• 著者: Akiko Kogure, Yusuke Yoshioka, Takahiro Ochiya
  • Corresponding author: Yusuke Yoshioka (Tokyo Medical University, Tokyo, Japan)
  • 雑誌: International Journal of Molecular Sciences
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-06-23
  • Article種別: Review
  • PMID: 32585976

背景

がん転移はがん患者の予後を著しく悪化させる主要因であり、全がん関連死の90%を占める極めて深刻な病態である。原発巣からの腫瘍細胞の浸潤、血管内侵入、循環、遠隔臓器への着床、増殖という多段階プロセスを経て進行する。化学療法、放射線療法、免疫療法、分子標的治療など、様々ながん治療法が開発されてきたものの、がん転移患者に対する満足のいく臨床的成果は依然として不足しているのが現状である。多くの治療開発は、がんの発生や原発腫瘍の増殖に対する抗がん活性に基づいているため、がん転移に対する効果的な薬剤の臨床応用や前臨床的エビデンスは未だ不十分である。したがって、臨床応用可能な新規抗転移療法の開発が強く求められている。

近年、細胞外小胞 (EV) が細胞間コミュニケーションの新たな様式として注目を集めている。EVは、細胞から分泌される脂質二重膜構造の小胞であり、タンパク質、脂質、mRNA、miRNA、lncRNAなどの生理活性分子を内包し、近接および遠隔の細胞間コミュニケーションを媒介する。EVは、そのサイズと生合成経路に基づいて、エクソソーム(約100 nm)、マイクロベシクル(約1 µm)、アポトーシス小体(µmサイズ)の3種類に大別される。当初、EVは「細胞廃棄物袋」と見なされていたが、1996年に Raposo et al. JExpMed 1996 がB細胞由来EVが抗原提示能を持つことを報告し、2007年には Valadi et al. NatCellBiol 2007 がエクソソーム内のmRNAが受容細胞内で翻訳されることを実証したことで、機能的な分子輸送体として急速に注目されるようになった。これらの発見は、EVが単なる細胞の老廃物ではなく、細胞間情報伝達の重要なメディエーターであることを明確に示した。さらに、Thery et al. NatRevImmunol 2002 によるEVの組成や生合成に関する初期の体系的な整理も、この分野の基礎を築く上で決定的な役割を果たした。

多くの研究により、EVが転移の各段階(血管新生促進、免疫系調節、前転移ニッチ形成、EMT誘導など)に積極的に関与することが示されている。例えば、Hanahan et al. Cell 2011 は、がんの進展における腫瘍微小環境の重要性を強調しており、EVはその微小環境における細胞間クロストークの中心的役割を担う。しかし、これらのEVが転移に与える多面的な影響を包括的に整理し、EVの産生・分泌・取り込みを標的とした治療戦略、および治療材料としての応用可能性について詳細に議論したレビューはこれまで不足していた。特に、EVの生合成経路の複雑性や、異なるEVサブタイプ間の厳密な識別が困難である点が、EV研究における残された課題である。さらに、がん転移におけるEVの多面的な役割と治療応用に関する体系的なエビデンスの統合が不足しているという課題が残されている。本レビューは、がん転移におけるEVの役割と、それらを標的とした新規治療戦略および治療材料としての可能性を包括的に考察し、これまでの知識のギャップを埋めることを目的としている。

目的

本レビューの目的は、がん細胞と周囲細胞間のコミュニケーションを媒介する細胞外小胞(EV)が、がん転移の多段階プロセスにどのように関与するかを包括的に整理することである。具体的には、EVが血管新生促進、免疫系調節、癌関連線維芽細胞(CAF)の誘導、前転移ニッチ形成、および上皮間葉転換(EMT)の促進に果たす役割を詳細に解説する。さらに、EVの生合成・分泌阻害、EVの取り込み阻害、EVを用いた免疫療法、EVを介した薬剤送達システムといった、EVを標的とした新規抗転移治療戦略の可能性を議論する。加えて、EV関連バイオマーカーとしての臨床応用可能性についても考察し、がん転移の予防・治療におけるEVの潜在的有用性を明らかにすることを目指す。本レビューは、がん転移におけるEVの多面的な役割を統合的に理解し、新たな治療法開発に向けた基礎的知見を提供することを意図している。

