- 著者: Lee CK, Man J, Lord S, et al.
- Corresponding author: Chee Khoon Lee (NHMRC Clinical Trials Centre, The University of Sydney)
- 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
- 発行年: 2017
- Epub日: 2016-10-17
- Article種別: Meta-Analysis (Brief Report)
- PMID: 27765535
背景
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI: tyrosine kinase inhibitor) は活性化EGFR変異を有する進行NSCLCに対して高い奏効を示すが、初期奏効後10-13か月で大多数が進行し、最適なサルベージ治療の選択は依然として課題である。一次TKI後の獲得耐性機序としてEGFR T790M変異の出現、小細胞癌への形質転換、代替アポトーシス回避シグナルの活性化が報告されている (Sequist et al. SciTranslMed 2011、Engelman et al. Science 2007、Takezawa et al. CancerDiscov 2012)。一方、PD-1 (programmed death 1) 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI: immune checkpoint inhibitor) であるnivolumabとpembrolizumabはdocetaxelに対しOS (overall survival) を延長し、進行NSCLCの二次治療標準として承認された。しかしEGFR変異肺癌におけるICIの役割を支持するエビデンスは相反していた。マウスモデルではEGFR変異 (KRAS駆動型ではない) 腫瘍で抗PD-1抗体への有意な奏効が示された一方、進行NSCLC 58例の後方視的解析ではEGFR変異/ALK再構成例の奏効率はわずか4%であった (Akbay et al. CancerDiscov 2013、Gainor et al. ClinCancerRes 2016)。個々の試験のEGFRサブグループ解析は症例数の検出力が不足しており、EGFR変異状態がICIの効果を修飾するかを判定するエビデンスは手薄であった。本メタ解析はこのgap in knowledgeを埋めることを企図した。
目的
進行NSCLCの二次治療において、ICIのdocetaxelに対するOSベネフィットがEGFR変異状態によって異なるか (すなわちEGFR変異状態が予測バイオマーカーとなりうるか) を、無作為化比較試験を統合したメタ解析により定量的に評価する。
結果
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対象試験の同定と患者背景:MEDLINE/EMBASE/Cochrane検索で102件、ハンドサーチで0件が同定され、最終的に3件の適格試験が選択された (Fig 1)。nivolumab (CheckMate 057、n=292)、pembrolizumab (KEYNOTE-010、n=691)、atezolizumab (POPLAR、n=144) をdocetaxel (n=776) と比較しており、合計1903例が無作為化されていた (Table 1)。EGFR変異状態が判明していたのは1548例 (81%) で、19%では未評価であった。各試験の患者背景・治療レジメン・EGFR検査法はTable 1に整理されている。
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ITT全体集団でのOS改善:ICI群はdocetaxel群と比較してOSを有意に延長し、死亡リスクを32%低減した (n=1903、HR 0.68、95% CI 0.61-0.77、p < 0.0001)。試験間の異質性は認められず (heterogeneity p = 0.67)、3試験で一貫した方向性のベネフィットが確認された。この全体結果は既報のpivotal試験の結果と整合する (Borghaei et al. NEnglJMed 2015、Herbst et al. Lancet 2016)。
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EGFR野生型サブグループでの明確なベネフィット:EGFR野生型群 (n=1362) ではICIによりOSが有意に改善し、死亡リスクを34%低減した (HR 0.66、95% CI 0.58-0.76、p < 0.0001、heterogeneity p = 0.96)。野生型群のプールHRは全体集団とほぼ同等で、ICIのOSベネフィットの大部分がEGFR野生型例で駆動されていることを示した。異質性はほぼ皆無であり、3試験を横断して効果は均一であった (Fehrenbacher et al. Lancet 2016)。
