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Activation of the PD-1 pathway contributes to immune escape in EGFR-driven lung tumors

  • 著者: Akbay EA, Koyama S, Carretero J, et al.
  • Corresponding author: Wong KK, Dranoff G, Hammerman PS (Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA)
  • 雑誌: Cancer Discovery
  • 発行年: 2013
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 24078774

背景

非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者の一部が抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体による臨床的恩恵を受けることが初期試験で報告されていたが、どの遺伝子サブセットが免疫逃避機序としてPD-1経路を活用しているかは未解明であった。NSCLCにおける最も頻度の高いドライバー変異の一つはEGFRであり、キナーゼドメイン変異(L858R・exon 19欠失)を持つ腫瘍はEGFR-TKIに高感受性を示す一方で、獲得耐性が不可避であるという課題があった。

先行研究では、EGFRシグナルがアンフィレギュリンを介してTreg抑制機能を増強する可能性や、CCL27 (chemokine (C-C motif) ligand 27) 発現低下を介してT細胞誘引を減少させる可能性がメラノーマモデルで示唆されていた (Zaiss et al. Immunity 2013; Pivarcsi et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2007)。しかし、EGFR変異肺癌において腫瘍微小環境 (TME) の免疫抑制状態がどのように形成されるか、特にPD-1/PD-L1経路との関連については全く解析されていなかった。また、EGFR変異肺癌が免疫チェックポイント阻害薬への反応性が低いことも臨床的に示唆されていたが、その分子機序は不明であった。これらの知見の不足が、EGFR駆動型肺腫瘍における免疫逃避メカニズムの理解を妨げていた。

目的

EGFR活性化変異を持つ遺伝子操作マウス肺腫瘍モデルを用いて、EGFR経路活性化が腫瘍免疫微小環境をどのように再構成するかを解析し、特にPD-1/PD-L1経路を介した免疫逃避機序の存在を実証すること。さらに、抗PD-1抗体治療の効果をin vivoで検証し、ヒト細胞株および患者腫瘍検体でのPD-L1発現とEGFRシグナルの関連を確認することを目的とした。

結果

EGFR変異マウス肺腫瘍は免疫抑制性TMEを形成: マイクロアレイ解析の結果、TL腫瘍ではPd-1、Pd-l1、Ctla4、Il-6、Tgfb1、Grn、EGFRリガンド(Ereg、Areg、Btc)が野生型肺と比較して有意に高発現していた (P=3×10⁻²⁰)。PD-L1はFACSによりCD45⁻ヒトEGFR⁺腫瘍細胞とCD45⁺造血細胞の両方で確認され、免疫組織化学でもDel19、TD、TLマウスの腫瘍組織に発現が認められた (Figure 1B, Supplementary Figure S1)。腫瘍浸潤T細胞では、正常肺と比較してCD8⁺/CD4⁺比とCD8⁺/Foxp3⁺比が有意に低下し (P<0.001)、PD-1とFoxp3の発現頻度が有意に上昇した (P<0.0001) (Figure 1C)。CD3⁺T細胞中のFoxp3⁺Tregの大多数がPD-1を共発現していた。BALF解析では、腫瘍担持マウスで対照肺と比較してIL-6、TGFβ1、PGRN、VEGF、GM-CSF、CCL2濃度が有意に上昇した (P<0.02) (Figure 1F)。免疫細胞組成では肺胞マクロファージ数が有意に増加し、NK細胞数は有意に減少した (Figure 1G)。これらの免疫学的変化は腫瘍量の少ない初期段階のn=4 miceでも観察され、EGFR癌遺伝子発現に関連した早期イベントであることが示された。

抗PD-1抗体治療がEGFR変異型全モデルで腫瘍縮小・生存延長をもたらす: 3種のEGFR変異マウスモデル全てでMRIによる腫瘍体積減少と生存延長が確認された (Figure 2A, B)。Del19マウスでは最も劇的な反応が得られ、4週間の治療後にベースライン腫瘍体積の50〜60%の縮小が観察された。詳細な生存データは、Del19モデルで中央値生存期間が治療群16.5週 vs. 無治療群9週 (P<0.0001)、TDモデルで23.5週 vs. 16週 (P=0.0005)、TLモデルで23.5週 vs. 16.5週 (P<0.0001) であった (Figure 2E)。TDマウスでは治療1週間後の腫瘍でTUNELおよび切断型caspase-3陽性細胞の有意な増加が確認され、直接的な腫瘍細胞アポトーシス誘導が示された (Figure 2C, D)。対照的に、PD-L1を高発現するにもかかわらずKRAS変異トランスジェニックマウス (n=6 mice) では抗PD-1抗体に対して有意な反応が得られなかった (Supplementary Figure S6A-S6C)。これはPD-L1発現の有無以外の要因が治療反応性を規定することを示し、EGFR変異とKRAS変異腫瘍での免疫逃避機序の質的な違いを示唆した。