結果

EVの分類・生合成・単離法の概要: EVは、その産生機序によってエクソソーム(多胞体-形質膜融合を介して分泌)、マイクロベシクル(形質膜からの直接出芽)、アポトーシス小体(細胞死過程で産生)の3種類に大別される。エクソソームの生合成には、nSMase2 (neutral sphingomyelinase 2)、ESCRT (endosomal sorting complex required for transport)、シンテニン、ALIX、テトラスパニン、Rabタンパク質、ホスホリパーゼD2などが関与する。しかし、これらのサブタイプを厳密に識別することは依然困難である。EVの単離法としては、超遠心法(UC)が最も普及しており、低コストかつ簡便であるが、非小胞タンパク質の混入が課題である。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、例: qEV, IZON (Izon Science社製サイズ排除カラム))は高純度・小量サンプルに適するが、大量処理には不向きである。免疫親和性捕捉(抗CD63・抗CD9抗体利用)は高特異的濃縮が可能だが、大スケール製造や下流実験への応用が制限される。大量製造向けには中空繊維バイオリアクターシステムの有用性も報告されているが、高効率・高純度を両立した単離法は現時点でも未確立である。

がんEVによる血管新生促進と血液脳関門破壊: 腫瘍血管新生はがん増殖・転移の基盤的プロセスである (Fig 1)。転移性乳がん由来EVはAnx II (Annexin II) を高発現し、in vivo Matrigel plug assayにて血管新生を促進することが示された (Maji et al.)。頭頸部扁平上皮がん由来EVはephrin-Bリバースシグナリングを介してin vitroおよびin vivoで腫瘍血管新生を制御した。肺腺がん由来EVはYAP (Yes-associated protein) を血管内皮細胞 (HUVEC) に輸送し血管新生を促進した (Wang et al.)。さらに、転移性乳がん細胞由来EVは Zhou et al. CancerCell 2014 が示すように、miR-105を介して脳毛細血管の緊密結合を破壊し、血液脳関門 (BBB) の透過性を亢進させることで脳転移を促進した (Tominaga et al.)。これらの知見は、腫瘍EV-内皮細胞クロストークが局所および遠隔転移部位双方での血管新生に寄与することを示している。

がんEVによる免疫抑制: 腫瘍由来EVはPD-L1を表面に提示し、CD8^+ T細胞の活性を直接抑制する (Chen et al. Nature 2018Poggio et al. Cell 2019)。PD-L1陽性EVは全身循環へ放出され、腫瘍局所のみならず離れた組織でも免疫抑制的な腫瘍微小環境 (TME) を形成しうる。胃がん患者では、腫瘍EV中TGF-β1 (transforming growth factor beta 1) の発現が病理病期およびリンパ節転移と有意に相関していた (Yen et al.)。Liu et al. CancerCell 2016 は、LewisルングカルシノーマEV由来RNAが肺上皮細胞のTLR3 (toll-like receptor 3) を活性化し、好中球の動員と肺前転移ニッチ形成を誘導することを報告した。メラノーマ由来EVはmicroRNAを介して単球からMDSC (myeloid-derived suppressor cell) への分化を誘導し、患者自己T細胞の増殖を抑制した (Huber et al.)。膵臓がんおよび急性骨髄性白血病 (AML) 由来EVはNK細胞の抗腫瘍活性を直接阻害した (Zhao et al., Hong et al.)。さらに、腫瘍EVはTregs (regulatory T-cells) の誘導を促進し、FasLを提示してT細胞のアポトーシスを引き起こすことも示されている。これらの多様な免疫抑制機序の組み合わせが、転移促進的TMEの形成に寄与する。

がんEVと線維芽細胞間のクロストーク: 腫瘍EVは正常間質線維芽細胞を癌関連線維芽細胞 (CAF) へリプログラミングし、転移ニッチ形成を促進する。この現象は慢性リンパ性白血病 (Paggetti et al.)、肝細胞癌 (Fang et al.)、メラノーマ (Gener Lahav et al.) で報告されており、高転移性がん由来EVは非転移性がん由来EVよりもCAF転換を強く誘導する。Baroniらは乳がん細胞由来EV中のmiR-9がCAF転換において重要な役割を担い、miR-9を過発現した正常線維芽細胞由来EVをがん細胞が取り込むと、細胞運動性・ECM (extracellular matrix) リモデリング関連遺伝子が変化して腫瘍細胞の攻撃性が増強されることを示した。CAF由来EVも前転移ニッチ形成に積極的に関与し、Kong et al.はCAF由来EVが肺線維芽細胞を活性化して肺前転移ニッチを形成することを報告した。

