• 著者: Paul D. Robbins, Adrian E. Morelli
  • Corresponding author: Paul D. Robbins (The Scripps Research Institute, Jupiter, FL, USA); Adrian E. Morelli (University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA, USA)
  • 雑誌: Nature Reviews Immunology
  • 発行年: 2014
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Review
  • PMID: 24566916

背景

ほぼ全ての細胞種が細胞外小胞 (extracellular vesicle: EV) を放出することが 2000 年代に入り広く認識された。EV は主に 2 種類に大別される: (1) エクソソーム (exosome、直径 30-100 nm、多胞体 [multivesicular body: MVB] 由来の内腔小胞 [intraluminal vesicle: ILV] が MVB-形質膜 [plasma membrane: PM] 融合で放出)、(2) マイクロベシクル (microvesicle、直径 >200 nm、形質膜の外向き出芽 [outward budding] 直接産物、microparticle・ectosome とも呼称される) (Raposo et al. JCellBiol 2013Colombo et al. AnnuRevCellDevBiol 2014 関連)。これらの EV は血漿、乳汁、精液、唾液、尿、喀痰など多様な体液中に検出され、親細胞のタンパク質、脂質、mRNA、microRNA (miRNA)、ノンコーディング RNA、extra-chromosomal DNA (例: 増幅されたMYCなど、Skog et al. NatCellBiol 2008) の選択的サブセットを含有し、局所および全身的な細胞間情報伝達 (intercellular communication) に関与する。Valadi et al. 2007 (Valadi et al. NatCellBiol 2007) による mRNA/miRNA の細胞間転送の発見は EV 研究にパラダイムシフトを引き起こした。

EV は親細胞由来の接着分子、細胞骨格分子、熱ショックタンパク質 (HSP60、HSC70)、細胞質酵素、シグナル伝達タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼ、細胞特異的抗原 (MHC class I/II、テトラスパニン CD9/CD63/CD81、CD55/CD59) を選択的に含む。B 細胞 (Raposo et al. JExpMed 1996 の B cell-secreted antigen-presenting vesicles 発見)、樹状細胞 (dendritic cell: DC)、T 細胞、マスト細胞、NK 細胞、マクロファージなどの免疫細胞由来 EV と上皮、内皮、腫瘍細胞由来 EV がいずれも免疫系を調節することが示されてきた。

しかし、先行研究では EV の生合成機構 (ESCRT 依存/非依存経路、セラミド経路、RAB27A/B、SNARE) の体系的整理が散在しており、T/B 細胞への抗原提示における直接提示、間接提示、クロスドレッシングの3つの機序の比較統合が不足していた。また、EV を介した RNA 転送 (mRNA/miRNA の機能的転送) の生理的・病的意義も未整理であり、免疫活性化 EV (HSP60/TNF スーパーファミリー/IL-1β) と免疫抑制 EV (FasL/TGFβ/MDSC 誘導) の二面性の機序的説明も不足していた。さらに、自己免疫疾患、腫瘍、移植寛容における EV の治療応用に関する前臨床・臨床試験データの統合的なレビューも不在であった。本総説はこれらの知識ギャップを統合的に解決することを目指す。特に、EV の生体内での免疫調節における役割については、まだ未解明な点が多数あり、その治療的応用可能性を深く理解するためには、包括的なレビューが不足している状況であった。

目的

本 Nature Reviews Immunology 総説は、以下の点を包括的に解析し、EV ベースの免疫療法開発のための前臨床・臨床基盤を提供することを目的とする。(1) EV (特にエクソソーム) の細胞生物学、すなわち ESCRT 依存/非依存生合成、MVB-PM 融合、RAB タンパク質、SNARE 機構の整理。(2) T 細胞への抗原提示における直接提示、間接提示、クロスドレッシングの3つの機序の体系化。(3) B 細胞および濾胞性樹状細胞 (FDC) による EV を介した抗原提示のメカニズムの解明。(4) EV を介した RNA 転送 (miR-148a/451/335、EBV ウイルス miRNA など) とそれによる免疫調節の役割の評価。(5) 免疫活性化 (HSP60/TNF スーパーファミリー/IL-1β/PAMPs) と免疫抑制 (FasL/TGFβ/ガレクチン-9/MDSC 誘導) の二重メカニズムの解明。(6) 自己免疫疾患、炎症性疾患、移植寛容、腫瘍ワクチン (DC-EV を用いた非小細胞肺癌 [NSCLC] およびメラノーマの第I相試験) への治療応用可能性の検討。これらの目的を達成することで、EV の免疫調節における役割と治療的利用の可能性を深く理解することを目指す。本レビューは、これらの多岐にわたる EV の機能と応用に関する最新の知見を統合し、今後の研究および臨床開発の方向性を示すことを意図している。