PD-1遮断がT細胞機能を回復させ免疫抑制性TMEを再構成する: 治療後の免疫解析では、抗PD-1抗体はCD3⁺T細胞とCD8⁺T細胞の総数を有意に増加させたが、Treg数は変化しなかった (Figure 3C)。T細胞機能はIFNγ産生の有意な改善として確認され (IL-2は変化なし)、IFNγ産生CD8⁺T細胞が有意に増加した (Figure 3D)。組織化学的にも抗PD-1抗体治療後に腫瘍結節へのCD3⁺T細胞浸潤増加が確認された (P=0.01) (Figure 3E)。BALF中では、治療前に上昇していたIL-6、TGFβ1、PGRNが有意に低下した (Del19、TDモデルの両方で) (Figure 3F)。IFNγ誘導性ケモカインCXCL10が治療後に有意に上昇し、その受容体CXCR3がCD8⁺T細胞で高発現していた。Del19モデルで肺胞マクロファージの総数が有意に減少した (Figure 3G)。EGFR変異マウスの腫瘍関連肺胞マクロファージを分取した解析でIl-6、Tgfb、Grnの発現が確認され、これらの免疫抑制因子の産生細胞として同定された。

EGFR変異がPD-L1発現を直接誘導し、EGFR-TKIがPD-L1を低下させる: ヒトNSCLC細胞株パネルのマイクロアレイ解析では、PD-L1・PD-L2発現がEGFRおよびEGFRリガンド発現と有意に相関した (combined P<10⁻¹⁵) (Figure 4A)。EGFR変異株6株全てでフローサイトメトリーによるPD-L1タンパク高発現が確認された。BEAS-2B気管支上皮細胞へのEGFR変異 (TD) の安定発現はPD-L1のmRNA・タンパク発現を増加させた一方、KRAS G12Vの発現では増加しなかった (Figure 4B)。これによりEGFR癌遺伝子シグナルが細胞自律的なPD-L1誘導を直接駆動することが示された。ゲフィチニブ感受性のEGFR変異株(PC-9、HCC827)をゲフィチニブのsublethal用量で処理すると、細胞生存に影響しない条件下でPD-L1タンパク発現が明確に低下した (Figure 4C)。さらに、T790M変異を持つゲフィチニブ耐性株(H1975、PC-9R)では変異選択的EGFR TKI WZ4002によってのみPD-L1が低下し、ゲフィチニブでは低下しなかった (Figure 4D)。EGFR野生型だがEGFR経路が活性化しているH358細胞でもゲフィチニブ処理でPD-L1が低下した (Figure 4E)。これらの結果はPD-L1発現がEGFR変異の有無にかかわらずEGFRシグナルに依存することを示した。EGFR変異陽性患者の肺腫瘍検体 (n=12 patients) のIHCでは、9例 (75%) で腫瘍細胞および/または骨髄系細胞にPD-L1陽性染色が確認された (Figure 4F)。

考察/結論

本研究は、EGFR癌遺伝子が腫瘍細胞増殖・生存への直接効果に加え、腫瘍免疫微小環境の再構成を通じた「非細胞自律的」メカニズムによっても機能することを初めて実証した点で画期的である。EGFR活性化はPD-L1発現誘導、IL-6、TGFβ1、PGRNなどの免疫抑制性サイトカイン産生、Tregおよび肺胞マクロファージの腫瘍内蓄積を促進し、多層的な免疫抑制環境を構築する。

先行研究との違い: 抗PD-1抗体治療がEGFR変異型全3モデルで有意な生存延長をもたらした一方で、KRAS変異モデルでは奏効しなかったことは、Topalian et al. NEnglJMed 2012Brahmer et al. NEnglJMed 2012で示唆されたPD-L1発現の有無だけでなく、腫瘍の「免疫原性」やT細胞疲弊の程度が治療反応性の規定因子として重要であることを示唆する。これは、その後の臨床試験でEGFR変異肺癌がPD-1/PD-L1阻害薬への反応率が低い(5〜15%)という観察とは一見対照的である。本研究のマウスモデルではヒトcDNAトランスジーンを使用しており、ヒト腫瘍ではより多くの腫瘍変異負荷 (TMB) が存在することによるT細胞反応の質的・量的差異が要因として考えられる。