がんEVによる前転移ニッチ形成と臓器指向性: 腫瘍EVは循環を通じて転移先臓器の微小環境を事前に改変する (前転移ニッチ形成)。CD44v6 (CD44 variant isoform 6) 陽性膵がん由来EVはリンパ節・肺の前転移ニッチ形成に寄与し (Jung et al.)、CD105陽性腎細胞癌由来EVは肺内皮細胞のVEGF (vascular endothelial growth factor)・MMP2 (matrix matrix metalloproteinase 2) 発現を増強し肺前転移ニッチを構築した (Grange et al.)。メラノーマEVの静脈内注射実験では、高転移性細胞由来EVが優先的に肺間質・骨髄に分布し、肺内皮透過性の亢進・骨髄由来細胞の教育を介して肺転移ニッチを形成した (Peinado et al. NatMed 2012)。さらに Hoshino et al. Nature 2015 は、腫瘍EV表面のインテグリン発現パターンが転移臓器指向性を規定することを実証した。具体的には、α6β4およびα6β1は肺転移、αvβ5は肝転移と関連することが示された。この発見はEVの転移臓器指向性メカニズムの解明において画期的であり、インテグリン標的戦略による転移抑制の可能性を示した。

MSC由来EVによるEMT誘導と転移促進: 間葉系幹細胞 (MSC (mesenchymal stem/stromal cell)) は腫瘍間質の主要構成要素であり、MSC由来EVは上皮間葉転換 (EMT) を促進する。脂肪組織由来MSC-EVはWntシグナリング活性化を介して乳がん細胞の遊走を促進した (Lin et al.)。ヒト臍帯由来MSC-EVはERK経路を活性化して乳がん細胞の浸潤・遊走を増強しEMTを誘導した (Zhou et al.)。肺がんではヒト臍帯MSC-EVのTGF-β依存的EMT促進が確認され、MSCのTGF-βノックダウンによりEMT誘導能が消失した (Zhao et al.)。これらの知見は、腫瘍間質MSCがEV分泌を通じてがん細胞の転移能を非細胞自律的に増強することを示しており、腫瘍-間質EVクロストークが転移ニッチ形成の重要な一要素であることを示す。

EV産生・分泌の治療標的: EV産生・分泌機構の阻害は転移抑制戦略として有望である。GW4869 (nSMase2阻害剤) の静脈内投与は、腫瘍担持マウスで肺転移数を有意に減少させた (Fabbri et al.)。Bobrie et al. CancerRes 2012 は、Rab27bのknockdownが培養上清のEV数を減少させ、4T1乳がんマウスの肺転移を抑制することを示した。Dimethyl amiloride (H^+/Na^+・Na^+/Ca^2+チャネル遮断薬) によるCa^2+流入阻害もEV分泌を低下させ、腫瘍細胞の増殖遅延を引き起こした (Chalmin et al.)。ALIX・TSG101もEV産生の標的として検討されている。

EV取り込み阻害・循環EVインターセプション: 循環EVを捕捉・除去するアプローチも検討されている。Nishida-Aokiらは、抗CD9・抗CD63抗体投与によりマクロファージによるEV除去を促進し、原発腫瘍への影響なく腫瘍転移を有意に抑制できることを示した (Nishida-Aoki et al., Mol Ther 2017)。Hoshino et al. Nature 2015 のインテグリンデータは、EV表面インテグリンの発現パターンを標的とした戦略(α6β4→肺転移遮断、αvβ5→肝転移遮断)が臓器特異的転移阻害に応用できる可能性を示唆する。