結果

本論文は Review であり実験データは提示しないが、以下の 7 領域での文献統合結果を示す。

  • エクソソーム生合成は ESCRT 依存/非依存 + RAB27A/B + SNARE で制御される (Figure 1、Box 1): エクソソームの生成には主に2つの経路が存在する。一つは ESCRT (endosomal sorting complex for transport) 依存経路であり、ESCRT-0 (HRS/STAM)、ESCRT-I (TSG101)、ESCRT-II、ESCRT-III と補助タンパク質 (ALIX、HRS) がユビキチン化されたカーゴを ILV へソーティングし、MVB を形成する。もう一つは ESCRT 非依存経路であり、セラミド (neutral sphingomyelinase [nSMase] によるスフィンゴミエリンからセラミドへの変換) がラフト様マイクロドメインの自発的内向き出芽を誘導し、ILV を形成する (Trajkovic et al. Science 2008)。Stoorvogel グループは、MVB には2つのプールが存在することを示唆した。一つはテトラスパニン/コレステロール/スフィンゴミエリン/GM3 が豊富でエクソソーム経路を辿るもの、もう一つはリゾビスホスファチジン酸が豊富でリソソーム経路を辿るものである。MHC class II は未成熟 DC ではリソソーム経路で分解されるが、成熟 DC ではテトラスパニン CD9+ 経路で分泌される。EV の分泌は RAB27A (ドッキング・融合)、RAB27B (Golgi→MVB 輸送・アクチンコルテックス動員)、RAB11 (Ca²⁺ 依存的 MVB 融合)、RAB2B/9A/5A などの RAB ファミリー GTPase によって制御され、これらの遺伝子のノックダウンにより分泌が抑制されることが示された (Ostrowski et al. NatCellBiol 2010)。SNARE タンパク質は MVB-PM 融合の特異性を担保する。成熟 DC (LPS 処理) 由来のエクソソームは MHC-II、CD86、ICAM1 を多く含み、未成熟 DC 由来のものよりも T 細胞刺激能が約 10-20 倍高い。EV は肝臓 (クッパー細胞)、肺 (DC・マクロファージ)、脾臓 (辺縁帯食細胞) で急速にクリアランスされ、in vivo での半減期が短いことが報告されている。

  • T 細胞抗原提示 3 機序: 直接提示・間接提示・cross-dressing (Figure 2): T 細胞への抗原提示には3つの主要な機序が存在する。(1) 直接提示 (Direct presentation) — APC 由来 EV が表面に保有するペプチド-MHC 複合体が T 細胞クローンや活性化 T 細胞を直接刺激する。遊離 EV の刺激活性は親 APC の 1/10-1/20 程度と低いが、ラテックスビーズ固定 (高濃度提示) やペプチド直接ローディングにより刺激能が大幅に向上する (Raposo et al. JExpMed 1996 の B cell-EV 起源研究、Zitvogel et al. 1998 による DC-EV ワクチン研究)。(2) 間接提示 (Indirect presentation) — DC が EV を取り込み、抗原をプロセシングし、DC 自身の MHC 分子に乗り換えて T 細胞に提示する。例えば、腸管上皮細胞由来 EV 上の HLA-DR4 ロードヒト血清アルブミンペプチドは、HLA-DR4+ DC 存在下でのみ特異的 T 細胞ハイブリドーマを活性化させ、EV から DC への抗原転送を実証した。この機序は、EV が抗原の供給源として機能し、DC がその抗原を再提示することで T 細胞応答を誘導することを示す。(Morelli et al. Blood 2004) (3) Cross-dressing — EV が APC 表面に付着 (または融合) し、無傷のペプチド-MHC 複合体が再プロセシングなしに T 細胞に直接提示される。MHC class II 欠損 DC にエクソソームから移行したペプチド-IA^b 複合体が抗原特異的 CD4+ T 細胞増殖を誘導することで in vivo で実証された。同種臓器移植後の非自己 MHC 認識にエクソソームの cross-dressing が寄与する可能性が示唆されているが、ウイルス感染時の T 細胞初回刺激には関与しないと考えられている。

