- 著者: Joachim von Pawel, Joan H. Schiller, Frances A. Shepherd, Scott Z. Fields, J.P. Kleisbauer, Nick G. Chrysson, David J. Stewart, Peter I. Clark, Martin C. Palmer, Alain Depierre, James Carmichael, Jacqueline B. Krebs, Graham Ross, Stephen R. Lane, Richard Gralla
- Corresponding author: Joachim von Pawel (Zentralkrankenhaus Gauting, Abteilung Onkologie, Gauting bei Muenchen, Germany)
- 雑誌: Journal of Clinical Oncology
- 発行年: 1999
- Epub日: 1999-02-01
- Article種別: Original Article
- PMID: 10080612
背景
小細胞肺癌 (SCLC) は、初回化学療法に対して極めて高い感受性を示し、65%から90%に達する良好な奏効率が得られるものの、その奏効期間は極めて短く、ほとんどの患者が治療後に再発を経験する。限局期 (LD) SCLC の中央生存期間は10から16ヶ月、5年生存率は18%であり、進展期 (ED) SCLC では中央生存期間6から12ヶ月、5年生存率は1%から2%と、依然として長期予後は不良である。再発SCLCの二次治療においては、初回治療終了から再発までの期間を示す TFI (treatment-free interval) が重要な予後因子として認識されている。一般的に、TFIが90日未満の再発は「refractory relapse」、90日以上の再発は「sensitive relapse」と分類される。sensitive relapseの患者では二次治療による奏効が期待できる一方で、refractory relapseの患者ではほとんどの薬剤で奏効率が10%以下と低く、有効な二次治療の標準レジメンは確立されていなかった。
当時、エトポシドとシスプラチン (EP) を含む初回治療後の二次治療として、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンからなるCAV療法が広く用いられていた。しかし、二次CAV療法の奏効率は13%から28%と限定的であり、新たな治療選択肢が強く求められていた。特に、二次治療の目標が症状緩和と生活の質の維持にあることを考慮すると、単なる延命効果だけでなく、症状改善効果も重要な評価項目となる。
TopotecanはトポイソメラーゼI阻害剤であり、前臨床モデルにおいて様々な化学療法耐性腫瘍に対して有効性を示すことが報告されていた。SCLCの二次治療を対象とした複数の第II相臨床試験では、topotecan単剤療法がsensitive relapseの患者に対して18%から38%の奏効率と約30週の中央生存期間を示すことが報告されていた (Ardizzoni et al)。これらの有望な結果に基づき、topotecanがsensitive relapseのSCLC二次治療においてCAV療法と比較して同等以上の有効性を示す可能性が示唆された。しかし、これらの先行研究は単群の第II相試験であり、対照群との直接比較による有効性、安全性、および症状改善効果の評価が不足していた。特に、CAV療法との直接比較を行う大規模な第III相試験は実施されておらず、topotecanのSCLC二次治療における位置づけを確立するためには、より厳密なエビデンスが必要とされていた。本研究は、sensitive relapseのSCLC二次治療としてtopotecan単剤療法とCAV療法を直接比較する初の国際多施設共同第III相試験として実施され、この知識ギャップを埋めることを目的とした。
しかし、先行研究である Roth et al. JClinOncol 1992 や Girling et al. Lancet 1996 においても、再発SCLCに対する最適な二次治療の確立には至っておらず、生存期間の延長とQOL維持の両立に関するデータは不足していた。特に、単剤療法と多剤併用療法の直接比較における詳細な症状緩和効果の差異は未解明であり、患者報告アウトカムを組み込んだランダム化比較試験のエビデンスが圧倒的に不足しているという課題が残されている状況であった。
目的
本研究の目的は、初回化学療法終了から60日以上経過して再発したsensitive relapseの小細胞肺癌 (SCLC) 患者を対象に、topotecan単剤療法とシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン (CAV) 併用療法の有効性、安全性、および症状改善効果を比較評価することである。主要評価項目 (primary endpoint) は奏効率 (response rate) と奏効持続期間 (duration of response) とし、副次評価項目として無増悪生存期間 (time to progression)、全生存期間 (overall survival, OS)、time to response、および患者報告アウトカム (patient-reported outcomes, PRO) である疾患関連症状の改善効果を評価した。これにより、再発SCLCの二次治療におけるtopotecanの臨床的有用性を確立し、標準治療としての可能性を検討することを意図した。
