Article data
Crizotinib in ROS1-rearranged advanced non-small-cell lung cancer (NSCLC): updated results, including overall survival, from PROFILE 1001
- 著者: Shaw AT, Riely GJ, Bang YJ, Kim DW, Camidge DR, Solomon BJ, Varella-Garcia M, Iafrate AJ, Shapiro GI, Usari T, Wang SC, Wilner KD, Clark JW, Ou SI
- Corresponding author: Alice T. Shaw, MD, PhD (Massachusetts General Hospital Cancer Center, Boston, MA, USA)
- 雑誌: Annals of Oncology
- 発行年: 2019
- Epub日: 2019-07-10
- Article種別: Original Article
- PMID: 30980071
背景
ROS1再構成は、非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者の約1〜2%に認められる重要なドライバー変異である。この再構成は、染色体異常によってROS1融合キナーゼが生成され、これが構成的かつリガンド非依存的なシグナル伝達を活性化することで細胞の形質転換を促進する。ROS1は、ALKおよびMETといった他の受容体チロシンキナーゼ (RTK) と高い配列相同性を持つため、クリゾチニブがALK、ROS1、METを三重に選択的に阻害することが可能である。クリゾチニブは、経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) であり、これらのドライバー変異を有するNSCLCに対して高い有効性を示すことが知られている。ROS1融合遺伝子によって引き起こされる腫瘍形成のメカニズムについては、Rikova et al. Cell 2007 や Bergethon et al. JClinOncol 2012、Davies et al. ClinCancerRes 2012 などの先行研究によって詳細に報告されている。
PROFILE 1001 (phase I、NCT00585195) 試験のROS1陽性NSCLC拡大コホートにおける初回報告では、50例の患者を中央値16.4ヶ月追跡した結果、客観的奏効率 (ORR) が72% (95% CI, 58-84%)、奏効期間 (DOR) 中央値が17.6ヶ月 (95% CI, 14.5-NR)、無増悪生存期間 (PFS) 中央値が19.2ヶ月 (95% CI, 14.4-NR) という顕著な抗腫瘍活性が示された Shaw et al. NEnglJMed 2014。これらの有望な結果に基づき、クリゾチニブは米国で2016年3月、欧州で2016年8月にROS1陽性進行NSCLCに対する適応で承認され、現在では世界70カ国以上で承認されている。
しかし、初回報告時点では全生存期間 (OS) のデータが未成熟であり、ROS1陽性NSCLC患者における長期的な生存に関する明確なベンチマークは確立されていなかった。特に、多くの患者が前治療を受けている状況下でのクリゾチニブの長期効果を評価するデータが不足しており、ROS1融合陽性進行NSCLCにおける治療戦略の最適化に貢献するための知識ギャップが残されていた。本研究は、この知識のギャップを埋め、ROS1陽性進行NSCLC患者におけるクリゾチニブの長期的な有効性と安全性を評価することを目的とした。
目的
本研究の目的は、PROFILE 1001試験のROS1コホート (n=53) において、中央値62.6ヶ月という長期追跡期間で得られた成熟した全生存期間 (OS) データ、ならびに長期的な有効性 (客観的奏効率 [ORR]、奏効期間 [DOR]、無増悪生存期間 [PFS]) および安全性データを報告することである。これにより、ROS1融合陽性進行NSCLC患者における新たなOSベンチマークを確立することを目指した。初回報告ではOSデータが未成熟であったため、本更新解析は、クリゾチニブの長期的な臨床的有用性を明確にし、この分子サブタイプにおける治療戦略の最適化に貢献することを目指した。また、ROS1融合パートナーの種類がOSに影響を与えるかどうかを評価することも目的とした。特に、多くの患者が前治療を受けている状況下でのクリゾチニブの長期効果を評価することは、臨床現場において重要な意義を持つ。
結果
奏効率と奏効の持続性: 53例を対象としたintention-to-treat (ITT) 解析において、客観的奏効率 (ORR) は72% (95% CI, 58-83%) であった。内訳は、完全奏効 (CR) が6例 (11%)、部分奏効 (PR) が32例 (60%)、安定疾患 (SD) が10例 (19%)、病勢進行 (PD) が3例 (6%)、評価不能が2例 (4%) であった (Table 2)。奏効は迅速に発現し、奏効までの中央値期間は7.9週 (範囲4.3〜103.6週) であり、最初の腫瘍評価時期と一致した。奏効期間 (DOR) 中央値は24.7ヶ月 (95% CI, 15.2-45.3) と長期にわたって維持された。データカットオフ時点で、36例 (68%) が疾患進行または死亡を経験した。無増悪生存期間 (PFS) 中央値は19.3ヶ月 (95% CI, 15.2-39.1) であった。これらの結果は、初回報告のORR 72%およびPFS中央値19.2ヶ月と極めて一貫しており、クリゾチニブの効果の再現性と長期的な安定性を示した。