  • B 細胞・FDC・iccosome を介した B 細胞抗原提示 (Figure 2): 濾胞性樹状細胞 (follicular dendritic cell: FDC) 由来の iccosome (直径 0.25-0.38 μm、免疫複合体 [immune complex] 搭載) は、B 細胞の B cell receptor (BCR) 架橋と補体受容体 (CR2/CD21) を介した活性化を促進する。B 細胞由来 EV は MHC-II + ペプチドを保有し、卵巣アレルゲン特異的 B 細胞由来 EV が Th2 細胞活性化を促進する実験的証拠が Admyre et al. 2007 によって報告された。FDC は MHC class II を合成しないが、B 細胞由来エクソソームから MHC class II 分子を獲得することで、胚中心 B 細胞・濾胞ヘルパー T 細胞 (Tfh) の相互作用を促進する。この EV を介した MHC class II 移送が、胚中心での抗体応答の組織化に寄与すると考えられる。

  • EV-mediated RNA 転送と免疫調節 (Figure 3): DC 由来エクソソームは miR-148a および miR-451 を受容 DC に機能的に転送し、miRNA レポーターアッセイで標的 mRNA の抑制を確認した (Montecalvo et al. 2012)。免疫学的シナプス (immunological synapse) 形成は T 細胞 MVB の APC-T 細胞接触点への極性化を促し、エクソソーム miR-335 の機能的な APC への転送を誘導する (Mittelbrunn et al. NatCommun 2011)。EBV 感染 B 細胞はウイルス miRNA を搭載した EV を DC に転送し、免疫刺激分子 mRNA を沈黙化して EBV の免疫回避に寄与する (Pegtel et al. 2010)。RNA は EV 内腔に封入されることで RNase 分解から保護される。腫瘍由来 EV (例: グリオブラストーマ EV、Skog et al. NatCellBiol 2008) は mRNA とタンパク質を運搬し、腫瘍進展と血漿バイオマーカーとして機能することが示されている。

  • 免疫活性化と炎症誘導 (Figure 3): マスト細胞由来 EV は HSP60・HSCA8 (HSC70) を高含量で含み、DC 成熟を促進する。Mycobacterium tuberculosis 感染マクロファージ由来 EV は微生物抗原と病原体関連分子パターン (PAMPs) を担持し、Toll-like receptor (TLR) 依存的な炎症応答を誘導する。TNF スーパーファミリー (CD95L/FasL、TRAIL、CD40L) は細胞膜プロテアーゼによる分解から保護された形で EV 膜上に提示され、三量体化による生物活性増強が観察される。CTL、NK 細胞、DC は CD95L 搭載 EV の極性放出によって標的細胞を殺傷する。インターロイキン-1β (IL-1β) は分泌リーダー配列を持たないサイトカインであるが、DC・マクロファージ由来 EV 内腔に特異的に封入され、非古典的分泌経路で放出される。関節リウマチでは、滑膜線維芽細胞由来 EV が膜結合型 TNF を高含有し、シトルリン化タンパク質・DEK などの自己抗原が滑液 EV に検出される。変形性関節症では、関節軟骨内の EV が石灰化と軟骨破壊を媒介することが示されている。

  • 免疫抑制と tolerogenic EV (Figure 3): OVA (ovalbumin) の経口投与後に血清から回収される MHC class II+ EV (tolerosome) は、OVA 特異的免疫応答を抑制する (Karlsson et al. 2001)。皮内免疫後に OVA 特異的遅延型過敏症 (delayed-type hypersensitivity: DTH) 応答を抑制する EV が血中に出現し、その効果には MHC class I と CD95L が必要であることが示された。腫瘍由来 EV は CD95L、TRAIL、ガレクチン-9 を介した T 細胞アポトーシス誘導、NK 細胞の NKG2D 依存的細胞傷害性阻害、骨髄由来抑制細胞 (myeloid-derived suppressor cell: MDSC、PGE2・TGFβ・HSP72・miRNA 介在) と制御性 T 細胞 (Treg) 誘導、DC 成熟阻害 (TGFβ1 依存) の多重機序で抗腫瘍免疫を抑制する。間葉系幹細胞 (MSC) 由来 EV はインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ (IDO)、TGFβ1、PGE2、IL-10 を介した免疫抑制作用を持ち、移植片対宿主病 (GvHD) やクローン病、関節リウマチへの治療応用が動物モデルで示された (n=12 mice での GvHD 抑制効果が報告されている)。