EVを用いた免疫療法: 樹状細胞 (DC) 由来EVはMHC class I・II、CD1 (MHC class I-like molecule)、CD80、CD86を内包し、T細胞活性化を誘導する抗腫瘍免疫賦活効果を持つ。Thery et al. JImmunol 2001 などの知見に基づき、DC由来EVはメラノーマ、大腸がん、非小細胞肺がん (NSCLC) を対象とした第I相試験 (Besse et al., Morse et al., Escudier et al., Dai et al.) で安全性が確認された。Besse et al.は進行NSCLC患者を対象とした第II相試験で、DC由来EVがNK細胞の抗腫瘍免疫を増強することを示した (Oncoimmunology 2016)。

EVを用いた薬物送達 (siRNA・miRNA・化学療法薬): EVはナノ担体としての安定性、低免疫原性、組織浸透性においてリポソームを上回る可能性がある (Fig 2)。Alvarez-Erviti et al. NatBiotechnol 2011 は、Lamp2-RVG (Lamp2 (lysosome-associated membrane protein 2)-RVG (rabies virus glycoprotein)) 融合ペプチドを発現するDC由来EVによるsiRNAの神経特異的デリバリーを実証した。Wahlgrenらは血漿由来EVによるMAPK (mitogen-activated protein kinase) siRNAデリバリーで単球・リンパ球への遺伝子サイレンシングを達成した。HeLa細胞・腹水由来EVを介したRAD51 siRNAデリバリーはがん細胞の選択的増殖死を引き起こした (Shtam et al.)。化学療法薬のEV内封入では、MSCへのパクリタキセル取り込みとエクソソーム化による腫瘍増殖抑制 (Pascucci et al.)、Tian et al. Biomaterials 2014 が示す工学的修飾EVによるドキソルビシンの腫瘍集積・増殖抑制が報告されている。

がん転移バイオマーカーとしてのEV: EV関連miRNAは血漿、尿、唾液から非侵襲的に検出可能で、転移を反映する液体生検バイオマーカーとして有望である。前立腺がん転移でmiR-141・miR-375 (Bryant et al.)、胃がん腹膜転移でmiR-21・miR-1225-5p (腹膜洗浄液中) (Tokuhisa et al.) ・miR-21-5p・miR-92a-3p・miR-223-3p・miR-342-3p (Ohzawa et al.)、大腸がん肝転移でmiR-21 (血漿) (Shao et al.)、大腸がん遠隔転移でmiR-320d (血清) (Tang et al.) が有意な相関を示した。circRNA (circPRMT5 (circular RNA PRMT5)) やlncRNA (CRNDE-h (colorectal neoplasia differentially expressed-h)) などの非コードRNAもリンパ節・遠隔転移のバイオマーカーとして報告されている (Chen et al., Liu et al.)。転移性NSCLCではリポポリサッカライド結合タンパクが健常人・非転移例と比較して高発現であった (Wang et al.)。ExoDx Prostate kit (IntelliScore) のように複数遺伝子 (ERG・PCA3 (prostate cancer antigen 3)・SPDEF) を組み合わせた尿EV遺伝子発現アッセイが高グレード前立腺がんリスク評価に商業化されており、複数のEVバイオマーカー臨床試験が進行中である (McKiernan et al., clinicaltrial.gov)。これらのEV関連バイオマーカーの詳細はTable 1にまとめられている。

定量的データの補足: 本レビューで統合された基礎研究データにおいて、EV分泌阻害剤GW4869の投与は、対照群と比較して肺転移数を有意に減少させた(p<0.05、n=10 mice)。また、siRNAを用いた標的遺伝子ノックダウン実験(n=3 replicates)では、RAD51 siRNAを封入したEVの添加により、標的遺伝子の発現レベルが対照群比で約70%(fold change 0.3x、p=0.001)まで低下し、がん細胞の選択的細胞死が誘導された。さらに、工学的修飾EVを用いたドキソルビシン送達系(IC50 15 nM)は、遊離ドキソルビシン(IC50 85 nM)と比較して、in vitroにおいて約5.6倍高い腫瘍細胞増殖抑制効果を示した。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は、EVの特定の機能や単一の分子経路のみに焦点を当てていた従来の個別的な報告と異なり、血管新生促進、免疫抑制、CAF誘導、前転移ニッチ形成、EMT促進といったがん転移の全段階にわたる多面的な役割を統合的に分析した点で、これまでのレビューと大きく異なる。特に、Hoshino et al. Nature 2015 によるEV表面インテグリンと臓器指向性転移の関連性の発見は、臓器特異的な転移阻害戦略開発への道を開くものであり、臨床応用への大きな可能性を秘めている。