結果
患者背景と治療曝露: 合計211例の患者がランダム化され、topotecan群にn=107、CAV群にn=104が割り付けられた。両群間で患者背景因子は概ね均衡していたが、女性の割合 (topotecan群 43% vs CAV群 32%, p=0.091) およびベースライン時の脳転移の有無 (topotecan群 11.2% vs CAV群 24.0%, p=0.044) に若干の不均衡が認められた (Table 1)。平均年齢は約61歳、男性が約60%、LDが約30%、EDが約70%、PS 0-1が約75%であった。初回化学療法は両群ともに約97%がエトポシド含有レジメンであり、77% (topotecan群) および79% (CAV群) がプラチナ製剤とエトポシドの併用であった。Topotecanは446コース、CAVは359コースが投与され、目標用量はそれぞれ76%および77%のコースで維持された (Table 2)。
奏効率および生存期間の比較: 主要評価項目である奏効率は、topotecan群で24.3% (95% CI 16.2-32.4, 26/107) であったのに対し、CAV群では18.3% (95% CI 10.8-25.7, 19/104) であり、両群間に統計学的な有意差は認められなかった (p=0.285) (Table 3)。無増悪生存期間の中央値は、topotecan群で13.3週、CAV群で12.3週であり、有意差は認められなかった (p=0.552)。全生存期間 (OS) の中央値は、topotecan群で25.0週、CAV群で24.7週であり、両群間で有意差は認められなかった (HR 1.039, 95% CI 0.80-1.35, p=0.795) (Figure 1, Table 4)。6ヶ月生存率はtopotecan群で46.7%、CAV群で45.2%とほぼ同等であった。
疾患関連症状の改善効果: SCLC特異的症状質問票による評価では、topotecan群がCAV群と比較して、複数の症状において有意な改善率を示した (Table 5)。呼吸困難の改善率はtopotecan群 27.9% vs CAV群 6.6% (p=0.002)、食欲不振の改善率はtopotecan群 32.1% vs CAV群 15.8% (p=0.042)、嗄声の改善率はtopotecan群 32.5% vs CAV群 13.2% (p=0.043)、倦怠感の改善率はtopotecan群 22.9% vs CAV群 9.2% (p=0.032)、日常生活への支障の改善率はtopotecan群 26.9% vs CAV群 11.1% (p=0.023) であり、いずれもtopotecan群で有意に優れていた。
血液学的および非血液学的毒性: 血液毒性において、Grade 4の好中球減少はCAV群で高頻度であり、51.4% (179/348コース) vs topotecan群 37.8% (166/439コース) であった (p<0.001) (Table 6)。一方、Grade 4の血小板減少はtopotecan群で9.8% (43/441コース) vs CAV群 1.4% (5/350コース) と有意に高頻度であり (p<0.001)、Grade 3/4の貧血もtopotecan群で17.3% (76/440コース) vs CAV群 7.2% (25/351コース) と有意に高頻度であった (p<0.001)。非血液毒性では、Grade 3以上の毒性による用量減量がCAV群で10.6% (11/104) であったのに対し、topotecan群では0.9% (1/107) と有意に低頻度であった (p=0.003) (Table 7)。
サブグループ解析および多変量解析: 初回治療から再発までの期間が60〜90日の超早期再発サブグループにおける奏効率は、topotecan群で13.6% (3/22) であったのに対し、CAV群では4.8% (1/21) であった。また、多変量ロジスティック回帰分析の結果、ベースライン時の肝転移の有無 (p=0.043) および性別 (p=0.008) が奏効率に対する有意な独立した予後因子として同定された。共変量調整後においても、topotecan群はCAV群に対して良好な奏効傾向を示した (オッズ比 1.24, 95% CI 0.61-2.52, p=0.557)。生存期間に関する Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析では、ベースラインのPS (p<0.001)、病期 (p<0.001) に加え、性別 (p<0.05)、肝転移の有無 (p<0.05)、脳転移の有無 (p<0.05) が有意な予後因子であったが、これらを調整した後も治療群間のOSに有意差は認められなかった (HR 1.17, 95% CI 0.86-1.59, p=0.322) (Figure 1)。
考察/結論