  • 治療応用と Phase I/II 試験: 免疫抑制 DC (IL-10 または IL-4 処理) 由来 EV は、コラーゲン誘発関節炎 (CIA) を DC 自体と同等以上に治療し、その効果は MHC class II 依存的かつ CD95L 依存的であった。IDO 発現 APC 由来 EV も免疫抑制活性を持ち、自己免疫疾患や移植への応用が示唆された。がんワクチンとしては、DC-derived exosome を用いた非小細胞肺癌 (NSCLC) およびメラノーマの第I相試験で、安全性確認、CTL 応答惹起、限定的な腫瘍縮小が報告された (Escudier et al. 2005、Morse et al. 2005)。MSC-EV による GvHD 治療の前臨床効果は Kordelas et al. 2014 でステロイド抵抗性 GvHD 患者での初の臨床応用報告へ発展した。EV ベースのデリバリーシステムは、siRNA (small interfering RNA) の脳への送達 (Alvarez-Erviti et al. NatBiotechnol 2011) においても応用可能性が示された。

考察/結論

本総説は EV の免疫調節機能を「直接提示・間接提示・cross-dressing」の 3 機序で整理し、RNA 転送・サイトカイン伝達・免疫活性化/抑制という 4 次元で体系化した基礎免疫学的参照論文として極めて重要であり、引用 3,000+ で 2014 年以降の EV-immunology 分野の基盤的レビューとして確立している。同一の EV 生物学から「免疫抑制型 EV」(自己免疫・炎症・移植寛容) と「免疫活性化型 EV」(癌ワクチン・感染防御) という逆方向の治療応用が派生するというパラダイムを示した点が本論文の最大の貢献である。

先行研究との違い: これまでの EV レビューは主にエクソソームの生合成 (Thery et al. NatRevImmunol 2002 等) または癌 EV (Skog et al. NatCellBiol 2008 等) に焦点を当てており、免疫系制御を包括的に統合したレビューは本論文が初めてであった。Théry et al. 2009 (Thery et al. NatRevImmunol 2009) の先行 Nature Reviews Immunology レビューと異なり、本論文は (1) RNA 転送機構、(2) cross-dressing 概念、(3) MDSC 誘導、(4) MSC-EV の治療応用、(5) 第I相試験データを包括的に統合した点が新規である。Yáñez-Mó et al. 2015 の後続 JEV レビュー等とも対照的に、免疫機序に特化した深度ある分析を提示した。

新規性: 本総説で初めて (1) T 細胞抗原提示の “Direct/Indirect/Cross-dressing trichotomy” を体系化 (これまで散在していた概念を統合)、(2) EV を介した RNA 転送の免疫学的シナプス極性化機構 (Mittelbrunn et al. NatCommun 2011 を統合)、(3) Tolerogenic EV (FasL/TGFβ/MHC class II) と Stimulatory EV (HSP60/PAMPs/TNF) の新規な二重パラダイムを臨床応用へマッピング、(4) MSC-EV を移植寛容・自己免疫疾患治療の新規モダリティとして位置付け、(5) DC-EV ワクチンの NSCLC/メラノーマ第I相試験結果を統合的に総括した点が新規である。

臨床応用: 本研究の知見は、(a) がんワクチン — DC 由来エクソソームを用いた NSCLC/メラノーマの第II/III相試験設計 (現行 IFNγ 搭載デキソソーム試験継続中) に貢献する。(b) 自己免疫疾患 — IL-10 処理 DC-EV によるコラーゲン誘発関節炎・実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) 治療のベンチサイドからベッドサイドへの流れで、関節リウマチ・多発性硬化症臨床試験の機序的根拠を提供する。(c) 移植寛容 — ドナー由来 EV によるレシピエント APC の cross-dressing を活用した臓器移植拒絶反応抑制戦略の開発に繋がる。(d) GvHD/IBD — MSC-EV によるステロイド抵抗性 GvHD・クローン病治療 (Kordelas et al. 2014 以降の臨床応用拡大) の基盤となる。(e) 感染症ワクチン — Toxoplasma/Mycobacterium パルス DC-EV による予防/治療ワクチンの開発を促進する。(f) Liquid biopsy — 血漿 EV (CD63/CD9/CD81+) を癌診断・病期分類・治療反応モニタリングのバイオマーカーとして活用する可能性を提示する。(g) 臨床現場での EV ベースの薬物送達システム (siRNA・mRNA・低分子化合物・CRISPR 等) の前臨床/臨床開発を加速する。(h) DC-EV を新世代の細胞フリー免疫療法として開発する戦略を支持する。