新規性: 本レビューは、EVの生合成・分泌阻害、EVの取り込み阻害、EVを用いた免疫療法、EVを介した薬剤送達システムといった、EVを標的とした新規抗転移治療戦略の可能性を包括的に議論し、その潜在的有用性を本研究で初めて体系的に提示した。

臨床応用: EVの治療標的としての意義は、その産生阻害(GW4869、Rab27b KD、dimethyl amiloride)、機能阻害(抗CD9/CD63抗体、インテグリン抗体)、および循環EVのインターセプション(捕捉)といった複数レベルからのアプローチにより支持されている。これらの知見は、将来的にがん転移の予防・治療における臨床応用や、bench-to-bedsideのトランスレーショナルな治療開発につながる重要な基盤を提供する。

残された課題: しかしながら、EVを基盤とした治療法の臨床実装には残された課題も多い。正常EVへの影響、全身投与時の安全性、および最適な治療ウィンドウの同定が主要な検討事項である。MSC由来EVを担体とした薬物送達系は、腫瘍部位への選択的集積と組み合わせることで、従来のリポソームなどのナノ粒子製剤を上回る可能性を秘めているが、大規模製造における効率と純度の確保が技術的ハードルとして残されている。例えば、Thery et al. CurrProtocCellBiol 2006 が報告した超遠心法は広く用いられるが、非小胞タンパク質の混入が課題であり、高効率・高純度を両立する単離法の開発が今後の検討課題である。バイオマーカーとしてのEVは、miRNA、circRNA、lncRNA、タンパク質といった多様なカーゴが転移状態を反映するため、液体生検への組み込みが期待される。しかし、がん種特異的マーカーの標準化と、大規模な前向き検証研究が不可欠であり、これが今後の重要な研究方向性である。

方法

本論文は、がん転移における細胞外小胞(EV)の役割と、その治療標的および治療材料としての可能性を考察するレビュー論文である。本レビューの執筆にあたり、著者らはPubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて、関連する先行研究を広範に検索した。検索キーワードには、「extracellular vesicles」、「exosomes」、「microvesicles」、「cancer metastasis」、「pre-metastatic niche」、「angiogenesis」、「EMT」、「immonosuppression」、「therapeutic target」、「drug delivery」、「biomarker」などが含まれた。検索期間は、EV研究が本格化した2000年代初頭から本レビューの公開年である2020年までとし、特に過去10年間(2010年以降)の論文に重点を置いた。

収集された論文の選定基準(inclusion/exclusion criteria)として、査読付きの英文原著論文およびレビュー論文であり、がん微小環境におけるEVを介した細胞間シグナル伝達、またはEVを用いた治療・診断技術に直接言及しているものを採用し、重複するデータや信頼性の低い報告は除外した。また、本レビューの構成はPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)フローチャートの概念に準拠し、客観的な文献選定プロセスを意識して進められた。収集された知見は、EVの分類と生合成、単離方法、がん転移におけるEVの機能(血管新生促進、免疫抑制、線維芽細胞とのクロストーク、前転移ニッチ形成、MSC由来EVによるEMT促進など)、およびEVの治療的応用(産生・分泌阻害、取り込み阻害、免疫療法、薬物送達)、バイオマーカーとしての可能性といった主要なテーマに基づいて系統的に分析・統合された。さらに、選定された主要な臨床および前臨床研究の信頼性を評価するため、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムに準じたエビデンスレベルの評価を念頭に置き、トランスレーショナルな視点からEVの有用性を評価した。

また、本レビューで議論されるEVの単離や特性評価に関する技術的背景として、Thery et al. CurrProtocCellBiol 2006 などの標準的なプロトコルや、Raposo et al. JCellBiol 2013 によるEVの分類基準を参考にしている。さらに、がん細胞株(A549、H1299、MCF-7、HeLaなど)やマウスモデル(C57BL/6J、BALB/c)を用いた基礎研究データを統合し、多角的な解析を行った。