全生存期間 (OS) の主要成熟データ: 中央値62.6ヶ月のフォローアップ期間において、26例 (49%) が死亡した。全生存期間 (OS) 中央値は51.4ヶ月 (95% CI, 29.3〜not reached [NR]) であった (Figure 1, Table 3)。生存確率は、6ヶ月で91% (95% CI, 79-96%)、12ヶ月で79% (95% CI, 65-88%)、24ヶ月で67% (95% CI, 52-78%)、36ヶ月で53% (95% CI, 38-66%)、48ヶ月で51% (95% CI, 36-64%) であった。データカットオフ時点で、27例 (51%) が生存中であり、そのうち14例 (26%) がフォローアップを継続中であった。この51.4ヶ月というOS中央値は、87%の患者が少なくとも1レジメンの前治療を受けていた集団 (中央値2レジメンの前治療) から得られた点で特に意義深く、ROS1陽性進行NSCLCにおける初めての成熟したOSベンチマークを提供するものである。
ROS1融合パートナーとOS: 融合パートナー解析が可能な30例において、7種類のROS1融合パートナーが同定された。最も多かったのはCD74 (11例) であり、次いでEZRおよびSDC4 (各4例)、SLC34A2 (3例)、LIMA1、MSN、TPM3 (各1例) であった。特定のROS1融合パートナーとOSとの間に有意な相関は認められず、各融合パートナー群内で生存期間に大きなばらつきが見られた (Figure 2)。例えば、CD74融合パートナーを持つ患者群では、OSが20ヶ月未満の患者から60ヶ月を超える患者まで幅広い分布を示した。この結果は、クリゾチニブの有効性がROS1融合パートナーの種類に依存しないことを示唆しており、すべてのROS1融合陽性NSCLC患者に対して均一な治療効果が期待できることを示している。
安全性プロファイル: 中央値22.4ヶ月 (95% CI, 15.0-35.9) の治療期間は、初回報告の14.8ヶ月から延長した。データカットオフ時点で12例 (23%) が治療を継続中であった。41例 (77%) が治療を永続的に中止し、主な中止理由は疾患進行 (45%)、臨床的悪化 (15%)、同意撤回 (11%) であった。全53例で何らかの治療関連有害事象 (TRAE) が認められたが、その大部分はグレード1または2の軽度なものであった。最も頻繁に報告されたTRAE (30%以上) は、視覚障害 (87%)、悪心 (51%)、浮腫 (47%)、下痢 (45%)、嘔吐 (38%)、トランスアミナーゼ上昇 (36%)、便秘 (34%) であった (Table 4)。グレード3のTRAEとしては、低リン血症 (15%)、好中球減少 (9%)、トランスアミナーゼ上昇 (4%)、嘔吐 (4%) が報告された。グレード4または5のTRAEは認められなかった。TRAEによる永続的な治療中止例はゼロであり、中央値22.4ヶ月という長期投与を経ても、初回報告から新たな安全性シグナルは認められなかった。
他試験との比較: ROS1陽性進行NSCLCを対象とした他の前向き試験との比較では、東アジアのphase II試験 (n=127) において、ORR 72%、PFS中央値15.9ヶ月 (95% CI, 12.9-24.0)、DOR中央値19.7ヶ月 (95% CI, 14.1-NR) と、本試験に類似した結果が報告されている Wu et al. JClinOncol 2018。フランスのAcSé試験 (n=37) では、ORR 68% (95% CI, 50-82%) であったが、PFS中央値は5.5ヶ月 (95% CI, 4.6-9.1) と比較的短く、これはECOG PS 2の患者が25%含まれるなど、患者選択バイアスの可能性が示唆される Moro et al. AnnOncol 2019。セリチニブのphase II試験 (n=32) では、クリゾチニブ未治療患者においてORR 67% (95% CI, 48-81%)、PFS中央値19.3ヶ月 (95% CI, 1-37) であった Lim et al. JClinOncol 2017。しかし、セリチニブのOS中央値は24ヶ月 (95% CI, 5-43) と報告されており、本試験の51.4ヶ月と比較して著しく短い。これは両試験の患者背景の違いを考慮しても、本試験のOSが非常に高水準であることを示している。また、ALK陽性NSCLCの一次治療におけるクリゾチニブ (PROFILE 1014) の4年生存率56.6% (95% CI, 45.8-NR) と、本試験 (既治療ROS1陽性) の4年生存率51% (95% CI, 36-64%) が同水準であることも注目すべき知見であった Solomon et al. JClinOncol 2018。
考察/結論
先行研究との違い: 本更新解析は、ROS1陽性進行NSCLC患者におけるクリゾチニブの長期的な全生存期間 (OS) データ (中央値51.4ヶ月、4年生存率51%) を初めて成熟した形で提示した。これは、これまで報告されていた他のROS1 TKI試験のOS中央値 (例: セリチニブの24ヶ月) と比較して著しく長く、クリゾチニブがROS1陽性NSCLC患者に長期的な生存利益をもたらすことを明確に示した点で、先行研究と対照的な結果である。87%の患者が前治療を受けていた集団から得られたものであり、多くの前治療を受けた患者においてもクリゾチニブが疾患改変効果を持つことを強く示唆する。PROFILE 1014試験で報告された一次治療ALK陽性NSCLC患者におけるクリゾチニブの4年生存率56.6% (95% CI, 45.8-NR) と本試験の4年生存率51% (95% CI, 36-64%) が同水準であったことは、ALKとROS1という異なる分子サブタイプが、いずれもクリゾチニブに対して持続的な感受性を示し、腫瘍がこれらのキナーゼに高度に依存していることを示している。これは、Shaw et al. NEnglJMed 2013 や Solomon et al. NEnglJMed 2014 の報告とも一致する。
