (ORR) とした。副次評価項目には、奏効期間 (DoR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS) を含めた。統計解析には、ORRの95% CIを推定するために正確二項法を使用し、時間依存性データにはKaplan-Meier解析とCox regressionモデルを用いて中央値と95% CIを算出した。サブグループ間の比較にはFisher’s exact検定を用い、ctDNAステータスによる治療期間およびPFSの比較にはログランク検定を実施した。サンプルサイズは当初33例でORR 10%の帰無仮説を棄却するために計画され、30%の目標ORRに対して90%以上の検出力を持つことが見込まれたが、より高い精度で有効性と安全性を評価するため、最終的に69例に拡大された。