新規性: 本研究で初めて、EGFR-TKI治療がPD-L1発現を低下させるという新規の知見が得られた。これは、EGFR-TKIが直接的な抗腫瘍効果に加えて、腫瘍微小環境の免疫抑制状態を緩和するという「免疫回復効果」を持つ可能性を示唆する。

臨床応用: この知見は、EGFR-TKIと免疫療法の逐次投与または併用戦略の分子的根拠を提供する。特に、EGFR-TKIによるPD-L1発現低下は、腫瘍細胞の免疫逃避能力を弱め、その後の免疫療法の効果を高める可能性があり、臨床応用への大きな意義を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、EGFR変異肺癌における免疫療法の有効性が限定的である理由をさらに詳細に解明する必要がある。また、Curran et al. ProcNatlAcadSciUSA 2010Wolchok et al. NEnglJMed 2013で示されたように、PD-1遮断とCTLA-4遮断の組み合わせの検討も残された課題として提起される。

方法

マウスモデル: 以下の3種のEGFR変異誘導性トランスジェニックマウスモデルを使用した。(1) Del19 (exon 19欠失): エルロチニブに応答、(2) TL (T790M/L858R): エルロチニブ耐性、WZ4002に一過性応答、(3) TD (T790M/Del19): エルロチニブ耐性、WZ4002に一過性応答。CC10 (Clara cell 10 kDa protein) プロモーター駆動のrtTAとテトラサイクリン誘導性ヒトEGFR cDNAの二重陽性マウスをドキシサイクリン食(5〜6週齢から開始)で腫瘍誘導した。C57Bl/6、FVB、S129の混合バックグラウンドのn=4-6 miceを使用し、野生型対照マウスも解析に含めた。

免疫微小環境の解析: マイクロアレイ発現プロファイリング(TL vs. 対照)により、Pd-1 (programmed cell death 1)、Pd-l1 (programmed death-ligand 1)、Ctla4 (cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)、Il-6 (interleukin-6)、Tgfb1 (transforming growth factor beta 1)、Grn (granulin) などの遺伝子発現を比較した (P=3×10⁻²⁰)。フローサイトメトリーを用いて腫瘍浸潤T細胞のCD8/CD4比、CD8/Foxp3比、PD-1、Foxp3、CTLA-4、LAG-3、Tim-3の発現を評価した。BALF (bronchoalveolar lavage fluid) 中のIL-6、TGFβ1、PGRN、VEGF、GM-CSF、CCL2濃度をELISAで定量した。NK細胞、肺胞マクロファージ、B細胞、顆粒球などの免疫細胞絶対数をフローサイトメトリーで測定した。

抗PD-1抗体治療実験: MRIで腫瘍が確認されたDel19、TL、TDマウスにラット抗PD-1 mAb(クローン29F.1A12、200 μg/回、週3回、腹腔内)を投与した。対照群にはラットIgG2aアイソタイプ抗体を投与した。MRIで腫瘍体積変化を計測し(ベースラインとの比較)、TUNEL染色および切断型caspase-3染色でアポトーシスを定量した。Kaplan-Meier生存解析(ログランク検定)を実施した。治療1週間後に腫瘍を回収し、T細胞サブセットおよびサイトカインを解析した。

PD-1遮断効果の免疫機序解析: 抗PD-1抗体との結合を確認した後、CD3⁺、CD8⁺T細胞、Tregの変化、IFNγ産生(intracytoplasmic staining)、BALF中サイトカイン(IL-6、TGFβ1、PGRN)、肺胞マクロファージ数を測定した。

EGFR経路とPD-L1の関係: (1) NSCLC細胞株パネル(Barretina et al. Nature 2012のCancer Cell Line Encyclopediaデータ)でのPD-L1/PD-L2とEGFRシグナル関連遺伝子の発現相関をピアソン相関で解析した (P<10⁻¹⁵)。(2) BEAS-2B気管支上皮細胞にEGFR変異 (TD) またはKRAS G12VをPLCPXベクターで安定発現させ、PD-L1発現をqPCRとフローサイトメトリーで評価した。(3) ゲフィチニブ感受性NSCLC株(PC-9、HCC827)またはゲフィチニブ耐性株(H1975、PC-9R、T790M保有)にsublethal用量のゲフィチニブ/WZ4002を処理し、PD-L1タンパク発現をフローサイトメトリーで測定した。(4) EGFR変異陽性肺腫瘍患者12例のFFPE検体でPD-L1 IHCを実施した。

KRAS駆動腫瘍対照: KRAS変異トランスジェニックマウスにも同様の抗PD-1治療を実施し、EGFR変異腫瘍との比較を行った。