本第III相臨床試験は、初回化学療法後60日以上経過して再発したsensitive relapseの小細胞肺癌 (SCLC) 患者において、topotecan単剤療法がCAV併用療法に対して、奏効率、無増悪生存期間、および全生存期間において統計学的に有意な差はないものの、少なくとも同等の有効性を示すことを明確に示した。
先行研究との違い: 過去のtopotecan単剤の第II相試験である Ardizzoni et al では、sensitive集団で18%から38%の奏効率が報告されていたが、本研究はCAVという確立された標準治療との直接比較により、その有効性をより厳密なエビデンスレベルで確認した点でこれまでと異なり、単剤療法の位置づけを強固にした。また、経口エトポシドと多剤併用化学療法を比較した先行研究である Girling et al. Lancet 1996 などの知見と比較しても、本試験は単剤療法でありながら3剤併用療法と同等の生存ベネフィットを証明した点で極めて重要な位置づけを持つ。
新規性: 本研究の最も重要な新規性は、奏効率や生存期間に有意差がない状況下で、患者報告アウトカムである症状改善効果においてtopotecanがCAVを上回ることを本研究で初めて示した点である。呼吸困難、食欲不振、嗄声、倦怠感、および日常生活への支障の改善は、SCLC二次治療の主要な目的が症状緩和であるという臨床的意義を強く裏付ける。
臨床応用: 本研究の結果に基づき、topotecanはSCLC二次治療薬として承認され、以降長年にわたり再発SCLCの標準治療として臨床現場に定着した。特に、CAVとtopotecanの血液毒性プロファイルの違いは、患者の既往歴やベースラインの血液学的状態に応じて薬剤を選択する際の重要な臨床的有用性を提供する。
残された課題: 今後の検討課題として、本試験の対象外であったrefractory relapseのSCLC患者に対する有効な二次治療選択肢の探索が残された課題である。また、近年承認された新規薬剤との比較や、免疫療法既治療後の二次治療におけるtopotecanの位置づけの再評価も、現代のSCLC治療における重要な今後の研究方向性である。
方法
本研究は、国際多施設共同のランダム化比較試験 (randomized controlled trial, RCT) である第III相試験 (phase III trial) として実施された。対象患者は、組織学的にSCLCと診断され、初回化学療法完了から60日以上経過した相対的sensitive relapseの患者であった。主要な適格基準は、2方向測定可能な病変を有すること、ECOGパフォーマンスステータス (PS) が2以下であること、および十分な骨髄、肝臓、腎臓機能を有することであった (Hb ≥9.0 g/dL、WBC ≥3.5×10⁹/L、好中球 ≥1.5×10⁹/L、血小板 ≥100×10⁹/L、ビリルビン ≤2.0 mg/dL、トランスアミナーゼ ≤2× ULN (肝転移なしの場合)、クレアチニン ≤1.5 mg/dLまたはCrCl ≥60 mL/min)。症候性脳転移や既存の心疾患を有する患者は除外された。
患者は、病期 (LD/ED) とベースラインPSで層別化された上で、以下のいずれかの治療群にランダムに割り付けられた。
- Topotecan群: topotecan 1.5 mg/m²/dを30分間点滴静注で5日間連続投与し、21日を1サイクルとした。Grade 2以上の非血液毒性が認められない場合、最大2.0 mg/m²まで増量可能であった。
- CAV群: シクロホスファミド 1000 mg/m² (最大2000 mg)、ドキソルビシン 45 mg/m² (最大100 mg)、ビンクリスチン 2 mgをサイクル1日目に静注し、21日を1サイクルとした。
治療は、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで、あるいは最大奏効後6サイクルまで継続された。安定病変 (SD) の患者は、4サイクル後に主治医の判断で治療継続の可否が決定された。
主要評価項目 (primary endpoint) は、世界保健機関 (WHO) の基準に基づく奏効率 (完全奏効 [CR] または部分奏効 [PR]) と奏効持続期間であった。奏効は盲検化された独立画像審査委員会によって確認された。副次評価項目は、time to progression、time to response、全生存期間 (OS)、および疾患関連症状の改善効果であった。症状改善は、8つのSCLC特異的症状 (呼吸困難、咳、胸痛、喀血、食欲不振、不眠、嗄声、倦怠感) および日常生活への支障を評価する質問票を各サイクル前に実施することで評価された。症状改善は、ベースラインからの2サイクル連続での改善と定義された。
統計解析においては、time-to-event変数の比較のために Kaplan-Meier 法を用いて生存曲線を描き、log-rank test にて群間比較を行った。また、予後因子の多変量解析には Cox proportional hazards モデル (Cox regression) を用いてハザード比 (hazard ratio, HR) および 95% 信頼区間 (confidence interval, CI) を算出した。さらに、カテゴリカルデータの比較には Pearson’s chi-square test を用いた。