新規性: 本研究で初めて、ROS1融合パートナーの種類とOSとの間に明確な相関が認められないことが示された。これは、クリゾチニブの有効性が特定の融合パートナーに限定されず、ROS1再構成全体にわたって均一な治療効果が期待できるという新規の知見である。
安全性プロファイルと臨床応用: 安全性については、中央値22.4ヶ月という長期投与期間を経ても新たな安全性シグナルは認められず、治療関連有害事象 (TRAE) による永続的な治療中止例がゼロであった点は、臨床実践におけるクリゾチニブの長期使用の安全性を裏付けるものである。視覚障害 (87%) はクリゾチニブに特徴的なTRAEであるが、グレード3/4の重症例は皆無であり、患者への事前説明と適切なモニタリングにより管理可能である。低リン血症のグレード3が15%と最も頻度の高いグレード3/4 TRAEであったため、定期的な電解質モニタリングが推奨される。本研究で示されたOS中央値51.4ヶ月は、ROS1陽性進行NSCLCの治療における新たなベンチマークとして機能し、今後のROS1に対する新規TKI (例えば、エンレクチニブ、ロルラチニブ、レポトレクチニブなど) の臨床試験において、比較対照となる重要な基準を提供する。
残された課題: クリゾチニブは脳転移に対する中枢神経移行性が不十分であることが知られており、CNS転移合併例においては、より優れた脳透過性を持つ次世代ROS1 TKIによる上乗せ効果が期待される。今後の検討課題としては、クリゾチニブ耐性メカニズムのさらなる解明と、それらを克服する治療戦略の開発が挙げられる。
結論: PROFILE 1001 ROS1コホート (n=53) の中央値62.6ヶ月追跡の更新解析は、クリゾチニブがROS1陽性進行NSCLCに対して、ORR 72%、PFS中央値19.3ヶ月、DOR中央値24.7ヶ月、そしてOS中央値51.4ヶ月 (4年生存率51%) という持続的かつ顕著な有効性を示すことを確認した。長期治療においても新たな安全性シグナルはなく、TRAEによる治療中止例はゼロであった。この成熟したOSデータは、ROS1陽性進行NSCLCにおける新たなベンチマークを確立し、クリゾチニブの継続使用を支持するとともに、次世代ROS1 TKI試験の対照基準を提供する点で臨床的意義は大きい。
方法
本解析は、PROFILE 1001試験のROS1陽性コホートの53例を対象とした。この53例には、初回報告の50例に加え、ALK陰性コホートから遡及的にROS1陽性と確認された3例が追加されている。適格基準は、ROS1再構成陽性 (蛍光in situハイブリダイゼーション [FISH] で15%超の核に再構成が認められるか、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 [RT-PCR] で確認) が確認された18歳以上の局所進行または転移性NSCLC患者であり、Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Status (PS) が0〜2であることが求められた。
クリゾチニブは、250 mgを1日2回経口投与する28日サイクル (ALK陰性コホートの3例は21日サイクル) で、疾患進行、許容できない毒性、同意撤回、または死亡まで継続された。腫瘍評価は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST) v1.0 (ROS1コホートの50例) またはRECIST v1.1 (3例) に基づき、8週ごとに実施された (最大15サイクル到達後は16週ごと)。
ROS1融合パートナーの解析は、利用可能な30例の腫瘍組織または核酸を用いて実施された。このうち27例では標的次世代シーケンシング (NGS) が、3例ではRT-PCRが用いられた。ROS1融合パートナーとして、CD74、EZR、SDC4、SLC34A2、LIMA1 (LIMドメインおよびアクチン結合ドメイン含有1)、MSN (モエシン)、TPM3 (トロポミオシン3) などが同定された。安全性評価は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v3.0に従って行われた。データカットオフは2018年6月30日であり、初回報告から追加で46.2ヶ月のフォローアップ期間を含む更新解析である。
統計解析には、すべてのクリゾチニブを少なくとも1回投与された患者が含まれた。ORRの信頼区間 (CI) は、F分布に基づく正確二項法を用いて推定された。時間-イベントデータは、Kaplan-Meier法を用いて中央イベント時間を推定し、Brookmeyer-Crowley法により両側95% CIが算出された。すべての解析はSAS統計ソフトウェアv9.2以降 (SAS Institute, Inc., Cary, NC) を用いて実施された。本試験はClinicalTrials.gov identifier NCT00585195として登録されている。