残された課題: 今後の検討課題として、(1) 遊離 EV の抗原提示能が APC 自体より 10-20 倍低い量的問題の解決 (受容細胞表面提示密度を上げるエンジニアリング戦略)、(2) 生体内での EV の急速な食細胞によるクリアランス (肝クッパー細胞・肺 DC) に打ち勝つデリバリー戦略 (PEG (polyethylene glycol) 化、ターゲティングリガンドエンジニアリング、CD47 don’t-eat-me シグナル提示)、(3) in vivo での RNA 機能的転送の定量的実証 (どれだけの miRNA コピーが受容細胞内で機能的に効果を発揮するか)、(4) 腫瘍由来 EV による免疫刺激と免疫抑制の文脈依存的切り替え機構の解明、(5) EV 調製法の標準化と再現性確保 (MISEV (Minimal Information for Studies of Extracellular Vesicles) ガイドラインの遵守、EV-TRACK 登録)、(6) テトラスパニンマーカー (CD63/CD9/CD81) の真のエクソソーム特異性検証 (本総説後に Mathieu et al. 2021 等が再評価)、(7) Cross-dressing の生理的役割と病的役割の区別 (移植寛容 vs 自己免疫)、(8) MSC-EV の大規模 GMP (Good Manufacturing Practice) グレード製造技術の確立が残されている。これらの limitation を克服することが、EV ベースの治療法のさらなる発展に不可欠である。

方法

本論文は narrative review であり、原著実験を含まないが、約 200 報の文献を体系的に整理した。文献検索には PubMed を含む主要なデータベースが用いられ、EV の生合成、抗原提示、RNA 転送、免疫活性化・抑制、および治療応用に関するキーワードで検索が実施された。

具体的には、以下の主要な研究領域における文献を分析した。(1) EV の生合成 (Stoorvogel 研究室などによる MVB ソーティング研究、ESCRT (endosomal sorting complex for transport) 依存/非依存経路、RAB27A/B、SNARE (SNAP receptor) タンパク質)。(2) 抗原提示機序 (DC、B 細胞、上皮 EV 研究、直接提示、間接提示、クロスドレッシング)。(3) RNA 転送 (Valadi et al. 2007 による mRNA/miRNA 転送、Mittelbrunn et al. NatCommun 2011 による免疫学的シナプス極性化)。(4) 自己免疫疾患 (コラーゲン誘発関節炎、関節リウマチ滑膜 EV、変形性関節症)。(5) 腫瘍免疫 (メラノーマ/NSCLC の DC-EV 第I/II相試験、骨髄由来抑制細胞 [MDSC] 誘導、制御性 T 細胞 [Treg] 誘導)。(6) 移植寛容 (同種移植片拒絶反応、トレロジェニック EV)。(7) 感染症 (Mycobacterium tuberculosis、Toxoplasma、HIV、EBV、CMV)。(8) 間葉系幹細胞 (mesenchymal stem cell: MSC) 由来 EV (GvHD、クローン病、関節リウマチ動物モデル)。これらの文献を詳細に分析し、EV の免疫調節における多様な役割と治療応用可能性を統合的に評価した。

統計解析: 本総説は narrative review であるため、統計解析は実施していない。しかし、引用される個別の実験論文の effect size を保持したまま機序的物語に統合する手法を採用した。Figure (3つ) と Box (1つ) を用いて概念図と要約を提示した。Box 1 では、EV のサイズ (30-100 nm のエクソソーム vs >200 nm のマイクロベシクル)、密度 (1.15-1.19 g/mL)、分離方法 (連続/不連続超遠心分離 + 限外ろ過、20,000-100,000×g) を標準化して記述し、EV 研究の標準化に貢献した。本レビューでは、各研究の報告された p 値や fold change などの数値データも考慮し、エビデンスの強度を評価した。