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EGFR変異サブグループでの効果消失と交互作用:対照的に、EGFR変異群 (n=186) ではICIのdocetaxelに対するOS優越性は認められなかった (HR 1.05、95% CI 0.70-1.55、p = 0.81)。点推定値は1をわずかに上回り、ベネフィットがないことを示唆した。変異群内の試験間異質性は認められず (chi-square = 0.46、p = 0.42、I² = 0%)、効果消失は単一試験の外れ値ではなく頑健であった。さらに治療-変異交互作用は統計学的に有意で (interaction p = 0.03、Fig 2)、EGFR変異状態がICIに対するOS応答を修飾する予測バイオマーカーとなりうることを定量的に裏付けた。Fig 2のフォレストプロットでは、野生型のダイヤモンドが1の左側に明瞭に位置するのに対し、変異群のダイヤモンドは1をまたいでいる。
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検出力と頑健性の評価:本メタ解析の最大の強みは、個々の試験では検出力が不足していたEGFRサブグループ比較を、最新の全関連試験を統合することで可能にした点にある。一方でEGFR変異群はわずか186例にとどまり、変異型 (19del/L858R/T790M等) の内訳は不明であった。それでも交互作用p = 0.03という結果は、EGFR変異肺癌がICI単剤の二次治療から利益を得にくいという仮説生成的な知見を支持している (Table 1、Fig 2)。
考察/結論
本研究は、進行NSCLCの二次治療においてEGFR変異状態がICI対docetaxelのOSに関する潜在的な予測バイオマーカーであることを、これまでの研究 (個々の試験の検出力不足なサブグループ解析) とは異なり、複数試験の統合により初めて統計学的有意性をもって示した点に新規性がある。EGFR野生型群では34%の死亡リスク低減が得られた一方、EGFR変異群ではOSベネフィットが消失した。この既報と対照的な所見は、EGFR変異肺癌の生物学的背景と整合する。EGFR変異腫瘍は腫瘍変異量 (TMB: tumor mutational burden) が低いことが次世代シークエンシング研究で示されており、TMBが高いほどPD-1阻害のベネフィットが大きいという報告 (Rizvi et al. Science 2015) を踏まえると、低TMBが本メタ解析の効果消失を説明する妥当な生物学的根拠となる。PD-L1高発現 (TPS: tumor proportion score ≥50%) であっても、EGFR変異例のpembrolizumab下のmedian OSは6.5か月とEGFR野生型の15.7か月より有意に短く、EGFR変異群ではPD-L1発現の予測的価値が不明確である点も臨床的に重要な含意を持つ。本研究の限界として、19%でEGFR状態が未評価であったこと、変異型の内訳やTKI治療ライン数が不明であったこと、EGFR検査が中央判定でなかったことが挙げられ、これらは後方視的サブグループ解析に内在するlimitationである。臨床応用の観点では、EGFR変異進行NSCLCの二次治療選択においてICI単剤を無批判に適用すべきではなく、一次TKI耐性機序 (T790M変異の有無) の解明に基づく個別化が重要である。今後の課題として、T790M阻害薬と複数ICIの併用、あるいはICIとT790M阻害薬の併用を直接比較する前向き無作為化試験が必要であり、CheckMate 012で示されたnivolumab + ipilimumab併用のPD-1単剤に対する奏効率向上 (50% vs 14%) のような併用戦略がEGFR変異腫瘍の免疫原性を高めうるかの検証が望まれる。本知見は仮説生成的であり慎重に解釈すべきだが、EGFR変異患者の二次治療意思決定における重要な探索的情報を提供する。
方法
MEDLINE、EMBASE、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを対象に、1996年1月から2016年7月までに英語で出版された、二次治療でICIを化学療法と比較した無作為化試験を検索した。検索語はadvanced/metastatic lung neoplasm、checkpoint inhibitor、cytotoxic T-lymphocyte associated protein 4、PD-1、PD-L1、ipilimumab、nivolumab、pembrolizumab、randomized/controlled clinical trial等を用いた。未出版研究の捕捉のためASCO、ESMO、World Lung Cancer Conferenceの抄録も検索した。各試験から研究・患者背景を抽出し、ITT (intention-to-treat) 集団およびEGFR変異状態別サブグループのOSに関するHR (hazard ratio) と95% CI (confidence interval) を取得した。データ抽出は2名の著者が独立に行い、不一致は合議で解決した。統合解析には固定効果モデル (fixed-effects inverse variance-weighted method、逆分散加重法) を用い、治療効果のプール推定値を算出した。EGFRサブグループ間で治療効果が異なるかを検証するために治療-変異交互作用検定 (treatment-mutation interaction test) を実施した。異質性はI²統計量とカイ二乗検定 (chi-square test) で評価した。すべての統計検定は両側 (two-sided) で行った。